機動戦士ガンダムSEED FREEDOM~IF STORIES~短編集   作:フォレス・ノースウッド

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勢いあまってIF短編第二弾です。


もしも○○○がコンパスの一員だったら?①

もしもステラが蘇って、コンパスの一員になっていたら? 再会編

 

 世界平和監視機構コンパス所属強襲揚陸艦――ミレニアム。

 今日もまた起きるかもしれぬ火種に対し、いつでも対処できる様、地球の軌道上を周回している。

 そんな艦内の、今はコンパスMS部隊メンバーの一人であるシン・アスカの個室(しかんしつ)。

 今シンはまだ眠りの中なのだが、そんな本人の状態に構わず、自動扉が開き、勝手しったる様子で入ってきた少女が一人。

 

「シン、シン起きて、朝だよ~~もしもし~~」

 

 滑らかで煌びやかな金髪と鮮やかなすみれ色がかった麗しい瞳に、淡く透明感のあるピンク色のミニスカート仕様のコンパス隊員用制服が良く似合うくらいの美貌を持つ少女は、シンの身体をゆすって起こそうとするが……。

 

「マユ………もうあと五分……」

 

 中々起きないシンは、中々にベタな寝言を呟く。

 

「もう~~~マユじゃなくて――」

 

 痺れを切らして膨れ面になった少女は、その場から飛び上がり。

 

「私(ステラ)はステラッ!!」

「ごほォっ!」

 

 シンの胴体へ思いっきり飛び乗って、強引にシンを夢の世界から引き戻し、彼の口からは呻き混じりの奇声が上がった。

 

「す、ステラ……その起こした方は止めてって言ったでしょ……」

「だってこの時間に起こしてってステラに頼んだのに、起きてくれなかったんだもん」

 

 と、四つん這いの体勢で、シンからの苦言に対し、ステラと呼ばれた少女は弁明する。

 

「そうだった………とりあえず、起きたいからどいてくれるかな?」

「あ、ごめん」

 

 ベッドから飛び引いたステラは、部屋の電気を点け。

 

「じゃあ改めて、おはようシン~♪」

「おはよう、ステラ」

 

 まるで仲のいい兄妹のように、二人は笑顔と、朝の挨拶を交わし合い、シンは愛嬌溢れるステラの頭をそっと優しく撫でてあげるのであった。

 

 

 

 

 

 なぜ第二次連合・プラント大戦中にて亡くなったステラ・ルーシェが、今も生きているのかと言えば、中々長い経緯(はなし)になる。

 時は約一年前、コンパス発足直前の頃にまで遡る。

 当時ザフトからオーブ軍に出向していたシンは、オーブ陸軍運営の軍病院の駆け足禁止な廊下を、逸る気持ちに駆られて走り出さぬ様、自制心を必死に利かして歩いていた。

 行き先の病室の前にまでたどり着いたシンは胸に手を当て、鼓動の上昇が止まらない心臓と、全身に走る緊張感を少しでも和らげようと深呼吸を複数回行い、そっと入室する。

 

「……っ」

 

 医療機器の駆動音と呼吸音に上乗せするくらい、シンの息は唾ごと飲み込まれ。

 

「ステラ……っ」

 

 ベッドで眠る……守ると約束したのにできず……最後まで戦争の道具として利用されつくした果てに死に別れた筈だった少女の名を、彼は口にした。

 彼女がここに運ばれたまでのおおよその事情は、この時既にターミナルに出向していたアスランが取りまとめた報告書(レポート)を読んで知っている。

 ブルーコスモス及びロゴス残党組織関連の施設調査の折に発見したと言う《強化人間》を育成する研究所跡地にて、冷凍保存(コールドスリープ)されている形で発見されたと言う。

 一歩ずつゆっくりとステラの下へ歩み寄り、しゃがみ込んでちゃんと息をしているを聞き取りながら、無垢と言う言葉を体現したかのようなあどけなさの残る顔をまざまざと見つめるシン。

 忘れようがない、かつて会った時と変わらぬ姿で確かにここにいる……生きている。

 でも――。

 

「〝カーボンヒューマン〟だなんて……そんな」

 

 アスランの報告書に書かれていた単語を呟く。それが亡くなった筈の彼女が蘇った真相(からくり)だ。

 ロゴスと関わりがあると言うある組織が開発したと言う、クローンとは別に、人間の複製(コピー)を生み出す技術。

 今のステラの身体は、そのテクノロジーで生み出されたもの……ただ脳だけはオリジナルの彼女の肉体から移植されたものらしい。

 死した後にまで、彼女を利用し続けた連中に渡すまいとシンは、ベルリン近辺の山間部にあった湖に亡骸を沈めて水葬した筈なのに……複製された肉体に本物が混じっていると言うことは、シンの懸念が現実になってしまったのだ。

 ブルーコスモスの連中が、彼女の能力(データ)欲しさに亡骸を引き上げ、再び〝兵器〟に仕立て上げようとした。

 幸いなことに、人の悪意で蘇らされたステラは、いわゆる植物人間同然の昏睡状態のまま目覚めずに今に至っている事実を噛み締め。

 

〝それでもステラは、ステラだ……〟

 

 ――なのだと、シンは彼女の手に触れようとして、逡巡する。

 

「そうだよ……俺だって……ステラを……」

 

 自分もまた、ステラと言う少女を苦しめていた〝怖いやつら〟の一人だ。

 

〝死なせたくないから返すんだッ!〟

 

 衰弱してゆくステラを、このまま死なせてしまうのが嫌だったが為に選んだあの時の自分の決断を否定したくはない。

 けど、それでどうなった?

 真っ先に彼女は《デストロイ》なんて大量殺戮兵器を動かす部品の一部にされて、たくさんの人々の命を奪った。

 故郷(オーブ)を襲った戦火に巻き込まれて死んだ家族と、ただ一人生き残って、慟哭することしかできなかった自分自身と同じ境遇の人たちを、たくさん生んでしまった。

 挙句にその尻拭いをキラに押し付けてしまった癖に、彼を仇だと撃とうとしてしまった……生きている限り、ステラが戦場から離れられないのなら、助けられないのなら、自分が撃ってまでも止めなきゃいけなかったのに。

 過去(あのころ)の自分に会う機会がもしあるのなら、その気持ちを汲んた上で言ってやりたい。

 ステラが戦争の中で奪った命は、自分自身が背負わなければならない〝罪〟なんだって。

 今の自分のこの手は、ステラの分も含めて、戦争の悲劇の連鎖で死んでいたった人々の血がしみ込んでいる。

 そんな自分が、今さらステラに触れていいのか? と俯き、自分の手を握ろうとした寸前、その掌に〝手〟が触れた。

 

「シン……」

 

 自分を呼ぶ、あどけなく儚い少女の声と共に、シンの手は両手に包まれる。

 顔を見上げると、その先には、すみれ色の瞳を自分に向けて微笑むステラがいて。

 

「また、会えたね」

 

 晴れやかで眩しい笑顔を見せてくれていた。

 

「ステラ………」

 

 彼女の名前を発するだけで精一杯だ。

 色々言いたいことが、伝えたい気持ちがたくさんあった筈なのに、上手く言葉にできず、独り彼女の亡骸を水葬した時と同じくらいの大粒の涙が、瞼から流れ出して止まらない。

 だが違うのは、この胸の内に抱く想いは真っ黒に淀んだ怒りでも憎悪でも殺意でもなく……真っ白に煌めいている心からの歓喜。

 

「うん、会えたね」

 

 湧き上がる喜びを噛み締めて、シンもステラの手を握り返して、笑顔を見せた。

 かつて《メサイア防衛戦》にて、臨死体験をした時に現れたステラが言ってくれた言葉。

 

〝また、明日ね〟

 

 その言葉の通り、二人は再会を果たしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 それから時を戻して、現在――ミレニアム艦内の食堂にて、シンとステラとルナマリアの三人は昼食を取っている最中なのだが。

 

「ああもうステラってば、ほ~んと強すぎ!」

 

 ルナマリアは悔しさを表情(かお)で表現し、愚痴を零しながらトレイに乗る料理を食し、シンは苦笑いを浮かべ。

 

「えっへん♪」

 

 そしてステラはと言えば、自慢げに意気揚々と笑顔(どやがお)を見せている。

 この日の朝から昼までの彼らのスケジュールは、先日の戦闘に関する報告書(レポート)込みの書類作成と、トレーニングと、シミュレーターを使った模擬戦。

 

「そうは言ってもさルナ、ステラがガイアをどれだけ上手いこと使いこなしてたか知ってるだろ?」

 

 ルナマリアが悔しがる原因はこの模擬戦だった。

 今回はバクゥと言った四脚型陸戦用MS縛りで行われたのだが、この中で一番四脚タイプの操縦に手慣れていたのは、《セカンドステージシリーズ》の一機で人型と四足獣の二形態を使い分ける《ZGMF-X88S ガイア》に、正規パイロットを差し置いて乗っていたステラである。

 実際シンの言う通り、彼女はガイアの特性と性能を十全に発揮して当時は敵同士だったシンたちと何度も互角の勝負を繰り広げてきた。

 そんなステラ相手に、四脚MS縛りの同じ機体で模擬戦闘すれば、一日の長がある彼女の方にばかり勝利の女神が微笑むのは仕方ないと言える。

 

「大体シンもなんで昨日よりスコアをめっちゃ上げてるのよ……」

「それは……」

「シンに頼まれて、ステラがコツを教えてあげたの」

 

 にこやかにサムズアップを見せるステラ。

 シンの声に呼応する形で昏睡状態から目覚めたステラは、それから驚異的な学習能力と意欲の高さでオーブの小・中学・高校レベルの教育課程を数か月でクリアし、その影響か外見年齢相応より幼かった精神年齢が上がり、こうしてシンたちと同年代の友人らしいやり取りを交わしたり、他人にアドバイスできるくらいにまで情操が成長していた。

 

「おかわりしてこ」

 

 一旦シンが席を離れたのを見計らい。

 

「ほんとステラが絡むと角が取れるわね」

「そんなに?」

 

 男子一人を話題にする女子二人。

 

「シンの……家族のことは知ってるわよね」

「うん」

 

 シンが連合のオーブ侵攻の際、家族を失っていることはステラも当人の口から聞いて知っている。

 その時のことを語っているシンは自分のことを〝俺〟ではなく無意識に〝僕〟と言っており、それだけでも彼がどれだけ戦争でいっそ死んでしまいたいくらいの苦痛を味わってきたのかステラでも汲み取れた。

 

 

「そういう事情もあったんだけど、そこ踏まえても士官学校時代のシンって超がつく問題児でね、ついたあだ名が〝ザフトアカデミーの狂犬〟だった」

 

 教官に反抗心剥き出しは当たり前。

 同期生にもささいなことで喧嘩吹っ掛けて問題も起こす。

 演習でもチーム戦の時は碌に連携してくれない。

 なれ合いを嫌い、それこそ抜き身の刃の如くギラつき、時に内にため込んだ怒りを発散してばかりだった。

 

「昔のステラも人のこと言えないけど……確かに」

「でもステラは熱くならない限りは仲間とちゃんとチームプレイしてたでしょ? あの頃のあいつに比べたら、昔のアンタもまだ可愛いもん、だからシンをあそこまで丸くできるステラは凄いわ」

「それはルナもそうだよ」

 

 ステラからすれば、〝狂犬〟と揶揄されるくらい荒んでた当時のシンと少しずつ交流を深めて、愛称の〝ルナ〟で呼ばれるくらい親しい間柄になれているルナマリアの方が〝凄い〟と思い、リスペクトしていた。

 

「ルナもいたから、シンは今でも未来(あした)へ前向きになれてるもん」

「そうかな、そうだったら……いいんだけどね、あはは~~」

 

 ショートカットの赤い髪が彩る後頭部をかいて、照れ臭そうに、だがまんざらでもなく嬉しそうに笑みを見せるルナマリアの様子を見て、シンも恥ずかしさと嬉しさが入り混じった時(主にキラ隊長絡みで)似たような仕草をしているとステラが思い返していると。

 

「なんの話?」

 

 話題の本人がおかわりの料理が結構なボリュームで乗ったプレートを手に戻ってきた。

 

「アカデミー時代のあんたの〝狂犬〟振りを話してたの」

「なっ……」

 

 シンの顔がルナマリアの髪色に負けない色合いで赤くなる。

 

「ルナっ!その話はあまりステラにしないでって言ったよな」

「どうして?シン?」

「どうしてって……言われてもさ……犬扱いされるのは、なんかこう……」

「でも今のシンも――」

 

 ステラは日頃のシンの諸々を思い返し、脳裏に浮かんだ彼の人柄に一番近い動物の名前を口にする。

 

「――〝柴犬〟っぽいよ」

「犬であることに変わりないの!?」

「「うん」」

 

 見事にルナマリアとステラの声がシンクロする。ただし片や純真無垢の悪意ゼロなにっこり顔、片や揶揄うネタを見つけてにやけ顔、な違いがあるがだ。

 

「あぁ~~こうなったらヤケだぁぁぁ~~!!」

「ちょっとシン、そんな勢いで急にがっついたら」

 

 ショックと羞恥心を振り払おうと、おかわりの料理のメインであるチャーハンをガツガツ食べ始めたら――案の定、むせた。

 

「もうほら水呑んで」

「いいよ自分でできるからさ~~」

 

 と、言った傍から少し口から水が零れて制服につき、ルナマリアはトレーに同梱していたお手拭きでふいてあげる。

 

「シンとルナ、今日もイチャイチャで仲良し」

「「してないよっ!!」」

 

 ステラはシンとルナマリアのやり取りを微笑ましく眺め、二人はこれまた顔をゆでだこにして応じる。

 今でも彼女はシンのことは〝好き〟だが、その好意はどちらかと言えば仲睦まじい兄妹に近く、これでも恋人な二人の関係は公認、と言うかいつまでも末永くお幸せを願うほどに応援している彼女だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ステラ、今日も泳ぎの練習がしたいんだけど」

「俺はいいけど、ルナは?」

「私も異論無し、良い筋トレにもなるからね」

 

 一応ミレニアムは戦艦でありながら、日々いつどこで起きるかも分からぬ火種に対処するクルーの精神面を踏まえてか、娯楽施設も充実しており、プールも設置されていた。

 強化人間(エクステンデット)時代から優れた兵士であった一方、今でもかなづちなステラの為に、そこのプールで泳ぎ方を教えているのが、シンたちの日課の一つとなっている。

 

「今日も一日、パトロールだけで終わればいい――」

 

 ルナマリアが言い終わる前に、艦内に警報が鳴り出し。

 

「もう~~言ったそばからこれ~……」

『コンディションレッド発令、コンディションレッド発令、パイロットは搭乗機にて待機せよ』

 

 オペレーターのアビーの落ち着いたアナウンスが続いて響く中。

 

「急ごう!ルナ!ステラ!」

「うん!」

 

 三人はその場から駆け出し、出撃準備へと入っていった。

 

 

共闘編につづく。

 

 

 

 

 

《キャラ紹介》

 

・ステラ・ルーシェ

 

 エクステンデットの一人、ステラ・ルーシェはベルリンでの戦闘で確かに戦死し、亡骸はシンの手で水葬させられたのだが、密かにライブラリアンが開発した技術による新たな強化人間の生成を目論むファントムペイン残党の手で遺体は回収され、カーボンヒューマンの肉体に脳を移植される形で蘇生された。

 だが当初は植物人間同然の昏睡状態が続いてコールドスリープされ、ターミナルの調査で研究施設が暴かれた際に保護され、そのことを知ったシンが面会に来た際、彼に呼応するかのように目覚めた。

 メサイア攻防戦で臨死体験をしたシンに現れた彼女は、いわゆる生霊の状態であり、『また明日ね』と言う言葉は本当にいずれ会えるから発したものだった。

 性格は以前よりは多少外見年齢相応に精神年齢が上がっている(学習意欲も旺盛で、数か月で日本で言う高校生までの教育課程をクリアするくらい)が、天然の不思議ちゃんなところは相変わらずな一方、『戦争は関わった人間みんな怖いものになる、そんな悲劇を終わらせて、シンが願う優しくて、あたたかい世界を一緒に目指したい』と、シンを根負けさせる意志の強さも持ち合わせており、コンパスのMSパイロットに自ら志願した。

 エクステンデットであった境遇は秘匿されている為、表向きの経歴はSEED時代のオーブ侵攻の際に戦火に巻き込まれて奇跡的に生還したが、記憶喪失で素性が分からず、時勢柄シンと同様にプラントに移住してザフトに入った―――ということになっている。

 シンのことは今でも『好き』だが、二人の関係はどちらかと言えば兄妹に近く、シンがルナマリアと恋人関係であることは公認、むしろ応援している。ルナとも姉妹同然の間柄で仲は良い。

 

 ブロックワードによる精神の不安定さは克服している上、戦闘時の豹変具合も控えめだが、かつて何度もミネルバ隊を苦しめた戦闘能力の高さは健在であり、シンとルナとも抜群の連携でブルーコスモス残党軍を圧倒する。




VS アストレイの『カーボンヒューマン』の設定聞いた時、『本家の劇場版の音沙汰全然ないのにまたトンでも設定』を……と思ったんですが、種自由を見たあとなら『CEならあり得るわ~~』と認識が変わりました。
元よりデストロイは生体CPU搭乗前提の怪物、でも今のブルコス残党軍にイチから強化人間を育成する時間も資金もない、だとすればカーボンヒューマン技術でかつての検体からコピー取って乗せる……倫理観が紙切れ未満なCE地球人の中で最底辺のブルコスの連中ならやってそうなのが怖い。

ちなみに今回はアグネス出てきません。
絶対ステラとアグネス犬猿の仲だろうし、微笑ましい空気に草加みたいな嫌なヤツぶっこむ趣味は無いので┐(´∀`)┌(オイコラ
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