機動戦士ガンダムSEED FREEDOM~IF STORIES~短編集 作:フォレス・ノースウッド
当初は『フリーダム強奪事件』を題材にしたかったけど、情報が少なすぎるので、じゃあルナマリアも新規でガンダムタイプに乗ることになったら?に切り替え。
そうコンパスがガンダムタイプをほいほい保有できるの?と言うツッコミは我ながらしたくなりますが……これぐらいお目付け厳しくしないとCE民はすぐ繰り返すし、キラの心労は緩和されないと思う(オイ
新たな盾 前編
オーブ連合首長国、オノゴロ島にあるモルゲンレーテ本社兼オーブ国防軍の軍港内にて停泊中の、二度に渡る《連合・プラント大戦》を戦い抜き、今は世界平和監視機構コンパス所属のアークエンジェル甲板にて、シンとルナマリアとステラのヤマト隊のMSパイロットたちはいた。
昨日も地球軌道上を周回(パトロール)しているミレニアムから出撃し、戦火の拡大をどうにか最小限に抑え、インフラ復旧作業を手伝った後アークエンジェルと合流し、機体を整備している間の束の間の休息を得て一晩過ごした。
今はコズミック・イラ七四年の一二月、南太平洋ソロモン諸島にあるこの国では夏の季節。
現在のシンは母国(オーブ)に対しての愛憎入り混じる複雑な感情から踏ん切りを付けることができたのもあり、久々の故郷の夏の潮風の感触と海鳥たちの歌声を味わいながら、手すりにもたれて趣味の読書中、ちなみに今読んでいるのは西暦時代の日本の山間部の街を舞台に、どこからか突如現れたペンギンたちの正体を探ろうとする少年たちのひと夏を描いたSFジュブナイルものである。
「うみ~~♪」
ステラの方は、昔から海を眺めるのが大好きなのもあって、淡いピンクのコンパス隊員用制服の上着を脱いで上機嫌に即興舞踊(コンテンポラリーダンス)で舞いながら、久しぶりの地上の海を前に、陽光と風をその身に受けている一方。
「はぁ……」
ルナマリアの口から、今日の天気には似つかわしくない重い溜息を耳にしたシンは読書を中断して彼女の様子を窺うと、甲板の出入り口の傍で体育座りをする恋人の姿が映った。
「ルナも一緒に海見ようよ~~気持ちいいよ~~」
「ごめんステラ、今そんな余裕ないのよ……」
ステラもルナマリアの腕を引っ張るも、その場からほぼ微動だにしない。
心なしか、彼女の額に覆う影は、陽光でできた日陰より黒味が濃く見えた。
「昨日天使湯(おんせん)に入った時はまだ機嫌良かったのに~~……」
土地柄と、日本文化を受け継ぐお国柄で世界屈指の温泉国でもあるオーブの影響を受けてか、今この艦にはかなり本格的な和風温泉施設――《天使湯》があり、昨晩は戦闘の疲れを洗いざらい流してステラとガールズトークし合って湯船に浸かるくらいの余裕は残っていたが、今はこの有様だ。
「ルナ……そろそろ時間だからさ、機体の受領に行くよ」
「うん……」
気の抜けた生返事をしながらも、ルナマリアはどうにか自力でその場に立ち上がり、三人はモルゲンレーテ工場兼オーブ国防軍工廠へと向かった。
「うっ……」
彼女も軍人の端くれだけあり、歩き方と姿勢こそ整ってはいるものの、工廠内の廊下を歩いている間もルナマリアの表情は晴れないままだった。
実妹が嫉妬するほど発育が進んだ胸に手を当て、乳房越しでもその手に伝わってくるくらい心臓の鼓動が強まってるのが傍からでも分かる。
「もうちょっとリラックスしようぜ、今日は機体を受け取るだけなんだからさ」
「ダメ……プレッシャーで心臓が全然落ち着かないのよ……総裁からのメールを見てから」
それは先日、コンパス総裁の身であるラクスからのメールがきっかけ。
内容は端的に言うと、密かに開発を進めていた〝ルナマリア専用のワンオフ機〟である新型MSが完成したので、今日この日に受領してほしいとのこと。
彼女とてザフトではエースの証たる〝赤〟の称号(せいふく)を得て、幾つかの機体を乗りこなしてきたが、自分専用のハイエンドワンオフ機など、今回が初めてである。
「ルナだってワンオフ機乗ったことあるだろ? インパルス」
シンはかつての自分の乗機でもあった《セカンドステージシリーズ》の《ガンダムタイプ》の名と――。
「それでちゃんと乗りこなしてたじゃん」
分離合体機構を有するが故の複雑な機体構造、戦局に合わせた装備の換装、機体性能を最大限に引き出せる専用母艦との同時運用等と、かの機体にはシンも乗りこなすまで訓練で悪戦苦闘した経験もあるだけに、シミュレーションを除けばほぶっつけ本番だったヘブンズベース戦にてルナマリアは自身も〝赤服(ザフトレッド)〟であると存分に見せつけた活躍を切り出すも。
「あれは!シンがお手本になる大活躍をたっぷりログに残してくれたてからどうにかなったの! 同じワンオフでも〝お下がり〟と全くの新品じゃ勝手が違うのよ」
「お、お下がりって……」
確かにインパルスはシンがデスティニーに乗り換えたと同時にルナマリアが乗り継いだので、〝お下がり〟と言われればあながち間違いでも無いのだが、デスティニーがロールアウトした当時でさえまだ〝新型〟扱いだったかつてのもう一つの愛機を実質使いふるし扱いされ、苦笑いするシンの額から冷や汗も一滴流れた。
「大体!私が今っ感じてるこのプレッシャーの原因、シンとステラにもあるんだからね」
「俺たちそんなハードル上げる様なことしたか?ステラは?」
「うんうん……ステラも、全然覚えがない」
顔を合わせるシンとステラの頭上から、疑問符(はてな)が幾つも浮かんでいる中。
「したのよ!まずシンとデスティニーVⅡ(ブイツー)」
「VⅡ(バージョンツヴァイ)だって」
「そこはどうでもいいの!」
シンの訂正はルナマリアの大声で一蹴された。
・シンの場合。
ザフトから出向の形でコンパスに入隊して程なくデスティニーVⅡへと生まれ変わった愛機を受領したシンは、マニュアルを一通り読み、次にハインライン大尉主導で開発した新型シミュレーターで試運転することになった。
「大尉、操縦桿もコンソールも見当たらないのですが?」
見た目はタマゴ状のカプセルで、中に入ると、座り心地はMSのものと変わりなさそうなシートと、ヘルメットぐらいしか無く。
「それを被れば、実戦さながらの模擬戦を体験できる、百聞は一見に如かずだシン、早速やってみなさい」
「は、はい……」
言われた通りに座り、ヘルメットを被ると、視界が閃光でホワイトアウトし、目を開けてみると。
「あれ?」
球状の内壁に包まれたコクピットにシンはいた。
「まさか、これフルダイブ型の仮想空間!?マジのマトリ○クス!!」
自分の格好も前大戦で何度も着たパイロットスーツとヘルメットに変わっており、驚きの熱が冷めないながら、シンはシートベルトを身体に巻いて機体の起動シークエンスを行うと。
「噂には聞いてたけど、完成してたんだ……広い」
初めて《全天周囲型モニター》の、既存のモニターとは比べ物にならぬ視認性の高さと開放感を前に圧倒される中、機体がカタパルトへと運び込まれていく。
その間、モニターにミッションの概要が表示される。
「スペングラー級が四、ダニロフ級が八、後方にオーブ艦隊って、まさか……」
乗機がインパルスだった頃、オーブを出港した直後に起きた戦闘の再演(さいげん)だった。
「〝訓練は相手に勝つ為じゃない、昨日の自分を乗り超えることだ〟――だったな、ならやってやろうじゃねえか!」
指をボキボキと鳴らして両腕を伸ばすシンは、士官学校(アカデミー)時代に教官の一人より聞かされた言葉を思い返し。
「シン・アスカ――《デスティニー》――行きますッ!」
仮想区間で忠実に再現された《ミネルバ》から、デスティニーVⅡが発進。
母艦があの時と同様、左側を突破しようと針路を変えたのを確認し、シンは前方のウインダムの群れを見据える。
ミッションは艦隊を振り切るまでのミネルバの護衛であり、落とされたら失敗となる為《ヴォワチュール・リュミエール》の使用は控え母艦から離れ過ぎぬ様注意し、向こうの敵機はまだ主武装(ビームライフル)の有効射程圏外であると確認すると、デスティニーは背部二門ビーム砲《シュトゥルムアグニ》を肩に懸架する形で構えて照準を定め、発射。
大出力のプラズマ収束ビームの奔流を照射したまま横薙ぎに薙ぎ払い、蒼穹に多数の爆発(ひのたま)が上がった。
「よし!」
こちらの遠距離からの先制攻撃で、ウインダムたちの大半はデスティニーVⅡへと狙いを定め、取り囲んで挟撃しようとするも、《ヴォワチュール・リュミエール》の光の翼をはためかせたデスティニーは残像に頼らずともその加速力と機動性で逆に翻弄し、左側のサイドスカートから《ヴェルシーナ ビームサーベル》を抜刀して二機を切り抜け、左手で右腰の《ヴィーセルナーゲル ビームブーメラン》を取り出し投擲、もう三機を両断し、《ヴォワチュール・リュミエール》の派生技術と量子通信で長距離飛行操作が可能となったブーメランを旋回させつつ。
「〝ビームコンフューズ〟ッ!」
右腕に接着するビームライフルの砲身を展開してブーメランのビーム刃へと放ち、刃はライフルのビームを乱反射して即席のクレイモアとなって周囲にいた敵機を落とし、ブーメランは腰に戻る。
音速を超えるスピードで空を舞い、マニピュレーターを介さずに発射できる接着式ビームライフルの特性を生かし、ビームサーベルを持ったまま中距離からビームを撃ち、近距離ではサーベルの斬撃と掌の《パルマ・フィオキーナ》の青い光線で貫き、先陣のMS隊のほとんどを一分も経たずに落としたシンの耳に、新手の警報が鳴る。
「おでましか!」
カメラをズームさせると、一度はインパルスをフェイズシフトダウンするまで追い詰めた《ザムザザー》がミネルバへと目掛け、巨体に似合わぬ機動力で迫っていた、
デスティニーは〝敢えて〟海面へと降下しながらライフルを連射、当然ながら向こうは《陽電子リフレクター》を張り防御して、すかさずこちらへ極太のビームを発射しようとする。
対するシンは臆することなくザムザザーへ向け急加速、放射されてきたプラズマの濁流を紙一重で躱し、ビームと海面の狭間スレスレを大胆かつ繊細な機体操作で隠れ潜み通り抜け、照射し終えた瞬間に急上昇、太陽を背に躍り出。
《ブリューナク 電磁式パイルバンカーシールド》
逆光で生じた機会(チャンス)を逃さず、左腕の盾(パイルバンカー)で巨体を刺し貫き、ダメ押しのパルマによるゼロ距離射撃――掌底を放ってデスティニーが後退すると同時にザムザザーの巨体は爆発四散した。
「さて、道を開けてもらおうかッ!」
《アロンダイト改 ビームアックスソード》
リアスカートから全長二〇メートルを超すハルバード型の対艦武器を正眼に構え、主翼(ウイングスラスター)を展開して、ミネルバから左舷方向の艦隊へと猛進。
まず直近の空母を下段からの切り上げで糸も簡単に、一刀両断。
片手に対艦武器を携えたまま、続けて光の翼の推進力に遠心力を上乗せし、機体を回転させながら《シュトゥルムアグニ》を照射して巡洋艦らと駆逐艦らを飲み込み。
爆発による黒煙と水蒸気で視界不良となった海上を構わず突き進み、これが実戦なら艦橋にいるクルーたちの視力では捉えられぬ程の強化された愛機の機動力と攻撃力を存分に発揮させて、戦艦たちを沈めていく。
「さあどうする?」
その間にミネルバは、デスティニーが切り開いた道を通り抜け、デスティニーVⅡは、艦の守り手となって《アロンダイト改》を八艘の構えで残る艦隊に威嚇する。
仮想空間とは言え、ほぼ実戦さながらの模擬戦だ。まだ攻撃が来る可能性を踏まえていつでも迎撃できるように身構えていたが、結局向こうは本当に怖気づいてしまったかの様に、撤退していき。
《MISSION COMPLETE》
――と、全天周囲モニター画面にそう表示され、オーブ領海の間際で起きた地球連合軍との戦闘の再演は、シンと《デスティニーVⅡ》の勝利で終わったのだった。
――――
「シミュレーションとは言え、オーブでのあの戦闘と同じシチュで、空母含めて艦船十三隻を三分で落とした結果見た時は自分の目を疑ったわよ!」
「そう言われても……パワーアップしたデスティニーは前のよりもしっくり来るくらい、すんなり動かせたし」
改修に携わったジャンク屋組合の名エンジニア曰く『(シンが)より直感的に機体を操縦できるようチューンしたぜ』の言葉に偽りなく、シンはそれからも文字通り愛機と人機一体となって戦火の悲劇を繰り返させまいと奮闘して今日に至る。
「元よりシンとデスティニーは、ベストマッチなコンビだもんね~~」
「そうそう」
妹同然のステラからの賛辞に、シンは腕を組んでこくこくと誇らしげに頷いて応じた。
「まあシン以外に今のデスティニーを使いこなせるパイロットはいないだろうし、あんなじゃじゃ馬を乗りこなす逸材はアンタくらいなのは認めるけど……」
「じゃあルナもシミュレーターで乗ったことあるの?」
「一応ね、念のため消化のいい食事にしておいて正解だったわ……」
ぐたりと項垂れるルナマリアの様子から、大体の事情は察せられたステラは――。
「じゃあつまり、デスティニーのスピードに着いていけなくて――うぐっ」
――うっかりシミュレーションでデスティニーVⅡに乗ったルナマリアがどうなったかを危うく言って〝年頃の女の子〟の心にうっかりダメージを与えそうになったシンの口を塞ぎ、そのまま首を振って〝それ以上は踏み込まないで〟と彼に警告した。
ステラの旨を理解したシンはもごもごと了承し、自分の口を封じるステラの手が離れる。
「それじゃ次はステラね……」
「え?シンの話だけでルナが今どれだけナーバスか十分伝わったと思うけど……」
「あたしはまだ言いたい足りないの!この際だから《エクレールガイア》の運用試験の時のことも話させてもらうからね!」
新型受領のプレッシャーにまだ苛まれ続けるルナマリアからの小言は、まだ終わりそうにないのであった。
後編につづく。
おかしいな、ルナ専用オリMSの話を書くつもりが、いくら前書きで『シンとデスティニーメインです』としてたとは言え、デスティニーの描写(かつやく)にまた注力してしまった(苦笑
ルナマリアって普段勝気だけど、案外プレッシャーに弱い方なのは、『OMAKE quarters-Vol.4 オーブの夜にサイドF』で判明してますからね、ラクスからのプライベートな女子会に呼ばれたルナのメイリンも呆れるあたふたっ振りは聞いてるこっちは爆笑、さらに妹のボケに突っ込みまくる姉の姉妹漫才に大爆笑www
ルナと言うか真綾嬢のラクスの真似もツボですよねwww