「被告は自分の行動が艦の安全をどれほど脅かしたか、全く理解していません。」
バジルール中尉の冷静沈着な声が右から聞こえる。
「今の発言は類推に過ぎません。議事録からの削除を求めます。」
今度はフラガ大尉の声が左側から聞こえる。
「削除を許可します。」
ラミアス大尉が帽子を深く被り、机に肘をついて正面に座っている。
「え〜〜〜と、そもそも民間人を人質にとると云うのはコルシカ条約4条に抵触すると思いますが…………」
「今回の行動は同条特例項目C、戦時下における措置に相当します。」
「えっ!?特例項目C??知らね〜よそんなの………んんん〜〜。」
ペラペラと本のページを捲る音が聞こえてくる。
「あ〜〜〜しかし、人質を解放したからこそナスカ級は撤退し、我々は窮地を脱したということで。」
「それは結果論に過ぎません。」
「キラ・ヤマトには何か申し開きしたい事はありますか?」
ラミアス大尉のいつもの声より険の入った声で尋ねてきた。
「何故あの様な勝手な事を?」
「人質にするために助けたわけじゃありませんから…………。」
「そうだよな〜。するなら彼女だよな〜。」
ゴスッと隣に座っていたカナデさんの肘打ちが入った。“うごっ”とうめき声をあげながら横腹を押さえている。
「異議あり!」
フラガ大尉の巫山戯た言葉に、真面目なバジルール中尉が些か声を荒げる。
「弁護人は言葉を慎んでください。」
それを受けて、ラミアス大尉も真面目にする様に注意を促した。カナデさんも溜め息を吐いている。
「キラ・ヤマトの行動は軍法第3条B項に違反、第10条F項に違反、第13条3項に抵触するものであり、当法廷は同人を銃殺刑とします。」
言われた瞬間意味が分からずポカンとしたが、理解した瞬間に恐怖が湧き上がり顔が強張るのが分かった。
「しかしこれは軍事法廷での事であり、同法廷は民間人を裁く権限を持ち得ません。キラ・ヤマトには今後熟慮した行動を求めるものとし、これにて本法廷を閉廷します。」
恐怖に支配された頭では続いて言われた言葉を少しだけしか理解出来ずに困惑している。戸惑いが強くて言葉が出てこない。
「要するにもう勝手な事はするなって事さ。」
フラガ大尉は端的に説明すると手に持っていた本を放り投げた。
「そもそも連合にオーブ国民を軍法で裁く権利はない。そんな事になれば、オーブ市民であるキラ君を徴兵し戦わせている事実が彼らの罪だし。それをオーブ政府として問題視せざるを得ない。君の友人は自分からの志願だから問題は無いが君に関しては生死を盾に無理矢理と言われてもしかたないからね。」
肩を竦め、笑いながら言うカナデさんの言葉を聞いて周りに目をやると、ラミアス大尉は目を逸らし、バジルール中尉は渋い顔をして顔をそっぽに向けた。フラガ大尉も苦笑している。
どうやら今回の件が問題になることはないようだ。
「ただし2度目は無いだろう。彼女は鎮圧の名の下に銃を向けてくる恐れがあるからな。」
バジルール中尉をチラリと見、ポンと肩を叩いて退室を促した。居心地が悪い空間から早く出たいと思い、足早に立ち去る。
「失礼します。」
「キラ!大丈夫か?」
部屋を出ると、僕を待っていてくれたのだろう。サイとミリアリアが近寄って声をかけてくれた。
「何て言われたの?」
「お前もトイレ掃除一週間とか?」
「おお〜〜〜、それいいね〜。やってもらおうかな。」
後ろからフラガ大尉がいつもの調子の良い口調で入口にいる僕達を押し退けて部屋から出てきた。
続いて出てきたバジルール中尉は険しい顔をして厳しい視線を向けながら去っていった。規律に厳しい彼女には、こんな事をした僕に対して色々と思う所があるのだろう。
サイ達に笑いかける。
「大丈夫だよ。」
「そっか……。なら俺達だけか………。」
2人が苦笑している。さっき言っていたトイレ掃除って?
「私達、マードック軍曹に凄く怒られたの。“お前達は危険って言葉すら知っちゃいねぇのか〜!”って。」
ミリアリアがマードック軍曹の真似を入れながら叱られた内容を言う。
「ごめん!手伝うよ。」
取り敢えずラミアス大尉の部屋の前から離れながら話をする。
「いいよ。もうすぐ第8艦隊と合流だし、大した事ない。…………カズイがさ、あの女の子との話を聞いたって。」
サイの言葉に困惑と驚きが同居した。あの展望室でのラクスさんと交わした会話を―――あれを聞かれてしまった?
「あのイージスに乗ってんの、友達何だってな………。」
知られてしまった真実の大きさに自身の胸に不安がよぎった。責められるかもと………。
「正直言うと、少し心配だったんだ。」
「サイ…………。」
「でも良かった。お前、ちゃんと帰ってきたもんな。」
サイの嬉しそうな声とミリアリアの顔を見て、自分の胸に暖かいものが溢れる。迷ったがあの時の、自分の選択は間違っていなかった。ここに帰ってきて、こうして仲間達と一緒になれて、本当に良かった。―――この時、心からそう思った。
その会話を聞いていた者の存在に、気付かなかった。
「確かに合流前に追いつく事は出来ますが、これでは此方が月艦隊の射程に入るまで10分程しかありませんよ?」
ガモフの艦橋でイザーク、ディアッカ、ニコルが戦略パネルを見ながら意見を戦わせていた。ヴェサリウスは任された任務“ラクスの捜索、保護”を果たし、ラコーニ隊へ引き継ぐ為の途上であり、アークエンジェルの追尾は合流したガモフに引き継いだのだった。
「10分あるってことだろ?」
「臆病者は黙ってるんだな。」
ニコルの慎重論をディアッカとイザークは、いつものように嘲笑った。
「10分しか無いのか、10分はあるのか、それは考え方ってことさ。俺は10分もあるのに、そのまま合流するあいつを見送るなんてごめんだけどね。」
「同感だね。」
イザークがそう言うとディアッカも同調した。
「奇襲の成否は、その実働時間で決まるものじゃない。」
「それは分かってますけど………。」
なおも難色を示すニコルに、イザークは言う。
「ヴェサリウスはラコーニ隊長の艦にラクス嬢を引き渡したら直ぐに戻るという事だ。それまでに足つきは俺達で沈める。」
華々しい戦果を求めるイザークの強気の言葉が、場を支配した。ヴェサリウスがいないうちに攻めると云う言葉の裏にはライバルであるアスラン抜きでことに当たり、一気にライバルを引き離したいという気持ちが、この強硬論に繋がった。
「いいな?」
「OK。」
ディアッカは一も二もなくイザークの言葉に乗った。
「………分かりました。」
躊躇いがあったニコルも幾分かの逡巡の末、頷いた。
通路を進んでいると、扉の開く音と共に“ハロ・ハロ・アスラーン”と発しながら飛んできた。飛んできたハロを慌てて顔の前でキャッチし、溜め息を吐いた。
「ハロがはしゃいでいますわ。久しぶりにあなたと会えて嬉しいみたい。」
「ハロにはそんな感情のようなものはありませんよ。あなたは客人ですがヴェサリウスは戦艦です。あまり部屋の外をウロウロなさらないでください。」
そう伝え、部屋へエスコートする。
「どこに行ってもそう言われるので、つまりませんの。」
「仕方ありません。そういう立場なのですから。」
ハロと嬉しそうに遊ぶラクスの笑顔に見惚れてしまった。久しぶりに見る心からの笑った姿に。
「アスラン?」
此方の様子に不思議そう顔をして呼び掛ける声に、我に返った。
「あっ、いえ………、ご気分は如何かと思いまして………。その………人質にされたりと色々ありましたから………?」
しどろもどろになりながらもラクスを気遣う言葉を口にした。
「私は元気ですわ。あちらの艦でも、あなたの友達がよくしてくださいましたし。」
「………っ、そう…ですか。」
自分の声に苦いものが混ざるのが分かった。そんな顔を見たラクスが寂しげに笑った。
「キラ様はとても優しい方でした。あなたと戦いたくないと、同じ様な顔をなさっておられました。」
「俺だってそうです!誰があいつと…………。軍人でもないのにあんなものに乗って!あいつは利用されてるだけなんだ!『友達』とかなんとか言われて………あいつの両親はナチュラルだし……だから!」
ラクスは包み込むような青く深い色の瞳で此方を見つめていた。つい彼女の言葉に感情があらぶってしまった。こんなに自分を曝け出してしまった事はなかった。なんとか感情を抑制し、部屋を出ようとする。
「つらそうなお顔ばかりですのね。」
「にこにこ笑って戦争は出来ませんよ。」
冷たく言い放ち、部屋を出ようする。その後ろ姿に声をかけられた。
「アスラン。私、カナデが好きです。」
身体が固まる。身動き一つ出来ない。それでも何か言わなければ思い、大きく息を吐いてから伝えた。
「知っていましたよ。初めてクライン邸で会った時から。」
「アスラン…………。」
「貴女の彼を見る表情で鈍い俺でも直ぐに分かりました。………しかし彼は死んで…………っ!!」
こんな事を急に言い出すなんて………まさかっ!思わず振り返り問い詰めた。
「彼が生きているんですか!…………っ!まさかあのモビルスーツにッ!!」
頭に一つの答えが思い当たった。ヘリオポリスからここまで戦ってきたあの地球軍のプロトタイプのモビルスーツ。あのパイロットなのか。彼女の真剣な表情で幾ばくか平静になった。
「彼はザフトを、プラントを裏切ったのですか?」
「平和への道を探したいと………。」
「平和への道!?地球軍のパイロットとしてザフトのモビルスーツを撃つことがですか!?」
思わず激昂する形になってしまった。あのモビルスーツには数多くの機体を落とされたのだ。
「彼は今オーブの人間として働いています。」
「オーブは中立ではなく地球軍の連合の味方になったということですか?」
「大西洋連邦とプラントの和平の為に第3国にいる必要があると考えているようです。」
「和平?」
「ええ。アスラン、貴方もナチュラルとコーディネーター。何方かが滅びなければならない考えているのですか?」
「そ、それは………。そんな事は考えては………。」
ラクスの恐ろしい内容の発言にしどろもどろに返すのがやっとだった。
「カナデも難しいのは分かっています。しかし互いの妥協点を見つけ、より良い環境を作っていく為に努力しています。」
「私にはよく分かりません。それが正しいのか間違っているか。ですのでこの事は胸に秘しておきます。」
どう言えばいいのか分からない。
「アスラン…………。」
ラクスの表情に影が落ちた。仕方ないとはいえ。
「私はザフトの軍人です。戦場で出逢えば撃たなければなりません。それだけは御理解ください。」
最後にそう言って部屋から立ち去った。キラの事だけで頭が一杯なのに、ここに更にとんでもない事が割り入ってきた。俺はどうすればいいんだ……………。
「色々あったけど、あと少しだね。」
アークエンジェルは月艦隊との合流を目前としていた。様々な困難を経て、やっとここまで辿り着いたのだ。食堂で仕事を終えたサイとカズイは、食事をしながら会話をしていた。
「………僕たちも降ろしてもらえるのかな、地球に。」
避難民達は皆、艦隊と合流した後はシャトルに乗り換え、地球に降りる予定になっていた。それを知っているサイは不安そうに言い出したカズイの言葉に首を傾げた。
「だってほら、ラミアス大尉が言ってたじゃん。『然るべき所と連絡がとれるまでは』とかなんとか。」
「ああ……だから、月艦隊がその『然るべき所』とかじゃないの?カナデさんもいるし、大丈夫さ。」
サイがそう言うと、カズイは納得したように頷いたが、直ぐにまた顔を曇らせる。
「でも……キラは、どうなるのかな………?」
そう言われてはじめて、サイはその微妙な問題に気付いた。キラは―――自分達と一緒に降ろしてもらえるのだろうか。時々キラに対して含む所がある発言をするカズイだが、それだけにキラを仲間としか思っていないサイ達が見落としがちな所に気付いている。
ここまで地球連合軍の最新鋭モビルスーツ“ストライク”を動かしてきたのはキラなのだ。地球軍としては彼を手離したくないのではないだろうか………。
機体の調整をしていると、急に格納庫に警報が鳴り響く。
『総員第一戦闘配置、第一戦闘配置!』
「ラミアス艦長!」
戦闘配置を告げると、皆が慌ただしく動き始めた。俺は直ぐに機体のチェックを終え、発進準備にかかると艦橋のラミアス大尉に通信を入れる。
『キリュウ二佐!発進をお願いします。敵はローラシア級、デュエル、バスター、ブリッツ、高機動型ジン、ジンの5機です。』
敵の詳細も伝えてくれる。作戦を考えて伝達する。
「私がGシリーズを相手する。高機動型ジンはキラくんが、ジンをフラガ大尉で。」
『キリュウ二佐が3機も受け持つのですか!?危険では?』
「安心してくれ。倒そうとまでは思ってないさ。恐らく此方の合流前に強引に仕掛けてきたんだろう。月艦隊でも此方の戦闘の光は確認出来るはずだ。直ぐに此方に向かってくる。」
『分かりました。ご武運を。』
「ありがとう。カナデ・キリュウ、プロトガンダム出るぞ!」
カタパルトから勢いよく機体が躍り出る。そして後方にぐるりと回る。そんな中で通信が聞こえていた。
『キラ、ザフトはローラシア級一、デュエル、バスター、ブリッツ、高機動型ジンとノーマルタイプのジンよ。キラは高機動型ジンの相手をするようにとカナデさんが。』
『キリュウ二佐だ。』
CICのミリアリアの後方から訂正の声が出た。
『す、すみません。―――“ストライク”スタンバイ、システムオールグリーン、進路クリアー、ストライク発進です。』
『キラ・ヤマト、行きます!』
その言葉の後、後方を捉えるカメラに光が映った。ストライクが吹かすエールストライカーのエンジンの光だ。
『第8艦隊も此方に向かっているはずです。持ち堪えて!』
ラミアス艦長の激が飛ぶ。それにしても、やはりすんなりと逃がしてはくれんよな。月艦隊との合流を目前にこんな強引に仕掛けてくるとは。だがここで落とされては、これまでの苦労は水の泡になってしまう。
『イーゲルシュテルン作動、アンチビーム爆雷用意、艦尾ミサイル全門装填!』
バジルール中尉の声で迎撃態勢が整えられていくのを聞きながら敵機に向かっていく。セオリーとして自艦と敵艦の射線上に入らないように進んでいるとレーダーには敵の3機のXナンバーが密集編隊のような形で突っ込んでくる。と見るや3機は一斉に散開する。その空いた空間を白い光条が貫いた。モビルスーツが此方の視界を遮り、ローラシア級の攻撃をギリギリまで隠していたのだろう。
「味な真似をする。」
そう言いながら先頭を進む3機のXナンバーに踊りかかった。3機と激しい戦闘をするも、どうやらデュエルはストライクを相手にしたいようであちらに行こうと隙を窺っているようだ。キラ君が相手している高機動型ジンも、前の戦いで部隊を壊滅に近い状態にされているのか私を相手にしたいようでキラ君のストライクを振り切って此方に来ようとしている。こんな変な形の2対4をするのも予想外の事態が起きる可能性がある。
「キラ君!デュエルをそちらに行かすからジンを此方に寄越せ!」
『でも……!』
「ビームを扱うXナンバーをキラ君に相手をさせるのは不本意だが互いの戦域が近過ぎて、他の敵がそちらに流れるかもしれない。それならデュエルに集中して相手をする方が安全だろう。」
『わ、分かりました!』
「行くぞ。………3、2、1!」
合図の声と共に互いの目的の相手を通す。これで此方はバスター、ブリッツ、ジン・ハイマニューバの3機が相手になる。
ジンに幾度かライフルを撃ちかけようとするとも左右に陣取り此方を攻撃するバスター、ブリッツが攻撃してきて、ジンの接近を許す。振り下ろした剣をシールドで防ぐと接触回線で話しかけてきた。
『クルーゼから聞いたぞ、黒騎士カナデ・ドウジマ。まさか生きていて連合に与するとはな。益々何を考えているのか分からんが、敵である以上は撃つのみ。覚悟しろ。』
ミハエル・コーストの言葉が聞こえてきたが、周囲に注意を払うのは忘れずにいるとブリッツが接近してくるのが分かった。ジンの剣をシールドの表面で滑らすように受け流し、独楽のようにクルリと回転する。その勢いでブリッツの腹部に強烈な蹴りを喰らわせる。吹き飛ぶブリッツと反対方向に流れる機体を直ぐに移動させる。バスターが一瞬の慣性の動きを狙ったのが見えたからだ。
「ぐっ!!」
急加速に身体が軋み、口から声が漏れた。互いに体勢を立て直し、戦闘の仕切り直しになった。まだまだ気を抜くことが出来そうにないようだ。
「くっ!デュエル!!」
さっきからしつこいくらいに接近しようとしてくるデュエルをライフルで牽制し、距離を取ろうとする。それでも強引と言っていい動きで距離を詰め、背中のサーベルを抜き下ろした。
「ここでやられてたまるか!」
呻きながら、ビームサーベルを抜き放つ。それを互いにシールドで受け流す。ビームの粒子がシールド表面の対ビームコーティングに反応し、激しい火花を散らした。
モニターの端にはフラガ大尉のゼロがガンバレルを展開し、ジンと渡し合っている。フラガ大尉が押して入るが決定打は与えられずにいる。
時折、モニターにローラシア級の主砲が映る。それがアークエンジェルに直撃する映像もだ。
今度は眼前でサーベルでの鍔迫り合いを行う。激しいスパークが視界を覆う。その眩しすぎる光源を前にキラの中で何かが弾けた。
振り下ろされるデュエルのサーベルがハッキリと見える。何もかもがクリアにゆっくりと感じられた。デュエルとの距離、挙動、装甲にある細かな疵の一つ一つやストライクのエンジンの細かな出力、計器が示す数値、ビームサーベルが放つビーム粒子の軌跡までもが、全て同時に知覚される。
軽くレバーを捻り、フットレバーを蹴って戻し、また直ぐに踏み込む。ストライクはデュエルの一撃を躱した。同一の動作でサーベルを振るい、一瞬にして退く。サーベルがデュエルの脇を薙ぎ、パッと火花が散った。その動きは先の戦いでブリッツにカナデさんが演ってみせた動きと瓜二つだった。
デュエルが返す刀で逆薙ぎでサーベルを振るってくるも、クルリと機体を回しながら躱し、流れるように腰部に収納されたアーマーシュナイダーを目にも止まらぬ速さで掴み、デュエルの損傷箇所に突き立てた。
激しいスパークがデュエルの機体を走った。そのまま半回転し、デュエルの顔面を殴りつけて吹き飛ばした。
何か決定的な損傷を受けたのか、それきり沈黙する。慣性で漂うデュエルをブリッツが抱えるように離脱していく。
それをキラは激しく息をしながら見送った。急制動と急加速に身体が悲鳴を上げている。大きく息をつき、一度目を閉じた。
『やつら引き上げて行ったぜ!よくやったな、坊主!』
モニターからフラガ大尉の声が聞こえてきたので、慌てて目を開けた。モニターからフラガ大尉が此方を見ていた。急に夢から覚めたような気持ちになり、キラはキョロキョロと辺りを見回した。
―――何だったんだ、さっきのは………?―――
『お疲れ様、キラ君。』
カナデさんの優しく此方を労る声に、疲れが幾らか癒される思いがした。
『凄いやつだよ、お前は。』
疲れてボヤッとした頭で、フラガ大尉の賛辞を受けた。
「ディアッカ、引き上げです!敵艦隊が来る!」
『くそうっ!』
タイムリミットが過ぎたのだ。ニコルが呼び掛けると、ディアッカの毒づく声が聞こえた。少なからず勝算がある戦いがこんな結果になるとは思わなかった。3対1で落とせなかった機体、ストライクと云う機体とイザークが駆るデュエルの1対1の敗北。予想外の結果だった。
それにしても、さっきのモビルスーツ―――ストライクの動きは一体何だったのか?ついさっきまで素人が戦っているのかという戦い方から、急にプロトガンダムのパイロットそっくりの動きを熟してみせた。あの運動性と反応速度、並のものとは思えない。そんな考えをするも、通信から聞こえる声の主に対して、気遣わしげな声をかけた。
「イザーク、大丈夫ですか?イザーク!」
『痛い……いたい………いたい…………』
ずっとデュエルからは、うめき声しか返ってこない。そのただならぬ様子に、一刻も早くとガモフへと急いだ。
次は銀英伝かアオのハコです。
恐らく銀英伝だと思います。