機体を格納庫に収納し、機体から降りると整備兵が寄ってきた。
「お疲れ様でした。」
「機体の補給を頼む。」
そう言うと返事をして、作業の指示を出し始めてくれた。
カタパルトの先端にストライクが着艦したようだ。
被弾していたメビウス・ゼロが先に着艦していた。パイロットはストライクの方に向かっている。私も向かうか。
ストライクの近くに行くと会話が聞こえてきた。
「へぇ〜、こいつは驚いたな。地球軍第七機動艦隊所属ムウ・ラ・フラガ大尉、よろしく。」
「第二宙域第五特務師団所属マリュー・ラミアス大尉です。」
「同じくナタル・バジルール少尉であります。」
「乗艦許可を貰いたいんだがね。この艦の責任者は?」
バジルール少尉が暗い顔をして報告をした。
「艦長以下、艦の主だった士官は皆戦死されました。よって今はラミアス大尉がその任にあると思いますが。」
「えっ!」
「無事だったのは艦に居た下士官と十数名のみです。私はシャフトの中で運良く難を…」
「艦長が…そんな……」
「やれやれ、なんてこった。あ〜兎も角許可をくれよ、ラミアス大尉。俺が乗ってきた船も落とされちまってね。」
「あ、はい、許可いたします。」
問題の少年達、ストライクの足元に居る子供達に視線を向ける。
「で、あれは?」
「ご覧の通り、民間人の少年です。襲撃を受けた時、何故か工廠区にいて、私がGに乗せました。キラ・ヤマトと言います。」
「ふ〜ん。」
「彼のお陰で先にもジン一機を撃退し、あれだけは守ることは出来ました。」
周囲に居た人がざわめいている。
「ジンを撃退した?あの子供が?」
「俺はアレのパイロットになるヒヨッコ達の護衛で来たんだかね。連中は?」
「丁度、司令ブースで艦長に着任挨拶をしている時に爆破されましたので共に。」
「そうか。」
フラガ大尉が呟いてから少年達に近寄る。
「な、何ですか?」
急に迫られて緊張と圧迫感で声が上擦っている。
「君、コーディネイターだろう?」
この場にいる皆の様々な感情が渦巻く状況になった。
「はい。」
キラ君の答えにMPが銃の安全装置を外そうとした。その肩を抑える。
私の顔を見て来たので首を横に振ると銃のセーフティを掛けてくれた。
「止めないか、此処はヘリオポリス。中立国のコロニーだ。」
そう言って少年達の前に出る。
「あ、あの貴方は?」
後ろから私の事を気にする声が掛かった。
「君達の味方だ。少なくとも此処にいる誰よりもね。」
少しだけ後ろに視線をやり、優しく話すとホッとした空気と息を吐く音を感じた。
「君は?」
目の前のフラガ大尉に私の事を質問された。
「オーブ軍より出向しているモルゲンレーテ社所属特別教導部隊兼外国人傭兵部隊所属、カナデ・キリュウ二佐です。」
「あら、二佐殿でしたか。」
「今回の件でOSの調整やモビルスーツでの戦闘、戦術をレクチャーするために派遣されていました。」
「彼の身分に関しては私が保証します。」
ラミアス大尉がそう言って私の事を言ってくれた。
「それと彼らに銃は向けないで。」
「ラミアス大尉。」
バジルール少尉が困惑気味にラミアス大尉に声を掛けた。
「此処は先にキリュウ二佐が言ったように中立国のコロニーです。戦火に巻き込まれるのが嫌でここに移ったコーディネイターが居たとしても不思議じゃないわ。」
「いや、悪かったな。とんだ騒ぎにしちまって。俺はただ聞きたかっただけなんだがね。」
飄々とした口調だ。
「フラガ大尉?」
「ここに来るまでの道中、これのパイロットになる連中のシミュレーションを結構見てきたが、奴らノロクサ動かすにも四苦八苦してたぜ。やれやれだな。」
「やれやれは此方です。民間人の少年達、オーブの民間人に銃を向けようとした事に関しては後々問題にさせていただく。」
「あ、いや、すまなかった。俺が悪かった。」
フラガ大尉の謝罪を受け、後ろの少年達に問うた。
「君達はどうする?彼は謝罪をしたが後日オーブから正式な抗議をしてもいいが?」
「あ、いえ、謝罪してもらえたので大丈夫です…」
「そうか、君達がそれでいいなら不問に伏そう。フラガ大尉、気を付けて頂きたい。」
頭をガリガリと掻きながら軽く頭を下げた。その後、艦に戻ろうする。
「さて、迎撃の準備をしましょうか。」
「大尉、どちらへ。」
「おいおい、外に居るのはクルーゼ隊だぜ。あいつはしつこいぞ〜。こんな所でノンビリしている暇は無いと思うがね。」
彼の言葉に驚愕の表情を浮かべた。追っている敵の部隊は地球軍でも知られている宇宙方面では名の知られた指揮官だ。
「なるほど、クルーゼ隊か。ならこの思い切りの良さも分かる。第二波が来るだろうな。ラミアス大尉、直ぐにでも迎撃準備と補給関係を済ますことだ。そう時間はないぞ。」
私の言葉に事態をやっと飲み込めたのか動き始めた。
「補給物資とストライクの換装パーツ、それから艦の補給物資を集めて!時間がないわ。」
彼女の声を聞きながら私も自分の機体に向かう。補給の確認をしておきたかったので。
そんな事を思っているとフラガ大尉が話しかけてきた。
「お前さん、クルーゼを知っているのか?」
「ザフトの名指揮官、名パイロットくらい知っていますよ。」
「いや、そうじゃなくてアイツの性格まで知っているような。」
私の言葉に違和感を覚えたのだろう。意外と細かく見ているな。
「彼の戦歴、戦果を見れば何となく分かりますよ。私は発進準備を整えます。」
そう言って会話を切り、機体の方に向かう。殊の外、鋭い男だな。
補給は直ぐにでも完了すると報告を聞き、艦橋へと向かった。現在の戦力はアークエンジェル、私のプロト、フラガ大尉のメビウス・ゼロ、虎の子のストライクだ。
どう考えてもゼロはこれから起こる戦闘に修理は間に合わないだろう。となると私のプロトとストライク、アークエンジェルが使える戦力という事になる。
だがストライクを動かすにはとある少年の力がいる。それを使うのか使わないのかの確認をしないといけない。
艦橋に入ると話し合いが始まったばかりのようだ。
「はぁ〜〜、コロニー内の避難はほぼ100%完了しているということだけど、さっきので警報レベルは9に上がったそうよ。」
ラミアス大尉がコロニー公社からの連絡内容を伝えていた。
「シェルターへの避難は不可能ということか。」
「シェルターは完全にロックされちまったか。後は救命艇としてパージされるかこのままということね。」
私が入って来たことに気づいたラミアス大尉が声を掛けてきた。
「キリュウ二佐、機体の状況は?」
「補給はほぼ完了した。直ぐにでも出られる。」
士官3人が顔を見合わせて頷いた。ラミアス大尉が代表して口に出した。
「いざという時はお願いします。」
「分かっています。」
私の返事に安心したのかホッとしたような表情を浮かべた。
「それで、あのガキ共はどうすんだ?」
バジルール少尉もラミアス大尉も意味が分からず、怪訝な表情をしている。
「もうどっか探して放り込むって訳にもいかないじゃないの。」
「彼らは軍の機密を見た為、ラミアス大尉が拘束されたのです。このまま解放するわけには。」
「じゃあ脱出にも付き合ってもらうってのか?出てきゃあド派手な戦闘になるぞ?」
「そもそも4機強奪されたのだ。今更機密も糞もないと思うがね。」
私の発言にバジルール少尉も何も言えなかった。
「ストライクの力も必要になると思うのですけど。」
「あれをまた実戦で使われると!?」
ラミアス大尉の提案にバジルール少尉が驚きの声を上げた。
「使わないと脱出は厳しくない?キリュウ二佐はどう思われます?」
「私としては一機が艦の直衛として残ってくれるなら攻めに出ることも出来る。味方が一機居る居ないは戦況に大きな影響が出るから増えるというなら歓迎する。しかし、ストライクを使うってことは彼を使うってことだ。彼が乗ると言うと思うかね?」
私の言葉に反発心を持ったのかもう一人のパイロットに水を向ける。
「今度はフラガ大尉が乗られれば…」
突然の話にフラガ大尉は大きく手を振った。
「おい、無茶言うなよ!あんなものが俺に扱える訳がないだろう。」
「えっ?!」
バジルール少尉が困惑気味の表情で声を漏らした。
「あの坊主が書き換えたってOSのデータ、見てないのか?あんなもんが普通の人間に扱えるのかよ!」
「なら、元に戻させて………とにかくあんな民間人の、しかもコーディネイターの子供に、大事な機体をこれ以上任せるわけには………!」
その顔には明らかに嫌悪が漂っている。代々の軍人家系の彼女にとって、コーディネイターというだけで憎むべき者、敵となるのだろう。先の時も警戒感を露わにしていた。
実際の所、彼女のような考えを持つナチュラルは多い。コーディネイターの能力の高さを恐れ、憎む心理は十分に理解出来る。なんといっても地球軍の相手は全員がコーディネイターなのだから。
「そんで?俺にノロクサ出てって的になれっての?」
フラガ大尉の言葉でストライクのパイロットは決まった。問題は彼が了承するかだが。
「お断りします!」
彼は怒りを込めて叫んだ。
「キラ君…」
「貴女の言ったことは正しいのかもしれない。僕達の外の世界では戦争をしていて、でも僕らはそれが嫌で、戦いが嫌で中立のここを選んだんだ!それを………」
「………」
私もラミアス大尉も何も言わなかった。言えなかった。中立のコロニーの一学生に急に戦争を戦闘をしろというのは酷な話だ。それも相手はプロの戦争屋だ。肉体的にも、精神的にも、心理的にも、技術的にも拒否反応が出るのは当然だ。
『ラミアス大尉!ラミアス大尉!』
近くの通信端末からラミアス大尉を呼ぶ声が聞こえた。
「どうしたの?」
『モビルスーツが来るぞ!早く上がって指揮を取れ。君が艦長だ。』
「私が!?」
『先任大尉は俺だろうが、この艦の事は分からん。』
「分かりました。では、アークエンジェル発進準備!総員第一戦闘配備!大尉のモビルアーマーは?」
『駄目だ、出られん!』
「ではフラガ大尉にはCICをお願いします。キリュウ二佐、よろしいですか?」
「了解した。」
「聞いてのとおりよ。また戦闘になるわ。シェルターはレベル9で今は貴方達を降ろしてあげることも出来ない。どうにかこれを乗り切ってヘリオポリスから脱出することが出来れば。」
ラミアス大尉の言葉を聞いて、キラ君の友達の不安そうな言葉を聞いてキラ君の身体が震えている。
「卑怯だ、貴方達は!」
「キラ君………」
「そしてこの艦にはモビルスーツは貴方のとストライクしかなくて、今扱えるのは僕だけだっていうんでしょう。」
小さく溜め息を吐いた。
「なら出なくていい。私一人で出ることにする。」
「キリュウ二佐!」
ラミアス大尉の驚く声を無視して、キラ君に近づく。
「恐らく敵は2艦編成のはず。最大6機搭載可能だから12機だ。奪取した機体の積み込みもあるから半分の6機が敵の動員可能数だろう。キラ君が一機を落としたから5機だ。それなら何とかなるかもしれないし、沈むかもしれない。」
「それは……」
キラ君が苦しそうな表情を浮かべている。
「今、この艦を君の友達を守れるのは私と君だけだ。」
「……卑怯です、貴方は…」
「すまない。少しでも確率を上げるには君に犠牲になってもらうしかないんだ。」
「分かり、ました。」
「3番コンテナ、開け〜。ソードストライカー装備だ〜。」
整備班長のマードック軍曹の声が機体に付いている集音マイクから聞こえてきた。
「全システム、オールグリーン。プロトガンダム、起動完了。」
『ソードストライカー?剣か?今度はあんな事ないよな…』
「キラ君、大丈夫か?」
『大丈夫じゃないです。でもやるしかないんでしょ。』
私の心配の声に困った顔をしている。
「君は艦の守りを担当してくれ。敵の攻撃に対応しながら敵を艦の周りから追い払う役だ。」
『接近する熱源2、熱紋パターンジンです。』
『なんてこったい。拠点攻撃用の重爆撃装備だぞ。あんなもんをここで使う気か!?』
フラガ大尉の言葉が耳に入った。
「キラ君、D装備は武器重量のせいで機動性が大きく落ちる。冷静に一つずつ落ち着いて対処すればいい。バルルス改特火重粒子砲はデカい割に出力が低い。シールドでも防御出来る。」
『分かりました。』
『タンデンバウム地区から更に別部隊侵入。』
『ストライク、プロトガンダム発進させろ。』
「先に出るぞ。キラ君、先ずは自分の身の安全をな。」
「分かりました、二佐もお気を付けて。」
こんな時に私に気を使うとは。
「ありがとう。カナデ・キリュウ二佐だ。プロトガンダム、出るぞ。」
そう言って発艦した。
『一機はX-303 イージスです。』
『もう実戦に投入してくるなんて。』
「データの吸い出しが終わったんだろうな。戦力として使って確実に仕留めに来たとみるべきだ。」
『今は敵だ!あれに沈められたいか!』
イージスの方がジンと合わせて4機だ。そちらを抑える。
ジン3機が此方を囲うようにフォーメーションを取ろうとするが一気に距離を詰め、ジンと一対一の状況を作る。重装備が悪い方に出たな。近接戦に移るのが遅い。
「もらった〜!」
そう言って袈裟斬りで一機のジンを両断した。
直ぐに移動し、周囲の状況の確認をするとストライクが一機のジンと一対一になっていた。イージスは後方で様子を見ているのか?
「キラ君、聞こえるか。君はそのジンと一対一をしていてくれ。直ぐに他のジンを片付ける。」
そう言ってアークエンジェルに攻撃をしているジンに狙いを定めてライフルを撃つ。それが右手に持ったミサイルに当たり、誘爆し、撃墜出来た。問題は左手足に付いたミサイルが自動発射モードになっていたのか発射され、勝手に飛んでいき、シャフトに当たった事だ。
「チィィーー。シャフトに当たるとは。」
正面のジンがキャットゥス無反動砲を此方に向けて撃ってくる。
足のバーニアを吹かし、横になった状態で回避し、ライフルを1射して撃墜する。撃った後も止まり続けるな。
キラ君がジンを撃墜したようだ。イージスと睨み合っている。互いに攻撃もせずになんだ?
後はジン2機。後方から私を追ってきた2機のジンが私のライフルで一機を落とし、一機は回避した。だがアークエンジェルの射線に入った為にゴットフリートの餌食になった。
ゴットフリートの威力はジンを撃墜するだけに留まらず、先にあったシャフトにもダメージを与えた。
シャフトが壊れ始めた。これは……ヘリオポリスは崩壊する。