ヘリオポリスが崩壊した。彼方此方に破片が飛散している。
とりあえずアークエンジェルに帰還しなければ。レーダーに反応は無い。熱を持つ物体が多くあり、レーダーの反応が悪すぎる。カメラでアークエンジェルを発見するために移動する。大きな破片だらけの為に移動が面倒だか直ぐにアークエンジェルが見つかった。
『キリュウ二佐、良かった。無事だったのですね。』
アークエンジェルからラミアス大尉の通信が入った。心配そうな顔に声音をしている。やはり彼女は優しいな。
「ラミアス大尉、私は無事だ。ストライクは?キラ君はどうなった?連絡は?」
私がラミアス大尉に訊ねると顔色が悪くなった。
『今、バジルール少尉が通信を入れています。ストライクの反応はありませんが…』
「そうか。とりあえず帰還する。カタパルトを開いてくれ。」
『了解しました。カタパルト解放。』
CICに指示を出し、カタパルトが開いていく。ゆっくりと機体を向けて、着艦する。
「おかえりなさい。補給、始めますね。」
機体を固定し、コクピットを開くと整備兵が顔を覗かせて声を掛けてくれた。
「ああ、頼む。それと次からは宇宙空間での戦闘になる。悪いがエールストライカーの用意を頼む。」
そう伝えると、了解しましたと言ってくれ休んでくれと伝えてくれた。
機体から降りるとストライクが丁度着艦したところだった。何か抱えている。避難船か?
何で艦に持ってきた?放っておいたらオーブや月面都市、近隣コロニーの救助艦隊が数日中に来るのに……
この艦はこれからも戦闘になる可能性が大だ。そんな艦に民間人を乗せるなど危険な目に会わせに行くような。
そんな事を考えながら民間人の収容を少し遠くから見守っているとキラ君が人の名前を呼んだ。その女の子がキラ君に飛び付いた。
どうやら知り合いが居たようだ。とりあえず声を掛けるとしよう。そう思い、地面を蹴ってキラ君達の方に向かって跳んだ。
「キラ君。」
そう声を掛けて背中に手を差し出し、背中の移動用スラスターを軽く吹かして停めてあげる。
「あ、カナデさん。」
「無事で良かった。大丈夫だったかい?」
「は、はい……なんとか。」
少し暗い顔をしている。初めての本格的な戦闘にヘリオポリスの崩壊だ。色々とあったのだろうな。肉体的にも精神的にも疲れたのだろう。
「彼女は友達かな?」
「あ、はい。フレイ・アルスター、サイの、友達です。」
「そうか、なら早く彼らに会わせてあげるといい。少しは安心するだろう。」
私の言葉に彼女が驚きの声を上げた。
「えっ!サイがいるの!?」
「う、うん。サイやミリアリア、トールにカズイも。」
慌てたように答えるキラ君に苦笑し、軽く入り口に向かって背中を押してあげる。2人が入り口に向かって移動しているのを確認してから背中のスラスターを作動させて私も入り口に向う。
2人が友人達と感動の再会を果たした後、キラ君を誘って私の部屋に向かった。少し話したい事がある。
「キラ君、飲み物は、何がいい?水にコーヒー、紅茶にスポーツ飲料しか無いが?」
「あ、いえ。お構いなく。」
そう言って遠慮しようとするので小さな水のボトルを放おった。
「ナイスキャッチ。戦闘で緊張したはずだ。水分を取っておいたほうがいい。少しは緊張が解れる筈だ。」
「ありがとうございます。」
そう言って遠慮がちに水を口に運ぶと緊張が解れたからか一気に水を飲んだ。そして大きく一息吐いた。やはり緊張と疲れがあったのだな。
「あの。それで話ってなんでしょうか?」
恐る恐る私に訊ねてきた。
「あの赤い機体。イージスのパイロットは知り合いかい?」
私の発言にキラ君の全身が固まった。
「その様子を見るに図星かな?」
「………」
キラ君が何も言わずに俯いている。
「仲が良かったのかい?」
「はい、幼年学校からの親友で家族ぐるみで付き合いがあったんです。でも連合とプラント間に緊張が高まるとプラントに引っ越しちゃって。」
「そうか、仲が良かったんだな。」
「はい………」
何て声を掛けようか悩み、沈黙しているとキラ君がおずおずと尋ねてきた。
「あの…何で分かったんですか?」
「ふぅ。君とイージスのパイロットはまともな戦闘に入らずポジションチェンジを繰り返していた。牽制の射撃、近接戦の鍔迫り合いも無くだ。端から見れば何かあると思うさ。」
「そうですか……」
「友達を撃つことなんて出来ないだろう。次の出撃からは出なくてもいいんだぞ。今回の戦闘で相手のジンは無い筈だ。後はシグーと奪われた4機。次はフラガ大尉のゼロも出れるかもしれない。そうなると5対2だ。アークエンジェルに1機担当してもらい、私が3機、フラガ大尉で1機で計算は合う。」
キラ君が心配そうな顔をしている。
「でもそれは、本当に大丈夫なんですか?」
「私もキラ君と親友が殺し合うのは見たくないし、やらしたくない。」
私の親友と殺し合うにショックを受けたのだろう。愕然とした顔をしている。
「アスランが敵………」
ん?
「今、アスランと言ったのかい?アスランとはパトリック・ザラの息子のアスラン・ザラ君かい?」
私の言葉に驚愕の顔をしている。
「アスランを知っているんですか!?」
「別に隠すほどの事でもないから伝えるが私は元はザフトのパイロットだった。その縁で彼を知る機会があったんだ。彼は真面目な好青年だ。そんな彼と君が別の陣営に分かれて戦うなど何て運命の皮肉か。」
首を横に振り、この状況を嘆いた。尚更彼を戦わせる訳にはいくまい。
「キラ君、止めておいた方がいい。アスラン君は君を討たないかもしれないが他のパイロットは君を容赦無く討とうとするだろう。」
「それは…でもっ、………」
様々な思いが心の中で入り乱れているのだろうな。
「アスラン君の友人が君を討つか君がアスラン君の友人を討つことになるがそれでもいいのかい?」
「………」
「その覚悟がないなら止めておいた方がいい。」
キラ君がバッと顔を上げた。目に涙を溜め、顔がクシャクシャに歪んでいる。
「でもこの艦にいる皆を守らないと。皆を守る為に戦えってカナデさんは。」
悩みながらも決めたのだろう。なら少しでも状況を良くしないといけないな。
「キラ君、アスラン君は君を殺そうとすると思うかい?」
「いえ……」
「なら君はアスラン君を、イージスを引き付けてくれたらいい。適当に射撃し、鍔迫り合いをし、互いに安全第一に時間を使ってくれたらいい。」
ポカンとしている。私が言ったことを上手く頭で理解出来ていないようだ。
「そうしてくれると私も幾分か楽に3機の相手を出来る。次がどういう作戦になるか状況になるかは分からないが。」
「分かり、ました。」
幾分戸惑いがちに頷いてくれた。話は終わりと一段落着いた時に部屋の通信端末がピーピーと音を立てた。
傍に寄り、受話ボタンを押すとラミアス大尉が画面に映った。
「キリュウ二佐、次の行動について話し合いたいのですがブリッジにお越し願えるかしら?」
「分かりました、直ぐに向かいます。」
そう私は返事をし、通信を切った。
「キラ君、とりあえず今は休みなさい。次が何時戦闘になるか分からない。休める時に休むように。」
私の労りの気持ちを理解してくれたのかハッキリと返事をした。連れ立って部屋を出て、部屋の前で別れた。
艦橋に入ると話し合いが行われていた。と言っても尉官のラミアス大尉、フラガ大尉、バジルール少尉の3人で話し合っている。
「キリュウ二佐、戦闘後直ぐにわざわざお越し頂いてごめんなさい。」
ラミアス大尉が労りの言葉を掛けてくれる。
「いや、気にしないで下さい。このような状況下です。次の行動指針を決めようとするのは当然の事です。」
私が気にしないでくれと声を掛けると3人が顔を見合わせ頷きあった。
「さっきまで3人で話し合っていたのですがユーラシアのアルテミスに寄港するのが現実的な案だとバジルール少尉が……」
ラミアス大尉が私に告げ、バジルール少尉の顔を見た。
「ここから一番近い地球軍の拠点はアルテミスですがアークエンジェルは船籍登録も地球軍の認識コードもないのだろう?」
ラミアス大尉が私の事実確認に戸惑いながら頷いた。
「今回の計画は大西洋連邦の極秘計画でした。ザフトに大半を奪われたとは云え、虎の子のストライクにアークエンジェルがあるんです。データの吸い出しや接収も十分に有り得るかと。」
私の個人的推測にバジルール少尉が激昂したかのように反論してきた。他の2人は有り得ると思ったのか頷いている。
「ユーラシア連邦は同朋です。大局的見地から補給、支援を受けれる筈です!」
彼女が言い募る程に此方が冷静になるのは何故かな?
「政治的にも軍事的にも齟齬がよく生じていると聞いているが?」
「それは!互いに色々あるので致し方ないことかと…」
「今回もそうなるかもしれないが?」
私達の話し合い?言い合いを止めるようにラミアス大尉がおずおずと私の意見を聞いてきた。
「キリュウ二佐はこの後の航路をどう取りますか?」
「私ならアルテミスにデコイを射ち、地球スイングバイにて月面の地球軍大西洋連邦本部を向かうと見せてそのまま地球に降下はどうかな?現在地から地球を挟んで反対側にある月へ向かうよりは近い。」
「その食料に関しては非常糧食もあるので問題ないのですが水は喫緊の問題になります。整備にも飲料にも使わざるを得ないので。」
ヘリオポリスで十分な補給は出来なかったのか。
「ラミアス大尉、どれくらい持つ予定だ?」
「概算ですが地球到達まで若干足りないかギリギリの線になります。」
溜め息が出た。なら道は2つかアルテミスに向かうか地球に降りるか。どちらも決め手が無いな。
「ラミアス大尉が決めてくれ。」
私の言葉に困惑の顔をした。まあ確かにこんな状況下で決めろと言われて困るのは分かる。
「ではアルテミスへ向かうことにします。物資の不安の解消とアルテミスから月の地球軍本部との連絡を取ることにします。」
ラミアス大尉が我々に了承を取る為の視線を此方に向けてきた。3人で顔を見合わせてラミアス大尉を見て頷いた。
「アルテミス迄、2時間のサイレントランか。後は敵がどう出るか、運だな。」
フラガ大尉の言葉にラミアス大尉、バジルール少尉が顔を強張らせた。初陣みたいな士官2人には些か荷が重いか。
戦闘準備は出来うる限り万全にしとかなければな。