俺の心がドレスを着ろと告げている   作:三白めめ

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A:色々な幻想体に作業して、価値観のランクを上昇させます。


Q:給料を上げる方法

 ウェルチアースに外郭まで飛ばされた原因である、クリフォト抑止力が低下した事故だが。

 隔離室を増やす工事に起因する事故だった。というのも、ワークショップを無事に終え、管理作業の体制が評価されたのだろう。新しい幻想体が入ってきたり、逆にいくつかの幻想体を他の支部に輸送することになっていた。そうした作業中に事故が起きたらしい。福祉チームの権限でインシデントのレポートを見れた。

 

 ということで、ゲームの舞台であったロボトミーコーポレーション本社のように、隔離室が4つになったわけだ。つまり、俺が"溶ける愛"以外の管理作業もできるようになったことを意味している。

 とりあえず、作業効率の上昇のために"溶ける愛"に愛着作業。口に出せるのは簡単な単語の一つや二つが限界なのもあって、遊び相手になるのが仕事になっていた。

 

 管理作業終了。続いて、新しく入ってきた幻想体の方はというと……

 

「なるほど、番号では流石に分からなかったけど。陰か」

 

 首が締まる……いや、呼吸ができないと形容した方が適切か。そのペンダントは、見ているだけでも周囲に憂鬱を浸食させる。

 そして、憂鬱は水をモチーフに取ることが多い。E.G.Oであればファウストやドンキホーテの水袋が例として分かりやすいだろうか。ねじれであれば、そこから海水か淡水、血の水といった水質で詳細を類推可能らしいが……

 閑話休題。この幻想体、"陰"も脱走時には魚の性質を取る。泳ぎ出る、と形容されていることからもそうだ。故に、洞察作業ではペンダントの清掃の他、湿気の除去といったことも必要になってくる。

 

『我はなぜ存在するのか』

 

 魚が跳ね、水を叩くような幻聴。それに伴い、声が伝わってくる。……陰、頭に直接対話を伝えてくるタイプだったのか?

 

「自身が今在る理由が分からなくても、そこにいるだけで素晴らしい。存在するというのはそういうことじゃない?」

 

 結局、なんで生きているのかなんてわかる人間はいない。ワープ列車で会ったジョバンニだって、本当の幸いなんて知らないって言っていた。存在意義の話であれば、鯨の時に俺は答えを出している。結局、ときおり振り返ってはその足跡を愛するのだと。

 

『憂鬱、破壊。混沌であるが故に我は調和に向かい、分かたれたものは回帰せねばならない』

 

「けれど、それは自分を消すわけじゃない」

自らを世界から消すことなんて、誰にもできないもの。鯨だって、人魚には同じものを見つめさせているというだけ。領有することと、一つになることは違うわ

 

 それに、もとより。この都市に巡る苦痛も、光も。俺は全てを愛している。だから、実のところ。この幻想体だって、最初から嫌っていなかったりする。他の職員たちと違って。

 

『両義なりし者。汝の答えか』

 

ええ、そうね。それが私たちの提出する回答」

 

 あと、"陰"はあまりにも下手なことをしない限り脱走しないので好きだ。悪い作業結果を出さない限りクリフォトカウンターが下がらないし、カウンターが2あるのは普通に良心的だと思う。

 それに比べて"陽"の方は微弱すぎるメリットしかない上に着けたまま放置もできないので嫌いな部類に入る。

 

 息の詰まる感覚が薄らいだ。作業終了。肯定的な反応を得られた、ということでいいだろうか。隔離室から出れば、左耳には今まさに作業した幻想体のような耳飾りが付いていた。

 

「不調和のギフト」

 

 そういえば、"溶ける愛"のギフトは俺自身のE.G.Oであるハーロットに統合されたみたいだ。光が撒かれていないので原型として使ったのだろう。そんなわけで、ギフトの装着部位が競合することなく、こうして陰のE.G.Oギフトを身に着けていられる。

 

 少し俺自身の内に集中してみたわけだが。これ、鯨の方とスイッチするのにいいかもしれない。ワープ列車では、ハーロットを長時間使用して精神をちょっと不安定にする方法を使っていたが。流石にそれは不確実性を信じすぎている。

 普段表に出ていない鯨の方の本能が"陰"と相性良好らしく、ギフトである"不調和"に意識を集中させればそちらを表出させられることが分かった。

 

 翌日になって分かったのだが、鯨の方の俺は"陰"のE.G.Oウェポンに凄まじく適性があった。具体的には、"陰"が脱走時に出す断続的な波動に加え、レーザーが直進した範囲への広域爆発を出せる。レーザーを出すには足を止めなければならないことに加え、ブラックダメージの爆発は味方も巻き込まれるというデメリットもあるが、元から俺は単独行動なので問題ない。

 それに加えて、侵蝕がかさむと鯨の能力が強く出るせいで酸性の霧も放出しだす。ダメージ区分としてはレッドダメージだ。……鯨にとっての仲間は人魚なので、ほぼ無差別攻撃になるのか。

 

 そんなわけで、更に単独行動に磨きがかかった。"溶ける愛"で自制のランクを上げて、"陰"で勇気、知恵、正義のランクを上げる。そうした管理作業の繰り返しで、価値観検査ではついに全てのランクが最大になった。それに伴う昇給審査も通って、管理職として以外の庶務のボーナスも含めばかなりの給料が貰えるようになっている。

 ……同僚とのコネクションという意味では、一緒に鯨を倒したゼペットチーフと、福祉チームチーフのエルフ先輩しかないが。

 他の部署の鎮圧支援に行って、同僚と肩を並べて戦ったりとか。そういうことはない。というか、ここの支部で戦うより勤務外でトラブルに巻き込まれて戦うことの方が多い気がする。試練がなければこんなものなんじゃないかと思うが……

 そうして数日ほど仕事をこなしたときのことだ。エルフ先輩から声をかけられた。

 

「指揮チームのアロナちゃんから、メッセージです~。ネロちゃんは明日の管理作業で、"溶ける愛"に作業をしないでくださいね~」

 

 なんか、やけに変わった伝言だ。指揮チームからっていうのも珍しい。

 

「どうやら~、故意に幻想体を逃がしてから鎮圧するらしいですね。そうそう、火の鳥って名前です~。WAWランクの幻想体なので、気を付けてください~」

 

 その言葉と共に、管理方法などの纏まった文書が渡される。……なるほど、武器獲得チャレンジか。気分が高揚してきた。

 

 

個人的な日記 記録者:ネロ

無事に支部に帰還。新しい幻想体も入っていて、新鮮な気分での仕事だった。……一応、他の管理職に聞いたところ、陰は別に声をかけてきたりしないらしい。相性がよかったのだろうか。




ネロ(鯨)
"陰"のギフトとE.G.Oウェポンを装備した姿。得意技は無差別攻撃。レッドダメージの酸性霧とブラックダメージの波動を断続的に展開しつつ、撃った範囲が爆発するレーザーを放つ。だいたい災害。普段は抑制されている本能かつ、鯨(水に関連する存在)ということで、果てのない憂鬱を与える"陰"と相性がよかった。
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