初手射殺から始まる殺し屋生活   作:有明海のメスガキ

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深夜のテンションで書いたから雑かもしれない。

オリ主、もといこの小説の主人公くんちゃんの視点は一人称。
その他はみんな三人称。

文書くの楽しいけど難しいンゴねぇ


1日目

『シンエイ』

 

諸外国との貿易の要として発展を重ねていったこの都市は、国でも有数の、栄えた歓楽街のある都市としての顔も持っている。

そのため当然、夜も都市の明かりが消えることは無く、今日も歓声や悲鳴、怒号と、至る所から人々の声が聞こえていた。

 

そんなシンエイのとある通りにて、彼らは歩いていた。

 

ガタイのいい大男と、それに比べると細い男。そしてそれらを従えるように真ん中を歩くメガネの男だ。

3人とも、特に真ん中の男は仕立ての良さそうなスーツを着ている。

 

彼らは何か気に食わないことがあったのか一様に眉を吊り上げ、眉間にシワを寄せていた。

 

そんな明らかにカタギではない男達が、その上不機嫌そうな顔をしているので、絡まれては堪らないと、道行く一般人たちはサッと目を逸らし端に避け、男達が過ぎ去るのを祈っていた。

 

『ロウン会』と呼ばれる組織がある。

 

この組織を一言で説明するなら、マフィアだ。

 

シンエイに存在する夜の街を裏で牛耳り、麻薬の密売や人身売買、闇金、その他様々な犯罪行為に手を染めている。

シンエイの犯罪は元を辿れば大体ロウン会に行き着く、なんて言葉もあるほどだ。

 

歓楽街に通う人間であれば、ロウン会の名前を知っているのは当然で、知っておくことは身を守ることに繋がる。

 

シンエイにおいて、カタギではないなと思える人間が歩いていれば、それは基本的にロウン会の人間だ。

なんせシンエイには、ロウン会以外のマフィアはいないのだから。

 

そしてその例に漏れず、その3人組はロウン会の組員であったし、さらに言えばメガネの男『カセル』は幹部であった。

 

「にしても気に入らない」

 

カセルがそう口に出した。

 

「ほんとですよ、調子に乗ってやがるあの女」

 

それに同調するように細身の男が答える。

 

「しかし、手を出すのは……」

 

イラつきを強める2人を宥めるように大男も口を開く。

 

「あぁ、分かってる。ボスからは手を出すなとの命令だ」

 

メガネを押し上げ、短くため息をついた。

 

「まったく、あちらの失態だと言うのに……」

 

「まあ、あの女ごとき、ボスならどうとでも出来るはず。気を伺っているのでしょう」

 

「そう、なんだろうが……。ボスも言葉が少ない。せめて説明して欲しいところだな」

 

「そうですね……」

 

何を話しているのか分からないのは当然だ。そうなるよう、情報を絞りながら彼らは会話をしている。

 

完全な証拠が表に出てないとはいえ、もはやロウン会が犯罪組織なのは周知の事実だ。どこで警察や別の犯罪組織が耳をすませて、失脚の機会を窺っているかわからない。

 

ロウン会のボス『ハールゼン』は情報の強大さをよく組員に説いており、彼らはたしかにそれを守っている。

それはロウン会のボスに人望がある証拠でもあった。

 

しばらく、イラつきを紛らわすように談笑していた彼らは大通りから逸れ、路地へと入っていった。

 

「そういや今度、オークションがコガルマであるらしいですよ」

 

細身の男が思い出したように言った。

ちなみにコガルマはシンエイから西に行くとある都市だ。

 

「ほぉ、何が出るか聞いてるか?」

 

「たしか、例の生き残りがどうこうって話です」

 

男達の話すオークションとはもちろん、闇オークションである。

コガルマでは定期的にオークションが行われるが、それと同時に盗品や奴隷などを取り扱う闇オークションが開催されていた。

細身の男がいう生き残りとはつまり、人間であった。

 

「行ってみるか……」

 

カセルはニヤリと口角をつりあげ、嗜虐的な笑みを浮かべる。

どんな奴隷が居るんだろうか、女がいれば買おうか、と、自身が女の奴隷で遊んでいる姿を想像し、さらにその笑みを深めた。

 

「ん?」

 

進んでいるとふと、大男が声を上げて立ち止まった。

 

「なんだ?」

 

それにつられてカセルと細身の男も立ち止まり、大男の方に目線を向ける。

 

「いえ、あれ……」

 

大男がその太い人指し指を路地の奥へと向け、またそれに倣うように2人も目をやった。

 

「……人か?」

 

そこには、女と思われる人影が立っていた。

 

夜の路地という、月明かりのみが光源として機能する視界により、全身を見ることは叶わない。

しかし長い髪と、ダボッとしたTシャツを着ており、大きくはないが胸の膨らみを辛うじて確認出来たことから、軽装の女だと判断した。

 

「そこで何をしている?」

 

カセルがそう女に問いかけ、警戒しつつ近づいていく。

それに対し女は返事をせず、ただ虚ろな目で宙を見つめていた。

 

腰に挿した銃に手を伸ばしつつ、ハンドサインで後ろの2人にも戦闘態勢を取らせた。

 

男達がこの路地に入った理由は、ロウン会のビルがその先にあるからである。

 

歓楽街として急速に発展した歴史からか、シンエイには雑多で無理やりな建築が多い。その代償として路地は行き止まりや曲がり道などが多くなってしまい、今や迷宮の様相だ。

 

この路地は大通りから入ると脇道などが多く迷いやすいが、ロウン会ビルのある場所から進むとほぼ一本道という、組員専用の道ともいえる路地になっていた。

そんな路地に立っている、見知らぬ女である。それを警戒しないわけがなかった。

 

「おい!」

 

返事がないため慎重に近づくと、ようやくその顔が確認出来た。

 

美しい、とカセルは率直にそう思った。

 

女は、まだあどけなさを感じる少女だった。陶器のような白い肌に宝石を思わせる綺麗な瞳、月明かりでもわかる艶のある髪の毛と、まるで女神のような容姿であった。

 

途端に、男の持っていた嗜虐心が声を上げる。

 

カセルは、美しい女の顔が歪むのが好きという致し難い性癖を持っていた。

 

この少女はムチで打てば、爪を剥げば、熱い鉄を押し当てれば、どんな顔をするだろうか。

ああ、オークションの前に良いものが手に入りそうだ、と思わず唇を舐める。

 

そしてその完成された美しさに目を奪われたのは、他2人も同じだったらしい。

 

思えば、こんな軽装で立っている女を警戒する方がおかしいというものだ。

おそらく、道に迷い込みでもしたのだろう。

 

そう考えて安易に銃から手を離し、伸ばそうとしたところ。

不意に、少女の目に光が戻る。

「──ッ!?」

 

突如として寒気が背筋を襲い、裏社会で養ってきた危機感が警鐘を鳴らす。

 

後ろに下がろうと足に力を込める。

 

しかし、もう遅かった。

 

バン! バン! と乾いた音が連続で鳴り、残響音が路地に響く。

 

「え?」

 

カセルの口から無意識に声が漏れる。

 

振り上げたことによって月明かりに照らされ、暗がりで見えなかった少女の右手が確認できた。

 

それは銃だった。

 

鈍く輝く銃口から煙が昇る。それはつまり──。

 

咄嗟に男が右を見ると細身の男は立っておらず、下を見やれば眉間に穴を開けた死体があった。

同じく、左を見やればそこには大男の代わり果てた姿があった。

 

「な──ぐ、ぁぁぁああ!!」

 

言葉を発する隙すら与えられず再度銃声が響き、カセルの両膝に激痛が走る。

脚から力が抜け、重力に従って崩れ落ちるように地面に這いつくばった。

 

「ぁぁ、ぁあああ……」

 

痛みに脚を抱え、庇うように動くが、少女がそれを許さない。

しゃがみこんでカセルの髪の毛を掴むと、強引に自分の目線の高さまで持ち上げた。

 

「なあ、聴きたいことあるんだけど」

 

声すらも美しい。

 

そんなことをほんの少し前なら考えたかもしれないが、今の男にそんな余裕はなく。

痛みから呻くことしか出来なかった。

 

「はぁ……」

 

少女はため息を吐くと銃口をグリグリとコメカミに突き付ける。

 

しかし声にならない声を上げるばかりだ。

 

仕方ないと、膝を抑えていた腕を撃つ。

 

「ッ、ぁぁぁああああ!」

 

そして再びコメカミに突きつけて問う。

 

「死にたいか?」

 

そう尋ねるとさすがに死にたくはないのか、涙を流しつつも、痛みを我慢した。

 

「じゃあ──」

 

それから始まった少女の質問は、常識的なことばかりだった。

ここはどこなのかとか、使っているのは何語なのかとか、そんなレベルの。

 

ひと通り聴きたいことは聴いたのか、少女はふむ、と呟いた。

 

ロウン会に恨みを持った人間、とかではないのか?

 

痛みに慣れてきたカセルは、少女の質問からそう推測した。

 

まるで、この世界じゃない場所から来たみたいだ、とも。

 

魔力や位階のことすら知らないなんて、普通に生きていれば有り得ないだろう。

 

「……は、はは」

 

カセルの口から思わず笑い声が漏れる。

 

こいつはすでに、ロウン会の人間を2人殺している。それに銃声だ。あの大きさの銃声ならアジトからも聞こえるはず。そうすれば確認に来る。そうすればこいつは終わりだ。

 

カセルはそう考えた。

 

「……おーい、気でも狂ったか? 」

 

呑気にそう宣う少女に、内心笑みを深めた。

時間稼ぎすればこちらの勝ちだ。

そう結論づけ、話を引き延ばそうと画策する。

 

「……なんで、殺した?」

 

引き延ばす話題として、すぐに思い浮かんだのは手下のことだった。

カセルにとって手下が死ぬのは別に珍しいことではない。裏社会で人が死ぬのは日常茶飯事のことだ。

しかし、数年行動を共にしてきた間柄であったのだ。

故に、知らずのうちにふたりに愛着を持っていたのだろう。

話題を引き延ばす目的以外の感情も、この質問には含まれていた。

それに対し、少女はなんでも無いように答えた。

 

「なんでって、聴くのに3人も要らんからな」

 

正直、カセルはその質問をしたことを後悔した。

そう答えた少女の瞳は、まるで虫を見るように冷たいものだったからだ。

 

まるで虫を殺すような感覚で、2人を殺したのだ。

 

それを認識し、怒りと、それ以上に恐怖が襲いかかってきた。

 

ヒュ、と喉がか細い音を出し、思わず唾を飲み込む。そして無言の時間が生まれた。

それはつまり、作戦の失敗を意味していた。

 

「話は終わりだ」

 

少女は話を切り上げる。

これでは時間稼ぎが!

 

カセルはあわてて口を開こうとするが。

 

「まっ「じゃあな」た──」

 

それよりも先に地面に叩きつけられ、男はその生涯を終えた。

 

 

#

 

 

ぐしゃり、と叩きつけた男の頭が生々しい音を立てた。

 

「うわ」

 

手に付着した大量の血を見て思わず、そんな声が漏れる

 

跳ねていないがと服を見るが、Tシャツにも短パンにも、血はついていないようで安心した。特にこのTシャツはお気に入りなのだ。

 

手を拭きたいところだが、こんな軽装の俺がそんな拭けるものを持ってるはずもない。

てか財布もスマホも無くなってて、持ってたのはなんと銃だけである。

 

仕方なく男のズボンやらスーツやらを漁ってみる。

ヤクザっぽい衣装ではあるがスーツなのは間違いないので、最低限のマナー的なものなのか、メガネの男はハンカチをちゃんと持っていた。

 

ついでに腰に銃もあった。

 

ヤクザ風に言うとチャカか? よく知らんけど。

 

「感謝感謝」

 

南無南無と死体3つに向けて手を合わせる。

 

ハンカチで手をゴシゴシしてある程度血が取れたのを確認する。

血が固まってしまったのか、ちょこちょこと手のひらのシワに赤いものが残ってしまっている。

まぁ、よく見ないとわからないレベルだし良いか。

 

諦めて血付きハンカチを返すついでに、3人の財布からお金を貰っておいた。

 

全員それなりに持ってて、俺の所持金は0円から15万円である。

時給15万。ボロい商売だ。へっへっへ……。

 

いかにも悪そうな顔をした心の中おっさんがにちゃにちゃとしたキモい笑みを浮かべている。

 

「にしても、金は円なのに、シンエイやらバベル? やら聴いたことない地名ばっかだったな……」

 

男に聴いた内容を振り返ってみる。

 

とは言っても正直よく分からなかった。

 

血を流しすぎて頭が回ってなかったのか、言ってることはチグハグで、単語と単語が繋がってなかったりしていたのだ。

 

そんな中でわかったことをまとめると、

・『バベル』という世界の中心とされる塔がある。

 

・この街の名前は『シンエイ』である。

 

・ここらで出回ってる金は円で、価値は日本と同じ。

 

とかだろうか。

 

内容うっす!

でも仕方ないじゃん、メガネさん死にかけだったんだから。

最後らへんなんか笑ってたし。こわ。

 

「唯一確定してるのは、少なくとも俺の知る地球じゃないってことだな」

 

それに男の言うところ、この世界には魔法があるらしい。

 

魔力? がどうとか位階? がどうとか言ってた。

 

ふざけてんじゃねぇよ、俺はそんな作り話聴きたいわけじゃねぇ、と思わず殴りそうになったが、男の顔からしてふざけているわけでは無いようだった。

 

分からないのは聞き覚えのない『位階』というやつだ。

いわゆる人間の強さの指標のようなものであることは何となく察せたのだが、その後2万、4万とか突然数字だけ言ってきた。

人の名前とかも出してくるけどそれ以上の情報がなくて埒が明かないから質問を止めた。

 

まあ手足撃たれてるのにあそこまでの作り話を咄嗟に作ってたとしたら、もう尊敬レベルよ。

 

「俺はお前を信じるぜ、メガネ……」

 

回想をいったん区切りあたりを見回すと、壁には配管らしき管があり、さらに暗くて見えにくいが、奥の方に室外機が確認できた。

 

つまり、少なくとも現代風の世界であることは間違いない。

 

それと今までスルーしてたけど、なんかTSしてる。

 

短髪だったはずなのに髪の毛が肩甲骨あたりまで伸びてるし、小さいけど胸に膨らみがある。揉むと柔らかい。

 

そして股をワサワサしても、息子がいない。

 

なんと、俺は地球に息子を置いてきたらしい。

 

ちなみにこの世界の名前は『アース』らしい。

 

つまり地球では? 並行世界的な感じだろうか。

 

だとしたら俺の息子が単体で存在する可能性出てきたな……。

 

「きっしょ」

 

思わず竿を左右に振りながら道を練り歩く息子を想像してしまった。

 

しばらく夢に出てきそうである。

 

それはおいておくとして(いや性別が変わったのは重大なことなのだが)、色々疑問はある。

 

なんで銃を持ってるか、なぜそれを当然のように扱えるのか。そして人3人を殺したのに何も感じていないのか。

もっと言えば、あの時動揺もせず、すぐさまあんな行動をすることが出来たのか。

 

俺には一般的な現代日本で生きてきた記憶がある。これがねつ造された存在しない記憶じゃない限り、俺に銃を扱う技能はない。

そして当然だが、人殺しに慣れているわけでもない。

 

「これが、俗に言う転生特典……?」

 

いやだとしたらもっとなんかあるだろ! 殺伐すぎるわ! 人殺しの技術とかそう要らんから!

 

「それとももしかして、こんなヤクザみたいなのばっかいる世界だったり、する?」

 

転がってる死体に目をやる。

 

「広告によく出て来るマフィアゲームみたいな?」

 

……てか大男ガタイ良すぎんか? プロレスラーでもあんまいないレベルの身体してるじゃん。なんでヤクザしてんの?

 

よく考えると、現代日本で住んでた記憶はあるのに細かいところがどこか曖昧で、今に至る直前に何をしてたとか、思い出すことが出来ない。

 

「うーん……」

 

考えれば考えるほどに謎や疑問は増えていくばかりだったが、そろそろここを離れるべきだろう。

 

メガネさんとその他がここを通っていた以上、こいつらの仲間が通らないとも限らない。

想像通りこいつらがヤクザなら、ここはそのマフィアのシマである可能性は高い。

路地で銃声を鳴らしてしまったのもある。人気がないとはいえ、響いた銃声を聞かれた可能性もある。

 

身体が反射的に動いてしまった感じではあるが、迂闊だったかもしれない。

 

そう考えると不味くない?

 

冷や汗が背筋を伝う。

 

急いでここから離れることにした。

 

行く方角としては3人組が来たであろう方角だ。

 

理由はそっちから強い電灯の明かりが見えるから。

それに、こんな真夜中なら帰るのは家だろ!

 

Q.なんで通りに出る方法すら聴いてないんです?

 

A.正直気が動転してました。

 

仕方ないね。

 

道がわからないのでフィーリングで歩いていたのだが、段々と喧騒が聞こえてきた。

 

道はあっていたらしい。安心した。

俺の推理はあっていたようだ。

俺が名探偵になる日も近いだろう。大本営発表である。

 

意気揚々と通りに出ようとしたが、そこでひとつ問題が発生した。

 

チャカである。

 

さすがに捨てる訳にもいかないし、なんならこいつが転生特典の可能性もある。

そういえばとメガネさんがやっていたのを思い出し、腰に挿してみた。

 

「……」

 

ずるっと短パンが銃の重さで落ちる。

 

下を見ると、俺は水色のパンティーを履いていたことが確認できた。

 

パンツはTSしてたか……。

 

急いで銃と短パンを引き上げた。

 

この銃なのだが、持った感じ1.5キロくらいはある。

 

さすがにゴムの短パンでそれを支えるのは無理があったらしい。

 

すこし迷った末、パンティーにねじ込むことにした。

 

銃身がひんやりと冷たい。

 

確認で少し動いてみるが、サイズピッタリのパンティーだからか、銃が落ちることはなさそうだった。

 

「……暴発とかないよな?」

 

怖くなって確認したら安全装置はしっかりかかっていた。

 

過去の俺ナイス!

 

そして上からTシャツを被せれば完成である。

 

「よし!」

 

工事現場の人よろしく指さし確認をして、再び意気揚々と通りへと出た。

 

通り出ればそこは正しく、The歓楽街という風景が広がっていた。

 

まず目に入るのは通りにいる人間。

妙に胸元を強調した売り子や、泥酔状態でフラフラとしているおっさん。チラシを配るホスト風の男。

 

あたりを見回すと色々な電子看板やネオン管版がチカチカと明滅を繰り返し、人々を呼び込んでいる。

 

風に吹かれて酒気が鼻腔をくすぐった。

 

「すげぇな……」

 

それらを見た感想はひと言、そんなものだった。

 

欲望の街。どこかでみたそんなフレーズが、頭をよぎる。

 

俺の知らない世界が広がっていた。

 

生前、生前? 転移前? 俺は歓楽街に行くことがそうなかった。

それは某ウイルスの蔓延の影響もあったし、そもそもが元々出不精な性格なこともあった。

友だちとの飲み会も時々していたが、誰かの家で宅飲み、ということが多かったってのもあるだろう。

 

「君、かわいいね〜」

 

俺がその光景に少々呆けていると、ホスト風の男が声を掛けてきた。

 

少なくとも顔はやさしそうだ。いや顔が怖かったからナンパも勧誘も成功しないか。

 

なんでホストって紫とかの色のついたシャツとかスーツを着るんだろうか。

 

てか大丈夫? 素晴らしいイワシの絵が描かれてるとはいえ、こんなTシャツ短パンのやつに声掛けて。

 

それが霞むレベルで美少女だったりする?

 

もしかして、家がないとか思われてる?

 

うちに泊めてあげるよ的な?

 

……え、合ってるじゃん。家ないよ。

 

俺ホームレスじゃん。今気がついたわ。

 

「ごめんな、俺女が好きだよ」

 

「えぇ……」

 

突然の俺の告白に顔を顰めた男はなにか呟いてそのまま去っていった。

 

「罪な男だな……俺って」

 

腰に当ててやれやれと首を振った。

 

今女じゃん。

 

口から出る言葉に脈絡が無さすぎる。もしかしたら酒気で酔ってるかもしれない。だとしたら酒に弱すぎる。

 

気を取り直して現状を把握しよう。

 

まずこの通りの様子からして、銃声は届いていない。

さすがに銃声が聞こえていたらこんなにガヤガヤしてないだろう。

銃声が日常茶飯事すぎて感覚が麻痺してるとかだとしたら、俺にはもうどうしようもない。

 

なら次の行動は寝床を探すことだ。

 

ホスト、思い出させてくれてありがとう。

ここら辺で宿を探すとなれば、あるのはラブホくらいだろうと言うのは想像にかたくない。むしろ歓楽街にラブホ以外はいらない(偏見)。

 

でもラブホなら色んなとこに点在してそうだし、探しやすそうだ。

てことでさっそくラブホの位置を聴こう。

 

聴けそうな人を探すと、ちょうどさっきのホストが見えた。

 

「なぁ」

 

「なん、君か〜」

 

声をかけると一瞬嫌そうな顔をしたが、即笑顔を作った。

接客業の鏡か? いや、嫌そうな顔一瞬とはいえ出したからゼロ点だね。

 

「ラブホどこにある?」

 

「え!?」

 

なんか勘違いしてない?

別にお前を誘ってるわけじゃないよ。

 

「女の子捕まえてランデブーするから」

 

「えぇ……」

 

なんだこいつ。え、しか言わないな。

 

こいつもなんだこいつって思ってそう。俺もそう思うよ。

 

「肩組もうぜ」

 

なんだこいつって思った仲間だからな!

 

「俺ら友だちだろ!!」

 

「いえ、いいです……」

 

首を振って拒否するホスト。もはやその顔に笑顔はなかった。

おい、今こいつこわって呟いたの聞こえたぞ。さっきもそう言ったのか?

 

「「なんだこいつ」」

 

ハモった!

俺はその返答に満足してもう1回ラブホの位置を聞くと、なんだかんだ教えてくれた。

 

いいやつだった。ともだちか?

 

「今度一緒に飲もうな!」

 

お礼に1000円をあげた。

 

これがホストに貢ぐ女性達の心理かもしれない(絶対違う)。

 

そして、たぶん俺は酔ってる。

 

ホストが教えてくれた方向に歩みを進める。

 

ところで、あんまりお腹が空いてる感じはしなかったが、記憶的には昨日から何も食べてないような気がしていた。

 

なのでどこかでご飯でも買おうかと思ったのだが、残念なことにここはアースであって地球ではないし、日本ではなくシンエイである。

 

俺としては今日はコンビニで済ませようかな〜、とか考えてチラチラとあたりを見回していたのだが、見えるのは居酒屋とかキャバクラとかくらいなものだった。

 

さすがに寝床を確保してない状態で居酒屋に行くのも気分的に嫌だし、手のひらをよく見ると血がついてるし、なんなら銃持ってるし。

 

「今日はさっさと寝るか〜」

 

通りを進んでいるとゴテゴテとピンクのライトの装飾が眩しい、お城っぽいデザインの建物が姿を現した。

 

「いや、ガチでラブホだな……」

 

思ったよりラブホって感じのラブホだったので正直ワクワクしてるが、内装はどんなもんなんだろうか。

 

ちなみに生前ラブホに入ったことは無い。

 

ちょっと思ったんだけど、もしかして相方居ないと利用できません、とか有り得るくないか?

 

そうなればあのホストを引っ張ってくるしかない。ズッ友だしな。

 

ずっと友だちだと思ってたのに、気がつけば一線を超えていて……!

 

みたいな漫画見た覚えある。

 

てか絶対お互い好意持ってただろ。気がつけばってなんだよ。

 

例のラブホに着くと、俺の心配も杞憂で店前の看板にちゃんと1人料金が書かれていた。

 

安心である。

 

銃を突きつけられて部屋の隅で怯えるホストなんて、居なかったんだ……!

 

受付で店員に、え? ひとりなん? みたいな顔されたけど手続き完了。

 

通された部屋は、めっちゃ普通な部屋だった。

 

「え? ビジホか? 俺ビジホに来たか?」

 

あの外観からなんで部屋普通なんだよ!

 

せめて照明ピンクとかにしろよ!!

 

この部屋のラブホ要素、ベッドにつけられたティッシュくらいしかねーだろ!!

 

俺のワクワク返せよ!!

 

「はぁ〜」

 

テンションの下がる音を感じる。

 

ジャンプしてビジホの硬いベッドに身を投げた。少し痛い。

 

「これからどうするか……」

 

天井の照明を見上げつつ考えるのはそれだ。

 

今の俺には身分証明できるものが無い。

 

あんなヤクザ者がいるとはいえ、歓楽街の街並みからしてある程度の法が働いていることはわかる。

この世界の文明度を日本の年代で言えば、1990年代あたりが妥当だろうか。

 

この時代で身分証が無いのはとても痛い。

 

メガネさん3人組から奪った15万円で、食費などを考えてここに滞在できるのはおよそ10日。その日にち以内に何かしら金を手に入れる方法を見つける必要がある。

 

そしてそのためにはまず、今の俺は何が出来るのか、そして今何が必要かを把握しなければならない。

 

「明日、改めて考えるか……」

 

明日に備え、目をそっと閉じた。

 

いや、ダメだ。俺は当然のように昼まで寝るぞ。なんなら起きたらまた夜でした、が有り得る。

 

なので目覚ましをかけようとベッド周りを探したのだが。

 

「なんで目覚ましすらねぇんだよこの部屋!」

 

この部屋はビジホですらなかったらしい。

 

なんならあるんだこの部屋。

 




すまんごブルファンゴ♡
読んでくれててんきゅー!
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