やはり俺のSAOはまちがっている。   作:あすなっち

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初投稿ではありません・・・


第1話:はじまりの日

世界初のフルダイブ型オンラインゲーム、ソードアート・オンライン。しかし、サービス開始と同時に嬉々としてログインした俺は知らなかった。この仮想空間が、ゲームであっても遊びではない、ということを・・・

 

 

※このお話は、ハッピーエンドです。(いきなりのネタバレ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり俺のSAOはまちがっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった。

 

 

修学旅行の一件から崩れ始めた俺たちの関係は、一色の生徒会長選挙で決定的に破綻した。文字通り、冷たい氷の女王になってしまった雪ノ下と、おろおろするばかりの由比ヶ浜。そんな彼女たちを見るのが辛くて、俺はふたりと距離を置いた。比企谷八幡はまたも、問題の解決ではなく解消を選んだのである。

 

 

失って初めて俺は知った。あの場所がどれほど大切なものだったかを。だからこそ、もう一度取り戻したい。身勝手な願望だとは理解している。いまからでも間に合うだろうか?話さなくてはならない。この思いを残らず。たとえそれで、全てを失くすとしても。いや、それじゃ意味ないだろ。(汗)よし、ふたりに連絡しよう。会って直接伝えるのだ。そうと決まれば・・・

 

 

堂々巡りの思考の末、ようやく結論を出した俺は、むしろすっきりとした気分で目の前にあるヘルメットのような物体を手に取った。ナーヴギア。今日からサービスが始まるVRMMORPG『ソードアート・オンライン』の専用デバイスだ。これを被れば仮想空間にフルダイブできるのである。その人気の高さから半ば入手は諦めていたのだが、なんと小町が近所にある商店街の福引きで当ててきた。GJ!てか、世界中で在庫払底・次回入荷未定の品薄アイテムが、なんで千葉郊外の商店街なんかにあったんだろう?(ご都合主義)

 

 

さて、奉仕部の問題も解決への糸口が見えたことだし(脳内お花畑)まずは景気付けに仮想空間を楽しんでくるとするか。あいつらへの電話はその後だ。こらそこ!自己中のヘタレなんて言わない!自分でも分かってるんだから!ちょこっとお試しプレイしたら、直ぐにログアウトするつもりダヨ?ハチマン、嘘つかない。たぶん、メイビー・・・

 

 

おっと、もうこんな時間だ。あんまり悠長に構えてるとサービス開始に遅れちまうし、なんなら小町に邪魔される危険性まである。あいつもプレイしたがってたしな。一足お先にレベリングしておいて、お兄ちゃんの強さを見せつけてやるぜ。

 

 

幸い、ログイン前のキャリブレーション他諸々は終わらせてある。アバターのデザインは、色々弄ってたら葉山みたいな外見になっちまったので(爆)結局ほとんどリアルそのままで行くことにした。まあ、向こうで知り合いなんかに会うはずもないし、ノープロブレムだろ。知らんけど。そもそも俺に、ゲームをやるようなタイプの知り合いなんて居ない。やっぱ泣ける・・・

 

 

え?材木座?あぁ、あいつはナーヴギア発売日の3日前から徹夜で並んだのに、結局買えなかったらしいからノーカンな。(合掌)

 

 

さて、そんなこんなでナーヴギアを頭に被り、もう一度電源を確かめた俺はベッドに横たわった。この期に及んで何か大事なことを忘れているような気がしたが、どうにも思い当たる節がない。飯は食ったしトイレにも行った。パソコンとスマホのシークレットフォルダ(エッチなフォルダ)には、強力なパスワードを設定した。うん、大丈夫。何ら抜かりなし。ハチマン完璧。安心した俺は、逸る心を落ち着かせ、魔法の言葉を口にする。

 

 

「リンクスタート」

 

 

次の瞬間、脳裏を電流が走り抜けた。あ、部屋の鍵掛けるの忘れてたわ・・・(手遅れ)

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

「おぉ・・・」

 

 

無事ログインした俺は、現実以上にリアルな景色を前に感動していた。これがアインクラッド・・・中世風のファンタジーっぽい街並みに、行き交う中2病全開のプレイヤーたち。みんな、装備や衣装はこなれた感じだし、何より動きに迷いがない。サービス開始と同時にインしてるってことは、βテスターなのだろう・・・ぱっと見、単なる初心者は俺ぐらいのものか?

 

 

その後、はじまりの街を出た俺は、ひたすらモンスター狩りを続けていた。事前にマニュアルや先行攻略本はじっくり読み込んでいたから、直ぐにソードスキルも使えるようになり、レベリングも順調そのもの。え?もちろんソロプレイだけど、何か問題でも?他人に声をかける勇気なんて無いし。いったい、ぼっちの俺に何を期待してるんだよ。て言うか仮想空間だと急にコミュ力が上がるとか、あれ絶対都市伝説だろ。ん?俺はいま、誰に向かって話してるんだ?

 

 

「きゃー?!」

 

 

ひとりで謎の相手に逆ギレしていたら、微かな悲鳴が聞こえた。かなり遠距離からの声だったが、俺はパラメーターを『速さ』と『隠蔽』そして『聞き耳』に極振りしているので、こんな芸当が可能なのだ。こらそこ!だから変態とか言わない!悲しくなっちゃうから!

 

 

またも自虐ネタにセルフツッコミしながら、俺は全速力で走り出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウソだろ・・・」

 

 

駆け付けた先では、黒髪ロングの美少女プレイヤーが触手モンスターに犯され・・・げふんげふん!襲われていた。まあ、言い換えたところでほとんど意味は同じだが。(汗)白を基調とした軽装の防具と、頭にはパンさんみたいな大きい猫耳・・・いや、それなら鼠耳と言うべきなのか?

 

 

俺がそんな感想を抱いている間にも、捲れ上がったスカートから覗く白い脚を這い回る、いけない触手。すでに初期装備の細剣(レイピア)を取り落とした彼女は、極めて危険な状態だった。このままだと、あの美少女は全てを奪われてHPゲージを全損し、()()()ことになるだろう・・・

 

 

てか、未成年向けのゲームでこんなことしちゃダメ!絶対!(白ハチマン)いや、いいぞもっとやれ!(黒ハチマン)でも小町には絶対やらせないからな!こんな神ゲー・・・じゃなくてエロゲー!もしあいつがあんな目に遇わされたりしたら、怒りのあまり俺が最終第100層のフロアボスになっちまうまである。許さんぞ!茅場ぁ!(唐突なシスコンスキル発動)つーか、そもそも第1層にあんなモンスター居たっけ?

 

 

頭の中で本音()建前()がせめぎ合う中、ふと気付く。ん?あのモンスター、頭の上に何か書いてある・・・『GIRS ONLY』・・・って女子プレイヤーだけ襲う変態モンスターかよ!神演出有り難うございます運営様。グシャ(クリティカル・ヒット!!)

 

 

一瞬、いや数瞬スタンした俺は全速力で突進すると、渾身のソードスキルで触手モンスターを粉砕する。念のため言っておくけど、いまのスタンはシステムアシストであって、断じてもうちょいエッチなシーンを見ていたかったから、とかじゃないからね?(支離滅裂な言い訳)

 

 

「あーその、だ、大丈夫でしゅか?」

 

 

噛んだ!

 

 

しかし、当然彼女はそれどころではないらしく、あちこち丸見えのまま、ペタンと女の子座りして放心状態。大きな耳も萎れているのがまた萌える。(不謹慎)ふぅ・・・絶景かな。(爆)こんなお宝映像見せられたら、もうフロアボス攻略なんてどうでもよくなっちまったぜ。あ、まさかこの状況ってハラスメント警告出ないよね?

 

 

「た、助けてくれて、有り難うございます・・・」

 

 

やっと落ち着いてきたのか、まだ俯いたまま感謝の言葉を口にする猫耳黒髪ロングさん。顔ははっきり見えないが、やはりかなりの美人だ。助けた以上、一応フォローはしておくか。

 

 

「メニューを開いて、アイテム欄から新しい衣装を選択するといい。ワンタッチで着替えられるぞ」

 

 

「へ・・・?ひゃ?!」

 

 

俺の言葉でやっと自らの状態に気付いたのか、彼女は目に見えて慌て始めた。どうやら完全にビギナーだな、こいつ。

 

 

「右手を下に動かせば、メニュー画面が表示される。あとは必要な項目をタップするだけだ。あとこれ、回復ポーション。要らなければ捨ててくれ」

 

 

「わ、分かったわ。有り難う・・・」

 

 

さすがに恥ずかしくなったのだろう。背中を向けてしばらく画面を操作していた黒髪さんは、部屋着のような服装に着替えると振り返った。途中でシンプルなデザインの下着&華奢な肢体がもろ見えになったが、黙っておけば分かるまい。ごちそうさまです。(外道)

 

 

「改めてお礼を言わせて下さい。危ないところを助けて頂き・・・」

 

 

律儀にまたも感謝の意を述べ始めた黒髪ロングお嬢様が、不意に固まった。あれ?サービス初日からバグ発生かな?天才的ゲームデザイナーも、大したことないじゃん・・・

 

 

「え・・・あなた、比企谷君・・・?」

 

 

はい?唐突に俺のリアルネームを呼ぶ黒髪(呼び捨て)を見て、即座に警戒レベルを引き上げる。美人がいきなり距離を詰めてきたら気をつけろ。ソースはうちの父親。てか何があったんだよ、オヤジ・・・

 

 

「・・・雪ノ下か?」

 

 

驚愕の表情を浮かべた彼女と真正面から向き合い、やっと相手が誰だか認識した。そう、まさかまさかの我が部長さんである。気まずい。よりによって、こんなタイミングで・・・

 

 

「つかお前、現実まんまの外見じゃねえか」

 

 

しかも、ご丁寧に胸部装甲まで()()()()とは・・・いくらでも誤魔化しが利く仮想空間なのに、なんとも()()()()ことだな。(ダブルミーニング)尤も、いきなり彼女がメロンになったところで違和感が仕事しまくりだろうが・・・もちろん、猫耳については見なかったことにする。敢えて虎の尾を踏む必要はないからな。

 

 

「あ、あなたこそ・・・て言うか、なにか失礼なことを考えていないかしら」

 

 

くっ!こちらもリアルそのままのアバターにしたのは、やはりミスだったか。もっと長身超絶イケメンにしときゃ、赤の他人のふりして離脱出来たんだけどな・・・

 

 

「ムダな努力よ。たとえどんな容姿でも、その眼を見たら直ぐに分かるわ」

 

 

おい、ナチュラルにひとの思考を読むな・・・!!うん?じゃあまさか俺って、いまも眼が腐ってる?

 

 

「ええ、いつも以上に」

 

 

「マジか・・・」

 

 

そんなとこまで律儀にキャリブレーションするのかよ?!SAO、マジぱない。あと雪ノ下、だからひとの思考を読むなって!

 

 

「しかし、まさかお前がVRMMORPGとは・・・だいたい、よくナーヴギア買えたな」

 

 

「買ったんじゃないわ。姉さんが商店街の福引きで当てて来たのよ。で、心の隙間を埋めるためにログインしてみたら、さっきの卑猥な怪物が・・・」ボソッ

 

 

再び恐怖が甦ってきたのか、両腕で自らの身体を抱く雪ノ下。て言うかちょっと待って!WHAT?!そんなポンポン当たっちゃうなんて、ナーヴギアが売り切れ続出ってのはフェイクニュースなの?!煽り商法に踊らされてるだけとか?やはり千葉の商店街福引き景品はまちがっている。千葉ガイル。

 

 

それに・・・だ。初心者がいきなりフィールドなんかへ出れば、ああなるのは当然。俺が居なかったら、いまごろ彼女はアへ顔を晒しながら力尽きていたことだろう。(サービスシーン)そうならなくて、本当に残念・・・ゲッホゲホ!幸いだったな。え?ゆきのんの薄い本?なにそれ美味しいの(どこで売ってるの)?(眼がマジモード)

 

 

しかし、部室じゃろくに挨拶も交わせなくなってたのに、ゲームならこうして普通に話せるとか、やっぱ思いっきりコミュ障じゃねえか、俺たち。あれ?てことはやっぱり仮想空間だとコミュ力が上がってる?(前言撤回&手のひら返し)

 

 

久しぶりのやり取りに懐かしさを感じつつ、思わぬ邂逅で混乱した頭を整理する。ああ、もちろん聞き逃してはいない。思わず漏れたであろう、彼女の本音を。たとえ仮想空間とは言え、ここで出逢えたのはむしろ僥倖だった。

 

 

「雪ノ下。ゲームでリアルの話がNGなのは分かっちゃいるんだが」

 

 

「・・・!」

 

 

にわかに居住まいを改めた俺の言葉に、表情を硬くする雪ノ下。大方あちらも、用件は予想出来ているのだろう。もう俺は逃げないし、逃がさない。いかに捻デレぼっちでも、決める時は決めるのである。さっきのお色気シーンは、ラストアタックボーナスを前借りしたとでも思っておこう。そしていざ、本題を切り出そうとしたその時。

 

 

「おーい!そこのおふたりさん!」

 

 

快活な少女の声に振り向けば、そこには3人もの美少女を伴った黒髪のイケメンが立っていたのだった。ちっ!リア充はいますぐ爆発しろ!

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「は、はちまんだ。えーと、宜しく頼む?」(疑問形)

 

 

半ば強制的に自己紹介タイムが始まり、なぜか俺が一番手になった。ドウシテ・・・ちなみにこのプレイヤー名だが、カタカナに変換するのを忘れて決定キーを押してしまった結果である。

 

 

「俺はキリトだ。宜しく」

 

 

さらりと自己紹介してくる、黒ずくめの長身イケメン。若干、葉山っぽい。やっぱりリア充かよ。いや待て、こいつ・・・全身黒で揃えて指抜きグローブ&背中に長剣を装備しているあたり・・・なるほど、中2病(材木座)か。まぁ、知らんけど。ちなみにキリト以下4人は、ログイン直後にはじまりの街で知り合って10秒で意気投合したらしい。(超訳)どういうコミュ力してんのよ、こいつら。

 

 

「で、こっちが・・・」

 

 

「よっ!はじめまして!オレ・・・じゃなくてボクはクライン。VRMMOは初心者だから色々教えてね!」

 

 

キリトの言葉に被せて、先ほど最初に声をかけてきた美少女が、元気よく挨拶する。若干キャラがぶれている気もするが、赤いバンダナに大きなキラキラお目目が愛らしい。ほぅ・・・ボクっ娘か。またまた有り難うございます。まぁ、こんな娘に限ってリアルじゃ地味な眼鏡さんだったりするんだけど。ソースは小町。

 

 

「私はエギル。宜しくね」

 

 

一方、盾持ちの小柄な美少女は、はにかみながら微笑んだ。水色の髪の毛に、白と黒のツートーンカラーで纏めたメイドコスチューム。こいつリアルじゃ絶対ガチのリゼロファンだろ。(爆)

 

 

「はじめまして。私はゆきのんよ」

 

 

次いで無愛想に自己紹介する雪ノ下。その冷たい態度とプレイヤー名のギャップに、思わず頬が緩むのを自覚する。なまじリアルの本人を知っているだけに、な。

 

 

「死にたいぼっちはどこかしら?」

 

 

いかん。いつの間にか顔に出ていたようだ。にわかに龍田さん化した雪ノ下の視線に射貫かれ、思わず背筋が伸びる。どうやら仮想空間では、感情表現が過剰に演出されるらしい。今後は気を付ける必要があるだろう。

 

 

「えっと、私は結城明日奈です」

 

 

そして最後に残った美少女が、やや硬い雰囲気で名乗る。栗毛色の長い髪に整った顔立ち。衣装も装備も初期設定のままで、いかにも初心者っぽいが、これまたとんでもない美人さんだった。もちろん、小町ほどじゃないけどな。て言うか、普段から雪ノ下や由比ヶ浜を見慣れていなければ、速攻で告白して振られて運営に通報されていただろう。つか通報されちゃうのかよ?(ハラスメントコード違反)

 

 

「ちょっとお嬢ちゃん!仮想空間でリアルネームはNGだぜ・・・だよ?」

 

 

「え?!そ、そうなの?」

 

 

なぜか言葉遣いが乱れ始めたクラインに指摘され、急にあわあわし始めた結城。そんな彼女から何となく妹成分を感じ取った俺は、気付けば彼女の頭を撫でていた。(黒鉄宮送り)

 

 

「ひゃん?!」

 

 

「あ!す、済まん・・・いつも妹にやってる癖で・・・」

 

 

「はぁ・・・あなた、ゲームの中でもやっているのね、それ」

 

 

こめかみを押さえながら、ため息をつく雪ノ下。くっ?!またやっちまったぜ・・・慌てて手を引っ込めると、猫のようにぴくりと身体を震わせた結城は、なぜか少し残念そうな表情を浮かべた。WHY?

 

 

「じゃあ、なんて呼べばいい?ゆうのん?それともアスナっち?」

 

 

どうしてそうなる、クラインちゃん。由比ヶ浜かよ?それにそのネーミングセンスで行くと俺は、ひきのん、または、はっち・・・どっちも絶対ヤダ!

 

 

「君、プレイヤー名は?さっきのは聞かなかったことにするから」

 

 

するとキリトが、さりげなくフォローを入れてきた。こいつ、ホントにスマートイケメンだな。さぞリアルでもモテるんだろう。もうキリト改めハヤト(隼人)で良いんじゃね?え?!べ、別に嫉妬なんてしてないんだからね!(ツンデレボッチアート・オンライン➡需要なし)

 

 

「あ、アスナ・・・」

 

 

まだ動揺した様子の結城が、ぼそりと名乗る。てか本名プレイかよ!いや、ひとのことは言えないけどね。(汗)

 

 

しかしさっきから美少女確率高過ぎるだろ、このゲーム。いくらプレイヤーがアバターを自由に設定できる二次元空間とは言え、ここまでハイレベルな美少女にはなかなかお目にかかれるもんじゃない。ぶっちゃけ、みんな多少は()()()()んだろうけど。(爆発)

 

 

「せっかくだからフレンド登録して、パーティー組もうぜ。その方がレベリングも捗るし」

 

 

キリト改めハヤトが、またもリア充な提案をする。まさかこいつ、ホントに中身がやつ(葉山)とか言わないだろうな。

 

 

「え?でも私、まだ戦い方なんて全然分からないわ・・・」

 

 

「任せてくれ。俺で良ければ、みっちり色々と仕込んでやるよ」

 

 

不安げな表情を揺らす雪ノ下に、謎のイケメンパワー全開で安請け合いするキリト。いまのセリフが卑猥なものに聞こえてしまう俺は、やはり心が穢れているのだろうか。つかこのセリフ、俺が言った時点でアウトだな。

 

 

「よーし!頑張るぞぉ!レッツラゴー!」

 

 

元気よく死語を叫ぶクラインたん。明るくてとっても可愛らしいんだけど、この子さっきから時々、妙におっさんっぽい言動をするよな・・・

 

 

こうして俺は、若干おかしな男女混成パーティーの一員として、再びフィールドへと繰り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

「リニアー!」

 

 

鋭い攻撃を受けたモンスターが、ポリゴンの欠片となって消えて行く。雪ノ下とアスナはもともと適性があったようで、たちまちソードスキルを操れるようになった。てかこのふたり、完璧お嬢様って感じが何となく似通ってるわな。萌えるぜ。またエギルたんは、あの小さな身体でまさかのタンク役をこなしてみせた。これまたギャップ萌え~!(錯乱)

 

 

あと、予想通りと言うか、やはりキリトは別格だった。剣筋も体捌きも、全てにおいて段違い。いわゆるレベチってやつだ。まず間違いなく、βテスター上がりだろう。しかもチートな技を持った葉山もどきのイケメンときた。なんでや?!そんなんもう、βテストのチーターやから、ビーターや!!いますぐ詫び入れてもらわなあかん!(突然のキャラ大崩壊)

 

 

え?クラインちゃん?残念ながら彼女はダメっ娘だったわ。なかなかソードスキルを発動出来ず、本人も若干涙目になりながら、膨れっ面になっている。まあ、それもまた可愛いから許しちゃう。まさに可愛いは正義。萌え~!(またも錯乱)

 

 

「比企た・・・はちまん君、いやらしい目でアスナさんやクラインさんたちを見詰めるのはやめなさい。通報するわよ」

 

 

こちらを睨みながらメニュー画面を操作する雪ノ下。待て待て待て!(;-ω-)ノ こいつなら本気でやりかねん。下手にハラスメント通報でもされた日には、晴れて黒鉄宮送りになるまである。てかいま君、俺のリアルネーム言いかけたよね?しかもヒキタニVersionの方を。(憤怒)

 

 

「ゆきのん、手厳しいな。はちまんも困ってるみたいだし、それくらいにしてやってくれないか」

 

 

相変わらずイケメンムーヴのキリト君。しかもそれが嫌味になってない・・・だと?まさかこいつ、葉山の上位互換なのか?

 

 

「そんなこと言ってもムダだぜ、キリト。こいつはガチのぼっちだから、加減ってものを知らないんだ」

 

 

「え?そ、そうなのか?」

 

 

「ああ、何なら俺なんて、毎日罵倒されておかしな渾名を付けられてるまである」

 

 

なぜかこいつとは会話が弾む。おかしいな。普通、ぼっちはぼっちとしか、ひかれ合わないはずなんだが。でも、それだとキリトはぼっち、という結論になってしまう。いやいや、まさか・・・(ビンゴ)

 

 

「そのコミュ力・・・あなた、本当にはちまん君なの?まさか中身は赤の他人とか言わないわよね?」

 

 

「んなわけねえだろ。そもそも、俺を騙って何の得があるんだよ?」

 

 

「自分で言う?でもまぁ、それもそうね・・・よくよく考えてみれば、その腐った眼の時点で『本物』よね」

 

 

「うっせ。そっちこそ、赤の他人の前でこんなに喋りまくるとか、本当に中身は雪ノ下なのか?」

 

 

「ふふふ、言ってくれるじゃない」

 

 

「あははは!はちまんとゆきのん、超面白い!」

 

 

何気に酷い子、クラインちゃん。

 

 

しかし、いつ以来だろう・・・雪ノ下と、こんな言葉のキャッチボールをするのは。最近はキャッチボールどころか、互いに必要最低限の用件だけ一方的に投げつけるドッジボール状態だったし。やっぱ仮想空間だと、コミュ力って上がるんだな。(確信)これでコミュ障克服だぜ!え?じゃあこれからは、言いたいことがあるときは、いちいちナーヴギア被ってフルダイブしなきゃならんってこと?それ全然治ってないじゃん。

 

 

さて、戦闘の合間にはこんな他愛ないやり取りも交えつつ、レベリングを続けること暫し。そろそろ夕刻に差し掛かり、空が赤く夕焼けに染まり始めた。ここアインクラッドは、リアルの日本時間に合わせて昼夜が変化するのだ。こういう拘り演出、嫌いじゃないぜ。もちろん、さっきの触手プレイもね。(アカウント停止)

 

 

「あれ?」

 

 

ポーションを摂ろうと小休止した俺は、アイテムストレージを開いて思わず声を漏らした。いちばん上に見慣れぬ項目があったからだ。こんなもの、ついさっきまで無かったはずだが・・・

 

 

「手鏡・・・?」

 

 

「どうしたの?HACHIMAN」

 

 

やけにネイティブな発音で、エギルが問い掛けてきた。欧米か?!(大当たり)つかそのローマ字表記やめて!当人としては、ずっと気にしてるんだから!そもそもあれって俺のせいじゃないんだからね!

 

 

「いや・・なんかストレージに見慣れないアイテムがあってな」

 

 

俺の言葉に、みんなもメニュー画面を操作し始めた。

 

 

「あ、私にもあるよ、はちまん」

 

 

「本当だ。俺にもある」

 

 

「ええ、私も・・・」

 

 

どうやらバグではないようだ。なら、ログインボーナスだろうか。そして全員が、何気なく()()を取り出した瞬間・・・

 

 

「きゃ?!」(アスナ)

 

 

「ひゃん?!」(ゆきのん)

 

 

「なっ?!」(キリト)

 

 

「うぉ?!」(はちまん)

 

 

「どひゃ?!」(クライン)

 

 

「Wow?!」(エギル)

 

 

俺たちのアバターは青白い光に包まれた。あれれ?なんか男みたいな叫び声が多すぎない?そして、その光が消えたあとには・・・

 

 

「お前、だれ・・・?」

 

 

猫耳が外れた雪ノ下はいいとして、まず、少し年下に見えるイケメン黒髪少年。これは分かる。キリト(ハヤト)だ。次いで小町と同い年くらいの栗毛美少女。これも一目瞭然。アスナだろう。では、その横に居る大柄なふたりは??

 

 

「え?え?ま、マジ?」

 

 

「Unbelievable・・・」

 

 

激しく狼狽える、赤いバンダナを巻いた若い男と屈強そうなスキンヘッドの黒人さん。つか、バンダナだけはデフォルト設定だったのね・・・ん?じゃあ俺って、ついさっきまでこんなおっさんたちに萌えてたわけ?た、たわばっ?!(爆散)

 

 

「えっと・・まさかとは思うけど、クラインちゃんとエギルちゃん?」

 

 

「がはぁ?!」

 

 

「あうち」(日本語発音)

 

 

アスナからまさかの『ちゃん呼び』された成人男性(ネカマ)ふたり組はHPバーを全損させ、ポリゴンの破片となって飛び散っていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり(仮)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・済まねぇ。やっぱ慣れないことはするもんじゃねえな」

 

 

「Sorry. あれは忘れてくれ」

 

 

すぐさま再度ログインして来たネカマーズ。この状況で戻って来るとかメンタル強すぎだろ、こいつら。俺だったら恥辱のあまり、アカウント作り直して別人のふりをするまである。つか、結局ゲームは続けるのかよ。(ひとりツッコミ)

 

 

で、クラインはどう見ても普通の会社員っぽいし、エギルは顔も声も渋すぎだ。どうやらこのソードアート・オンライン、羞恥心が一定の数値を超えるとゲームオーバーになるみたいだけど、そんな設定あった?もしかして、隠しコマンド?

 

 

「別に俺は気にしてねえよ。個人の趣味嗜好をとやかく言うつもりはない。知らんけど」

 

 

ぶっちゃけ俺も、最初はアバターをプリティーなキュアにしようかと思ってたしな。(若気の至り)

 

 

「Thanks.そう言って貰えると助かる」

 

 

真面目腐った態度で謝意を表すエギル。ま、その外見でレムりん推しとか爆笑ものだが。(爆)もちろん口には出さない。

 

 

「はちまん、お前結構良いやつだったんだな!あとみんな、改めて宜しく!24歳独身、クラインだ!」

 

 

そして、笑いながら肩を組んでくるクライン。だから近い近い近い!お前が独身とかいう情報、要らないし。はち × クラ、キマシタワ~!じゃなくて、俺にそんな趣味嗜好はないからね?!

 

 

「でもよう、この手鏡ってアイテム、オンラインゲームじゃタブーだろ?」

 

 

すっかり男に戻ったクラインが言う。プレイヤーのアバターをリアルの容姿に戻すアイテム。確かにこんなものがあったら、致命傷(笑)を負うプレイヤーが続出するだろう。性別を偽ってるやつなんて、山ほど居るしな・・・

 

 

だって考えてもみてくれ。もし俺が雪ノ下のアバターでプレイしていて、この手鏡アタックを受けたらどうなる?黒髪ロングの美少女が、一瞬で腐り眼のぼっちに早変わりするんだぜ?目撃したやつは確実にトラウマもんだし、何ならSAOの七不思議になっちまうまである。つか、あとの六つは何よ?

 

 

「でも、はちまん君とゆきのんさんは、ほとんど変わらないのね。て言うかゆきのんさん、本当にきれいだなぁ・・・」

 

 

そこで猫耳について触れないとは。さすがです、アスナ様!

 

 

「さん付けはやめて。ここは仮想空間なのだし・・・きゃ?!あ、暑苦しいわ、アスナさん」

 

 

と、何を思ったのか、いきなりゆきのんへ抱き付くアスナっち。ほぅ・・・ゆき × アスか。由比ヶ浜とはまた違った趣があって、大変宜しゅうございます。ふぅ・・・ごちそうさまでした。

 

 

「リアルと変わらないって言うなら、アスナもだろ?」

 

 

一応部員として、部長のピンチに助け船を出す。つか、明らかにまだ中学生っぽいアスナに胸部装甲で圧倒されちゃうとか、ゆきのん大丈夫?

 

 

「うーん・・・私は試しにログインしてみただけだから。アバターの設定っていうのも、良くわからなくてスキップしちゃったし」

 

 

正体?がバレたとたん、なぜかどんどんフレンドリーになってくるアスナさん。その心や、いかに?あと、そこまでずぶの素人なのにあの剣捌き、末恐ろしい子・・・その容姿も相まって、今後絶対SAO最上位プレイヤーにランクインしてくるだろうな・・・一方でキリトは周りとの距離感を掴みかねている様子で、急にコミュ障っぽい空気を纏い始めた。まさかあいつ、リアルじゃお仲間(ぼっち)

 

 

「変わらないと言や、まさかその眼がリアルパーツだったとは驚いたぜ、はちまん。あとキリト、俺はお前のその顔、結構好きだぜ」

 

 

だからお前はひと言余計だ、クライン。あとキリ × クラは要らん。(バッサリ)

 

 

ある意味、身バレ?したパーティーメンバーたちは開き直ったのか、先ほどよりもストレートな物言いでやり取りしていた。ああ、いまなら俺も素直に言える気がする。さあ、ぼっちの濡れ場・・・ゲッホゲホォ!じゃなくて見せ場だぜ。(どっちも需要なし)

 

 

「ゆきのん・・・いや、雪ノ下」

 

 

精一杯真摯な態度で彼女に話しかける。そう、最初からこうすれば良かったんだ。

 

 

「な、何かしら?」

 

 

「あとで時間をくれないか?由比ヶ浜と3人で話したいことがa」

 

 

次の瞬間、俺の意識はぷつりと途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てか、ほわっつ はぷん(What's happen)?(またも日本語発音)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ほぼ同時刻 都内某所~

 

 

「ふふふ・・・遂に私の世界が完成する時が来た」

 

 

パソコンの前で不気味に笑う稀代の天才物理学者。いま彼は自らの意思で、これまで築き上げてきた地位や名声を捨て、新たな1歩を踏み出そうとしていた。あとはこのエンターキーを押せば、前代未聞のデスゲームが始まるのだ。

 

 

「おっと・・・私としたことが。さすがに興奮が抑えきれないな」

 

 

大切な()()()()()を忘れていたことに気付き、一度デスクから離れ、冷蔵庫から黄色の缶コーヒーを取り出す。先ほどは誤って、例の手鏡をフライング実装してしまった。直ぐにキャンセル処理をしたが、まさかあの短時間で気付いた者など居るまい・・・タブを開けつつ振り返ると、モニター上ではいままさに、6名ほどのパーティーが順次ログアウトしつつあった。最初のひとりは、あろうことか電源コードを引き抜いて()()()らしい。はぁ・・・これだから初心者は・・・私の作品に対する冒涜だとは思わないかね?

 

 

「ふむ・・・彼らが()()()()()()ということになるのかな。いや、むしろ最初か・・・」

 

 

無意識に呟きながら、手にしたマッカンをひとくち呷る。この暴力的なまでの甘さが無くては、何も始まらない・・・やがて彼は、おもむろにキーボードへ指を走らせた。

 

 

「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ」

 

 

この瞬間、各自のメニュー画面からログアウトボタンが消滅し、プレイヤーたちは仮想空間に囚われの身となったのである。

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

~ ほぼ同時刻 再び第1層フィールド ~

 

 

「ゆきのん・・・いや、雪ノ下」

 

 

「な、何かしら?」

 

 

ふと表情を改めた比企谷君が、私のリアルネームを呼んだ。たぶんさっきの続きだろう。用件の中身はすぐに予想がついたけれど、まだ素直になれない私は敢えて気付かないふりをする。そして彼は、予想通りの言葉を続けた。

 

 

「あとで時間をくれないか?由比ヶ浜と3人で話したいことがa」

 

 

次の瞬間、彼の姿は消えた。文字通り、掻き消すように見えなくなったのだ。

 

 

「え・・・?!ひ、比企谷君?」

 

 

驚きのあまり、私は彼のリアルネームを口にしていることすら気付いていなかった。現実世界ではあり得ない現象を目の当たりにして、理解が追い付かなかったのだ。

 

 

「は、はちまん?!」

 

 

「はっち?!」

 

 

「はちまん君?!」

 

 

突然のことに動揺しているのか、みんなも口々に彼の名前を呼ぶ。そんな中、キリト君だけは落ち着いて状況を分析しているようだった。いまはその冷静さが、とても頼もしく感じられる。

 

 

「規約違反による垢BAN・・・いや、さすがにサービス初日でそれはないか。なら停電による回線切断、強制ログアウトかな?」

 

 

正直、彼が何を言っているのかはよく分からなかったけれど、比企谷君の身に何か異変が起こったことは直ぐに理解できた。なぜだか胸騒ぎがする。

 

 

「えっと、おふたりは現実でも知り合いなんですよね?」

 

 

心配そうに、アスナさんが尋ねてくる。私より少し年下のようだけれど、育ちが良さそうで品があるし、何より気遣いのできるしっかりした女の子だ。

 

 

「ええ・・・彼とは同じ部活動に所属している()()()()よ。ごめんなさい。ちょっと心配だから様子を見てくるわ。お先に失礼するわね」

 

 

「はい、じゃあ、またあとで」

 

 

「え?ええ、()()()()()ね」

 

 

自らの言葉に驚きながら、私はメニュー画面を操作する。ついさっき出会ったばかりの彼女と、再会を約束するなんて・・・いつもの私らしくないわね。これも彼のせいかしら・・・て言うか、待ってなさい。急に私の前から消えるなんて許さないわよ・・・お願いだからこれ以上、心配かけないで・・・たぶん彼のことだから、どうせろくでもない理由なんでしょうけれど。(実は大当たり)

 

 

沸き上がる不安を振り払うように、私はログアウトボタンを押したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆきのんの姿が消えると、パーティーのメンバーたちもみな、いったんプレイを中断することにした。まだ知りあったばかりとは言え、はちまんのことが気がかりで、とてもレベリングに戻るような気分にはなれなかったのだ。

 

 

「えっと・・・私も一度、ログアウトさせて頂きます。運営の方で何か発表があるかも知れませんし」

 

 

そう言って、真っ先にアスナがログアウトした。彼女なりに、あのふたりを心配しているのである。

 

 

「俺もいったん落ちることにする。あんまり長く、店を空けておくわけにもいかないからな」

 

 

リアルの事情を口にしつつ、エギルもまた消えてゆく。

 

 

・・・はちまんたちの事情は知る由もない。でもきっと、大切な話があるんだろう。あのふたり、きつい言葉を投げ合ってはいたけれど、深いところでは分かりあっていたようにも見えた。以前は俺も()()()()()・・・思い切ってスグ(直葉)と話してみようかな・・・すっかり疎遠になってしまった従妹の顔を思い出し、何となく里心がついたような気持ちになって、キリトもまたメニュー画面を開いた。

 

 

「じゃあ俺も。お先に、クライン。モブモンスターなんかにやられるなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員のアバターが消え、たったひとりフィールドに残されたクライン。頭を掻いて、ひとりごちる。

 

 

「オレも落ちるか・・・ピザの時間にはちょっと早いけど」

 

 

誰にともなく呟くと、彼もまたログアウトしていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ほぼ同時刻 千葉県千葉市 比企谷家~

 

~side比企谷小町~

 

 

 

「やられたっ!!」

 

 

帰宅した私は、思わず叫んでしまいました。家の中は静まり返っていましたが、直感的に気付いてしまったのです。お兄ちゃんはいま『ソードアート・オンライン』をやっている真っ最中だ、ということに。

 

 

だけど、いくら大好きなお兄ちゃんでも抜け駆けなんてさせません。なんせ、福引きの賞品としてナーヴギアをゲットしたのはこの私なのですから。あ、いまの小町的にポイント高い。

 

 

お兄ちゃんの部屋へと急ぎましょう。もし鍵が掛かっていたら、内緒で作っておいたスペアキーの出番です。あれ?開いてる?些か不用心ですね。たとえ兄妹同士であっても、ちゃんとお部屋の鍵は閉めておかないと。もし気まずい場面に遭遇したら、それはだらしないお兄ちゃんの責任です。え?私ですか?もちろん鍵は二重ロックして、音楽を大音量で流しながらですよって言うか華の乙女になんてこと言わせるんですか変態なんですか出直して来て下さいごめんなさい。あぁ、いろは先輩の悪影響が、こんなところにも・・・

 

 

と、とにかく勝手は榛名も小町も許しません。入り口を開け放つと、案の定お兄ちゃんはナーヴギアを被り、ベッドに横たわっていました。はぁ・・・さすがにこれはアウトです!お仕置きです・・・

 

 

「・・・?」

 

 

その瞬間、私は何か得体の知れない不安を感じました。まるでお兄ちゃんがこのまま、仮想空間から帰って来ないんじゃないか、と言う不安を。

 

 

「お兄ちゃん、起きて!」

 

 

だから思わず駆け寄った私は、叫ぶが早いかナーヴギアの電源コードを引き抜きました。

 

 

「どひゃ?!」

 

 

小町的にポイント超低い変な声を上げて、現実に戻って来たお兄ちゃん。二度三度、頭を振ってから、おもむろにナーヴギアを外してこちらを見ています。ふぅ・・・大丈夫、いつも通りの腐った眼です。よかった・・・

 

 

「お兄ちゃん!はやく代わってよ!」

 

 

照れ隠しに、思ってもいないことを私は口にしました。

 

 

「び、びっくりしたぁ・・・お、おい小町、だからって、いきなり電源を抜くやつがあるか。強制ログアウトボタンがあるだろ。初心者かよ?」

 

 

「はぁ・・・私が居ない間に抜け駆けプレイとか、ポイント超マイナスだよ!」

 

 

「あ、いや、それはアレがアレで・・・」

 

 

腰に手を当てて怒ったふりをすれば、たちまち狼狽えるお兄ちゃん。なんだかんだ言って、結局このひとは私のことが大好きなのです。もちろん私も、そんなお兄ちゃんが大好き。あ!いまの小町的にポイント10倍デーですね!

 

 

「なんなんだよ・・・せっかくパーティー組んで、これからってところだったのに・・・あれじゃ雪ノ下にも用件伝わってないだろうし、やっぱあとで電話しなきゃな」ボソッ

 

 

どこか不満げにぶつぶつ言いながら、アホ毛の生えた頭をガシガシと掻きむしるお兄ちゃん・・・な、なんですと?!

 

 

「え?!?ま、まさか早速ゲームの中で誰かと仲良くなったの?!それってどんな美少女?!あと、どうしてそこで雪ノ下さんの名前が出てくるの?!」

 

 

「落ち着け小町。要するに、アレがアレでああなったということだ。てか、なんで仲良くなった相手が美少女って前提なんだよ?まあ、その通りなんだけど」

 

 

「なっ?!?」

 

 

こ、これは一大事です!ソードアート・オンラインでも私が色々面倒見てあげなきゃって思ってたのに、ここでまさかの妹離れ・・・?

 

 

こうしちゃいられません。私はナーヴギアに飛び付くと、すぐさま頭に被ってキャリブレーション作業を始めようとしました。

 

 

「おい小町。なにやってんだ?」

 

 

「なにって・・・将来のお姉ちゃん(お義姉ちゃん)候補にご挨拶してくるんだよ!」

 

 

「待て待て待て!字が違うぞ。それにたぶん、全員もうログアウトしてる」

 

 

「むぅ・・・なんか怪しい。やっぱり様子見てくる!」

 

 

「お前は俺の母ちゃんか」

 

 

呆れたようなお兄ちゃんの顔を横目に、ナーヴギアを被って電源コードを・・・あれ?

 

 

「どうした?」

 

 

すぐ傍で、気遣わしげなお兄ちゃんの声がしました。はぁ・・・こうした不意打ちの優しさがあるから心配なんです。フロアを攻略するゲームで美少女を攻略しちゃうなんて、ホントごみいちゃん・・・

 

 

「うん、なんか画面が真っ暗で・・・あ、デスゲームって表示されてる」

 

 

「はぁ?笑えない冗談だな。貸してみろ。なんのイベントだ?」

 

 

そんな言葉が聞こえたかと思ったら、ふっと私の頭が物理的に軽くなりました。急に開けた視界の先では、お兄ちゃんが再びナーヴギアを被ろうとしています。

 

 

「あ!ズルい!どさくさに紛れて、お姉ちゃん(お義姉ちゃん)たちと口裏合わせしてくるつもりなんでしょ!」

 

 

「ちょま?!離せ小町!いてててて!お、俺のアホ毛がぁ?!」

 

 

そうはさせじと私はお兄ちゃんの頭に飛び付き、思いっきり引っ張りました。その弾みで電源コードが外れ、ナーヴギアは宙を舞い・・・一瞬激しく光ったあと、チーンと場違いな音をたてて床に転がり、モクモクと煙をあげ始めました。

 

 

「「えっ?!?」」

 

 

しばらくふたりで声もなく立ち尽くし、人気商品の成れの果てを眺めていると・・・やっとお兄ちゃんが、呻くように言葉を発しました。

 

 

「い、いまのって・・・」

 

 

「・・・ああ、単にショートしたとか言うレベルの放電じゃないな・・・てか、もし頭に被ってたらマジで洒落にならなかったぞ」

 

 

ということは、もし兄妹でナーヴギアの奪い合いをしていなければ、今頃は・・・

 

 

その時、静寂を破って電子音が響きました。誰かお客さんが来たみたいです。宅急便さんかな?まさか、またお兄ちゃんがAmazonで変なフィギュアでも買ったんでしょうか・・・何やら考え事を始めたお兄ちゃんはそのままにして、私は玄関口へ向かいました。そしてそこに居たのは・・・

 

 

「こんにちは小町さん!比企谷君は無事?!どこに居るのかしら?!」

 

 

「あ・・・えっと、2階の部屋です」

 

 

「わかったわ!」

 

 

見たこともない切羽詰まった表情の雪ノ下先輩は、風のように我が家へ駆け込んで行きました・・・はっ?!あんまり自然な成り行きだったので、思わず見送ってしまいましたけど、いまのは小町的にポイント低めです・・・そして。

 

 

慌てて後を追った私が見たのは、部屋の真ん中で抱き合う雪ノ下先輩とお兄ちゃんの姿だったのです・・・(次回最終回)

 

 

「良かった・・・あなたが無事で。あんな消え方した上に、ここに来る途中で車のテレビがニュース速報を流していたから、とても心配していたのよ」

 

 

「え?え?ど、どうした雪ノ下?」

 

 

まさか、お義姉ちゃんバトルに決着が?!やっぱり雪ノ下先輩・・・もとい雪乃お義姉ちゃん爆誕?!ホントにゲームの中で何やってたの?

 

 

だけど、狼狽えるお兄ちゃんは彼女を抱き止めることすらせず・・・顔を赤らめ、その場で腰を引いて前屈みになりました。はぁ・・・さすがにそれは小町的にポイント全額没収だよ。( ´Д`)

 

 

「た、頼むから落ち着いてくれ。あと、ニュース速報って何のことだ?」

 

 

へっぴり腰のまま応対するごみいちゃん。あ、確かにそれは私も気になります!(古典部)

 

 

「そう・・・!大変なことになっているのよ!テレビを見て!」

 

 

「お、おう・・・」

 

 

戸惑うお兄ちゃんとリビングに飛び込んで、リモコンを押すと・・・画面には、信じられない光景が映し出されていたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、以上でソードアートオンラインのチュートリアルを終了する」

 

 

モニター越しに、阿鼻叫喚に包まれたはじまりの街を見下ろして、茅場は満足げに頷いた。さて、私の目的は達せられた。マスコミ各社へ宛てた犯行声明も、間もなく送信が終わる。ここからは存分に楽しませてもらうとしようか。プレイヤー名、ヒースクリフとして自らもログイン準備を進めながら、傍らのマッカンに手を伸ばした瞬間・・・

 

 

「おっとっと・・・ぬばぁ?!」

 

 

掴み損ねて派手に倒れた黄色の缶が、ごろごろとキーボードの上を転がり、いくつものキーを自重で押し込んだあと・・・ごいん!間抜けな音を立てて床に落下した。飲み口から迸った茶色い液体が、天才物理学者の股間に命中して恥ずかしい染みを作る。そして・・・

 

 

「アインクラッド標準時、2022年11月6日17時30分、ゲームはクリアされました」

 

 

「なっ?!?」

 

 

ゲームクリアを告げる無機質な自動アナウンス。運命の悪戯か、マッカンのアタックを受けた弾みで、SAOのメインシステム『カーディナル』が誤作動を起こしたのだ。ちなみにリアルでは、ちょうどクラインの手元に宅配ピザが到着した時刻でもある。

 

 

「ぬわあぁぁぁぁ?!わ、私の、私の世界がぁ・・・!これはライトノベルであっても、ギャグストーリーではない!」

 

 

股間から練乳入りコーヒーの薫りを立ち上らせ、必死にキーボードを叩く茅場だったが時すでに遅し。アインクラッドの崩壊が始まり、ナーヴギアの電子レンジ機能も自動解除され、加速度的に状況は悪化してゆく。

 

 

「プレイヤーの皆様は、順次ゲームからログアウトされます。その場でお待ち下さい。繰り返します・・・」

 

 

そして気付けば、彼渾身の自信作(ソードアートオンライン)はオートで終了シークエンスに入っており、全プレイヤーの強制ログアウトが始まっていたのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、1万人ものプレイヤーを巻き込んだデスゲームは、まさかの犠牲者ゼロであっさりと解決した。地獄の開幕が告げられた直後にゲーム自体が終了するという、意味不明な結末で。そして巷ではいまもなお、まことしやかに囁かれているのであった。このデスゲームを解決したのはマックスコーヒーである、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえお兄ちゃん、今度はアミュスフィアっていうのが、商店街の福引きで当たったんだけど・・・」

 

 

「勘弁してくれ・・・」




次回第2話:やはりこのボス攻略会議はまちがっている。
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