やはり俺のSAOはまちがっている。   作:あすなっち

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【はじめに】時々、八幡君がおかしな独り言を口にしますが、本編とは何ら関わりございません。


第2話:やはりこの攻略会議はまちがっている。

「みんな、今日は集まってくれて有り難う!」

 

 

壇上で爽やかに宣うのは、青い髪の長身イケメン。声に聞き覚えがあるのは気のせいだろう、たぶん。どうやら今日の発起人はあいつらしい。やれやれ・・・どうして仮想空間には、こうも()()()()()が多いんだ?

 

 

「俺はディアベル!職業は気分的にナイト(騎士)をやってます!」

 

 

その言葉に、取り巻きらしい連中がどっと笑い声を上げた。え?いまのどこに笑いのツボがあったの?グループの中心人物が発言したら、条件反射で笑っちゃうとか?パブロフの犬かよ?そもそも気分的ってなに?なんなら俺も気分的にぼっちやってます・・・ダメだ。笑いが取れるどころか、ドン引きされる未来しか見えない。おかしいな。

 

 

一方、よいしょされたディアなんとかさんは、満更でもないご様子。葉山イックスマイル(アルカイックスマイル)を浮かべつつ、片手を上げて周囲を制している。完全なる内輪ノリ。同調圧力という名の暴力。ぼっちの天敵だ。ほんと虫酸が走るぜ、ああいう雰囲気。

 

 

「さすがディアベルさん!」

 

 

さらに囃し立てるモブども。ふぁ?なにが『さすが』なんだよ?さすディア。あいつまだ、何も言ってないじゃねえか?!だがしかし、オレの無言ツッコミなど届くはずもなく・・・あいつらみんな、外見こそイケイケのティーンエイジャーだが、どうせ中身はおっさんなんだろ?俺は詳しいんだ。何しろ、身近にふたり(エギルとクライン)も実例が居たからな。

 

 

・・・ふぅ、ステイ!少し落ち着こうか。俺らしくもない。(自己完結)さて、説明が必要だな。先日、遂に第1層のボス部屋が発見され、攻略会議が開かれることになったのだ。場所は、はじまりの街にある中央広場・・・ってかSAO二次小説読者諸兄はとっくにお分かりの状況でしたね出直してきますごめんなさい。(突然のいろはす節)

 

 

あの日から1か月。驚くべきことに、ソードアート・オンラインのサービスは継続されていた。運営会社がアーガスからレクトへ変更となり、様々な追加安全対策を講じてのリスタートである。犠牲者ゼロで終わったためか、いまではアレを単なるオープニングイベントだったと信じているプレイヤーも多いらしい。危うくナーヴギアでレンチンされかけた身としては、全く笑えない冗談だが。(真顔)また、首謀者たる茅場晶彦のアジトには、大量のマッカンが備蓄されていたとか。知らんけど。

 

 

同じくあの日、危うく小町の前で雪ノ下とR-18展開になりかけたのは、まだ記憶に新しい。もしあいつとふたりっきりだったら、過ちを犯して食べられてしまっていた可能性まである。いや食べられちゃうのかよ、俺。ふぅ・・・もう少しで、互いの人生を歪めちまうところだったぜ。(意味不明)

 

 

そう言えばなんであの時、雪ノ下はあんなに必死だったんだろう?まぁ、いいか。結局あれ以降、由比ヶ浜や一色も含め、すっかり俺たちは元通りの関係性に戻れたのだから・・・青い春の悩みなんて、所詮その程度のものだったのだろうさ。いや、むしろあいつらは元通りどころか、さらに距離を詰めてくるようになったんだが。Why Japanese JK?

 

 

そして世間では、皮肉なことにあのデスゲーム報道がきっかけでSAO人気はさらに過熱し、サーバーは常にパンク寸前。ネットニュースを開けば関連記事が溢れ、ユーチューブはSAOの実況配信動画だらけ。二次小説サイトに至っては、似たようなタイトルの100番煎じSAOストーリーがひしめき、クロスオーバー主人公として俺まで引っ張りだこ・・・げふんげふん!(自爆ブーメラン)果ては、アカウントの違法売買まで行われている始末である。そんなことしちゃダメ!絶対!!

 

 

で、当然俺の周囲にも、にわかSAOプレイヤーが急増したわけで。現にいま、隣に居るのは・・・

 

 

「どうしたの?ヒッキー」

 

 

きょとんと小首を傾げる、にわか1号さん。弾みでピンク色の髪とメロンが揺れる。

 

 

「どうしました?せんぱい」

 

 

一方、あざとく小首を傾げる、にわか()()()()。弾みで亜麻色の髪とメロ・・・いや、こいつの方は、さすがにメロンと言うには些か無理があるな。(変態)

 

 

「じゃあみんな、まずはパーティーを組んでくれ。攻略方針の説明はそれからだ」

 

 

広場の真ん中では、当然のようにディアベルが会議を仕切っている。さっきも言ったが、どうもあのナイトさん、リアルの知り合いに声が似ているような気がしてならない。そう、あの中二病将軍に。まさか、中の人が()()なのか?てか、ガワ(外見)が葉山でアンコ(中身)が材木座とか、そんなのもはやプレイヤーじゃなくてモンスターだろ。(爆散)

 

 

そこまで考えて、ふと気付く。いまやつは何と言った?パーティーを組め・・・だと?またしても現れたぼっちの天敵(仲良し班作り)に、思わず俺は戦慄・・・などしない。なぜなら既に、メンバーの頭数が揃っているからだ。フッ・・・勝ったな。え?強がりは見苦しいだけだから止めろって?いやいや、ハチマン、コレホントダヨ?

 

 

「一緒に組もうぜ、はちまん」

 

 

ほら見ろ。早速ひとり目ゲットだぜ。ナチュラルに声をかけてきたのは、黒ずくめの美少年。何気に凄いイケメンオーラである。

 

 

「せんぱい、いいですよね?」

 

 

「えっと、ヒッキー・・・じゃなくてはちまん君、私もいい?」

 

 

続いて参加の意思を表明する、にわかのふたり。まあ、そうなるな。あと仮想空間では名前の呼び方、気を付けようね。(手遅れ)

 

 

「いいわ、組んであげる。些か不本意なのだけれど」

 

 

「じゃあ、私もいいかな?はちまん君」

 

 

そして、なぜか上から目線の黒髪さんと、明るく振る舞う栗毛さん。タイプは違えど、ともに完璧美少女である。これで見事にパーティーは完成。どうだ!ぼっちフラグをへし折ってやったぜ。(虚しいドヤ顔)

 

 

まあ、こいつらパーティーメンバーが誰なのかは、いまさら言うまでもないだろう。一応、登場順にプレイヤー名はキリト、壱式、ユイ、ゆきのん、アスナだ。え?ああ、若干1名モビルスーツみたいな名前のやつが混じっているけど、アカウント登録時に誤変換しただけらしいから、そっとしておいてやってくれ。(爆)なお本人(一色)は、その場ですぐにもうひとつ『一色』名義のアカウントを作ろうとしたそうだが、サーバーの混雑ぶりを見て諦めたんだとか。ま、もしそんなことをしていたら、複数アカウント所持で垢BAN待ったなしだったはずだから、正しい判断だったな。(他人事)

 

 

それにしても、ユイか・・・後々、キリ × アスの娘と名前が被るけど大丈夫なのかな?(大問題)

 

 

ちなみに俺も含め、なぜか全員アバターデザインはリアルそのまんまである。ってか、あの手鏡のせいでお互い中身がバレちまってるから、いまさら他のキャラデザにされると却って違和感ありまくりなんだけど。あと、そこらへんの事情を話したら、にわかSAOファンの一色と由比ヶ浜も、なぜかリアルまんまのアバターでログインしてきた。少なくとも一色は、絶対にプリクラみたいな()()()()()で来ると予想してたんだが・・・なんでも女子として、負けられない戦いがあるんだとか。どゆこと?あ、でももちろん、エギルたんやクラインちゃんの秘密は伏せておいたぜ?(武士の情け)

 

 

「よし、パーティーは組めたみたいだね。じゃあ、次は・・・」

 

 

俺がキャラ紹介をしている間にも、勝手に話を進めてゆく気分的ナイトさんと愉快な仲間たち。もう、お前らだけでやったらいかが?

 

 

「ちょお待ってんか!ディアベルはん!」

 

 

と、不意に上がった場を乱す声。そちらを見れば、ちょうどひとりのツンツン頭が広場に飛び込んできたところだった。登場の仕方は派手だが、いかにもなモブっぽい男である。ぷっ・・・!他人のキャラデザにケチを付ける気はないが、なにあれ超カッコ悪い・・・(ド直球)

 

 

「うわ、だっさ・・・」

 

 

思わず漏れ聞こえた一色・・・じゃなくて壱式の呟きにも、心の中で賛同する。しかしめんどくせぇな、この誤変換。

 

 

「ワイはキバオウっちゅうもんや。攻略会議の前に、ひとこと詫び入れなあかんやつらが居るやろ?」

 

 

器用に着地すると、不穏な言葉を口にするツンツンヘッド。いきなりなんやねん?(エセ関西弁)

 

 

「サービス再開からの1か月間、ワイら初心者は死に戻りの連続やった。レベリングも全然進められへんかった。なぜなら、一部の奴らが美味しい情報を独り占めにしていたからや」

 

 

「・・・それはβテスターのことを言っているのかな、キバオウさん」

 

 

一呼吸おいてから、ディアベルが答えた。周囲の連中も水を打ったように静まり返る。

 

 

「そうや。だからあいつらには、このひと月の間にしこたま貯め込んだコルやらアイテムやらを、全部吐き出してもらわな、一緒にボス討伐なんぞできへん」

 

 

そう捲し立てながら辺りを睥睨する、キバツンツン。その視線を受けて、何人かのプレイヤーが気まずそうに俯いた。たちまち広場の空気が重くなる。あいつ・・・初めてのボス攻略戦を前にして、わざわざ士気を下げるような真似を・・・見た目以上のバカなのか?これはゲームであっても馴れ合いの場ではない。時には協力も必要だが、基本は各自の努力が物を言う世界だ。事前にプレイしているβテスターにアドバンテージがあるのは当然だし、そんな彼らを丸裸にすれば、攻略部隊の大幅な戦力ダウンに繋がることも分からないのかよ?

 

 

気付けば俺は立ち上がっていた。ここは全員の安全マージンを確保するためにも、ガツンと言っておく必要がある。たとえ捻デレぼっちでも、やる時はやるのだ。はちまんの本気を見るのです!(電ちゃん)

 

 

「お前、いい加減に・・・」

 

 

「やかましい!外野は黙っとれや!」

 

 

「あ、ハイ・・・」

 

 

すごすごと、再び腰を下ろす。ごめん小町、やっぱりお兄ちゃん、仮想空間でもごみいちゃんだったよ・・・(大爆発)傍らで笑いを堪える女子グループ + アルファ(キリト)に腐った眼を向けていたら、場違いな可愛らしい声が聞こえてきた。

 

 

「ちょっと意見いいかな?」

 

 

改めてそちらに目を遣れば・・・小柄な美少女が立ち上がっていた。水色の髪の毛に白黒ツートーンのメイドコス。萌え~!まるでリゼロのレムりんみたいだな・・・ってあれ、エギルじゃねえか?!しかも隣に居るバンダナ美少女はクラインだろ!あいつら性懲りもなく、またあのアバターで来たのかよ!やっぱメンタル強すぎる・・・

 

 

「な、なんや、お嬢ちゃん」

 

 

てか俺の時と反応が違いすぎやしません?キバオウはん。

 

 

「私はエギルって言います。いまのお話ですけど、キバオウさんはこれをご存知ですか?」

 

 

そう言ってネカマレムりん(笑w)が取り出したるは、アインクラッド内で無料配布されている、アルゴ印の攻略指南本。その内容は正確かつ多岐に渡り、なんなら運営発行の公式マニュアルよりも頼りになるとまで言われている。文字通り、このSAOに於いてひとりに1冊の必携アイテムなのだ。もちろん、俺もお世話になっている。

 

 

「そ、そりゃ知っとるがな。で、でも、それがどうしたっちゅうんや?」

 

 

なぜか終始、愛らしいレムりんに押されっぱなしのキバオウはん。まあ、仕方ない・・・なんせあの娘、中身は身長2m近い屈強なアフリカ系アメリカンなのだから。(個人情報暴露)もしリアルであいつに遭遇したら、しこたま貯め込んだコルやらアイテムやらを、全部吐き出して詫びを入れなあかん。(白目&錯乱)

 

 

「これに載っている情報って、大半は元βテスターの人たちが提供しているんですよ」

 

 

「な、なんやて?!」

 

 

期待通りのリアクションを見せるキバオウ。さすが関西芸人さんや!(違う)一方のエギルたんは、敢えて先を続けることなく、黙って居並ぶプレイヤーたちを見渡した。既に場の空気は彼女(♂)へと傾き始めている。この辺りの言動、さすが世間慣れした大人だけのことはあるな。そこらへんの学生やヒキニート風情(偏見)では、到底太刀打ちできまい。え?いや、別に俺のことじゃないからね?

 

 

「ふたりとも、忌憚のない意見を有り難う。これでみんなも、わだかまりなくボス戦に臨めるんじゃないかな?じゃあ、改めて会議に戻らせて貰うよ」

 

 

頃合いを見て、ディアベルが話を纏める。やっぱりあいつ、みんなのディアベルさんだったのね・・・渋々と言った感じでキバオウが引き下がると、ようやく広場に弛緩した雰囲気が漂い始めた。やれやれ、色々とフラグ立ちすぎだろ。その後、各パーティーの役割分担を決めて、攻略会議は無事終了したのだった。え?俺たちの担当?原作通りにボスの取り巻きを排除することだったけど、何か問題でも?

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「なんだったんですかね、さっきの関西ツンツン頭。偉そうにせんぱいのこと、怒鳴りつけてましたけど」

 

 

はじまりの街をぶらつきながら、不満げにぶちまける一色。よほど腹に据えかねていたのだろう。

 

 

「あんまりムカついたんで、危うくあの頭にソードスキルを叩き込んでやろうかと思っちゃいましたよ」

 

 

いや・・・いろはさん、それってヒロインが言っちゃいけないセリフだからね。街の中はいわゆる圏内なので、いくら攻撃してもダメージは通らないし、レッドプレイヤーになることもないとは言え・・・PKしまくる一色とか、それだけでもう二次小説がひとつ書けるまである。タイトルは・・・ふむ、そうだな・・・『いろはすコフィン』なんてのはどうだ?(完全盗作)つかお前、声でけぇよ。壁に耳あり障子にメアリーって言うだろ?

 

 

「ここに障子なんてありませんよ?あとメアリーって誰です?」

 

 

こちらの心配なんてどこ吹く風、とばかりに絶好調のあざとい後輩。あとあなた、思いっきり俺との関係性暴露しちゃってるけど気付いてます?

 

 

「確かに許しがたい輩だったわね。デュエルで屠ってあげようかしら」

 

 

「あ、それ良いかもです。派手にポリゴンの破片にしてやって下さい」

 

 

「それってもちろん、完全決着モードですよね?」

 

 

「ええ、決まっているじゃない」

 

 

「あ、あはは・・・」

 

 

きれいな笑顔と澄んだ声色で、極めて不穏な会話を繰り広げる美少女3人組。上から順に、雪ノ下・一色・結城・そして再び雪ノ下である。なお、最後の苦笑いは由比ヶ浜だ。(実名表記)

 

 

そして、そんな女性陣に肩を竦めるキリト。そう言えばこいつ、βテスター云々の話が出た時も飄々としていたな。この1ヶ月で、何かあったのか・・・?小町と同い年だって言ってたけど、俺なんかよりよっぽど大人びていやがる。ある程度は信用しても良いだろう。あ、でも小町は絶対やらないからな!(シスコン連撃)

 

 

「あっ・・・」

 

 

そんなことを考えていたら、間近で聞き覚えのある声がした。振り向くと、そこには例のコンビ(エギル&クライン)が。しかも、小学生くらいのビーストテイマー美少女まで連れている。お巡りさん、こいつらです!!

 

 

一見すればプリティーな萌え萌え3人組だが、うちふたりの正体を知っている俺と雪ノ下やキリト、アスナは反応が遅れた。その場に流れる微妙な空気を感じたのか、不審げに瞳を揺らすユイと壱式。

 

 

「ひ、久しぶりだね、はちまん・・・」

 

 

そんな俺たちへ、躊躇いがちに切り出すクラインちゃん。なるほど、君ら、あくまでもそっちのキャラ設定で行くつもりなのね。(勇者)さらにはエギルの小さな唇が微かに動き、口パクで用件を伝えてきた。

 

 

は・な・し・を・あ・わ・せ・て・く・れ

 

 

はぁ・・・まあいいか。敢えてここで、やつらの性癖をカミングアウトさせる必要もあるまい。いまは多様性の時代だからな。人間誰しも、他人に知られたくない秘密の7つや8つ、あるもんだ。あれ?ちょっと数が多くない?ちなみに俺も中2の時、プリキュア好きなのがクラスでバレて特大ダメージを受け、一晩寝られなかった経験がある。てか、一晩で回復しちゃったのかよ・・・

 

 

「お、おう・・・ふたりとも元気だったきゃ?」

 

 

「こっちこそ久しぶりだな、エギルにクライン」

 

 

「えっと、ご無沙汰してます」

 

 

若干噛んだが、何とか返事を返すことが出来た。キリトやアスナも、上手く話しに乗ってくる。あとは自然な流れで社交辞令を交わして、離脱すればいい。やだこれ、みんな大人の対応じゃない?はちまん、さらにコミュ力上がっちゃった?しかし・・・

 

 

残念ながら、そうは問屋が卸さなかった。大人になりきれないめんどくさいのが、若干2名居たのである。(;´д`)トホホ

 

 

「・・・この3人組は誰ですか?せんぱい?」

 

 

「・・・ヒッキー、この人たち、誰?」

 

 

ひゃ?!一色も由比ヶ浜も、口調は明るいのになんか声が低すぎません?!それに満面の笑みが完全に作り笑いで、はちまん的に超恐いんですけど?!((( ;゚Д゚)))ガクブル

 

 

言葉に詰まる俺を見て、さらにラスボス化してゆくメロンさんと生徒会長さん。事情を知らないキリトやアスナは、年上のお姉さんたちが発するヤンデレ臭にドン引きするばかり。これってもう俺、ログアウトしちゃってもいいよね?(ダメ!絶対!)

 

 

「落ち着きなさい、由比ヶ浜さんも一色さんも」

 

 

しかし凛とした声が、一瞬で事態を沈静化させた。真のラスボスが降臨したのだ。さすがは雪ノ下・・・ってお前、リアルネーム言っちゃってるぞ?

 

 

「少なくともあのふたり・・・偽物バンダナっ子とレムりんもどきは大丈夫よ。心配ないわ」

 

 

さらりと酷い表現を混ぜつつ、状況を説明するゆきのん。いや、その言い方って、さらに事態をややこしくするだけじゃね?

 

 

「そんな・・・雪ノ下先輩は平気なんですか?明らかに発情期の泥棒猫が2匹に末恐ろしい仔猫が1匹、いきなりまとめて現れたんですよ?!」

 

 

「い、いろはちゃん・・・私、そこまで言ってないけど・・・」

 

 

「なんっ・・・?!一色さん、猫ちゃんたちを悪く言わないで!」

 

 

唐突な()()()の登場に一転引きまくりの由比ヶ浜と、微妙に論点がずれてる猫派の雪ノ下。てかいろはすさん、もちろん平気じゃありませんことよ。特にあなたの言葉のチョイスが。仮にも進学校の生徒会長さんが言う台詞じゃないよね?

 

 

「平気もなにも、あのふたりは・・・そう、とにかく大丈夫なのよ」

 

 

困惑の表情を浮かべた雪ノ下が視線を向ける先には、なぜか冷や汗を流す例のふたり組。そのHPゲージが、グリーンからイエローゾーンへと切り替わる。きっと、羞恥心のパラメーターが大ダメージを受けているのだろう。(笑)

 

 

「大丈夫って・・・はっ?!まさかもうとっくに既成事実を作っていてネトゲの嫁は男の娘じゃないと思ったみたいな展開を狙うとか正直せんぱいらしくないですけど結果オーライなんで是非とも私も混ぜて下さいごめんなさい」

 

 

やっぱりこうなった・・・(泣)あと、微妙にアニメタイトル変わってない?

 

 

淀みなく()()()()を言い切った壱式の横で、今度はユイ(由比ヶ浜)が口を開く。

 

 

「ねぇ、ふたりは大丈夫ってことは・・・もうひとりの子はアウトなの?」

 

 

「え?!わ、私・・・ですか?」

 

 

突然矛先を向けられ、泣きそうになるビーストテイマーちゃん。つか由比ヶ浜、どうしてお前、いつもはアホの子なのにこういう時だけ鋭くなるんだよ?

 

 

「そ、そうだ!紹介するの忘れてた!この子はシリカ。見ての通り、貴重なビーストテイマーなんだよ!」

 

 

ようやく突破口を見つけたと言わんばかりに、クラインが小柄な美少女の肩を押した。グッジョブ!!これで話題を切り替えることができるぜ。

 

 

「え?え?あ、あの・・・シリカです」

 

 

みんなの視線を浴び、おどおどしながら自己紹介するシリカたん。その初々しい様子は、いかにも年端のいかない少女のものだったのだが・・・中身もそうとは限らない。だよね?エギルたん、クラインちゃん?(ジト目)

 

 

「ふうん・・・マナー違反は承知の上で聞いちゃうけど、シリカちゃんって小学生?」

 

 

「え?は、はい・・・」

 

 

膝をついて目線を合わせ、優しく問い掛けるユイに対し、素直に答えるビーストテイマーたん。つか母性と包容力半端ねぇよ、由比ヶ浜。

 

 

「・・・でもこのゲームって、自由にアバターを弄れますよね?だから、中身が見た目通りとは限りませんよ。なんなら性別も」

 

 

「「ぎくぅ?!」」

 

 

すると今度は一色の無自覚系ソードスキルが炸裂し、ふたりの美少女(♂)のHPゲージがみるみるレッドゾーンへ突入した。図星を突かれて致命傷を負ったらしい。なにあれやっぱ面白いwww 今後も色んな場面で使えそうだな。

 

 

「え?!わ、私、そんなことしてません・・・」

 

 

そして、一色の指摘にじわりと涙を浮かべるシリカ。ほぅ・・・どうやらこの子は()()らしい。つーか、そもそも規約的に小学生ってプレイしていいのか?このゲーム。あと、ひとりでログインしてる時点でむしろ、この子の家庭環境の方が心配だったりもする。(保護者目線)

 

 

「そこまでだ、壱式」

 

 

言いながら、無意識にシリカの頭を撫でた。リアルお兄ちゃんとして、ここは譲れません。

 

 

「ひゃん?!お、お兄さん・・・」

 

 

おっと、またやっちまった・・・

 

 

まだ涙を溜めたまま、もの問いたげに視線を上げるシリカたん。この流れ・・・はい自己紹介ですね分かります。

 

 

「俺は比企谷八幡だ。職業は、気分的にお兄ちゃんをやっている」

 

 

さっきのディアベルこと恐らく材木座の切り口上を放つも・・・あ、あれ?全員無反応とか、メンタルに超堪えるんですけど。しかもよくよく考えたら、リアルネーム言っちゃったし。ネトゲ初心者か?!俺のライフはもうゼロよ?!

 

 

「ごめんなさい、シリカさん。それ以上、この男の言うことを本気で聞いてはダメよ。捻くれた性根が、あなたにまで伝染ってしまう危険性があるわ」

 

 

最後に特大の爆弾発言を投下してから、雪ノ下はこめかみを繊細そうな指先で押さえた。どうも疲れているらしい。なにかあったんだろうか?(鈍感系主人公)

 

 

「はぁ・・・はちまん君、あなた・・・いえ、もういいわ」

 

 

あの文化祭の時よりも、さらにぐったりした表情の雪ノ下。原因は・・・俺?

 

 

「ね、ねぇ、みんなでこれから少しだけレベリングしない?このままログアウトしても私、興奮して眠れそうにないよ」

 

 

いまだにHPゲージが黄色のままで提案するクラインちゃん。初めてのボス戦を前に、24歳独身男性会社員が興奮して眠れない・・・うん、全然要らない情報だわ。(バッサリ)おっと、もうこんな時間か・・・潮時だな。

 

 

「済まん。俺はここで落ちるわ」

 

 

「え?なんでですか・・・?はっ?!まさか興奮したクラインちゃんの様子を想像してリアルソロプレイに突入するつもりなんですかやっぱり変態なんですねせめてオカズは私にして下さいごめんなさい」

 

 

「止めんか。シリカも居るんだぞ?」

 

 

「あたっ?!」

 

 

暴走するあざとい後輩の頭へ、軽くチョップをぶちかます。彼女の頭上に『倫理コード違反(執行猶予)』のテキストがポップアップした。ほら、だから言わんこっちゃない。(つーか、執行猶予って何??)はぁ・・・こいつの社会常識は、いったいどうなってるんだ。周りもみんなドン引きしてるし・・・あれ?アスナさんだけ綺麗なお顔がゆでダコみたいですけど、何か心当たりでもあるのかな?そんな様子を見せられたらはちまん、いますぐログアウトしてソロプレイに走っちゃいますごめんなさい。(アカウント凍結)

 

 

ふぅ・・・だいたい、クラインちゃん(美少女Ver.)をネタにしたところで、途中からクラインちゃん(会社員Ver.)の顔が浮かんできちまうから無理だろ・・・げぇ?!実際に想像しちまった!(失神)

 

 

「小町が待ってるんだよ」

 

 

別に隠すことでもないので、ログアウトを急ぐわけをひと言で説明する。うむ、我ながら、これ以上ないぐらいに明確で分かりやすい理由だな。しかし・・・

 

 

「ヒッキー・・・ただのシスコンじゃん」

 

 

「そこまでくるとキモイです」

 

 

「はぁ・・・仲が良すぎる兄妹も、考えものね」

 

 

ジト目の由比ヶ浜&一色に、またまたこめかみを押さえる雪ノ下。なぜだ?

 

 

「なにを勘違いしてるのか知らんが・・・俺ん家には、ナーヴギアがひとつしか無いんだよ。庶民だからな」

 

 

当然ながら、現代科学の粋を集めたナーヴギアは高額商品だ。学生の財力で、おいそれと買い足すことが出来る代物ではない。ゆえにこの1ヶ月間、俺と小町は互いにプレイ時間を決め、ひとつのナーヴギアをシェアしてSAOを楽しんでいたのだ。泣ける・・・正確には、サービスリスタートの際に運営から全プレイヤーへ再配布された『ナーヴギア改』の方だが。

 

 

いまごろ俺の部屋では、小町が自分の順番を待ちわびていることだろう。あんまりのんびりしていたら、また電源を抜かれかねん。無防備状態の俺の枕元に立つ、マイエンジェル小町。想像してみると、ちょっと危ない光景である・・・

 

 

おや?フルダイブ中のプレイヤーを狙う、謎の存在・・・来た来た来た!二次小説のネタが降りて来たぁ~!!犯人の名前は・・・そうだな、デスガンとでもしておこうか。(著作権違反)

 

 

「へぇ・・・そうだったんだ。変なこと言ってごめんね、ヒッキー」

 

 

「分かったわ。また電源コードを抜かれたりしたら大変だものね」

 

 

「そういうことにしておいてあげます」

 

 

俺が脳内で下らない妄想を広げているうちに、あいつらは納得してくれたようだ。さて、早くログアウトしよう。え?向こうに戻ったら早速、クラインちゃん(会社員Ver.)ですっきり・・・?う、うわあぁぁぁぁ!!頭の中で映像が再生されて、脳が、脳が震えるうぅぅ~!!(大罪司教ペテルギウス)

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

 

連撃を受けたモブモンスターが、光の粒子となって消えてゆく。ここは夜の第1層フィールド。さっさとログアウトしたはいいが、やはり俺も明日のボス戦を前になかなか寝付けず、ひとり深夜のレベリングと洒落込んでいたのだ。さてと、いい加減そろそろ()()()か。

 

 

「きゃー?!」

 

 

そう思った矢先、不意に聞こえた悲鳴。思わずメニュー画面を操作していた手が止まる。こんな夜更けに、他にもプレイヤーが・・・?別に助けてやる義理はないし、たぶん余計なお世話だろう。でもいまの声、なんとなくどこかで・・・

 

 

取り敢えず、様子だけでも見ておくか。無意識に頭を搔きながら、俺は走り出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウソ・・・だろ・・・?」

 

 

駆け付けた先ではフードを被った少女プレイヤーが、なんか見たことのある触手モンスターに襲われていた。モンスターの頭上には、これも見覚えがある『GIRS ONLY』の表示。デジャブだな。てかあの変態触手野郎、サービスリスタートの際にバグ修正されてなかったのかよ。有り難うございます神運営さん!うむ、雪ノ下の時は途中までしか見られなかったし、今回は最後まで特等席で見学させて頂くとするか。(ここまでの思考時間、約1秒)

 

 

「あ!い、いや・・・!あん♥️」ピクピク

 

 

その間にも蠢く触手は、少女のスカートを切り裂いてゆく。剥き出しになる白い太もも。いいぞもっとやれ!頑張れ触手モンスター!さあ、このあとどんな演出があるのか、わたし気になります!!(再びの古典部)が、しかし・・・

 

 

「ウソ・・・だろ?」

 

 

少女が仰け反った弾みにフードが外れ、隠れていた顔があらわになる。肩より少し短い黒髪に、ぴょこんと跳ねたアホ毛、そしてさらに特徴的な八重歯・・・それらを目にした瞬間、考えるより先に身体が動いていた。だが遠すぎる。速さに特化した俺のソードスキルは、攻撃範囲が狭い。クソッ!これじゃ間に合わねぇ・・・!

 

 

「させるかぁぁぁ!!」

 

 

届くはずのない一撃。それでも渾身の力で放った斬撃は、眩いライトエフェクトとなって一直線に伸び、触手モンスターを貫いた。あれ?なんか届いちゃった。これってまさか、ユニークスキルってやつ?(適当)

 

 

「お、お兄、ちゃん・・・?」

 

 

まだ小さく震えながらぺたんと座り込み、涙に濡れた目でこちらを見上げる可憐な美少女。たったいま、いけない声を漏らしていたとはとても思えない天使のような愛らしさ。て言うかお兄ちゃん的には、いま彼女が濡らしているのは瞳だけだと信じたい。(超大爆発&通報案件)そう、フード姿の美少女プレイヤーは我が妹(マイシスター)、小町だったのである。




次回第3話:はじまりの終わり
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