ようやくガメラリバースの設定資料集買えました。長かった……。
この小説とあんまり設定の齟齬が無くて良かったと胸を撫で下ろしました。
面白いので、みんなも資料集、買おう!
再びこの世界に降り立ったダイナレックス。その操縦主にして、ダイナレックス本人であるレックス……、もといガウマは状況を観察していた。
(やっとこっちに来られたと思ったら、いきなり怪獣が二体かよ。といっても、一体は死にかけ。もう一体はピンピンしてやがる)
先ほど突き飛ばした、イカのような怪獣は瓦礫を払い、立ち上がる。
立ち上がった怪獣、バイラスは、ダイナレックスに殺意の籠もった目を向けてくる。それなら、もう一体の死にかけ怪獣が味方だろうが敵だろうが、今手を出す必要はないだろう。
「まずはテメエからだ!」
ガウマの叫びに共鳴するように、ダイナレックスが咆える。バイラスは触手を伸ばして攻撃するが、ダイナレックスは横に跳んで攻撃を避ける。
そして、攻撃後の隙を狙ってダイナレックスはバイラスにタックルを仕掛ける。残る触手で迎撃を図るバイラスだったが、姿勢を低くしてその攻撃網を切り抜け、体当たりをする。
よろけたバイラスに跳び蹴りを当て、完全に体勢を崩させると、ダイナレックスは口の中にエネルギーをチャージする。
「これで終わりだ! 必焼大火炎……!」
ダイナレックスは大きく口を開く。
「レックスロアーーー!!!」
ガウマの叫びと共に口から放たれた巨大な火炎の奔流は、未だ立てずにいたバイラスに直撃した。
轟音と灼熱が辺りを包む。バイラスが炎に包まれたことで、ガウマは一息つく。
(よし、まずは一匹だな。次は……)
そう思いながら、もう一体の怪獣、ガメラのほうを向こうとしたときだった。
炎の中でバイラスが動き出す。
(なっ!? アレ食らって生きてんのか!?)
よく見れば、バイラスの周りにはバリアが展開されていた。つまり、直撃すらしていないのだ。
「クソっ!」
すぐさまもう一発攻撃するも、バリアで炎は防がれてしまう。
すると、ダイナレックスの両足に触手が絡みつく。
「うおっ!? この……!」
触手に噛みつこうとするダイナレックスだったが、その口にも触手が巻き付けられ、レックスロアーも撃てなくなってしまう。
その状態でバイラスは、ダイナレックスは電流を流し込む。
「ぐわああああああ!!」
電流で抵抗が弱まった隙を逃さず、ダイナレックスを持ち上げると、そのまま近くのビルに叩き付ける。
「ぐあっ!」
それを二度、三度繰り返し、ダイナレックスにダメージを蓄積させていく。
ダイナレックスは触手を振りほどこうとするも、力が強く、振りほどけない。
(マズい! このままじゃ……!)
バイラスは再びダイナレックスに電流を流そうと、触手に電流を貯める。そして、放電しようとした時だった。
「グリッドナイト、サーキュラー!」
紫の光を放つ光輪が、バイラスの触手を切り落とす。
「ギュイイイイ!?」
バイラスが怯んで後退すると、バイラスとダイナレックスの間に、紫色の巨人が着地する。
「お前……」
「勇んで出て行った割には散々な姿だな。ガウマ」
「うるせえ」
紫の巨人に話しかけられたガウマは、ぶっきらぼうに答える。
「アイツ、強えぞ」
「そのようだな。共にいくぞ、ダイナレックス!」
「おう! グリッドナイト!」
立ち上がったダイナレックスは、巨人、グリッドナイトに並ぶ。
「ギュイイイイ!!」
怒ったように声を上げるバイラスは頭部から、ビームを二人に放つ。対して、二人は上に跳んで避けると、グリッドナイトが仕掛ける。
「グリッドナイトストーム!」
右腕から放たれた紫の光線は、しかしレックスロアーと同様、バイラスに届く前にバリアに阻まれる。
「厄介だな……」
「あのバリア何とかしねえと、攻撃が効かねえぞ!」
「ならば!」
着地したグリッドナイトとダイナレックスは、左右に分かれて近接戦を仕掛ける。バリアはエネルギー干渉をするだけのようで、質量防壁にはなっていない。なので、接近すれば活路はある、と考えてのことだった。言葉を交わさずとも行われる連携は、二人がそれだけ信頼をして、共に戦ってきたことを物語っていた。
しかし、二人が接近してくるのは、バイラスも想定済みだったのだろう。バイラスに近づく二人に、電撃を纏った触手が襲いかかる。
「ぐわあ!」
「うおおああ!!」
グリッドナイトは横へ、ダイナレックスは地面に叩き付けられる。すぐさま体勢を立て直したグリッドナイトだったが、そこにさらに触手が殺到する。
チョップや蹴りで触手をさばくも、足を絡め取られ、そのまま引きずられてビルにぶつかる。
「くっ! バリアだけでなく触手もとは……! このままでは埒があかない!」
そう吐き捨てながら、立ち上がるグリッドナイト。ダイナレックスに視線を向けても、触手に阻まれ、バイラス本体に近づけていない。
再び襲いかかる触手をバク転で回避する。そこで、グリッドナイトの額のランプが点滅しだす。どうやら、エネルギーの残量も残り少ないようだ。あと何十秒かで決着をつけなければいけないが、相手はそんな隙を晒す気配は見えない。
(こうなったら、無理やりにでも相手の防御を崩して、ガウマに繋ぐのが得策か?)
そう思い、エネルギーを貯め始めたグリッドナイトだったが、直後、戦局の均衡が崩れる。
「ゴアアアアアア!!!」
「ッ!?」
先ほどまで倒れていたガメラが、胸部にプラズマを纏い、足からはプラズマジェットを吹かしてバイラスに体当たりをしたのだ。ガメラはバイラスにぶつかると、そのまま地面に倒れ込む。
その不意打ちにバランスを崩したバイラスは、そのまま転倒。同時に、何かに干渉されたように、バイラスを守っていたバリアが消失する。
「っ!? 今だ! ガウマ、合わせろ!!」
「っ! おうよ!!」
グリッドナイトは右腕に、ダイナレックスは口にそれぞれ自身の持てるエネルギーを集結させる。
「グリッドォォォォ、ナイト!」
「必焼大火炎! レックス……」
そして、二人は集めたエネルギーをバイラスに向けて解放する。
「ストォォォォォォム!!!」
「ロアァァァァァァァ!!!」
そうして放たれた光線と火炎は、途中で混ざり合いながら、バイラスを直撃する。
「ギュイイイイ!!?」
バリアもなく、もろに二人の必殺技を喰らったバイラスは絶叫を上げながら、爆発した。
爆炎が晴れたころには、バイラスだったものは炭となって、そこに佇むだけだった。
それを確認したところで、グリッドナイトは巨大化できるエネルギーを使い切り、元の人型に戻る。
「ふう……。とりあえず、なんとかなったな。あとは……」
ガウマが残った怪獣、ガメラに目を向けると、ガメラは飛行形態になって飛び立ったところだった。
「あ、待て!」
さっきは助けられたが、相手は怪獣だ。倒さないにしても、さすがに逃がすわけにはいかない。
そうして、翼のペネトレーター・ガンを構えたところで、下から懐かしい声が叫ぶ。
「隊長ーーー!! 撃たないでーーー!!」
「うおっと!」
発射する直前で止められ、前につんのめるダイナレックス。声の主を確認してみれば、そこには懐かしい顔が。
「ちせ!」
その間に、ガメラは空高くへ飛んでいき、雲の中へと消えていった。
先の戦闘から一時間後。
人間の姿に戻ったガウマとグリッドナイトであるナイトは、フジヨキ台の病院にいた。周りには、かつてこの世界で怪獣と戦った仲間である、蓬、暦、ちせもいた。
「なるほどな。この世界でそんなことが……」
三人からの説明を受けて、ガウマはそう呟く。
「つまり、木下アヤメなる少女が、怪獣ガメラを操って、他の怪獣を退けていた、と?」
ナイトが確認するように尋ねれば、三人は頷く。
「あ、でも、操るってのは違うか。なんかガメラに主導権渡すみたいなこと言ってましたよ」
ちせがそう訂正する。
「そうだったな。しかし、ガメラに、サブジェクション、か。ガウマ、サブジェクションについて聞いたことあるか?」
「いや、知らねえな。怪獣と繋がる方法がドミネーション以外にあったことに驚きだ」
「俺も同じだ。あの怪獣は何か特殊なのかもな」
ガウマとナイトが話していると、席を外していた夢芽が戻ってきた。
「夢芽!」
夢芽は蓬の声にも薄く反応するだけで、近くのイスに座ると、腕を組んでそのまま机に突っ伏す。
「ゆ、夢芽? 大丈夫?」
蓬が声をかけても、リアクションがない。
そうして皆がその空気に戸惑っていると、夢芽が小さな声で呟く。
「……アヤメ、危ないんだって。過労の状態で、短時間で体に強い負担がかかったから。自力での生命活動も出来なくなるかもって。今は安定してるけど、いつまた危なくなるか分からないから、絶対安静だって」
その言葉に、皆言葉を失う。誰も口を開けないでいると、夢芽は垂れ流すように言葉を紡ぐ。
「だから、戦うなって言ったのに。あと少しで死ぬところだったんだよ。なのに、なんで? なんで戦ったの? アヤメは、そんなに生きたくないの? そんなに生きることより、怪獣と戦うのが大事なの? もう、わかんない」
わかんないよ、と何度か呟いたあと、夢芽は再び静かになる。
蓬は黙って夢芽の背中をさする。
「……ガウマさんたちはなんでこの世界に? 俺たちからじゃ連絡出来なかったはずですけど……」
空気に耐えられなくなった暦がそう質問する。暦の質問にナイトが答えようとしたところで、ナイトの持っていたタブレットから声が発せられる。
「それh「それはですね、私たちが宇宙の外から異変を察知したからですよ!」
ナイトの言葉を遮る形でタブレットから声がする。タブレットには、メガネをかけたスタイルの良い女性が映っていた。その顔はガウマ隊にとって、ナイトと同様に懐かしい顔だった。
「二代目さん!」
「皆さん、お久しぶりですね!」
蓬の声にそう返す二代目。かつてこの世界でナイトとともに怪獣と戦った一人だ。もっとも直接戦うより、主にサポートをするのが仕事だったが、彼女にはここにいる全員が何度も助けられた。
「ナイトくんから事情は聞きました。やはりその世界を襲っているのは、ザノンなのですね」
「ザノンを知ってるんですか?」
「ええ。といっても、今回の件までは風の噂程度しか知らなかったのですが……」
そう前置きをした二代目は真剣な顔をして、蓬たちを見る。
「とにかく、一度情報を整理しましょう。私たちから蓬さんたちに伝えたいこともいくつかあります」
二代目の言葉で、一同は病院の庭の休憩スペースに集まっていた。さすがに病院内であれこれ話すのは迷惑になるからだ。
まずは蓬たちが、改めてこの世界で起こったことを話した。ガメラのこと。アヤメのこと。怪獣のこと。そして、今までのガメラと怪獣たちの戦いのこと。
ガウマたちはそれを静かに聞き、蓬たちの話が終わったところで、二代目が、そうだったんですか……、と呟いた。二代目は、一度咳払いをして表情を改めると、今度は彼女たちの状況を話し始める。
「では、私たちが集めた情報を。事の始まりは、ガウマさんが蓬さんたちの宇宙の異変を察知したことからでした」
「ああ。最初は蓬たちが元気にやってるかどうか確認したくて、ちょっと覗くだけのつもりだったんだがな。そしたら、謎の力で阻まれてよ。お前たちの宇宙に一切干渉出来なくなってた」
「そのことを聞いた俺と二代目で調査を開始したんだ。グリッドマンや新世紀中学生にも協力してもらい、俺たちは犯人と思われる存在を突き止めた」
「それが、ザノン」
暦の呟きに二代目は頷く。
「ザノンは別名宇宙海賊とも呼ばれる存在です。様々な宇宙を渡り歩いては、その宇宙の文明を襲い、略奪を繰り返す邪悪な存在でした。もちろん私たちも気にかけていましたが、ザノンは特定の宇宙に長いこと留まらないので、追いかけることはほぼ不可能だったんです。ですが今回、そちらの宇宙にいることを分かり、私たちもザノンを止めるため向かうことになったんです」
そこで、ガウマが難しい顔で口を開く。
「ところが、だ。さっきも言った通り、この宇宙への干渉は一切出来なくなってた。恐らくザノンが、結界かなにか張ったんだろう。それでこっちに来るのが遅くなっちまった」
「ザノンがここまでするということ自体、記録がなかったので苦労しました。ようやく開けたパサルートも、とても不安定で……。それで、この世界になじみ深いナイトくんとガウマさんに、先に行ってもらったんです」
「本当はグリッドマンたちにも来てもらおうと思っていたんだがな。俺がパサルートを通ったときには、もう入り口が閉じてしまった」
「そうだったんですか……」
ナイトの言葉に、蓬はそう呟く。どうやら、事態は自分たちが思っていたより大事になっているようだ。
「私もそちらに行きたかったのですが、再び入り口を開けるのには時間がかかりそうで……。代わりといったらなんですが、ナイトくんに持たせたタブレットで通信できるよう、今は回線だけは安定させています。だから、こうして蓬さんたちとお話できるんです」
「ほえー。二代目さん、スゴいっすね」
感心したように言うちせ。そこではたと気づいたように質問する。
「そういえば、ゴルドバーンは? 一緒に来てないんすか?」
「いや、俺と一緒に来ている。ただ、アイツはれっきとした怪獣だからな。そこら辺をうろつかせると、今はかえってパニックになる。だから、今はいつもの山で待機させている」
「そうなんですか。ゴルドバーン、来てるんだ」
嬉しそうに呟くちせ。それとは対照的に険しい表情を崩さないガウマ。
「喜んでるとこ悪いんだが、状況はそんなに良くねえ。外から観測できたエネルギーから、怪獣はそんな強えヤツじゃないと踏んできたが、実際に戦ってみたらあのザマだ。負けるつもりはねえが、早えとこ大将たちとも合流しねえと、危ねえかもしれねえ」
「二代目。今、グリッドマンたちは?」
「六花さんのジャンクショップで待機してもらっています。いつでも出撃できるよう」
「分かりました。……そういうことだ。二代目が再び入り口を作ってくれるまで、俺たちだけで戦うぞ」
そこで、そういえば、と蓬が口を開く。
「今まであまり考えてなかったんですけど、ザノンってどんな姿なんですか? ザノンの手下だっていう怪獣は何体も出てきましたが、本体は一度も見たことないんですけど……」
「そうなんですか? ザノンは宇宙戦艦とも呼ぶべき宇宙船で移動している姿が確認されています」
そう言って二代目は、ザノンのものと思われる宇宙船の画像をタブレットに表示する。
その宇宙船は、菱形の四角錐の形をしており、全体が白っぽい宇宙船だった。
「おお、思ったよりごついな」
「そっすね~。ていうか、この前観たSFに似たようなの出てきたくらい、コッテコテの宇宙戦艦っすね」
暦とちせが呑気な会話をする中、二代目は言葉を続ける。
「大きさもかなりのもので、サウンドラスを上回ります。それを一回も見かけないということは、恐らく光学迷彩かなにかで姿を隠しているんでしょう。となると、本体を見つけて直接叩くのも難しくなりましたね。せめて、ザノンが先に限界を迎えてくれれば良いのですが……」
「限界、ですか?」
蓬の問いに二代目は答える。
「はい。蓬さんたちはザノンがどうやって怪獣を生み出しているか知っていますか?」
「いえ……。怪獣が誕生する瞬間も見たことがないので……」
「なら教えておきますね。ザノンは狙いとした星に怪獣の卵を投下します。ただ、それだけだと命令を聞かずただ暴れ回る怪獣になってしまいます。そのため、投下する前の卵に自身の魂を分け与えるんです。それにより、怪獣の凶暴性を持ちながら、目的のために動ける知性も持ち合わせる怪獣に成長します。なので、ある意味ザノンが投下する怪獣全てが、ザノン本人とも言えるかもしれません」
その言葉に蓬はとても納得できた。以前のギロンとの戦いで、ギロンは明らかに蓬を嘲笑っていた。その前のジグラも、攻撃する順番を考えているようだった。明らかに自分たちが戦った怪獣よりも知性があった。それは、ザノンの怪獣の作り方に由来するものだったのだろう。
「ただ、この怪獣の作り方には欠点が存在します。生まれる怪獣は強力になりますが、その分自分の魂を削ることになります。怪獣を作れば作るほど、ザノン本人の魂は減っていくんです。だから、作る魂がなくなれば、ザノンは怪獣を生み出せなくなるんです」
「しかし、二代目。俺たちが現れてもこの宇宙への干渉が阻まれるということは、ザノンは諦めていないのでは? 撤退するつもりなら、いつまでも干渉を続けるのは無意味だ」
「そうですよね……。もしくは、ギリギリだとしても退けない事情があるとか、ですかね?」
その言葉に、蓬は以前のアヤメとの会話を思い出す。
(相手もこの世界の希少性に気づいているんでしょう)
「希少性……」
「え?」
「あ、いや。関係あるか分からないですけど、アヤメさんが前に言ってたんです。ザノンもこの世界の希少性に気づいているって。この世界は強い怪獣が現れやすいって話も」
その話を聞いた二代目は考え込むような仕草をしたあと、口を開く。
「あくまで推測ですが、ザノンは新しい身体が欲しいのかもしれません」
「というと?」
ナイトの言葉に、二代目は自信なさそうに続ける。
「ザノンは今までたくさんの怪獣を作ってきました。恐らく魂は残り少ないはず。ですが、怪獣に入れた魂は、身体と結びつき、自我として新しい魂となります。そうなれば、再び怪獣を量産できるようになります。蓬さんの話も合わせて考えると、ザノンはこの世界で、最強の怪獣を生み出したいんじゃないんでしょうか? 怪獣は魂の器でもあります。器が丈夫なら簡単に死ぬこともなくなりますし、何よりより強力な魂に生まれ変われる可能性がありますから」
「だから、未だこの世界に残っていると?」
「あくまで推測ですが……」
「ちょっと待て。その話が本当だとしたら、さっきのより強い怪獣がまだ出てくる可能性もあるってことか!?」
ガウマの焦ったような声に、二代目は、恐らく、と頷く。
「マジかよ……」
「だとしても、俺たちのやることは変わらない。現れる怪獣を倒すだけだ」
「頼もしいです、ナイトくん! でも、本当に気をつけてください。ザノンが次にどう動くかは、私でも検討がつきませんから」
少しの沈黙が流れる。そんな中、ちせは言いづらそうにしながら質問する。
「あの……、ガメラはどうなるんでしょう? まさか一緒に討伐、とかにはならないっすよね?」
不安そうに尋ねるちせに、二代目は笑って答える。
「心配いりませんよ。皆さんの話を聞く限り、彼は人間に敵対心を持っていないどころか、人間を守ろうとしているのが分かりましたから。協力こそすれど、攻撃を加える気はありませんよ」
よかった~、と息を吐くちせ。そのちせにナイトが質問する。
「それで、そのガメラは今どこにいるのか分かるのか?」
「え? あ~、いつもは戦いが終わると、アヤメさんの持ってる勾玉に戻ってたっすよ」
そう言って、アヤメの病室に向かうちせ。他の皆もそれについていく。
そうして、アヤメの病室に入れば、そこには点滴を繋がれたアヤメが寝ていた。
「アヤメ……」
夢芽の呟きは誰の耳に届くこともなく、空気に溶ける。
ちせはアヤメのベッドの隣の机に置いてある勾玉を掴む。
「これこれ。これっすよ。ここにいつもいて……、あれ?」
ちせが言葉の途中で首を傾げる。
「どうした?」
怪訝に思ったナイトが尋ねると、ちせは不思議そうに答える。
「いや、いつもガメラが入っているときはほんのり光ってるんすけど……」
ちせの持つ勾玉は一切の光を発していなかった。感触もどこどなく冷たい気がする。
「つまり、そこには戻ってないってことか?」
「……そうなりますね」
ガウマの言葉に頷くちせ。
「マジかよ……。じゃあ、ガメラがどこにいるかも分からなければ、ガメラと話せていたソイツも寝てるってことじゃねえか」
その言葉に、その場にいる全員の空気が重くなる。これまでずっと戦い続けてきたガメラの失踪。その存在に頼れないという事実はガウマ隊の四人を不安にさせるには十分だった。
「……仕方ない。ガメラとの協力は当てにはしないほうがよさそうだな」
「だな。怪獣は俺たちだけで何とかするぞ。まあ、アヤメをこれ以上戦わせるわけにはいかないからな。あんま変わんねえだろ」
ナイトとガウマはそう言葉を交わす。そこで、ガウマは夢芽の方を向いて質問する。
「そういや、夢芽に聞きてえんだが、ガメラとアヤメの関係はどんなもんだったんだ。サブジェクションの仕組みは聞いたが、ガメラが無理やりアヤメを従わせてたってことはありそうか?」
その質問に夢芽は首を横に振る。
「……それはないと思います。ギロンとの戦いで、ガメラはアヤメの意思関係なく、サブジェクションでのリンクを強制的に切ってました。怪獣を倒すために従わせてるなら、あそこで切る意味はないでしょうし、むしろガメラはアヤメにダメージがいかないように繋がりを切ったんじゃないかと思います」
そうか、と返すガウマ。
「なら、信頼できそうだな」
そう言うガウマの顔は笑っていた。
その後、ガウマたちと話した蓬たちだったが、連日怪獣との戦いに巻き込まれている蓬たちを気遣ったガウマの提案で、一旦それぞれの家に帰ることになった。
といっても、蓬は自分の家に帰る前に夢芽を家まで送るためについていっているのだが。
今の夢芽は一人にさせられない。蓬はそう思い、夢芽の隣を歩いていた。
「あのさ、蓬」
「なに?」
夢芽の呼びかけに返すと、夢芽は下を向いたまま言う。
「私に付き合わなくていいよ。一人で帰れるし」
「そうはいかないよ。今の夢芽は、なんというかほっとけない。一人にさせたくない」
「私にそんなことされる資格はないよ」
夢芽は蓬の言葉をキッパリ拒絶する。
「アヤメはさ、怪獣にみんな奪われて、それでここまで戦い続けてきた。でも、その戦い方は自分を顧みないものばかり。本当だったら、友達とか家族がいれば止めてたんだろうけど、アヤメは全員失ってる。だから、それは私の役目のはずだったんだよ。でも、私は止められなかった」
夢芽の足が止まる。
「……あの時。バイラスが街を壊していた時、私はアヤメに戦ってほしくなかった。でも、アヤメに蓬や家族のこと言われて、アヤメを止めることを躊躇っちゃった。きっとアヤメは、私に自分からアヤメより大切なものを選ばせたかったんだよ。自分のことなんか気にかけないで、って」
夢芽は袖で目元を拭う。
「……蓬、どうしよう……? 私、アヤメ選べなかった。もう、あの子を止める資格なんかなんかないよ……」
そう言う夢芽の顔はとても辛そうで。蓬は何かを考えるより、夢芽を抱きしめていた。
「……大丈夫だよ。まだ間に合う」
「……もう遅いよ」
「遅くない。だってあれは、アヤメさんが夢芽に自分が答えてほしいほうに答えさせたものだもん。夢芽の本心にはならないよ。それに……」
「……それに?」
「夢芽はまだ、自分の言葉で思いを伝えてないじゃん。まだ伝えてないなら、夢芽には手を握る権利はあるよ。止めたいなら止めようよ。もう俺たちには、それを言うだけの力がある」
「蓬……」
「明日、ガウマさんに言ってみよう。もう一度、ダイナゼノンで、って」
うん、と小さな声で頷く夢芽の頭を撫でる。アヤメは夢芽の友達だ。蓬だって、助けられるなら助けたい。
それに、その気持ちを持ってるのは夢芽だけじゃない。自分もアヤメが死ぬところは見たくない。
すると、夢芽が顔を上げて、こちらを見てくる。その瞳は何かを決意した顔だった。
「あのさ、蓬」
「なに?」
「ちょっと力を貸してほしいことがあるんだけど……」
蓬は夢芽の提案を聞く。
「……なるほど。いいんじゃない、それ?」
「ホント?」
「うん。それなら、さっそく始めよう」
「うん!」
夢芽の返事を聞いて、蓬たちは帰路へとついた。
フジヨキ台上空。誰の目にも、レーダーにも知覚されない存在が、確かに浮いていた。
高度な光学迷彩とレーダー透過装置を常時展開しながら浮いている宇宙船、ザノン号。それの主であるザノンは先ほどの戦闘を思い出していた。
この世界に来たときに存在自体は把握していたが、ついに現れたダイナレックスとグリッドナイト。情報によれば、あのハイパーエージェント、グリッドマンたちの仲間らしい。
だとすれば、ハイパーエージェントたちに自分の存在が勘づかれたのだろう、とザノンは判断した。
計画の成就まであと少しだ。ここで邪魔をされるわけにはいかない。ここは残りの全戦力で邪魔をするべきだろう。
そう判断したザノンはさっそく準備に取りかかる。フジヨキ台の空で、透明なザノン号はしかし、静かに動き始めた。
翌日、ガウマ隊の四人は再び病院に集められていた。
皆に少し遅れる形で、最後に蓬と夢芽が合流する。
「お前ら遅いぞ。どこ行ってたんだ?」
「ごめんないさ。ちょっと寄るとこあって、そこ寄ってたら遅くなっちゃいまして」
二人を咎めるガウマに、蓬は顔の前で手を合わせて謝罪する。
一方、全員が揃ったことを確認したナイトが口を開く。
「全員揃ったな。先ほど、怪獣の反応を検知した。恐らくザノンの怪獣だろう。今のところ、姿を見たという声は聞かないが、間違いなくあと少しで現れるだろう。そこでだ」
ナイトは一度言葉を区切り、一呼吸置くと蓬たちを真っ直ぐ見て言う。
「もう一度、俺たちとともに戦ってほしい。この現状では、お前たちの力が必要だ」
ナイトに続き、ガウマも頭を下げて頼み込む。
「俺からも頼む。平和に暮らしていたお前たちをまた戦いに巻き込むのは、本当に申し訳ないと思ってる。だが、俺たちにはお前らが必要だ! だから頼む! 俺たちともう一度、一緒に戦ってくれ!」
ガウマは頭を下げたまま、蓬たちに頼み込む。
しかし、蓬たちは一言も発さない。
「……?」
ガウマがゆっくりと顔を上げると、蓬たちは皆、笑っていた。
「何かと思えば、そんなことっすか」
「ちょっと拍子抜けだったな」
「緊張して損した」
ちせ、暦、夢芽が各々、ガウマに喋り出す。
「そんなことって、お前らなあ……」
「ガウマさん」
名前を呼ばれて、蓬のほうを向くと、蓬は呆れたような、それでいて嬉しそうな顔をしてガウマを見ていた。
「俺たち、とっくに一緒に戦う覚悟出来てますよ。というか、ガウマさんたちがこの世界にやって来た時点で、一緒に戦うつもりでいましたから」
「お前ら……」
「ガウマさんは申し訳なく思ってるかもしれないですけど、そんなことありません。俺たちだって悔しかったんです。怪獣と戦うのをガメラとアヤメさんに任せっきりにして。俺たちにもその力はあったのにって。だから、一緒に戦おうって言ってくれて嬉しいんです。もちろん、怪獣と戦うのが危ないことなのは分かってます」
でも、と蓬は続ける。
「ガウマさんたちが一緒なら、何も心配はありません。ね?」
その声に、三人も頷く。
それを聞いて、ガウマは大きく息を吐きながら、頭の後ろを乱雑に掻く。
「……ったく、お前らは。なら、頼むぞ、お前ら!」
「「「「はい!!」」」」
ガウマの声に、四人は息ぴったりで返事する。
「話はまとまったようだな。では、これからについてだが……」
そんなナイトの台詞を遮ったのは、外からの轟音だった。
ナイトが病院から外を見ると、街には怪獣の影があった。ただし、
「怪獣が、四体だと……!?」
街にいた怪獣は四体だった。眼前の街では、四体の怪獣がところせましと暴れ回っていた。
「なっ!? あれって……」
「うそ……、なんで!?」
蓬と夢芽が驚愕の声を上げる。その顔と言葉に、ガウマが二人に尋ねる。
「お前ら、あの怪獣知ってんのか!」
その問いに答えたのは、同じく窓からその景色を見ていたちせだ。
「知ってるもなにも、あれって今までガメラが倒してきた怪獣っすよ!」
「なっ…!?」
「なに!?」
その言葉に驚くナイトとガウマ。
言われてみれば、昨日聞いた怪獣たちと特徴が一致する。空を飛ぶ赤鳥、ギャオス。地を這う紫紺のトカゲ、ジャイガー。川を泳ぐ白銀のエイ、ジグラ。頭に凶刃を携えた四足獣、ギロン。その四体が街を破壊していた。
「でも変だ。目が赤くない……!」
そう呟いたのは暦だ。微妙な変化だが、今までの彼らは目が血のように赤かった。しかし、今目の前にいる怪獣は、全て目が黒い。というより、光を失っているように見えた。
その話を聞いたナイトは一つの仮説を提唱する。
「もしかしたら、コピーかもしれないな。魂を入れずに作った、今までの怪獣のクローン。それなら、一気に呼び出せたことも説明がつく」
そうこうしているうちにも、ギャオスの超音波メスが、ビルをいくつも切り裂く。
「クソっ! あんま話している余裕もなさそうだな! お前ら、準備はできてるか!」
ガウマの言葉に、全員が頷く。
「なら、コイツらを渡すぞ。いや、返すっつったほうがいいか?」
そう言いながら、ガウマは蓬たちの手に渡していく。それは、ダイナレックスもといダイナゼノンのパーツたちだった。
蓬にはダイナソルジャー。夢芽にはダイナウイング。暦とちせにはダイナストライカー。そして、ガウマはダイナダイバーを握りしめる。
「よし、全員でいくぞ!」
ナイトのかけ声に全員が頷き、ナイト以外の五人がそれぞれのパーツを空に掲げる。
「アクセスモード! ダイナソルジャー!」
「アクセスモード! ダイナウイング!」
「「アクセスモード! ダイナストライカー!」」
「アクセスモード! ダイナダイバー!」
そのかけ声とともに、街に四つの光が散る。それを確認したナイトも、目を光らせて巨大化する。
「ハアッ!!」
空に散った四つの光は再び一つとなる。そして、各パーツは変形し、一体の竜人を組み上げていく。ダイナソルジャーの口が展開し、目を光らせながらその顔を露わにする。そして、全てのパーツが一つになった瞬間、中の五人は叫ぶ。
「「「「「合体竜人! ダイナゼノン!!」」」」」
街に巨大な竜人。そして紫の巨人が、再び降り立った。
今更ですがアヤメの生活費について後書きに書くのを忘れてましたので、ここで書いておきます。
アヤメの生活費ですが、全て彼女のスマホで支払われています。
アヤメのスマホにはガメラから授かったオリリウムが組み込まれており、充電が切れることがありません。
また、そのオリリウムを介して電子マネーが必要な分増やされるので、アヤメは金欠になりません。
不正発行? なんのこったよ(すっとぼけ)。