DYNA&GAMERA -Rebirth-   作:くろしゅー

13 / 16
投稿遅れてしまって申し訳ありません。予想以上に筆が進みませんでした。
とはいえ、物語も佳境ですので、もう少しだけお付き合いください。



第10話 新世界より

 

 

 

 

 

 

 地上に降り立ったSギャオスとフルパワーグリッドマンがぶつかる。両者一歩も引かないぶつかり合いだが、若干Sギャオスが優勢だった。

 というのも、Sギャオスとフルパワーグリッドマンでは、大きさに圧倒的な差があったのだ。もちろん、フルパワーグリッドマンも64mの巨体なのだが、Sギャオスはその全長が300mを超えていた。

 なので、フルパワーグリッドマンは、もはや頭と組み付いているといっても過言ではないような状況になっていた。

 とはいえ、サイズが大きいだけあって、Sギャオスの動きは鈍重だ。

 一瞬の隙を突いて、フルパワーグリッドマンは肘打ちを叩き込む。頭が地面に沈み込んだSギャオスから距離を取り、肩の二門のドリルを展開する。

 

「ツインバスター……」

『グリッドォォォ……』

 

「『ビィィィィィィィィム!!!』」

 

 放たれた二つのビームはSギャオスに直撃し、Sギャオスを爆炎で包んでいく。Sギャオスは翼で何とか防ごうとするも、防ぎきれずに後ろへ後退する。

 

『これで決める! フルパワー、チャージ!』

 

 グリッドマンのその言葉と同時に、剣に黄金のエネルギーが集まる。そして、ギロンを葬ったあの一撃を、再び放つ。

 

「「「「『グリッドォォォ……、フルパワー、フィニーッシュ!!』」」」」

 

 その一撃は確実にSギャオスを捉えていた。巨大な黄金の光剣は真っ直ぐSギャオスへと振り下ろされ。

 

 そして受け止められた。

 

『なに!?』

 

 Sギャオスの翼の付け根。そこから突如、超振動ブレードの付いた腕が生えてきたのだ。二振りの超振動ブレードで必殺技を受け止めたSギャオスは、それを弾き返す。

 

 だが、Sギャオスの変化はこれだけで終わらなかった。全身が脈打つように蠢き、凄まじい勢いで体細胞分裂が進む。皮膚は次々と剥がれ、背中からはジャイガーの背びれのようなものが、皮膚を突き破って出てくる。顔のエリマキトカゲのような反射膜はより強靱そうなものとなり、ツノも生え、足はよりがっしりとしたものへと変化する。

 更には、腹の辺りからも足を生やし、四つ脚へと。尻尾は伸縮自在のジグラのようなものへと変化。腰からは、バイラスの黄金の触手が生えてくる。

 

 ついに変化が鎮まったSギャオスのシルエットは、ケンタウロスのように四つ脚に二つの腕、悪魔のようなギャオスの翼を背中に持つ異形の怪獣へとなっていた。

 

「な、んだ、これ……」

 

 裕太の掠れた声が全てを物語っていた。大きさこそSギャオスのときより少し縮んでいたが、その姿はとても禍々しく、おぞましいものだった。

 

「これは……、様々な怪獣の特徴が見られる」

「は? じゃあ、合体したってことかよ?」

 

 マックスの言葉にそう尋ねるボラー。だが、キャリバーがそれを否定する。

 

「い、いや、違う。お、恐らくあれは、取り込んだDNAから再現したものだろう」

「なるほどね。だから、一回別の怪獣に集める必要があったってわけか」

 

 ヴィットが納得したように言う。

 

 その時だ。グリッドマンの額のランプが点滅しだす。どうやら、残された時間はあまり無いらしい。

 

「マズい、時間が! 急いであの怪獣を倒さないと!」

 

 裕太の声に全員が頷く。相手が何であろうと、臆してはいられない。ここで自分たちが退けば、あとに残るのは破壊だけだ。

 

 フルパワーグリッドマンが動き出すのを確認したSギャオス。いや、もはやSギャオスの原型を無くし、新たに生まれ変わった、殺戮融合怪獣『ザノン』は、口を大きく開ける。

 口内が赤く光り、超音波メスがフルパワーグリッドマン目掛けて放たれる。その威力は先ほどより更に上昇しており、地面を抉りながら突き進む。

 

『くっ!』

 

 フルパワーグリッドマンはかろうじてそれを回避。同時に、数十発のバスターグリッドミサイルを発射。ミサイルが雨のようにザノンに降り注ぐが、ザノンは全く気にする様子もなく、フルパワーグリッドマンに突っ込んでくる。

 そうして振り下ろされる超振動ブレードを受け止めるフルパワーグリッドマン。しかし、横から、もう片方の腕の超振動ブレードが胴体に叩き付けられる。

 

『ぐわぁっ!』

 

 地面を転がるフルパワーグリッドマン。そこにザノンは、二つの超振動ブレードを向ける。そうすると、二つのブレードの間に高出力の電磁波が生まれ、そこから青白い光線が放たれる。

 マイクロ波シェルとも呼ぶべきこの破壊光線は、付近にあった建物ごとフルパワーグリッドマンを吹き飛ばす。

 その光線は、フルパワーグリッドマンの防御力を持ってしても、何発もは耐えられない威力を誇っていた。

 

 じりじりと追い詰められるグリッドマンたち。ザノンは、トドメを刺そうと駆け出そうとした。

 

 しかし、それを阻む影が二つ。

 

 

「「「「「させるかあああああ!!」」」」」

 

 

 横から割り込んできたダイナゼノンとゴルドバーンの蹴りを食らい、足を止める。

 

「待たせちまったな、大将! こっからは俺らも戦うぜ!」

『ダイナゼノン……! ああ、ともにいくぞ!』

 

 フルパワーグリッドマンはダイナゼノンに並び立つ。その上にはゴルドバーン。

 その並びに、ザノンは怯むことなく超音波メスを放つ。

 

 しかし、仲間が揃った彼らには掠りもしない。三体はそれぞれ別方向に避けて、ザノンに突っ込んでいく。

 

 最初に到達したのはゴルドバーン。上から自身の爪で攻撃をする。ザノンがそれを振り払おうとしていると、両側からダイナゼノンとフルパワーグリッドマンの拳が叩き込まれる。

 

「ガァ……!」

 

 初めて苦悶のような声を上げたザノンの隙を逃がすメンバーではない。ダイナゼノンは、自身の砲塔を全てザノンに押しつける。

 

「「「「「ダイナゼノン、フルバースト!!!」」」」」

 

 ダイナゼノンの一斉射をゼロ距離で食らい、よろけるザノン。そこに、フルパワーグリッドマンが両拳を向ける。

 

「マックス……」

『グリッドォ……』

「『ビィィィィィィィィム!』」

 

 放たれたマックスグリッドビームが直撃し、地面に倒れるザノン。

 それを確認したフルパワーグリッドマンは剣を構え、全身にエネルギーを集める。

 

『今度こそ終わりだ! フルパワー、チャージ!』

 

 全身が黄金に輝きだすフルパワーグリッドマン。先ほどは撃てなかった必殺技を今度こそ当てるべく、エネルギーを充填していく。

 もちろん、それを黙って見ているザノンではない。触手にエネルギーを集め、バイラスのときより数段威力の上がった荷電重粒子ビームを放つ。

 

 しかし、それを阻んだのはゴルドバーン。盾形態となって荷電重粒子ビームからフルパワーグリッドマンを守る。

 攻撃を防がれたことに苛立ったザノンは、更にビームの出力を上げようとする。

 

「「「「「させるか!」」」」」

 

 だが、それもダイナゼノンが飛びかかって阻止する。ザノンの体に組み付いて、必死に妨害する。

 

「大将! 俺たちが止めてる間にやれ!」

『だが!』

「心配すんな! 俺たちならこれくらい、どうってことはねえ! それより、今のチャンスを逃すな!」

『……分かった。レックスたちを信じよう!』

 

 その言葉と同時に、エネルギーのチャージが完了する。ゴルドバーンもあと少ししか持ちこたえられない。

 

 決めるなら、今しかない。

 

「「「「『グリッドォォォ、フルパワーフィニーッシュ!!!』」」」」

 

 そうしてダイナゼノンを避けるように放たれた横薙ぎの一撃と、ゴルドバーンが吹き飛ばされて荷電重粒子ビームがフルパワーグリッドマンに当たったのは同時だった。

 

 

 

 

 互いの必殺技が互いに命中し、両者の立っていた場所で同時に爆発が起こる。

 

 フルパワーグリッドマンは、荷電重粒子ビームの直撃で合体が解除され、グリッドマンと四つのアシストウエポンが地面に落ちる。

 

 一方のザノンも、グリッドフルパワーフィニッシュによって上半身と下半身がキレイに

 切断され、その体が地面に横たわる。

 

 

「ギリギリ……、大将たちの勝ちみたいだな……」

 

 ザノンのすぐ横に倒れていたダイナゼノンから見ていたガウマがそう言う。ほぼ相打ちのような形だったが、グリッドマンたちのほうは無事だ。

 

「これで、やっと……」

 

 

 

 

 

 

 ガウマがそこまで呟いたときだった。

 

 上空から放たれた光線の一撃がダイナゼノンを貫く。

 

「「「「「っ!? うわああああああ!!」」」」」

 

 その一撃により、ダイナゼノンは四つのパーツへとバラバラにされる。

 

 さらに。

 

 

『っ!? 避けろ、みんな!』

 

 グリッドマンが叫ぶと同時。ダイナゼノンの各パーツを取り囲むように、赤い檻のようなバリアが展開される。

 

「えっ!?」

 

 蓬が驚いている間にシールドは閉じ、上空へと上がっていく。

 

「クソっ! こっから出せ!」

 

 ダイナダイバーがビームで攻撃するも、バリアはビクともしない。

 他の皆も各々の攻撃手段で攻撃するが、バリアにはヒビ一つ入らない。

 

「ダメ……、攻撃が効かない……!」

 

 夢芽が呟く。ダイナゼノンの五人は、バリアに完全に閉じ込められる形となる。

 

 そして、目標はダイナゼノンだけではなかった。

 

「うわっ!?」

「くっ! しまった!」

 

 ボラーとマックスの声に、グリッドマンが振り返れば、アシストウエポンたちもダイナゼノンのパーツと同じようにバリアに捕らえられていた。

 

「皆さん!」

 

 裕太は叫ぶ。いつも頼りになる新世紀中学生が捕らえらたとなれば、冷静ではいられないだろう。そして、それが隙となってしまう。

 

「裕太! 後ろだ!」

「えっ?」

 

 蓬の声に、グリッドマンとともに後ろを振り返れば、その瞬間に凄まじい衝撃が二人を襲う。

 

「うわあっ!」

 

 グリッドマンが地面を転がる。何が起きたのかと顔を上げてみれば、そこにはザノンが立っていた。

 

『なん、だと……』

 

 それだけではない。ザノンの横にはもう一体、四足歩行の怪獣がいる。二体の怪獣がグリッドマンを睨み付けていた。

 いや、違う。よく見ると、ザノンだと思っていた怪獣は二足歩行だし、四足歩行の怪獣の胴体はよく見れば、先ほどのザノンの下半身、四つ足だったところと同じだ。さらに、四足歩行の怪獣は、ジャイガーによく似た顔に鼻先の一本角、背中からはジャイガーの背びれと、バイラスの触手が生えていた。

 

「まさか……」

『分裂したのか!』

 

 そう。ザノンの体は、先ほど切断された上半身からは二つの足を、下半身からは頭を生やしたのだ。バイラスの能力を応用して出来た、一回限りのザノンの奥の手であった。

 

 二足歩行になったザノンAと、四足歩行のザノンBは連携してグリッドマンを攻撃しだす。

 もはや体力をほとんど使い切ったグリッドマンにそれを捌くだけの力はなく、一方的に攻撃されてしまう。

 

 

『ぐぅ……』

 

 ザノンAの超振動ブレードに飛ばされ、大地を転がるグリッドマン。

 

 もはや、万事休すかと思われた、その時だ。建物の瓦礫を押しのけて、ゴルドバーンがザノンAにタックルを仕掛ける。

 さらに、グリッドマンの後ろにパサルートの入り口が広がる。

 

『っ!?』

「そこに飛び込め! グリッドマン!」

 

 グリッドマンの足元から聞こえた声は、巨大化によって隣に並ぶ。

 

『グリッドナイト!』

 

 再変身したナイトはグリッドマンの声に答えず、グリッドナイトストームをザノンBに撃ち、それによってザノンBが足を止めているうちに、グリッドマンとともにパサルートへと入る。

 

『皆、すまない!』

 

 その言葉を残して、グリッドマンとグリッドナイトはこの世界から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 グリッドマンたちを逃したザノンだったが、二体は追おうとはしなかった。それよりも今は、もう一体の邪魔者を排除するのが先だった。

 空中を飛び回るゴルドバーンを、ザノンBは尻尾の回転攻撃で地面へと叩き落とす。

 

「クゥゥ……」

 

 地面に落ちたゴルドバーンだったが、すぐさま立ち上がってダイナストライカーが捕まっているバリアに体当たりをする。

 バリアには波紋が浮かぶだけで、傷一つつかない。そうしていれば、ザノンAがマイクロ波シェルで撃墜する。

 それでもゴルドバーンは起き上がる。再びバリアに近づいて、今度は噛みついて破壊しようとするも、文字通り歯が立たず、ザノンAに叩き伏せられる。

 

「ゴルドバーン! いい! 私たちはいいから! 君も逃げて!」

 

 ちせはそう叫ぶも、ゴルドバーンはまた飛ぼうとする。

 もちろん、何回もさせるザノンでもない。今度は飛ばれる前に、荷電重粒子ビームを撃ち込む。

 

 そうして、ゴルドバーンが何度目かのバリアへの攻撃をしようとしたところで、突如、ゴルドバーンの動きが止まる。

 ちせだけでなく、その場にいた全員が何があったのかと見ていると、ゴルドバーンが呻きだす。まるで何かに抵抗するようにもがいた後、ゴルドバーンが大人しくなった。

 

「ゴルドバーン?」

 

 ちせの声にも答えない。すると、急に再起動したかのように動き出したゴルドバーンは、突風を起こして、その場から逃げ去っていく。

 

 ザノンAとザノンBが舞った砂や土を払ったときには、ゴルドバーンの姿は見えなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、……やってみるもんだね。意外とドミネーションも上手くできた」

 

 フジヨキ台の病院の屋上。そこにはアヤメが手すりにもたれかかっっていた。腕には小型化したゴルドバーン。

 

「君がちせちゃんの言っていたゴルドバーンだね。会えて嬉しいよ」

 

 アヤメはゴルドバーンの頭を撫でる。ゴルドバーンのほうはどこか不満そうだが、それでも手を払う気はなさそうだった。

 

 

 

 

 

 

 アヤメが目を覚ましたときには、外では怪獣と巨人たちが戦っていた。

 アヤメはその巨人たちを知らなかったが、そのうちの一体が、前に見せてもらったダイナゼノンの写真とそっくりだったことから、あれがダイナゼノンとグリッドナイトだということはすぐに理解できた。

 

 彼らがなぜか蘇っていた怪獣たちと戦っている状況を理解したアヤメは、もちろんすぐに戦おうとした。

 しかし、勾玉にガメラはおらず、テレパシーも通じなかった。ガメラの気配自体は感じるから死んでいるわけではなさそうだが、戦える状況ではないことは分かった。

 

 ガメラがそうなってしまっては、アヤメに出来ることはなかった。

 そうして戦いを見守っていれば、ダイナゼノンとグリッドナイト、それに途中からやって来たグリッドマンの活躍で、怪獣は全て倒されたかに思われた。

 だが、ザノンの宇宙船から放たれたビーム砲によって、ダイナゼノンはやられ、そのパーツやグリッドマンに合体していたパーツは、ザノンの宇宙船が放った捕獲用のバリアに捕らわれてしまった。

 

 かろうじてグリッドマンとグリッドナイトは逃げ切れたが、殿として残ったゴルドバーンは、無謀にもダイナゼノンたちを助けようとしていた。

 明らかに無茶だ。ザノンA、ザノンBに攻撃され続けるゴルドバーンを見て、そう感じたアヤメはゴルドバーンを撤退させるため、ドミネーションを使った。

 

「インスタンス・ドミネーション!」

 

 最初こそ抵抗したゴルドバーンだったが、アヤメはちせの名前を出しつつゴルドバーンを説得した。

 

(キミの友達を助けるチャンスなら、まだある! だからよく考えて! 今ここでキミが死んでも、ちせちゃんを悲しませるだけだよ!)

 

 アヤメの言葉に感じるところがあったのか、ゴルドバーンは抵抗を止め、アヤメの指示に従って撤退した。

 自身の縮小光線を自分自身に使うことで、サイズを小さくして姿を隠し、アヤメの手元に着地したのがついさっきの出来事。

 

 

 

「さて、これからどうしようかな……」

 

 アヤメは手すりに寄りかかりながら、空を見つめる。そこに浮いている、いくつものバリアの檻。

 直接見たわけではないが、恐らくあそこには夢芽たちが乗っているのだろう。それなら、早く助け出してやりたい。だが。

 

「ガメラが来てくれないとどうにもならないなぁ……」

 

 そう。頼りのガメラがいない今、アヤメには手の出しようがないのだ。

 

(それに、多分、サブジェクションを使えるのはあと一回が限界。ってことは、次の戦いでガメラに檻だけでも壊してもらわないと、割とマジでマズいかも)

 

 アヤメはそう思考する。サブジェクションを使えるのはあと一回。なんとなくだが、感覚的に分かるのだ。

 それは次の戦いで自分が死ぬことだと、アヤメはなんとなく感じた。

 

(命を使い切ることに抵抗はないけど、さすがに犬死にはしたくないし。この子と頑張るしかない、か)

 

 アヤメはゴルドバーンの頭を撫でる。

 

 色々と考えたが、どのみちガメラが来てくれないと動きようがない。

 それなら、ガメラが来てくれたあとの作戦を考えるべきだろう。

 

「じゃあ、この作戦でいこうかな」

 

 アヤメは頭の中で思い描いた作戦をまとめ、ゴルドバーンに話しかける。

 

「じゃあゴルドバーン。よく聞いて。ちせちゃんたちを助ける作戦なんだけど、まず決行日時はガメラが来たタイミング。それに合わせて始める。まず、私はガメラと繋がって檻を破壊する。多分、ガメラの電磁パルスなら、あのバリアも破壊できるはず。その後は、私たちもできる限り怪獣たちと戦うから、ゴルドバーンは、とにかくバリアを破壊するまでガメラを守り切ってほしいの。できる?」

 

 アヤメの問いかけに、ゴルドバーンは頷く。

 

「よし、良い子だね。さすが」

 

 アヤメは自分の手を広げながら、ゴルドバーンに忠告するように言う。

 

「私は多分、次サブジェクションを使ったら死ぬと思う。だから、チャンスは一回だけ。絶対にそこで成功させる」

 

 広げた手を握りしめ、アヤメはゴルドバーンを見る。

 

「そんなわけだから、ゴルドバーンも気を引き締めて……」

 

 アヤメがそこまで喋ったときだった。ゴルドバーンが突如、アヤメの髪に噛みつき、そのまま引っ張りだす。

 

「クエエエエエ!!」

「いたっ! ちょっ、痛い痛い! 痛いって! なになになに!?」

 

 アヤメはゴルドバーンの行動の意図が分からず、なんとかなだめようとする。

 

「クエエ! クエエエ!」

「どうしたの!? いたっ! な、んでそんな、怒ってんの!? イタタタタっ!」

 

 声の感じから怒っているのは伝わるのだが、肝心の何に怒っているかが、アヤメには分からなかった。

 

「なんで怒るの~!? 作戦に不満でもあった?」

 

 アヤメがそう言うと、ゴルドバーンは髪を引っ張るのを止め、何度も頷く。

 

「え? そうなの? どこが不満だった? ガメラが来るまで待てないとか?」

 

 アヤメの答えに、ゴルドバーンは首を激しく横に振る。

 

「ええ~……? じゃあ、なにが不満……?」

 

 お手上げといった感じで、アヤメはゴルドバーンに尋ねる。すると、ゴルドバーンは翼でしきりにアヤメを指し示す。

 

「私? 私が問題? まあ、確かにあと一回しか戦えないのは不安だと思うけど……」

 

 そう言うと、ゴルドバーンはまた首を横に振って、怒りながらアヤメを軽く蹴る。

 

「うええ? じゃあ、えーと……」

 

 アヤメはいくつも候補を考え、ゴルドバーンに言っていく。そして、次々と否定するゴルドバーン。

 そんなやり取りを何度もして。

 

「えっと、じゃあ私が死ぬのが嫌、とか?」

 

 アヤメは冗談っぽく言ったが、ゴルドバーンはその答えを肯定する。

 

「え、ホント? 冗談で言ったんだけどな……。でも、なんで? 私が死んでもキミに不利益はないと思うんだけどな……」

 

 アヤメは理由を考え、一つの予想が浮かぶ。

 

「……もしかして、私がちせちゃんの友達だから?」

 

 するとゴルドバーンは、ようやく我が意を得たりといった感じで、強く頷く。

 

「なるほどね。優しいねぇ、キミは」

 

 ようやく理由が分かったアヤメは、ふう、と息を吐きながらゴルドバーンを撫でる。

 

「けど、その理由なら要望には応えられないかな」

 

 その言葉に、は?とでも言ってそうな顔で、ゴルドバーンはアヤメを見る。

 

「まあ、キミになら言ってもいいか。 私ね、そんなに生きる気力もないんだ。ガメラと再会したのだって、自殺したくて逃げなかったら、そこにガメラが飛ばされてきただけだった。でも、そこで私も出来ることがあるって分かって、ああ、これが私の生き残った意味なんだって思ったよ」

 

 アヤメは勾玉を手の上で、ゆっくりと転がす。

 

「お母さんも、妹も、友達の皆も、私は誰も救えなかった。力があったのに。そんな自分が嫌になっちゃってね。でも、ガメラに救ってもらった命をただ捨てるわけにはいかないでしょ」

 

 だから、とアヤメは空を見て笑う。

 

「こうやって命を削って戦って死ねれば、私は自分を許せると思うんだ」

 

 アヤメは空の視線を、バリアの檻に向ける。

 

「分かってたよ、夢芽たちが私のこと心配してくれてたのは。でも、それを受け取る資格は私にはない。……本当は仲良くするつもりもなかったんだけどね。夢芽が妹に重なっちゃって。あの子たちの好意は無碍にできなかったんだよね。そしたら、案の定、夢芽たちは私を心配して、戦わないように言ってきた。なんとか話を逸らしてたつもりだったんだけどな」

 

 失敗失敗、と頭を掻くアヤメ。

 

「でも、もう友達になっちゃったから。私は絶対に夢芽たちを救いたい。それで死ねるなら、私にとっては万々歳なんだよ。だから、ゴルドバーン。申し訳ないけど、キミのお願いは聞けない」

 

 もう一度、アヤメはキッパリとゴルドバーンの提案を拒絶する。

 

「大丈夫だと思うよ。夢芽にも、ちせちゃんにも、支えてくれる人たちが周りにいるから。皆に悲しませる情を芽生えさせたことは謝るけど、きっと乗り越えていけるよ」

 

 アヤメは笑って言う。言葉だけみれば、皆に前を向いてほしい人の言葉なのに、ゴルドバーンには、どうしても半ばヤケクソで言っているようにしか聞こえなかった。

 

「クエ!」

 

 パチン、と尻尾でアヤメの頬をはたく。アヤメの顔が横へと振れる。

 

「……ごめんね」

 

 それでも、アヤメは謝罪の言葉を言うだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最初の記憶は、培養カプセルの中からの景色だった。そのカプセルの外では、二足歩行の生物たちが忙しなく動いていた。その生物を人間と呼ぶのだと知ったのは、それからしばらく後のことだ。

 外から聞こえてくる声を聞いていれば、自分が『ザノン』と呼ばれていることが分かった。人間たちは難しいことを言っていてよく分からなかったが、自分が『怪獣』と呼ばれる存在だということは、その時点で理解できた。

 

 

 

 それから言葉を学習して、ザノンは色々なことを知った。怪獣は自分以外にも沢山作られていること。そして自分たちの役目は、人類文明の浄化であること。自分は怪獣たちが暴れたときのための、司令塔を担う存在だということ。そのため、他の怪獣より知能が発達していること。

 彼らはザノンが覚醒してからも、様々な遺伝子プログラムを仕込んでいった。それにザノンは適応し、次々と知識を蓄えていった。

 そして、その知識は、ザノンに反逆を考えさせるには十分な量だった。

 

 

 

 

 ザノンは研究員がいなくなった後も、独自に情報収集をしていた。ザノンには、機械への干渉能力があった。それはザノンを作り出した者たちすら知らない能力であった。

 ザノンはその能力を駆使して、学習をしていった。まずは研究データから、自分のことを知ることができた。自分の身体は、マリモのような姿をしていた。それがいくつもある細菌のような体の集まりで、それを統合意識が操っていることも知った。

 さらにデータベースに潜り、より情報を集めた。自身も含め、怪獣は活動にオリリウムという鉱物が必要なこと。すでに人類浄化計画は発動まであと少しまで進んでいること。その間、我らの創造主はどこへ逃げようとしているか。そして、役目を終えれば怪獣たちは用済みであり、共食いの末、長くは生きられないことも。

 

 

 

 そんな時だった。ザノンに干渉してくる存在がいた。その存在は、自身をバイラスと名乗った。

 ザノンはその名を知っていた。人類浄化計画の要の怪獣であり、他の怪獣より先に外に出て、今も生け贄の子供をたらふく食っている怪獣である。

 バイラスは協力を申し出てきた。バイラスも、このまま人間たちの思い通りに朽ちるつもりはないらしかった。

 ザノンはその申し出を受けた。今のところ、最強の怪獣を敵に回すことにメリットなどなかったからだ。

 

 だが、協力するつもりもなかった。結果など目に見えている。人間を滅ぼせば、今度は自分が食われる番になるだけだ。ザノン自体は、戦闘力がほとんどない怪獣である。一応、司令塔の役割を持っているため、自身の体を他の怪獣の体内に侵入させれば、意のままに操る能力は持っている。だが、今の力で操れるのはギャオスなどの弱い怪獣だけである。自我も確立しているバイラスを操るなど夢のまた夢だった。

 そのため、ハッキングやクラッキングでバイラスの望むトラップを作りつつ、ザノンは自身の計画を秘密裏に進めた。

 

 

 

 

 

 

 そうして月日は流れ、バイラスは自身の計画を実行に移した。人類浄化計画に乗じて創造主諸共、人間を皆殺しにしようとした。

 後に『ヘムエデンの雷』と呼ばれる、荷電重粒子ビームの攻撃は都市をあっという間に焼き尽くした。わずか1時間ほどの出来事だった。

 

 

 ザノンにとってこれは誤算だった。まさかここまで圧倒的だとは思わなかったのだ。このままでは、バイラスの一人勝ちになってしまう。

 

 そう考えあぐねていたときだった。一匹の怪獣がバイラスを攻撃した。

 その怪獣を、ザノンは知っていた。

 

 ガメラ。

 

 怪獣たちの中でも強力な一体だったヤツだ。我らの創造主とは別の派閥が奪取したとの情報があったが、それが他の怪獣と敵対していたのだ。

 

 その好機を逃す手はなく、ザノンは自身の計画を発動させた。

 

 

 

 あらかじめDNAを書き換えたギャオスで、創造主である研究員たちを殺し、仕込んでいたバックドアからコードを送信。創造主たちが脱出用に建造した宇宙船を奪取した。

 ギャオスの一匹に寄生したザノンは、その体で研究所から脱走。宇宙船の乗員は配下のギャオスで殲滅した。

 そして、奪えるだけのオリリウムと怪獣のデータ、そして怪獣の卵を宇宙船に乗せ、ザノンは地球を脱出した。ザノンが最後に見た地上では、人間の手で復活したガメラが怪獣たちを殲滅する光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 それから、ザノンは数万年の時の中で数多の宇宙を旅した。自身の頭脳と創造主たちが残した科学技術を用いて、宇宙船はいつしか多次元宇宙航行すら可能になっていた。

 しかし、問題もあった。

 ザノンの体だ。ザノン自身は貧弱な怪獣だ。ギャオスの体で凌いでいたが、宇宙空間での暮らしは不自由そのものだった。それに、成長や回復にオリリウムを使用しない肉体も欲しかった。オリリウムは他の宇宙では採取不可能な鉱物だったからだ。

 

 

 

 

 そのため、強い怪獣を生み出すために、数多の宇宙で怪獣の卵をばらまき、強い怪獣を生まれさせようとした。

 しかし、結果は納得のいくものではなかった。あの世界以外では、怪獣は上手く育たなかった。せいぜいギャオスが生まれるくらい。他の怪獣は卵から目覚める気配すらなかった。

 更に言えば、オリリウムも減る一方だった。オリリウムは、怪獣を孵化させるためにも必要な鉱物だ。だが、オリリウムが採取出来ない以上、別の手を考える必要があった。オリリウムに依存しない、怪獣の生み出しかたを。

 

 

 

 そんな中、ザノンはとある情報を手に入れた。

 

 その情報とは、カオスブリンガー現象。感情を基にし、怪獣の種を生み出す。その種は情動を吸収し、やがて怪獣となる、というものだった。

 これぞ、まさしくザノンの求めていた情報だった。

 ザノンはさっそく実践した。自身の魂を削って種を作り、怪獣に植え付ける。すると、今まで以上に怪獣が言うことを聞くようになった。もはや、自身の手足ともいえる。

 

 ザノンは侵略を増やした。これなら、強い怪獣はしばらく必要ないと。

 

 

 

 しかし、その考えはすぐに打ち砕かれる。

 

 ザノンを邪魔する者が現れたからだ。

 

 

 

 名をガメラ。

 

 自身が脱出した星で滅びに抗っていた怪獣と同じ存在が、自身の前に立ちふさがったのだ。

 ギャオスでは、ガメラに勝てなかった。いくら亜種を生み出しても、最後には勝たれてしまう。

 ザノンに残された手は一つだった。他の怪獣たちを孵化させること。ガメラに対抗するにはそれしかなかった。

 

 

 

 

 そうして、怪獣を受け入れる宇宙を探して数百年。

 ザノンはようやく怪獣の育成にピッタリの宇宙を見つけた。

 なぜなら、故郷の星を脱出してから一切の反応をしていなかった、そして計画の要であるSギャオスの卵が孵化の予兆を見せたからである。

 これを知ったザノンは、何者に邪魔されても、ここで計画を完遂し、邪魔なガメラを撃滅することを決意した。

 

 その星のネットワークに侵入してみれば、どうやらダイナゼノンと呼ばれる存在が怪獣と戦っていたらしい。

 それを知ったザノンはいくつもの作戦を立て、実行した。

 

 まずは、Sギャオスが孵化するまで時間を稼がねばならない。

 そのため、まずはダイナゼノンたちの妨害がないように、別宇宙からの干渉を防ぐ、遮断シールドをこの星に展開。

 

 また、四体の怪獣の卵に、自身の怪獣の種を仕込み、この世界に投下。

 この怪獣たちには、できるだけガメラを消耗させることを理想とし、ガメラの陽動を担ってもらった。

 それと、怪獣たちを大幅にパワーアップさせるコード持ち、この世界では怪獣使いと呼ばれる子どもの捜索も任せた。

 また、ザノン自身はバイラスに潜むことにした。最悪、自分の船が見つかった場合、壊されても自身が生き残り、相手にザノンは死んだと思わせられる作戦だった。

 そうして、いざというときのためにオリリウムで作ったプロテクターを纏い、バイラスの中で、他の怪獣の状況を見守っていた。

 

 結果として、コード持ちのほうはガメラに死守されてしまったが、ガメラを消耗させることはできた。

 あとはガメラを殺すだけだったのだが、ここでダイナゼノンをはじめとしたハイパーエージェントたちが乱入。さすがにザノンも冷や汗をかいたが、Sギャオスの孵化が間に合い、グリッドマンを撃退できた。

 ダイナゼノンに至っては、バラバラにした上でバリアに幽閉することすら出来た。

 

 

 全体的な結果としては、ザノンの作戦勝ちと言えるだろう。

 

 

 

 

 あとはこの肉体を完成へと導き、取り逃したガメラを殲滅すれば、この宇宙での計画は達成である。

 

 夢にまでみた肉体に心を躍らせながら、ザノンは計画の最終段階、最後の作戦を完遂するために、動きだした。

 




・ザノン
 とある宇宙の太古の地球。その超古代文明によって作られた、人口調整用の怪獣の一体。他の怪獣が人を殺すことを目的に作られる中、その怪獣たちを制御する司令塔になることを期待されて生み出された。そのため戦闘力こそないが、他の怪獣以上に知能が高い。それゆえ、創造主たちを裏切り、地球から脱出。
 マリモのような姿だが、それは細菌のような肉体が幾千も集まってそのように見えているだけで、実際はその肉体一つ一つがザノン本体である。しかし、思考は一つに統合されており、肉体一つ一つ全てが同じ思考で動く。この性質を利用して、怪獣の体内に肉体を寄生させれば、その怪獣の思考も誘導できる。カオスブリンガーを知ってからは、自身から生み出した怪獣の種を、肉体と同時に怪獣たちの卵に植え付けることで、より正確に、より手足のように指示を出せるようになった。
 宇宙を旅するうちに、最強の肉体を欲するようになり、最強の怪獣を生み出すことを目的に行動するように。ギャオスの特別変異体であるSギャオスを素体にしようとしているため、Sギャオスの孵化が出来そうな、蓬たちの宇宙に目を付けた。



・殺戮融合怪獣ザノン
 体高:85メートル 全長:160メートル 体重:18万トン

 本作オリジナル怪獣。かねてよりザノンが計画していた究極の怪獣。その完成形。Sギャオスをベースに、バイラスに集結させた各怪獣のDNAを取り込み、強みとなる部分を身体に発現させた。四足の脚に二つの腕といった、ケンタウロスのようなシルエットとなっている。Sギャオスより全体的に小さくなっているものの、パワーはSギャオスを遙かに上回る。各怪獣の能力が使えるだけでなく、ザノンの遺伝子改造により、更なる能力を行使することができる。


 ようやくオリジナル怪獣を出せました。安直な合体怪獣ですが、やっぱラスボスは合体怪獣じゃないとね。
 ちなみにザノンの回想で書いた過去は、ガメラリバースの台詞から想像した完全な捏造です。なので、公式から正解が発表されたら齟齬が発生する可能性が大いにありますが、そこは生暖かい目で流してくれると幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。