DYNA&GAMERA -Rebirth-   作:くろしゅー

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ガメラもグリッドマンもピンチになることが多いですが、ガメラは気合いで何とかし、グリッドマンは仲間に助けられて何とかします。意外と対照的ですね。



第12話 夏への扉

 

 

 

 

 

 

 フジヨキ台に飛来したガメラは、高度を下げ、更に加速する。

 

 向かう先にいるのは、ザノンB。

 

 

 

 しかし、ガメラはそのまま突き進み、ザノンBの上空を通過した。

 

 

 

 ガメラが向かう先は、その奥にある、バリアの檻。ザノンBを無視して、ガメラはそこへ一直線に進んでいた。

 

 だが、それを許すザノンBではない。背中から虹光線を発射する。虹光線は正確にガメラを捉え、その身体に直撃する。

 

 虹光線が直撃したガメラは、バランスを崩し、地面へと墜落する。

 砂塵が巻き上がり、近くの建物は振動で崩れる。

 

 ザノンBは、その四つ足で地面を駆け、ガメラの元へと向かう。

 一方のガメラも立ち上がり、咆哮をあげるも、その声はどこか弱々しかった。当然ではあるが、傷も体力も回復はしていない。かろうじて動けるようになっただけだ。腕も再生できていない。

 それでも、ガメラは一歩も引かず、ザノンBと真っ正面からぶつかり合う。

 

 衝突の衝撃波が、フジヨキ台を駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

 その様子を見ていたアヤメも動き出す。重い体を引きずって、ガメラの姿がよく見える場所まで移動する。

 

(さっきのガメラ……。明らかにバリアに向かってた。やっぱり、バリアを何とかできる方法があるんだ! なら、あとは私が援護すれば……)

 

 何とか目的地にたどり着いたアヤメは、ゴルドバーンに指示する。

 

「じゃあゴルドバーン! 作戦通りよろしくね! 私がガメラと繋がったら、ガメラの援護を!」

 

 そう言って、アヤメは手を構える。

 

「インスタンス・サブジェクション!」

 

 その台詞とともに、アヤメは指を開く。

 

 

 

 

 

 しかし、アヤメの体に変化は生じなかった。いつもサブジェクションをするときに来る感覚が来ないのだ。

 つまり、ガメラと繋がれていない。

 

「あれ? インスタンス・サブジェクション!」

 

 もう一度試してみるが、やはりダメだ。

 

「なんで……」

 

 原因を考えるが、全く思い当たらない。こうなったら、最初からリンクを強めてでも、やるしかない。そう思い、アヤメはもう一度手を構える。

 

「くっ! インスタンス・サブ……! ゴホッ、ゴホッ!」

 

 そうしてガメラと繋がろうとした瞬間、ガメラから明確にサブジェクションを拒絶される。反動で咳こみ、地面に座り込む。

 

「ハア、ハア……。なんで……? なんで、拒絶するの……?」

 

 ガメラはザノンBの体当たりを食らって、地面を転がる。

 どう見ても、今のガメラで勝てる相手ではなかった。それでも、ガメラはアヤメと繋がることを拒んだ。

 

「ちょっと……! 何してるの! 今やんないと、負けちゃうんだよ! あなただって、死んじゃう! だからお願いガメラ!」

 

 アヤメはもう一度、サブジェクションを試みる。それでも、結果は同じだった。ガメラはアヤメを受け入れなかった。

 

「どうして……? もう、私に価値はないってこと……?」

 

 そう呟くアヤメの袖を、隣で見ていたゴルドバーンが引っ張る。

 

「なに……?」

 

 ゴルドバーンは、翼でアヤメを宥めるように撫でると、咥えていた夢芽からの手紙をアヤメに押しつけ、一声だけ鳴いてから、アヤメの元を飛び立った。その声は、そこにいろ、と言っているようで、なんだか置いていかれた気分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 ゴルドバーンは自身に巨大化光線を浴びせ、元の大きさへと戻ると、ガメラに追撃しようとするザノンBに体当たりをする。

 

「グアアア!!」

 

 攻撃を邪魔されたザノンBは怒ったように、ゴルドバーンへ咆える。ゴルドバーンは一切怯むことなく、ザノンBと対峙した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方のツツジ台。

 街には二つの巨影の姿があった。片方はグリッドマン。もう片方はザノンA。両者の戦いは熾烈を極めていた。

 

『グリッドライトセイバー、スラッシュ!』

 

 グリッドマンはアクセプターから光剣を作り出し、ザノンAに斬りかかる。

 しかし、ザノンAは片手でそれを受け止め、反対の腕の超振動ブレードで、グリッドライトセイバーをたたき折る。

 

『なに!?』

 

 驚くグリッドマンに、ザノンAは腰から生えている触手を伸ばす。触手はグリッドマンの両腕に巻き付き、高圧電流を流し込む。

 

「『うわああああっ!!』」

 

 裕太とグリッドマンの絶叫が響く。グリッドマンの抵抗が弱くなったことを確認すると、ザノンAはグリッドマンを空中へと放り投げる。

 それと同時に、両腕の超振動ブレードにプラズマを貯め、マイクロ波シェルを発射する。放たれたそれは、落下するグリッドマンを確実に捉え、空中で大爆発を引き起こす。

 

『がはっ!』

 

 グリッドマンが地上に落下したところを見計らって、ザノンAは間髪を入れずに、口からSギャオスの高出力超音波メスを放つ。それは地上に落下して跳ねたグリッドマンのすぐ横を通り過ぎ、一瞬遅れてから、超音波メスの通り過ぎたところが爆発を起こす。

 

「なんだよ、コイツ……」

「裕太……!」

 

 戦いをジャンクから見ていた内海と六花はそう呟く。

 そう、戦いは一方的だった。全ての能力が上昇したグリッドマンでも、ザノンAは難なく対応してきて、一方的に攻撃されるようになってしまった。

 

 

 

『くっ! グリッドォォォ……』

 

 グリッドマンは一発逆転を狙って、腕にエネルギーを集約させ、アクセプターを相手へと向ける。

 

『ビィィィィィィィム!!!』

 

 アクセプターから、極彩色のグリッドビームが放出される。

 それに対し、ザノンAは焦りも見せず、冷静に翼を構える。すると、翼が発光し、ザノンAの前方に、バイラスと同じバリアが展開される。

 グリッドビームはそのバリアにぶつかり、ヒビを入れることすらできずに止められてしまう。

 

 そして、ザノンAはお返しとばかりに、触手をパラボラアンテナのようにして、先端から荷電重粒子ビームを放つ。

 そのビームはグリッドマンごと、周りのビル群を焼き払う。

 グリッドマンは後ろへ転がる。立ち上がれば、ザノンAはゆっくりとこちらに近づいてきている。

 

『ぐっ! スパークビーム!』

 

 グリッドマンは牽制として、光弾を拳から連射する。

 しかし、ザノンAのほうも胸部が発光し、そこから液状弾と鱗弾を連射する。

 激突する両者の弾は、連射力の高いザノンAが押していき、そのままグリッドマンは押し切られてしまう。

 

 

 

「くそっ! グリッドマンの攻撃がなにも効かない! なんなんだ、アイツ!」

 

 内海は悔しそうに叫ぶ。二代目も険しい顔で戦いを見つめる。

 

「マズいですね……! せめて拮抗状態に持っていければ、と思っていたんですが、これでは、ガメラの出現前にグリッドマンがやられてしまいます!」

 

 その言葉を聞いたナイトは、フラつく足で立ち上がり、店の出口へ向かう。

 

「ナイトくん? どこへ行くつもりですか!?」

 

 二代目の言葉に、ナイトは空にあるパサルートを指す。

 

「俺はまだ戦えません。ですが、向こうに行くくらいなら出来ます。せっかくヤツらが開けてくれた穴です。活用しない手はない」

 

 二代目は一瞬止めようとして、その手を下げる。そして息を吸い込むと、ナイトにタブレットを託す。

 

「それでは、お願いします! ガメラを確認したら、そのタブレットで連絡してください!」

「はい。二代目も気をつけて」

 

 そう言って、ナイトはパサルート目指して走り出した。

 

 

 

 

 

 

 ザノンBとガメラ・ゴルドバーンの戦いも、ザノンBの優勢だった。

 

 動きの鈍いガメラを尻尾の殴打で転倒させると、ゴルドバーンの光線を背中の触手から発生させたバリアで防ぐ。そして、触手同士の間に膜を張ると、それを翼代わりにして、重力操作と合わせて空を飛んだ。

 上空で光線を撃っていたゴルドバーンは迎撃しようとするも、爪での攻撃は易々と躱され、ジグラのように伸びたザノンBの尻尾に首を締められる。

 ゴルドバーンを捕らえたザノンBは、そのまま急降下。ゴルドバーンをその勢いのまま、ビルに叩き付ける。

 

「クエエエ……」

 

 瓦礫に沈んだゴルドバーンを見ていると、横から火焔弾をぶつけられる。しかし、ザノンBとって、それはかすり傷にすらならない。

 ガメラもそれを分かっているようで、何とかゴルドバーンから注意を逸らすために、火焔弾を連射する。

 それに対し、ザノンBは背びれから虹光線を上空に向けて撃つ。

 それに反応して上を向いたガメラの隙をついて、ザノンBは尻尾の先端にあるジャイガーと同じ棘で、ガメラの足に穴を開ける。

 

「ゴアアッ!」

 

 足へのダメージでガメラが膝をつくと、そこに先ほどの虹光線が雨のようになってガメラに降り注ぐ。

 

「ゴアアアアアアッ!」

 

 その攻撃を食らい、ガメラは地面に倒れ伏す。戦況は、ザノンBの独壇場だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザノンAの猛攻に苦しめられるグリッドマン。

 六花と内海はジャンクを通して彼らを応援するが、それでも戦力差は埋まらない。気合いと根性でザノンAに食らいついている状態だった。

 

 と、そこで二代目のタブレットに連絡が入る。ナイトからだ。

 

「ナイトくん! 無事、向こうに着けましたか!?」

「ええ! ですが、それより大事なことが!」

 

 ナイトがそう言うので、なんだろうと思うと、ナイトは彼らに衝撃の事実を伝える。

 

「ガメラがもう戦っています!」

「「「え、ええええええ!?」」」

 

 ナイトの言葉に驚く三人。ガメラが出現するまで耐えられるのかが最大の不安だったが、これならもう心配はない。

 

「わ、分かりました! では、ナイトくんはそのままそちらで待機していてください! グリッドマンをそちらに向かわせます!」

「了解です!」

 

 二代目はナイトへの指示を伝えると、今度はジャンクに話しかける。

 

「グリッドマン! 裕太さん! 今の話、聞こえてましたね!」

『ああ!』

「はい!」

「では、作戦通り、ガメラのことはよろしくお願いします! その怪獣ごとパサルートを通ってください!」

 

 二代目の言葉にグリッドマンが頷くと、ザノンAがグリッドマンに突進する。

 ちょうどいい。この勢いを利用させてもらおう。

 グリッドマンはそう考え、ザノンAが突っ込んでくるのを、構えて待つ。

 

 そうして、相手が十分近づいたところで、グリッドマンも走り出す。ザノンAとぶつかる勢いで走っていき、ザノンAの液状弾が飛んできたところで、スライディング。そのままザノンAの足下に潜り込む。と同時に、溜めていたグリッドビームを発射。

 至近距離ではバリアを張れなかったザノンAは、グリッドビームをもろに食らい、上空へと打ち上げられる。

 それを確認すると同時にグリッドマンも飛翔。ザノンAを掴むと、そのままパサルートへと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 眼下で繰り広げられるガメラとザノンBの戦い。それを蓬たちはバリアの中から見ていた。

 

「いけ、ガメラ! 頑張れ! ゴルドバーンも、踏ん張って!」

 

 先ほどから声を張り上げて応援しているのはちせ。贔屓怪獣たちが頑張っているこの状況で、黙っているというのは彼女に出来なかった。

 

 そして、ちせのような大声を出さずとも、懸命にガメラを応援しているは夢芽。その心情は怪獣を倒してほしいというだけでなかった。

 

(ここでガメラが勝ってくれれば、アヤメは戦わなくて済む! だから、お願い!)

 

「頑張って……! ガメラ!」

 

 ガメラがアヤメのサブジェクションを拒絶しているのは、直接は見ていなくても何となく分かった。

 ガメラの心を読むことは出来ないが、ガメラもアヤメには死んでほしくないんじゃないか。夢芽はそう考えていた。だから、有利なるにも関わらず、アヤメとリンクしないのではないか、と。

 

 だが、それは怪獣に勝てなければ意味がない。そして、今のガメラでは、ザノンBと勝負にすらなっていなかった。

 ザノンBの一撃に地面を転がるガメラ。もはやガメラは息も絶え絶えの状態だった。

 

「ガメラ! くそっ!」

 

 蓬はダイナソルジャーでバリアを叩く。それでも、バリアには少しのヒビも入らない。

 

(くっそ! このままじゃ、ガメラが殺される! でも、このバリアがあっちゃ、何も出来ない!)

 

 なにかないか、と考えるも、こういうときに限って良い案は全く浮かばない。

 

 地上では、ついに立ち上がれなくなったガメラに、ザノンBが一歩ずつ近づいていく。

 

「ヤバい! ガメラ、逃げて!」

 

 ちせの悲鳴も虚しく、ザノンBはガメラの元にたどり着く。ゴルドバーンはダメージで、動けそうにない。

 ザノンBは触手を集め、そこに荷電重粒子ビームのエネルギーをチャージしていく。

 

 

 

 避けられない。

 

 

 

 誰もが諦め、目をつぶったときだった。

 

 空に開いたパサルートから、何かが飛び出す。

 それは、弾丸のような勢いで、ザノンBへとぶつかる。

 

『ネオ超電導キック!!』

 

 パサルートから飛び出したもの。それは、グリッドマンのネオ超電導キックで蹴り飛ばされたザノンAだった。

 

 ザノンAとぶつかったザノンBは、そのままザノンAごと、グリッドマンに蹴り飛ばされる。

 

 相手が吹き飛んだことを確認した裕太は、蓬たちにも聞こえるように、目いっぱいの力で呼びかける。

 

「皆ー! 皆の声を貸してくれ! 皆の声を、ガメラに届ける! ガメラにもう一度立ち上がってもらうために、皆のガメラを信じる心を使わせてくれー!」

 

 その声と同時に、蓬たちの腕にアクセプターが装着される。

 正直、原理や因果関係は全く理解できなかった。それでも、ここで裕太が、一緒に戦った親友が嘘をつく可能性なんて思いつきもしなかった。

 他の皆も同じ気持ちなのだろう。蓬を含め、全員が頷く。

 蓬はアクセプターに向かって叫ぶ。

 

「裕太ー! こっちは準備オッケーだ! だからガメラを頼むー!」

 

「っ! 分かった! やろう、グリッドマン!」

『ああ! いくぞ、皆!』

 

 理屈なんか関係ない。今までガメラには何度も救われた。なんでガメラが自分たちを、人類を守ってくれるのかは分からない。けど、理屈で説明できなくても、ガメラは命を張って守ってくれたんだ。なら、今度はこっちも、理屈なんか抜きでガメラを助ける番だ。

 

「「「「「「アクセ-ス、フラーッシュ!!!!」」」」」」

 

 裕太とガウマ隊の声が揃う。

 

 そして、皆の心を束ねたアクセプターが、ガメラへと触れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「おおー……。ホントにガメラだ……」

 

 少女の声で、ガメラは目を開ける。辺りを見渡してみれば、どこまでも白が続く、何も無い不思議な空間だった。

 

 ガメラが辺りを探っていると、下のほうから先ほどの声が聞こえる。

 

「あ、おーい! こっちこっち。下だよー!」

 

 その声に従い、ガメラが下を向くと、そこには一人の少女が立っていた。

 赤紫ががった短い銀髪に、どこかの学校のものと思われる制服。その上には、紫のパーカーを着ていた。

 だが、ガメラはその少女に心当たりがなかった。

 すると、ガメラの思ったことが分かったのか、少女は口を開く。

 

「あ、そうだよね。私のことなんか知らないよね。でもね、私はあなたのこと、よく知ってるよ」

 

 まあともかく、と言って、少女は顔を上げて、ガメラを見る。その瞳は、キレイな赤い色をしていた。

 

「自己紹介しよっか。私は新条アカネ。よろしくね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分が初めて彼と会ったのはいつだっただろう。きっと、大好きな怪獣映画を見ているときのどこかだったはずだ。

 新条アカネは怪獣が好きだった。ウルトラシリーズを見ていても、注目するのは怪獣のほう。怪獣が出てくると嬉しかったし、怪獣を応援したことだってあった。

 悪役ではあった彼らだが、それでも見た目とその力強さに惚れ込んだ。カッコイイと思った。

 

 その中でも、子どものアカネが特に好きだった一つが、ガメラシリーズだった。

 

 ガメラは怪獣でありながら、子どもを、人類を守るために戦っていた。例え、どれだけ傷つこうと、守るべき人類に攻撃されても、それでも人を守ろうとするガメラの姿は、アカネの心に強く焼き付いた。

 怪獣だから人と言葉なんて通じない。怪獣だから敵だとされる。それでも、その逆境の中でも子どもを守るガメラの姿に惚れたと言っても良かった。

 

(すごい……。あんなにボロボロになっても守ってくれるんだ……! カッコイイ……!)

 

 アカネが見る作品で怪獣はいつも悪役。そんな怪獣でも、ヒーローになれると思わせてくれるガメラは、ある意味アカネの希望だった。

 

 

 

 

 それからどれくらい経った時だっただろうか。中学生になったアカネは、久しぶりにガメラの映画を見た。

 

 しかし、出てきた感想は、嫌悪感だった。

 

 アカネ自身、その感情に戸惑った。なんで、面白く感じないんだろう。昔はあんなに面白く感じたのに。

 

 

 

 

 そうして悩みに悩んで、アカネは一つの答えにたどり着いた。

 

(そっか……。私、ガメラが怖いんだ……)

 

 嫌悪感の正体。それは恐怖だった。ただし、ガメラの見た目が怖いわけではない。

 中学生になって、アカネも純粋でいられなくなった。人付き合いが面倒になったし、昔より汚いことも沢山考えるようになった。

 だから、映画に出てくるような、純粋で立派な少年少女たちを見る度に頭をよぎってしまうのだ。

 

 私って、ガメラに守ってもらえるような人間なのかな。

 

 

 それ以来、ガメラの目が怖くて、ガメラの映画を見なくなった。家にあったガメラのフィギュアも、押し入れの奥に丁寧にしまった。

 そうしてアカネは、ガメラから少しずつ離れていった。

 

 

 

 

 

 だが、それが決定的になったのは、アレクシス・ケリヴとともに、自身の作った箱庭に引きこもり、怪獣で「遊び」だしたときだ。

 

 

 ある時、ムカついた人間と街で出会ったアカネはその人間を殺すために、いつものように怪獣を作っていた。

 

(この前は四足歩行型の怪獣にしたし、その前は王道の恐竜タイプ。じゃあ次は……)

 

 アカネは浮かんだアイディアをもとに、怪獣のフィギュアを作成した。

 亀をモチーフにした怪獣は、自分でも良くできたと感じるほどの完成度だった。

 

(やっぱ亀系怪獣も外せないよね~。キングトータスとか、エレドータスとか! あと……)

 

 そうして思い出したのは、記憶の奥で埃を被っていた、ガメラの記憶だった。

 

 ガメラのことを思い出すと、封じていた感情も一緒に溢れてきた。

 

(何やってんだろ、私。)

 

 あの時考えたことを思い出す。今の自分は、ガメラが守ってくれるような人間だろうか。助けてもらえるような存在だろうか。

 

(そんなワケないじゃん……。怪獣作って、街壊して。むしろ、ガメラに倒される側だよ、私……)

 

 そう考えたとき、自分の作った怪獣のフィギュアと目が合う。まだ実体化してもいないのに、その怪獣の目は、自分を非難しているように見えた。

 

 手が止まったことを疑問に感じたのだろう。共犯者のアレクシスは、PC画面から話しかけてくる。

 

「アカネ君? それで完成かい? 今回もよく出来てるじゃないか。どれ、さっそく……」

 

 アレクシスはそう言って、アカネの怪獣を実体化させようとする。

 アカネは咄嗟にそれを拒んだ。

 

「待って!」

「おっと! どうしたんだい?」

 

 アレクシスが不思議そうに聞いてくる。だが、アカネは答えるのが面倒くさくなって、ぶっきらぼうに答えた。

 

「その怪獣、やっぱりナシ。ボツ」

「そうなのかい? せっかく良く出来てるのに……。まあ、アカネ君がそう言うのなら構わないけどね。では、次の怪獣は、どんなものにするんだい?」

「……作んない」

「え?」

「やっぱいい。今回はナシ。また次のとき、よろしくね」

 

 そう言って、アカネは部屋から出た。そのままベッドに倒れ込んで、思考を放棄する。

 いつもは楽しい、怪獣による破壊と殺戮も、今は気分を悪くするものでしかなかった。

 

 

 

 

 

 その日から、アカネは作る怪獣に亀モチーフを禁止した。亀系怪獣にすると、どうしてもガメラの影がチラつく。彼に街を破壊させるというのは、怪獣好きのアカネとしてはどうしても受け入れられない一線だった。

 

 そして、怪獣の目にも拘るようになった。絶対に意思を感じさせない目。間違っても、心を覗いてくるようなことをしない目。それを心がけて怪獣を作るようになった。

 

 

 

 

 だから、アンチに対しても辛く当たるようになった。どれだけ拒絶しても傷つけても、自分に手を伸ばそうとする彼に、ガメラの影が少し重なった。

 決してガメラのような怪獣を作らないようにしていた、という点でも、やはり彼は失敗作かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 アカネがフジヨキ台の異変に気づいたのは、本当に偶然だった。

 いつものゴミ拾いボランティアの帰り。親友の暮らすツツジ台の様子を覗きたくなったのだ。それが親友の思いを裏切ることになるかも、と悩んだ末、気づかれないようにこっそり覗くくらいなら許してくれるかな、と結論づけ、覗くことにした。

 結果、ツツジ台自体は特に変わった様子もなく、平和そのものだったが、アカネには少し違和感があった。

 自分が深入りすべきではないとも思ったが、親友が危ない目に遭うよりは、とその違和感の正体を探ることにした。

 

 そして原因は、この宇宙をモデルにして誕生した宇宙の一つにあることが分かった。その宇宙には、以前マッドオリジンと一緒に戦った人たちが暮らしていた。それだけでも驚きだったが、さらに驚いたのは、その宇宙にガメラがいたことだった。

 

 平行世界がある以上、もしかしたら、なんて考えたことがなかった訳ではなかったが、実際に目にすると、凄まじい衝撃だった。

 ガメラは映画と同じように、人々を守るために戦っていた。空を飛び、火を吐くその大怪獣は映画そのままで、とてもカッコよかった。アカネは、ウルトラマンガイアの映画の勉少年はこんな気持ちだったのかな、と思った。

 

 しかし、戦いが進むごとに、ガメラはボロボロになっていった。ある意味では映画通りではあったが、アカネとしては気が気でなかった。それと同時に、ガメラと同じように気になったのは、ガメラとともに戦う少女の姿だった。

 彼女もガメラと同様、戦いを経るごとにどんどん弱っていった。それこそ、いずれ死んでしまいそうになるほど。

 アカネはなんとかガメラたちの助けになりたかった。結界が張ってあるようだったが、この程度なら、干渉のための隙間を作るぐらいなら出来る程度のものだった。

 

 だが、アカネの気持ちは重かった。理由は単純。ガメラが怖かったからだ。

 今までは映画の中の存在だと割り切れていたが、実際に干渉するとなると、ガメラとも対面しなければならない。

 その時、ガメラに見捨てられてしまったら。助ける価値のない存在だとされてしまったら。その考えがよぎると、アカネは勇気が出なかった。干渉しようとすると、呼吸が荒くなって、どうしても覚悟が決められなかった。

 その間にも戦いは進み、ガメラはギロンのような怪獣にかなり痛めつけられてしまった。その様子を見ていたアカネは、せめてもの代案として、結界に穴を開けやすい隙だけ作って、あとは彼らに託すことにした。自分を外の世界へと、背中を押してくれた彼らに。

 

 しかし、彼らも敵の罠にかかり、捕まってしまった。それだけでなく、アカネの親友がいるツツジ台にも侵略の手は伸び始めた。

 その絶望的な状況でも、それに抗うために戦っていたのはガメラだった。もはや巫の少女の援護すら受けられない、というより死なせないために受けずに戦っていた。だが、今のガメラでは勝ち目がない。

 

 今、ガメラの窮地を救えるのは自分しかいなかった。

 

(助けないと……! ……そうだ。助けるんだ、私が。ガメラを!)

 

 これまでたくさんもらった勇気を、今使わなくてどうする。そう覚悟を決め、グリッドマンがアクセプターで皆の心を繋いだのを利用して、アカネはフジヨキ台に、ガメラに干渉した。

 

 

 

 

 

 

 そうして対面したガメラ。

 ガメラは正面からアカネを見下ろしている。

 

 やっぱり怖い。自分はガメラに助けてもらえるような子どもではなくなってしまった。協力を申し込んで拒絶されたら。そう考えると、声が出なくなりそうになる。

 それでも、アカネは声を振り絞る。

 

「単刀直入に言うね。私、ガメラを助けたいの。ガメラ、一緒に戦わせてくれる?」

 

 アカネのその言葉に、ガメラは首をかしげる。どうやら、なぜ自分を助けようとするのか分かってないようだった。

 

 それはもちろん、映画で見てきたあなたの力になりたいから。そう答えようとして、アカネはその言葉を飲み込んだ。きっとガメラはそんな言葉を望んでない。きっとガメラなら……。

 

「理由はね、友達を助けたいの。私を外に送り出してくれた、大切な友達だから。だから、私に力を貸して、ガメラ……!」

 

 ガメラは黙ってアカネを見つめる。

 どうだろうか。自分の気持ちはガメラに届いただろうか。

 

 沈黙に耐えられなくなり、アカネは俯いた。やはり自分ではダメなのだろうか。ガメラにとって、自分は敵でしかないのだろうか。

 

 

 

 

 すると、自分の周りが暗くなり、頭にゴツゴツした感触が触れる。アカネが顔を上げてみれば、ガメラが指の腹でアカネの頭を撫でていた。

 

「ガメラ……?」

 

 ガメラはアカネの頭を撫でながら、小さく鳴く。まるで、大丈夫だ、と小さい子を落ち着かせるようなその仕草に、アカネの体から力が抜ける。

 

 膝をついた拍子に、目から涙が零れた。

 

「あれ……? 泣くはずじゃ、なかったんだけどな……」

 

 アカネは流れる涙を拭って、ガメラに尋ねる。

 

「本当に、一緒に戦ってくれるの……? 私、悪い子だよ? 怪獣だって作った。街だって壊した。それでも、信じてくれるの……?」

 

 アカネのその問いかけにも、ガメラは動じることなく、ゆっくりと頷く。

 アカネを撫でるガメラの指から感じる体温は、とても温かった。

 

 

 

 

 それから少しして。ようやく涙が収まったアカネは立ち上がる。

 

「ごめんね、みっともなく泣いちゃって」

 

 それに対し、ガメラは気にする様子もなく、小さく鳴いて立ち上がる。

 

「さて、いくらここが時空が歪んでいるといっても、そろそろ向こうの世界に戻らないとね。皆、あなたを待ってる。ガメラ、準備は出来てる?」

 

 アカネの言葉に、ガメラは力強く頷く。

 

「よし! それじゃいこっか! 世界を、皆を、友達を救いに!」

 

 そう言って、アカネはガメラに手を向ける。

 やったことはないけど、自分の怪獣使いの素養だって並大抵のものじゃない。きっと上手くいくはずだ。

 そして、アカネは指の間を広げた。

 

「インスタンス・サブジェクション!」

 

 

 

 

 

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 アクセプターから溢れた光に包まれるグリッドマンとガメラ。その光はフィクサービームの成分も含んでおり、温かいピンクの光が辺りを照らす。

 

 一方の吹き飛ばされたザノンAとザノンBも、瓦礫をどけて立ち上がる。

 ガメラたちを包むその光に困惑していた両者だったが、明らかに自分たちが不利なる現象だと悟ると、すぐさま排除行動に移ることにした。

 ザノンAとザノンBは、荷電重粒子ビームを撃とうとチャージをする。

 

 

 そして、二体同時に荷電重粒子ビームを光に向けて放った。

 

 ビームは寸分の狂いなく進み、光に直撃した。

 

 

 

 

 

 

 かに思われたが、光まで後少しというところで、ビームが歪んだ。まるで何かが光を包んでいるかのように、ビームは球の表面を滑るような形で霧散していく。

 

 そのビームの散り方に、ザノンたちは心当たりがあった。重力操作を用いたバリアだ。

 

 だが、それに対しザノンたちが考えを巡らせる暇はなかった。

 

 

『グリッドォォォォォ、プラズマ!!』

 

 

 ザノンたちの思考は、光から聞こえた声によって中断する。

 

 

『ビィィィィィィィム!!!』

 

 

 光の中から放たれた、火焔を纏った極彩色の光線が、ザノンA・Bに直撃。二体とも後ろへ大きく吹き飛ばされていく。

 

「あれは……」

 

 檻の中から見ていた蓬の口から、そんな呟きが零れる。

 

 地上の光が散っていき、そこから二つの影が現れる。

 一体は巨人。そして、もう一体は怪獣。怪獣には、もう腕があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 光の跡地。そこには、並び立つグリッドマンとガメラの姿があった。

 

 

 




 ついにアカネの登場です。

 アカネの心情については、かなり独自解釈で書きました。
 個人的に、アカネの怪獣好きやアンチが生まれた経緯からして、小さい頃のアカネが一番好きだった怪獣はガメラなのでは? と思いました。怪獣でありながら、人のために身を削ってでも戦うガメラの姿は、彼女の理想のヒーローだったのではないでしょうか。SSSS.GRIDMANでアカネは、「人間みたいな怪獣は好きじゃない」や、怪獣のアンチに対して「人間みたいな目をしてる」と言っています。これらも、当てはめようと思えばガメラに全部当てはまるんですよね(その後、アンチがアカネを助けるところなんかは、モロにガメラ3ですしね)。そのため、怪獣なのに、人間以上に人間を守ろうとするガメラの強さに耐えられなくなって、このような考えに至ったのでは? と考えました。



 次回、最終回です。

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