DYNA&GAMERA -Rebirth-   作:くろしゅー

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 最終回スペシャルなので、いつもより少し長めです。



第13話 夏暁って、なに?

 

 

 

 

 

 

 

 ツツジ台の大地に並び立つ二つの巨影。

 

 この世界を守るために立ち上がったグリッドマンとガメラが、ザノンと対峙する。

 

 ガメラの右腕は再生しており、力も先ほどより段違いなほど溢れていた。

 ガメラは隣のグリッドマンを見る。それに気づいたグリッドマンが頷けば、ガメラも頷きかえす。

 初対面の両者だったが、命あるものを守ろうとする者同士、言葉はいらなかった。

 

 

 

 

 

「よっし! ガメラが復活したっす!」

「よかった……!」

 

 ガッツポーズをして、興奮気味なちせ。蓬も、裕太たちの策が成功したようで胸を撫で下ろした。暦も、言葉こそ発していなかったが、口元は嬉しそうだった。

 そんな中、夢芽は祈るように呟いた。

 

「お願い、ガメラ……! この戦いに勝って、アヤメを救って……!」

 

 

 

 

 

 地上では、吹き飛ばされたザノンAとザノンBが立ち上がる。二体とも、頭を振って瓦礫を落とすと、立ちふさがるガメラたちを睨む。

 

『いくぞ、ガメラ!』

「ゴアアア!」

 

 グリッドマンの声かけにガメラも応える。

 そして、両者は同時に走り出す。息を合わせたようにザノンたちに向かっていく。

 

 ザノンたちも大きく咆え、大地を駆ける。

 最初に前に出たのはザノンB。それに対し、グリッドマンがガメラの前に出る。

 グリッドマンはザノンBの突進を受け止め、その顎にひざ蹴りをお見舞いする。後ろへとよろけ、露わになったザノンBの腹にガメラがタックル。ザノンBを後ろへと放り投げる。

 

 その攻撃の隙を狙って、ザノンAが超振動ブレードをガメラに振るうも、ガメラは白羽取りの要領で受け止める。ならば、とザノンAはもう片方の超振動ブレードを真一文字に振る。ガメラは、掴んでいた超振動ブレードを押し返し、真一文字の一撃をしゃがんで躱す。

 すると、そこに飛び込んできたグリッドマンがガメラの甲羅を手を置いて飛び越え、ザノンAに重い蹴りを入れる。

 すると今度は、グリッドマンのほうがしゃがみ、ガメラへ射線を開ける。それを素早く認識したガメラは、怯んでいるザノンAに火焔弾を撃ち込んだ。

 

 火焔弾のダメージで後ろへと下がるザノンA。

 

 だが、それによって通った射線に、ザノンBが触手から荷電重粒子ビームをガメラたちに放つ。

 

 それに反応したガメラは、重力操作によるバリアで荷電重粒子ビームを逸らして、攻撃を防ぎきる。

 やはり、と自身の疑念を確信に変えたザノンBだったが、自身の上に影ができる。それに気づいたと同時に、グリッドマンの一撃がザノンBの触手を捉える。

 

『グリッドライトセイバー、スラッシュ!』

 

 その一撃は、荷電重粒子ビームを撃つためにまとまっていたザノンBの触手を全て切り落とした。

 

「グアア!?」

 

 ザノンBは触手を切り落とされた痛みに叫ぶ。援護に行こうとするザノンAだったが、突如後ろから引っ張られる感覚を感じる。振り返ってみれば、ガメラは自分の尻尾を掴んでいた。

 振りほどく暇もなく、ガメラに引っ張られたザノンAは、そのままジャイアントスイングの要領で振り回される。

 ガメラは何度もザノンAを振り回した後、渾身の力で投げ飛ばす。

 

 背中を合わせるグリッドマンとガメラ。両者は息を合わせて、再び駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 その戦いを、アヤメは離れたところで見ていた。

 

 ガメラは、グリッドマンと共に戦っている。そして、それを援護している誰か。アヤメにはそれが誰だか分からなかったが、誰かが巫の役を担っているのは感じ取れた。

 

(ハハ……。私も、お役御免か……。意外とあっさりだったな……)

 

 そんな感想しか出てこない。

 もう次の巫が出来た以上、自分にはもう戦う役目は回ってこない。

 

(あとはここで朽ち果てろ、ってこと? ガメラ……)

 

 アヤメはガメラを見つめる。けれど、アヤメにはガメラの考えていることなど、何も分からなかった。

 

 ガメラは戦う。人類を脅かす脅威と。どこの世界に行っても、それは変わらなくて。アヤメはその姿をずっと見てきた。それでも、ガメラがどうして人を助けようとするのか、理解できなかった。

 人類同士なら分かる。それが、自分の属するコミュニティを守ることにも繋がるから。

 だが、ガメラは怪獣だ。どれだけ賢くっても、どれだけ優しくても、種族の壁はある。

 

 ガメラはどこでだって生きていける。空、それこそ宇宙だって飛べるし、深い海の底でも。だから、本来は人類に関わる必要なんてない。

 それなのに、ガメラは人を守り続ける。

 

 昔に一度、誰かに命令されたのか、とか、そういう風に設計された人工怪獣なのか、とか考えた時もある。

 だが、彼の出自はともかく、人を守ろうとするのは、間違いなく彼の意思だ。

 それは、勾玉を通してアヤメが感じていたことだった。

 

 何の思惑もない、ただただ純粋な意思。それだけで、ガメラは戦っていた。

 

(それに比べたら、私が戦ってた理由はヒドいな。罰が欲しかったから、死にたいけど自殺は皆を裏切ることになるから。だから、ガメラと戦っていれば、いずれ死ねると思ってたんだから、見捨てられて当然か)

 

 それを認識した途端、なんだが悲しくなって、アヤメは膝を抱えた。涙は誰にも見せたくなかった。

 

 

 

 

 不意にグシャッ、という音がした。

 何かと思えば、膝を抱えたときに、手に持っていた紙を握りつぶしていた。

 ゴルドバーンが戦いに行く前、アヤメに押しつけていった、蓬と夢芽からの手紙だ。

 

 アヤメはシワになった紙を伸ばして、もう一度手紙に目を通す。

 

 一枚目は夢芽から。

 

『アヤメへ

 

 

 アヤメには言いたいことがいっぱいある。けど、全然話せなかったから、この手紙に私の想いを託すことにしたよ。

 正直、アヤメがなんでそんなにガメラと戦いたがるのか、私には全然分からない。なんで、そんなに死にたがってるのかも、私には全然分からない。

 だって、私、アヤメの気持ち、まだ全然知らないもん。アヤメの口から何も聞いてないもん。それなのに、アヤメは全部抱えて突っ走っちゃうから。だから、私、アヤメに寄り添うことすら出来ない。

 

 だから、私も好きに言わせてもらうね。

 

 アヤメ、死なないで。私はもっとアヤメと一緒にいたいよ。一緒に遊びたいよ。だって、せっかく友達になれたんだもん。その友達に死んでほしくないって思うのは、おかしいこと? 

 だから、もっと話そうよ。もっと、私に寄りかかってよ。守ってもらってばかりだったけど、アヤメが疲れたなら休める場所になりたいから。だからさ、死なないでよ。仲良くなっておいて、私だけ勝手に置いていくなんて、絶対許さないから。』

 

 もう一枚は、蓬から。

 

『アヤメさんへ

 

 

 思いは夢芽が色々書いてくれたから、俺からは少しだけ。

 アヤメさん。もう自分のことを責めないでください。俺も夢芽も、ちせちゃんたちだって、誰もあなたのこと、責めたいなんて思ってません。ガメラと戦わなきゃ価値がない、なんて思ってません。俺たちが思っているのは、感謝と一緒に遊びたいって思いだけです。アヤメさんが寂しいっていうなら、俺たちがその隙間を埋めます。

 だから、辛いかもしれないけど、自分のこと、許してあげませんか?』

 

 

 

(死なないで、か……)

 

 自分は生きててもいいのだろうか。この先、生きてて良かったと思えるのだろうか。また守れなかったら、どうなってしまうのだろうか。

 暗い妄想は、頭からこびりついて離れない。なのに……。

 

(なんでだろうな……。夢芽たちと過ごす日々を考えちゃうのは……)

 

 それだけ、まだ希望を見る力が自分にも残っているのだろうか。明日を夢見る気持ちが、あるのだろうか。

 

(明日を、夢見る……)

 

 そのとき、アヤメの中に何かがストン、とはまった。

 

(そうか……。だから、ガメラは……)

 

 これが正しいのか分からない。でも、アヤメとしては、これが正解だとしか思えなかった。

 

 

 すると、戦場のほうで轟音が響く。目を向けてみれば、ガメラとグリッドマンがザノンたちに吹き飛ばされていた。

 いくらグリッドマンのパワーが上がり、ガメラの傷が癒えたとしても、そもそもの地力の差が圧倒的なのだ。数の上では対等でも、戦局はザノンに偏りだしていた。

 

(……行かなくちゃ。私にも、まだ出来ることはある!)

 

 手紙をポケットに仕舞い、アヤメはガメラの元へ走り出した。

 

 

 

 

 

 

 ガメラとグリッドマンは劣勢に陥っていた。最初こそ連携攻撃で翻弄できていたが、向こうは元々一つの存在だ。それに比べたら、即席の連携など遊びのようなものだ。

 そうなってからは押され始め、今ではガメラが復活する前の状態と、同じような状態になっていた。

 

『くっ……。これでも、まだダメか……!』

 

 グリッドマンが立ち上がろうとすると、ザノンAの尻尾で殴打される。地面を転がるグリッドマンに超音波メスによる追撃が入る。

 ガメラのほうは、ザノンBの虹光線に苦戦していた。重力操作で荷電重粒子ビームを防げたガメラだったが、虹光線はそれだけでは防げない光線だったらしく、ガメラの物理防御すら無意味な高火力に、ただただ圧倒されるしかなかった。

 

「くぅ……! 火力高すぎでしょ、この攻撃! どうなってんの~!?」

 

 アカネはそうボヤく。サブジェクションでガメラと繋がっているためか、ガメラが光線を受けたところは、自分の体にも痛みが走る。汗を垂らしながら、アカネは呟く。

 

「というかこれ、消耗ヤバっ! ハア、ハア、これやりながらダメージも引き受けてたの!? あの子! スゴすぎでしょ!」

 

 アカネもアヤメと同様、ガメラのダメージを引き受けているのだが、それはガメラのダメージの1割程度だ。アヤメが3割だったことを考えると、アヤメの消耗具合も頷ける。

 アレクシスにドミネーションをしたときでさえ、こんなに消耗しなかった。

 やはり、怪獣に主導権を渡すというのは、並大抵で出来ることじゃないのだろう。

 それでも、アカネは嬉しそうに言う。

 

「さっすが、私の好きな大怪獣! これくらいじゃないとね!」

 

 アカネはこの難易度も、ガメラの格を表しているようで、なんだか好きだった。

 

 だが、ガメラのほうはそう考えていなかったらしく、突如ガメラからアカネにテレパシーが送られてくる。

 

「ん? どうしたの、ガメラ? ……えっ。ちょ、ちょっと待っ……」

 

 アカネの返事を聞く前に、ガメラは強制的にサブジェクションのリンクを切る。アカネは、ガメラとの繋がりから、強制的に弾き出される。

 

「……もぉー! 私はまだ大丈夫だって言おうと思ったのに……」

 

 はあ、とアカネはため息をつく。

 

「……まあ、そうやって子どもを優先しようとするのは、解釈一致だけどさ~……」

 

 アカネとしてはもう少し大丈夫だと思っていたのだが、どうやらあれでも危なかったらしい。

 こうなってしまっては、ドミネーションも受け付けないだろう。

 

「しょうがない……。あとは……」

 

 アカネは大きく息を吸って、大声で叫んだ。向こうの世界にまで届くように。

 

「頑張れ! 頑張れ、ガメラーーー!」

 

 

 

 

 

 ザノンBはチャンスだと思った。

 なぜだか分からないが、ガメラの動きが若干悪くなった。この隙を突かない手はない。

 ザノンBは長く伸びる尻尾による攻撃をガメラにする。ガメラはそれを避けようとするも、その攻撃はブラフ。本命の虹光線がガメラの回避先に放たれ、ガメラに直撃する。

 

 ガメラは大きく後ろへ飛ばされ、住宅街に突っ込む。

 

 その時だ。仰向けに倒れるガメラのもとへ、聞きなじみのある声が呼びかけてくる。

 

 

 

「ガメラ!!」

 

 

 

 その声のした方向に、ガメラは目線だけ向ける。

 

 そこには、砂と埃で汚れたアヤメがいた。

 

「ガメラ! もう一度、私と戦って!」

 

 その言葉に、ガメラはアヤメから目を逸らす。やはり、アヤメを戦わせる気はないようだ。だが、アヤメにも引き下がれない理由ができた。こんなところで引くわけにはいかない。

 

「ごめん、ガメラ! 私が間違ってた! なんでガメラが私と戦ってくれないのか、今なら分かるよ!」

 

 その言葉に、ガメラは逸らした目をもう一度アヤメに向ける。

 

「私が諦めて戦ってたからだよね? 何もかも諦めて、破滅を求めて戦ってたから。それはガメラとしても許せないよね。だって、私たちは命の未来を守るために戦ってるのに、その本人が身の破滅を望んでたら、いつか必ず大切なものを取りこぼすから」

 

 それに、とアヤメは続ける。

 

「ガメラが人を守る理由。それは、人が作る未来を守りたいからだよね? 人は他の動物と違って、未来を築いていける生き物だから。だから、人を、特に子どもを守るんだよね? だから、私をここまで連れてきたんだよね? 未来を諦めた子どもを、あなたは見捨てられてない。私に未来を向いて欲しかったんでしょ?」

 

 アヤメは勾玉を握りしめる。

 

「あの時、全てに絶望して死のうとしてた私に巫の役割を与えたのは、それを当面の目標として、私に悲しみを乗り越えて前を向いてほしかったんだよね? ……今まで気づけなくて、ごめんね。でも、やっと思い出せたよ。未来を向くって、どういうことか」

 

 その言葉を聞くと、仰向けだったガメラは、体をひねってうつ伏せになり、アヤメと視線を合わせる。

 

「私、ここでもう一度生きていきたい! 夢芽たちと一緒に、過ごしたい! ここでなら、明日を向ける気がする」

 

 だから、とアヤメはガメラに手を伸ばす。

 

「もう一度だけ、私と一緒に戦おう? 私は未来を切り開きたい。この手で。それで、夢芽たちとまた遊びたい」

 

 アヤメは、そのまま距離を縮め、ガメラの鼻先に額をくっつける。

 

 

 

「お願い、ガメラ。この世界を救って。私を、私の未来を、助けて」

 

 

 

 すると、ガメラは小さく息を吐いて、立ち上がる。

 アヤメを見つめるその目は、先ほどまでと違い、優しく、そして信頼を寄せる目つきだった。

 

「ガメラ……!」

 

 アヤメは目尻に滲んだ雫を拭って、手を構える。

 

「ありがとう……! じゃあ、いこうか!」

 

 アヤメはガメラの目に視線を合わせ、そして指を開く。

 

 

 

 

「インスタンス・サブジェクション!」

 

 その刹那、勾玉から溢れ出した光が、アヤメを包む。その光はアヤメを包み、球状になると、ガメラの体内へと吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 吹き飛んだガメラを追って、ザノンBはゆっくりと歩を進めていた。ようやくトドメを刺せると思うと、自然と舌なめずりをしてしまう。

 

 しかし、ガメラに近づくにつれて、ガメラの様子に違和感を覚える。先ほど、巫の力を借りて戦っていた時より、更に力が増しているように感じた。

 

 ガメラはゆらり、と振り返る。

 ザノンBの脳は、それに警戒信号を発した。今のガメラは危険だ、と。

 そのため、ザノンBは先ほどの余裕を捨て、即座に攻撃に移ることにした。背中を輝かせ、今出せる最大出力で、虹光線をガメラに撃つ。

 

 一方、迎え撃つガメラは、地面を強く踏みしめ、顔の先端に自身のプラズマエネルギーを集中させる。ガメラの前には青い光が集中し、次の瞬間、それは一本の奔流として撃ち出された。

 

 その光線、『荷電重粒子砲』はザノンBの虹光線と衝突、拮抗する。しかし、光線をぶつけ合う両者の気持ちは正反対だった。

 ガメラは冷静に対処するのに対し、ザノンBは焦りで動転していた。なにせ、荷電重粒子を用いたビームを、敵のガメラが撃ってきたのだから。

 自身と同じエネルギー回路を持っている以上、プラズマエネルギーを使うことは分かっていたが、まさかここまでの能力を持っているとは思わなかった。

 今まであると思っていた優位性が崩れたザノンBの心を象徴するように、虹光線はどんどん押し込まれ、ついにはガメラの荷電重粒子砲が虹光線を穿つ。

 虹光線を破った荷電重粒子砲は、ザノンBに直撃し、ザノンBは光線に押され、後ろへと転がっていく。

 

 後ろへと転がったザノンBは、グリッドマンを追い詰めていたザノンAをも巻き込む。両者を巻き込んだ荷電重粒子砲はそこで止まり、巨大な爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 爆心地には、体の所々を焦がし、地面に倒れ伏すザノンたちがいた。

 

 ガメラは、グリッドマンの元に来ると、倒れているグリッドマンに手を差し出す。

 

『っ! ありがとう、助かった!』

 

 グリッドマンはそう言って、ガメラの手を掴む。ガメラはグリッドマンを引っ張りあげ、グリッドマンも立ち上がる。

 

 一方のザノン二体も、再び立ち上がる。ダメージは負ったようだが、それでもまだ戦闘可能な範囲だった。

 

「ウソ……! あれでも立ち上がるの!?」

 

 裕太が呟く。先ほどの一撃はかなり威力があったはずだが、それでも致命傷にはならないようだ。

 激昂したザノンたちがグリッドマンたちに飛びかかってくる。

 

『くっ! やはり、私たちだけでは……!』

 

 ザノンAの一撃を何とか躱し、グリッドマンはガメラに呼びかける。

 

『ガメラ! もしキミにあのバリアを壊す力があるなら、彼らを解放してくれないか!』

 

 そう言うグリッドマンの目線の先にあるのは、蓬たちが捕らえられているバリアの檻。

 

 グリッドマンの意図を察したガメラは、飛行形態に移ろうとする。

 しかし、それをさせるようなザノンではない。ザノンBは舌を伸ばして、ガメラの首元に突き刺す。

 

「ゴアッ!?」

 

 ガメラが怯んだ隙に、ザノンBは尾を伸ばし、ガメラの尻尾に巻き付ける。例え飛行形態になっても、尻尾は収納されない。そのため、飛行形態で振り切ることもこれで出来なくなった。ザノンBは、ガメラを地上に拘束することに成功した。

 

 ザノンBの背中が光る。この至近距離なら、先ほどより重たい一撃を叩き込むことが出来る。そう思い、ザノンBはガメラに狙いをつけた。

 

 

 

 

 

 次の瞬間。

 

「グリッドナイト、乱れサーキュラー!」

 

 いくつもの紫の光輪が、ザノンBの舌と尻尾を切り刻む。

 

「グアアアアアアッ!?」

 

 舌と尾の先端から紫の血を流しながら、ザノンBは攻撃が来た方向を向く。するとそこには、目前まで迫ったグリッドナイトがいた。

 

 グリッドナイトはザノンBの首にヘッドロックをかけ、ザノンBを抑え込む。

 

「いけ、ガメラ!」

 

 ナイトの言葉にガメラは頷き、飛行形態へと姿を変え、空へと舞い上がる。

 

 

 プラズマの青白い光が尾を引きながら、ガメラは高度を上げる。と同時に、胸にプラズマエネルギーを集中させていく。

 

 ザノンAもグリッドマンに押さえ込まれたが、ザノンたちは諦めない。上空で待機している自身の宇宙船を起動し、ガメラを艦砲のビームで狙い撃つ。

 

 見事な偏差撃ちでガメラを狙った一撃は、しかし割り込んできたゴルドバーンによって防がれた。

 

「クエエエエ!!」

 

 

 

 その隙を逃さず、ガメラはバリアの檻まで到達。

 

 

 

 

 そこで、ガメラは溜めた胸のエネルギーを解き放った。それは、過去最大級の電磁衝撃波となって、バリアを襲った。その一撃は凄まじく、蓬たちを捕らえていたバリア発生装置を、物理的、システム的に完全に破壊した。

 

「バリアが……」

「割れた!」

 

 蓬と夢芽が歓喜の声を上げる。ついに解放された蓬たち。ガウマは蓬たちに問いかける。

 

「おまえら、まだいけるな!?」

「「「「はい!!」」」」

 

 その声に、口角を上げるガウマ。期待通りで、想定以上に応えだった。

 

「よっしゃ! いくぞ、大将のところへ!」

 

 全員が集い、復活した強竜はグリッドマンに向かっていく。

 

 そこへ、ザノンAの攻撃を食らったグリッドマンが空へと飛ばされてくる。

 

「裕太! グリッドマン!」

 

 蓬の叫びと同時に、ダイナレックスはグリッドマンを受け止める。

 

「裕太、大丈夫!?」

「蓬! 無事だったんだね! ありがとう!」

 

 蓬の呼びかけに、裕太は嬉しそうに答える。それを確認したガウマは、グリッドマンに声をかける。

 

「さあ、大将! まだいけるな!?」

 

 その言葉に、裕太とグリッドマンの声が重なる。

 

「『ああ、もちろんだ!』」

 

 グリッドマンは力強く頷き、そして、全員に呼びかける。

 

『今こそ全員の力、合わせるぞ!』

「「「「「はい! (おう!)」」」」」

 

 

 そのかけ声とともに、ダイナレックスは分離する。

 

 そして、グリッドナイトと同様に、次々とグリッドマンと合体していく。ザノンたちも知らない、グリッドマンの新しい手となり、新しい足となり、新しい翼はゴルドバーンが授ける。新しい武器も携えた、究極のグリッドマンがついに、顕現する。

 

「そっちが合体するなら……!」

「こっちだって!」

「全員の力と!」

「気持ちを合わせた!」

「最強の合体だ!!」

 

 暦、ちせ、蓬、夢芽、ガウマが叫ぶ。そして、全員の声が一つに重なり、その名を叫ぶ。

 

「「「「「「『超竜王合体超人!!!! ローグカイゼルグリッドマン!!!!』」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 ザノンたちの前に、ガメラとローグカイゼルグリッドマンが着地する。

 ダイナレックスと合体したグリッドマン。新たな武器、大剣『ダイナミックビッグブレード』を構え、ザノンたちと対峙する。

 

 想定外の展開に、二体は憎々しい顔でガメラを睨む。

 それでも、ザノンたちに撤退という二文字はなく、咆哮を上げると、グリッドマンたちに突っ込んでいく。

 

 対するガメラとグリッドマンも、一切退くことなく、ザノンたちを迎え撃つ。突っ込んできたザノンAをローグカイゼルグリッドマンが、ザノンBをガメラが受け止める。

 

 馬力では負けていないザノンBは、その力でガメラを押していく。ガメラも足を地面にめり込ませて踏ん張るも、ガメラの足下にはめくれ上がったコンクリートの道が出来ていく。

 

「グゥ……!」

「グアア!」

 

 だが、優勢だったザノンBに影ができる。

 

 このパターンは見切ったと、ザノンBは目もくれずに背中から虹光線を撃つ。上で爆発音がしたのを確認したザノンBは、安心してガメラとの戦いに集中した。

 が、その判断は誤りだとザノンBはすぐに気づくことになる。

 

「相手を見ることすらしないとは、油断したな! ザノン!」

 

 その声と同時に、ザノンBに上から衝撃と重量が降ってくる。

 

 その声に背中を見てみれば、背中にはグリッドナイトが乗っていた。ただし……。

 

「さっきはよくも閉じ込めてくれたな!」

「おかげで、かなり退屈だったんだけど?」

「が、合体はそちらだけの専売特許じゃない」

「こちらも全員の力を合わせていくぞ!」

 

 前回の戦いでグリッドマンと合体していたアシストウエポンたちが、グリッドナイトと合体していた。

 

「「「「「超合体騎士! フルパワーグリッドナイト!!」」」」」

 

 フルパワーグリッドナイトはザノンBに馬乗りになった状態で、ザノンBをグリッドナイトキャリバーで切り刻む。

 呻くザノンBだったが、ふと額に熱を感じ、ガメラに目線を向ければ、自身のツノを掴んでいる両手が赤熱していた。

 

 ザノンBは咄嗟に下がろうとするも、ガメラはそれを許さず、ツノに熱を与え続ける。

 

 そして。

 

 

 ボキッ、と音を立てて、ザノンBのツノが折れる。

 

「グアアアアッ!?」

 

 痛みに悶えるザノンB。そこへ、ガメラは容赦なく追撃をかける。フルパワーグリッドナイトがザノンBから飛び退いた次の瞬間、赤熱化した両手の燼滅手で、ザノンBに連続パンチを打ち込む。

 二撃、三撃と入る拳に、ザノンBは反撃する隙がない。だが、ザノンBも甘んじてそれを受け入れるつもりはなかった。

 背中から上空に虹光線を放つ。この時間差攻撃でガメラを引き剥がそうとするも、ザノンBの予想は外れた。虹光線着弾前に、ガメラが後ろへ下がったのだ。

 

 想定外の動きではあったが、引き剥がすこと自体は成功した。その隙に逃げようとするザノンBだったが。

 

「フルパワー爆裂光波弾!」

 

 紫の光弾がザノンBの脇腹に直撃し、ザノンBは派手に転倒する。攻撃をしたフルパワーグリッドナイトは追撃のために、ザノンBに斬りかかる。

 ザノンBはその一撃をスレスレで回避し、反撃の頭突きをフルパワーグリッドナイトに当てる。

 それでも、フルパワーグリッドナイトは踏ん張って、お返しのカウンターブローを打ち込む。

 ザノンBも負けじと腕に噛みつくが、すでにフルパワーグリッドナイトの反対の手には、エネルギーの溜まったグリッドナイトキャリバーが逆手で握られていた。

 

「「「「「フルパワー、ナイト! キャリバーエンド!」」」」」

 

 振り抜かれた一撃に、ザノンBは地面を転がる。

 それでも、ザノンBはしぶとく立ち上がる。大ダメージではあったが、人間を少しでも食べれば、この傷はすぐに癒える。

 グリッドナイトの頭のランプは変身したときから点滅を続けている。このカウンターで沈めてやろう、とザノンBが立ち上がるために空を仰いだときだった。

 

 

 

 

 ザノンBの目に映ったのは、大きな青白い光の玉だった。

 違う、光の玉ではない。甲羅の端にプラズマエネルギーを纏わせたガメラが高速で回転しているのだ。しかも、縦と横の二軸で。二軸回転によって、プラズマジェットの光が球状に見えたのだ。

 

 

 

 ガメラの奥義『火焔烈球』は、そのままドリルのように、一直線にザノンB目がけて降下する。

 ザノンBがそれを回避するには、気づくのがあまりにも遅すぎた。

 

 

 

 火焔烈球はザノンBに直撃し、ザノンBの体を粉微塵に削っていく。何とか防ごうと出力を上げたエネルギーシールドもあっさり中和され、ザノンBはほとんど抵抗することも出来ずに、その思考と身体をすり潰され、最後には爆ぜた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆風と轟音が辺りを駆け抜ける。ガメラの火焔烈球によって、ザノンBはすり潰される形で爆散。

 爆炎からガメラが飛び出し、フルパワーグリッドナイトの隣に着地する。

 

「やったな……!」

 

 グリッドナイトの言葉に、ガメラは頷く。

 

 そうして、両者がグリッドマンの援護に向かおうとしたときだ。

 

 

 

 

 ガメラは何かを察知して、横へと跳ぶ。

 その直後、空からいくつもビーム砲が降り注ぐ。

 

「ぐわああああああっ!?」

 

 ビーム砲が直撃してしまったフルパワーグリッドナイト。そのダメージで、グリッドナイトの変身は解けてしまう。元々、無理を押しての変身だったのだ。むしろここまで持ったほうが奇跡だろう。

 

 ガメラが上空を見上げれば、そこに浮いているのはザノンの宇宙船。どうやらガメラの電磁衝撃波から復旧して、主を助けるために動きだしたらしい。

 

 宇宙船ザノン号は、艦艇のあちこちに取り付けられた砲台からの艦砲射撃を開始する。

 

 ガメラはすぐさま走り出し、初弾を回避する。そして、次の砲撃が来るまえに飛行形態へと移行。空中へ飛んで、その機動力で砲撃を何とか回避する。

 

 とはいえ、避けているだけでは勝てはしない。ガメラは火焔弾による攻撃を行うが、対空砲で迎撃されてしまった。

 相手のほうが大きさの火力も圧倒的であり、ガメラだけでは火力不足だった。特に大きさは凄まじく、その全長は1100メートルに及ぶ。

 

 ガメラは空中を旋回しながら、どうししたものか、と攻めあぐねていたときだった。

 

 

 

 

 上空のパサルートからビーム砲が放たれ、ザノン号に着弾する。

 

 ガメラがパサルートに目を向けると、その出口から一つの戦艦が顔を出す。

 そして、その戦艦から声が聞こえた。

 

『よし、上手くいきました! ナイトくん、皆さん、無事ですかー!』

 

 その声に、地上で倒れていたナイトは勢いよく起き上がり、タブレットで通信を繋げる。

 

「二代目! なぜ貴女が……!」

『なぜって……、皆さんが命がけで戦っているのに、私だけ何もしないわけにはいかないじゃないですか!』

 

 ナイトにそう返すと、二代目はガメラに呼びかける。

 

『ガメラ! この戦艦が私が相手をします! だからあなたは、グリッドマンの援護をお願いします!』

 

 ガメラはそれにテレパシーで返事をすると、急速旋回。グリッドマンたちが戦う場所へと飛んでいった。

 

 

 

「……私が怪獣なの、バレましたか……」

 

 ガメラのテレパシーを受けて、二代目は恥ずかしそうに呟く。

 

 すると、ザノン号の砲塔が、二代目の乗る戦艦、『サウンドラス』に向く。

 

「っとと、そんなこと言ってる場合じゃありませんでしたね。彼が任せてくれたんです。ここは絶対に通しませんよ!」

 

 二代目もサウンドラスを操作して、砲塔を相手に向ける。

 

「サウンドラス、全武装一斉射!」

 

 二代目のその声と同時に、サウンドラスに搭載されたビーム砲やミサイルが次々と発射される。

 一方のザノン号も、負けじとビーム砲を撃ちまくる。

 フジヨキ台の空は、一瞬にして戦艦同士の空戦場となった。

 

 

 そして、そこに向かう影が四つ。

 

「よし、我々も援護に入るぞ!」

「「「おう!」」」

 

 先ほどまでグリッドナイトと合体していたアシストウエポンは、再び集結し、サウンドラスの艦橋に着地する。

 

「「「「合体戦神、パワードゼノン!!」」」」

 

 サウンドラスとパワードゼノン。両者は、自身の十倍近くあるザノン号との戦いに突入した。

 

 

 

 

 

 

 一方の地上では、ローグカイゼルグリッドマンとザノンAが、凄まじい攻防を繰り広げていた。

 重武装であるローグカイゼルグリッドマンだが、機動性はむしろ高く、獣のような荒々しい戦い方を得意としている。

 対するザノンAも、そのローグカイゼルグリッドマンの動きに対応していた。ローグカイゼルグリッドマンの指から伸びるビームクロー、『ローグクロー』を超振動ブレードで受けながら、両者一歩も引かない戦いになっていた。

 

 ザノンAの超振動ブレードを受け止めたローグカイゼルグリッドマンは、そのままザノンAを後ろへと投げ飛ばす。

 ビルへと突っ込んだザノンAに、ローグカイゼルグリッドマンはダイナミックビッグブレードを振り下ろす。

 

『デアッ!』

 

 しかし、ザノンAは横に転がってブレードを回避。触手を伸ばしてローグカイゼルグリッドマンを捕らえようとする。

 ローグカイゼルグリッドマンはブレードを振るい、何本かの触手を切り落とすと、残りの触手は跳んで避ける。そして、そこからザノンAへと突っ込む。

 

 ザノンAは突撃してくるローグカイゼルグリッドマンを受け流し、逆にひざ蹴りを入れる。

 怯んだところに、ザノンAは続けざまに尻尾を叩きつける。だが、ローグカイゼルグリッドマンは倒れることなく、その尻尾をしっかりと掴む。

 

「いくぞ、オラァ!」

 

 ガウマの叫びとともに、ローグカイゼルグリッドマンはザノンAを振り回して、投げ飛ばす。

 地面を何度か転がったザノンAは、頭を振ってすぐさま立ち上がる。

 

 と同時に、胸部から液状弾と鱗弾を連射する。

 

「だったら!」

 

 ちせの声に呼応して、ローグカイゼルグリッドマンの胸部が開く。そこから放たれたビームバルカン『ゴルドショット』が、ザノンAの攻撃を相殺していく。

 

 その間に、ローグカイゼルグリッドマンはダイナミックビッグブレードをザノンAに投げつける。

 ザノンAはすぐさまそれを回避。が、その間に弾幕に一瞬の隙が生まれる。

 そこにローグカイゼルグリッドマンは飛び込み、ザノンAの上に馬乗りになる。そして、ローグクローで何度も爪撃を与える。

 

「グアアアアアアッ!」

 

 ザノンAは咆え、翼から虹光線を放つ。しかし、それを避けるローグカイゼルグリッドマン。さらに、先ほど投げたダイナミックビッグブレードが、ザノンAを切り裂きながら返ってくる。

 

 ザノンAは再び虹光線を放ったのに対し、ローグカイゼルグリッドマンはブレードを構え、真正面から突っ込む。

 

「「「「「「『うおおおおおおおおっ!!』」」」」」」

 

 ブレードは虹光線を切り裂き、ザノンAに重い一撃を入れる。

 

 が、ザノンAもただでは転ばない。一撃をもらうと同時に、ローグカイゼルグリッドマンがいる場所を重力操作して、彼らを拘束する。

 

『くっ!』

 

 動きの止まったローグカイゼルグリッドマンに、ザノンAは最大出力で超音波メスを放つ。ザノンAの口から放たれた超音波メスは、真っ直ぐローグカイゼルグリッドマンに突き進み……。

 

 

 

 

 ローグカイゼルグリッドマン当たる、その刹那。

 

 高速回転したガメラが盾として、その間に割り込んだ。

 

「ッ!?」

 

 ザノンAの驚きをよそに、ガメラは超音波メスを防ぎきって、ザノンAに突貫する。

 

 プラズマエネルギーを纏ったガメラの甲羅は、もはや『火焔旋撃』とも呼ぶべき代物になっていた。

 ザノンAは咄嗟に超振動ブレードで防ぐも、ガメラの火焔旋撃はそのブレードをへし折り、ザノンAを吹き飛ばす。

 

 ガメラは回転を止め、地面へと着地する。ザノンAは転がっている途中でバク転をして着地すると、ガメラに舌を伸ばして攻撃しようとする。

 

 しかし、それもダイナミックビッグブレードに切り落とされてしまう。

 

 ローグカイゼルグリッドマンは、ガメラの横に並ぶ。ガメラはグリッドマンの目を見て、いやその奥にいる全員の目を見て、強く頷く。

 

 全員がそれに頷き返す。

 

「「「「「「『いくぞ!!』」」」」」」

 

 ガメラとローグカイゼルグリッドマンは同時に地面を蹴り、ザノンAと飛びかかる。

 

 ザノンAのストレートパンチを避けて、ローグカイゼルグリッドマンの七連撃が決まる。

 それに対し、ザノンAはローグカイゼルグリッドマンを蹴り飛ばそうと、足を振る。が、それに合わせたガメラの蹴りで、ザノンAのキックは不発に終わる。

 ガメラはそのままザノンAの両手を掴むと、ザノンAを押していきながら、ゼロ距離で火焔弾を三連射する。

 

 ザノンAは何とか手を振り払って、ガメラの肩に砕けた超振動ブレードの切っ先を突き刺す。

 だが、その程度でガメラは止まらなかった。お返しとばかりに、ザノンAの顎をアッパーで打ち抜く。

 

『今のうちだ! 皆、いくぞ!!』

 

 ガメラが前線を張ってくれているのを確認したグリッドマンは、全員にそう呼びかける。

 

「「「「「「おう!!」」」」」」

 

 グリッドマンの声に全員が応じたことで、ローグカイゼルグリッドマンの両肩のドリルが高速回転し、エネルギーをチャージしていく。

 

『カイゼルパワーチャージ!』

 

 エネルギーチャージに応じて、ドリルに稲妻が走り、身体の各パーツが輝きだす。

 

「ダイナミックビッグブレード!」

 

 蓬の声で、ローグカイゼルグリッドマンはダイナミックビッグブレードを構える。

 

 

 それを横目で確認したガメラは、ザノンAの拳を避け、その腕を掴む。

 そして、その勢いを利用して、背負い投げでザノンAを空中へと放り投げた。

 

「ゴアアアアアアアッ!!」

 

 ガメラの声を合図に、ローグカイゼルグリッドマンは翼からジェット噴射で、ザノンAに向けて飛翔する。

 

『ローグ……!』

 

 投げ飛ばされたザノンAは、背中の翼を羽ばたかせ、何とか体勢を立て直そうとする。

 

「「「「「「カイゼルパワー……!」」」」」」

 

 そして、体勢を立て直したザノンAが見たのは、エネルギーを螺旋に束ね、稲妻を走らせながらダイナミックビッグブレードを構え、突っ込んでくるローグカイゼルグリッドマンの姿だった。

 

 

「「「「「「『フィニーーーーーーッシュ!!!!』」」」」」」

 

 ダイナミックビッグブレードがザノンAにぶつかる。

 

「「「「「「『うおおおおおおおおおおおおおお!!』」」」」」」

 

 ローグカイゼルグリッドマンは勢いそのままに、ぐんぐん空を昇っていく。そして、全ての力を込めてブレードをザノンAに突き刺そうとする。

 が、ザノンAも諦める気はないのか、体表のエネルギーシールドをブレードの触れている一点に集中させ、貫通を防いでいる。

 

「グアアアアアアッ!!」

「「「「「「『おおおおおおおっ!!』」」」」」」

 

 両者の叫びは、まさに魂のぶつかり合いだった。どちらのエネルギーが先に尽きるか。その根比べだった。

 

 

 

 ローグカイゼルグリッドマンとザノンAは、ついに大気圏も、地球の重力圏をも突破する。

 火花を散らしながら、それでもなお上昇していく両者。

 

 

 

 

 

 そして、ついにその拮抗が崩れる。

 

 火花を散らしていたブレードの先がザノンAの腹に突き刺さる。

 

「グアアッ!?」

「「「「「「『いけええええええええええええええっ!!!!』」」」」」」

 

 突き刺さったことを確認したローグカイゼルグリッドマンは、ダイナミックビッグブレードのエネルギーをザノンAの体内に注入、爆破しようとする。

 

 

 

 しかし、そこで蓬は違和感を感じた。

 ザノンAの抵抗がいきなりなくなったのだ。疑問に思って目を凝らすと、翼だけ不自然に動いている。

 

「まさか……!」

 

 蓬が言葉を発するより早く、ザノンAの背中から、ズルリ、とSギャオスが飛び出す。

 

『なにっ!?』

 

 最初より大分小さくなったSギャオスは、まるで着ていた着ぐるみを脱ぎ捨てるように、ザノンAの肉体を離脱する。

 

 そして、そのブレードの刺さった抜け殻を蹴って、ローグカイゼルグリッドマンに押しつける。と同時に、その抜け殻が強く発光する。

 

 

「ヤバッ……」

 

 

 裕太が言い切る前に、ザノンAの肉体が爆発を起こす。ローグカイゼルグリッドマンすら包み隠すほどの大爆発。

 

「「「「「「『うわあああああっ!!』」」」」」」

 

 爆発の衝撃で合体が解け、グリッドマンたちはバラバラになる。

 それを確認したSギャオス、もといザノンギャオスは、重力操作の翼を使って地球から逃げ出す。

 だが、ここまできて逃がすわけにはいかない。そんな思いのこもった裕太の叫びが響く。

 

「待て!!」

 

 

 

 

 

 その時だ。

 

 蓬の頭に、『声』が聞こえた。

 

「えっ?」

 

 声と形容していいかも怪しい、心に直接聞こえるような声だったが、不思議とどこから聞こえた声なのか、蓬はすぐに分かった。

 蓬が後ろを振り返れば、こちらに飛んでくるガメラの姿があった。足だけでなく、腕も甲羅にしまうことで空気抵抗を減らし、星の重力圏を突破するための『弾丸飛行形態』で、蓬たちに追いつく。

 

 蓬とすれ違う瞬間、見えたガメラの目は、こちらを信頼した目だった。

 

 次の瞬間、蓬は裕太とグリッドマンに叫ぶ。

 

「裕太! グリッドマン! 俺を使え!」

 

 蓬の叫びと同時に、ダイナソルジャーはダイナミックキャノンへと変形する。

 

「これでガメラを撃て! 早く!」

「え、でも……」

「ガメラを信じろ!!」

 

 蓬の声に何かを感じ取った裕太は、その提案を受け入れ、グリッドマンに呼びかける。

 

「分かった! グリッドマン!」

『ああ!』

 

 その声にグリッドマンも応じ、ダイナミックキャノンを握る。

 

『ダイナミックキャノン!!』

 

 そして、照準をガメラに合わせて、トリガーを引いた。

 

「「『ダイナミック、ファイヤーーーー!!!』」」

 

 放たれた炎の奔流は、ガメラに到達する直前で、突如として軌道を曲げる。まるで何かに操られるように、または導かれるように、その炎は甲羅から出したガメラの腕に収束していく。

 

「ゴアアアアアアアッ!!」

 

 その叫びとともに、ガメラは拳を握り締める。

 

「ガメラ!!」

「ガメラ……!」

「ガメラー!!」

「ガメラ!」

「ガメラァ!」

 

 ガウマ隊全員が、その名を叫ぶ。言葉を交わしたことは一度もない。けれど、その間に絆がなかったなんて言わせない。それを証明するように、彼に全て託すように、全員の声が揃う。

 

 

「「「「「いっけええええええええええええええええ!!!」」」」」

 

 

 その声に送り出されたガメラは、拳を振りかぶって、ザノンギャオスに追いつく。

 

 ザノンギャオスもガメラの接近に気づき、咄嗟に噛みついて対処しようとするも、もう遅い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガメラの、炎を纏った右ストレートが、ザノンギャオスの顔に叩き込まれる。

 

「ゴアアアアアアアアアアアアアっ!!」

 

 そして、纏った炎と自身のありったけのプラズマエネルギーをザノンギャオスに流し込み、ガメラは拳を振り抜いた。

 

 顔が炎で崩れるのを感じながら、ザノンは自分の終わりを悟った。沸騰する目で最期に見たのは、輝くガメラの瞳だった。

 

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間、巨大な爆発が宇宙で起こった。

 

 その爆発は、地上にいた、ザノン号の残骸の上に座るナイトたちからも見えたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地上へと降り立った一同。

 グリッドマンはビッグゴルドバーンと合体して、フィクサービームで街の修復を始めるために飛び立った。

 

 

 一方のガメラは膝をつくと、手を地面へと降ろした。

 その手には、アヤメが握られていた。アヤメは、ガメラの手から崩れ落ちるように地上へと降りる。

 それを見た夢芽が叫ぶ。

 

「アヤメ!」

 

 夢芽はダイナレックスから飛び降りて、アヤメの元に駆け寄る。

 

「アヤメ! アヤメ、しっかりして!」

 

 夢芽がアヤメの体を揺すると、アヤメは薄く目を開ける。

 

「……ああ、夢芽……。無事で、よかった……」

 

 アヤメは消えそうな声で言いながら、夢芽の存在を確かめるように手を握る。

 

「うん、私は大丈夫。ガメラが、助けてくれたから」

 

 夢芽の言葉に、アヤメは嬉しそうに笑う。

 一方の夢芽は、顔を歪ませながら、アヤメに尋ねる。

 

「……アヤメ、ガメラと繋がって戦ったの?」

「うん……」

「なんで!? これ以上戦ったら危ないって、アヤメだって分かってたでしょ!?」

 

 夢芽の震えた声を聞いて、アヤメは夢芽の目を見つめながら、諭すように言う。

 

「うん、分かってた……。ガメラと繋がれば、もう身体が持たないことは……」

 

 でも、とアヤメは夢芽の髪を撫でる。

 

「気づいたんだ。私、夢芽たちと関わるうちに、ここでの暮らしが心地よくなってることに。私は、未来を諦めきれなくなってた。そして……」

 

「それが、ガメラの望みでもあったんだ……」

 

 アヤメは、今も横に佇むガメラを見つめる。

 

「ガメラも、私が明日を向いて生きようとすることを望んでいてくれた。だから、もう一度生きてみようかなって思えたんだ」

 

 アヤメはガメラの顔を見ようとするも、目がかすむせいか、ガメラの表情はよく見えなかった。

 すると、顔に温かい水滴を感じる。

 

「だったら……。だったら、どうして……!」

 

 夢芽の言葉に、アヤメは空を仰ぐ。

 

「戦った理由はね、皆のためってのもあるんだけど、一番は私のため、かな。私はこの世界の未来を見たかった。だから、あそこで逃げたくなかったんだ……」

 

 そろそろ限界かもしれない。夢芽は自身の手を握るアヤメの力が弱まったのを感じて、必死にアヤメの手を握る。

 

「アヤメっ!!」

「そんな顔しなくて大丈夫だよ……、夢芽。だって、私、ガメラにお願いしたもん……」

 

 たすけてって。

 そう言うアヤメの顔は、まるでイタズラを成功させた子どものように笑っていた。

 

「だから、きっと、大丈夫……。また、すぐに……、会えるよ……」

 

 だから、ちょっとだけ、お別れだね……。

 

 そう呟くアヤメは、もうほとんど声になっていなかった。

 すごい眠い。目を開けていられなくなって、アヤメは目を閉じる。夢芽の言っている言葉も、認識できなくなってきた。

 でも、これだけは言わなくちゃ。

 

「夢芽。ありがとう。あなたのおかげで、私は生きる希望を見られた……。そして、大事なものを、今度こそ守れた……。だから、いっぱいのありがとうを、夢芽に、あげる……」

 

 あと、一つだけ、とアヤメは夢芽に言葉を託す。

 

「皆にも、ありがとうって、言っておいてくれないかな……。私のかわりに……」

「……うん」

「ありがと、夢芽……」

 

 消え入りそうな声でも、頷いてくれた夢芽に感謝する。

 ふと、自分の体を抱きしめられる感覚がした。もう目は開かないけど、この温かさはきっと夢芽だろう。

 その温かさに、アヤメは寄りかかる。

 自身を包む温かさは、そのうち意識の輪郭をぼやかしていくようだった。アヤメはその温かさに心地よさを覚え、意識を手放すように身を委ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 ふと目を開けてみれば、アヤメは何もない真っ白な空間にいた。

 見渡す限り、地の果てまで白の続く空間。

 

 そこにポツンと、一人の少女が立っていた。後ろ姿だったが、アヤメは少女に見覚えはなかった。知らない少女だ。

 それでも、アヤメには分かった。彼女がなんなのか。

 

「あなただったんだね。さっきガメラと一緒に戦ってた人は」

 

 アヤメが少女に声をかければ、少女は驚いた様子もなく、アヤメのほうを振り向く。赤い目が特徴的な、可愛らしい少女だった。

 

「分かるんだね」

「そりゃあね。まさか、こんな世界の狭間から干渉してたとは思わなかったけど」

 

 とにかく、とアヤメは言って、少女に頭を下げる。

 

「ありがとう。ガメラと一緒に戦ってくれて。ええと……」

「アカネだよ。新条アカネ。それにお礼も必要ない。私は、私がやりたかったからやっただけだもん」

「アカネちゃん。だとしても、言わせてほしいな。あれのおかげでガメラは怪獣と戦えたし、私も自分と、そしてガメラと向き合えたから」

「……そういうことなら、受け取ろうかな」

 

 少女、アカネは照れくさそうにしながら言う。アヤメも礼を受け取ってくれたことに笑う。

 

「そういえば、サブジェクションのやり方、よく分かったね」

「うーん……、まあ、神様だからね」

「そっか」

「驚かないんだね?」

「どんな力持ってても、アカネちゃんはアカネちゃんでしょ。それにしても、サブジェクション使えるならドミネーションって手もあっただろうに、なんでサブジェクションのほうを?」

「私は、ガメラを支配下に置きたくなかったんだよ。彼は、私の……、ヒーローで、尊敬する怪獣だからね」

「ガメラはすごいなあ」

「私が勝手に尊敬してるだけだけどね。……それに、私は悪いこともいっぱいしてきちゃったし」

「でも、ガメラはあなたを受け入れた。それって、ガメラがアカネちゃんの気持ちに応えてあげたいと思ったからじゃないの? ガメラは誰だって受け入れるわけじゃないよ。きっとあなたの心にある未来の可能性を信じたんじゃない?」

「私の、可能性?」

「うん。ガメラが人類のために戦う理由。多分、これじゃないかって私は思うんだ。人が作る未来の可能性を守りたいんじゃないかって。アカネちゃんには、その力で良い未来を切り開けると思ったから、一緒に戦ったんだと思うよ」

「買い被りすぎだよ。それに結局、途中でフラれちゃったし」

「それは私も同じ。それにガメラが自発的に切ったんなら、それだけアカネちゃんが大事だったってことの証明だと思うよ」

「……そうかな。私、ガメラに心配される子かな?」

「うん。それは私が保証する」

「……あなたが、ガメラに選ばれた理由が分かった気がするよ」

 

 そう? と首をかしげるアヤメ。

 すると、アヤメの体が徐々に透けだす。

 

「ありゃりゃ、もう時間切れっぽい。そろそろお別れだね、アカネちゃん」

 

 アヤメは笑って、アカネにそう言う。

 

「そうだ。アカネちゃんに聞きたかったんだけど、ガメラとはこの後も一緒に戦うの?」

「さっきも言ったでしょ。フラれたって」

「あ、なるほど」

「まあ、子どもを危険に巻き込まないようにするのは解釈一致だけどさ~……」

 

 アカネはそう言って頬を膨らませたあと、プッと笑い出す。アヤメもそれにつられて笑う。

 

 しかし、アヤメの体はどんどん透けていき、もはや輪郭を保っているのは顔だけになってしまった。

 

「ここまでか……。それじゃあね、アカネちゃん。あなたと話せてよかった」

「私も。……ねえ、あなたは……」

 

 あなたはこれからどうなるの、と聞こうとして、アカネはその言葉を飲み込んだ。それを聞くのは、なんだか野暮な気がしたから。

 だが、アヤメはアカネの言葉の続きに察しがついたのか、笑って答える。

 

「大丈夫だよ。ガメラにお願いしたから」

 

 アヤメはそれだけ答えた。だが、アカネはそれだけで納得したのか、アヤメと同じように笑う。

 

「……そっか。なら安心だ」

 

 アカネはそう言うと、アヤメに小さく手を振る。

 

「じゃあ、バイバイ。アヤメ」

「うん、バイバイ。アカネちゃん」

 

 そう言って、アヤメは白の空間から消え去った。

 

 

 

 

 

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 フィクサービームの光が街に降り注ぐなか、この世界でできた友達に抱きかかえられ、一人の少女は静かに息を引き取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数週間後。

 

 

 8月も終わりへと向かい、そろそろ夏休みも終わりの時期となったフジヨキ台。

 

 蓬と夢芽は学校にいた。

 

「てかさ、なんでまだ夏休みなのに学校来なくちゃいけないわけ? 何なの、夏休み登校って」

「まあまあ。ウチの学校はそういう決まりなんだから、文句言わないの。嫌だったら、先生たちに言えばいいじゃん。あとは夢芽さんが生徒会に立候補するとか」

「それもイヤ」

「ええ~……」

 

 蓬は愚痴る夢芽をなだめながら、二人で紙の束を持って廊下を歩く。

 本当だったらもう帰れていたのだが、荷物を運んでいた先生に運悪く遭遇。そのまま荷物運びを手伝わされることになったのだ。夢芽の機嫌が悪いのもこれが原因である。

 ようやく最後の紙の束となったところで、夢芽の不満が爆発。結果、職員室までの道のりまで、夢芽の機嫌を取ることになった蓬であった。

 

 

 ようやく荷物を届け終え、職員室を出た蓬と夢芽は、昇降口へと向かう。

 

「やっっっと、終わった~……」

「お疲れ、夢芽」

 

 本当に大変だったんだろうな、という夢芽の顔に、何かジュースでも買ってあげよう、と蓬が思ったときだった。

 

 

「あの、すみません」

 

 

 二人は、後ろから声をかけられる。

 

「あ、はい、どうしました?」

 

 蓬は返事をしながら後ろへ振り返る。すると、そこには一人の少女が立っていた。制服からして、この学校の生徒だろう。

 

「私、今度この学校に転校してくるんですけど、職員室に呼ばれてるのに場所が分からなくて。よかったら、案内してもらえませんか?」

 

 少女はそう言って、頭を下げる。頭の動きに合わせ、彼女の黒曜石のような黒髪が揺れる。

 

 そんな彼女を見て、二人は時が止まったように動けなくなる。

 

「? あのー……」

 

 不審に思った少女が声をかけるも、二人は答えることは出来ない。

 

「あのー……。え、シカト?」

 

 少女の翡翠色の瞳が、訝かしげに見つめる。蓬は何かを喋ろうとするも、思考が纏まらず、言葉が出てこない。

 

 だって、そうだろう? 

 

「あの、私、なにかマズいこと言いました?」

 

 

 その少女は、木下アヤメそのものだったのだから。

 

 

 

 

「……アヤメ?」

 

 先に口を開いたのは、夢芽だった。震える声で、確認するように尋ねる。

 

「え? なんで私の名前……。初めまして、ですよね?」

 

 アヤメそっくりの少女は不思議そうにする。

 

 だが、夢芽としてはそれより気になることがあった。初めまして、と彼女は言った。つまり、自分たちとの記憶がない、ということだろう。

 

 どういう理由かは分からない。いや、そもそも彼女が本物のアヤメであるかも怪しい。ただの他人のそら似の可能性もある。

 

 そんな都合の良いこと、そうそう起こらない。

 

 夢芽はそう自分に言い聞かせ、とりあえず目の前の少女のお願いに答えることにした。

 

「えっと、職員室でしたよね。職員室なら、この廊下の突き当たりを右に曲がったところの二番目の部屋です」

 

 夢芽は廊下の突き当たりを指で指しながら言う。

 

「分かりました! 教えてくれてありがとうございます!」

 

 少女はもう一度頭を下げた後、顔を上げて二人を見つめ、口角を上げて言った。

 

 

「助かりました! 夢芽、蓬くん」

 

「「えっ?」」

 

 

 蓬と夢芽の声が重なる。まだ自分たちは名乗ってもいない。

 いや、それよりも。今の呼び方は……。

 

 

「アヤメ、なの?」

「ふふふ、久しぶりだね、夢芽。ただいま!」

 

 少女、いやアヤメはそう言って、ピースサインを作る。

 

 その瞬間、夢芽の気持ちは決壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フジヨキ台の一角にあるファミレス。そこに座るのは、蓬、夢芽、そしてアヤメ。

 

「あの~……、夢芽さん? そろそろ離れてもらっても……」

「イヤ」

「あ、はい」

 

 アヤメの隣にくっついて離れない夢芽に、アヤメはやんわり離れるよう言うが、夢芽の一言で一蹴される。

 蓬のほうも、正直何が何だかさっぱりなので、一番気になっていたことを聞く。

 

「あの、アヤメさん」

「ん、なに?」

「本当に、アヤメさんなんですよね? 俺たちの知ってる……」

「そうだよ。正真正銘、本物の木下アヤメです!」

 

 胸を張って自信満々に答えるアヤメ。

 

「えっと、なんで元気で? 俺たち確かにアヤメさんの……」

 

 そこからは言葉にしなかった。夢芽にあまり辛いことを思い出させたくなかったからだ。だが、あの時たしかに、蓬たちはアヤメが死んだのを確認した。冷たくなっていくアヤメを、夢芽は最後まで抱きしめていた。

 

「あれ? 夢芽に言わなかったっけ。ガメラに助けてってお願いしたから大丈夫だよ、って」

 

 え、と蓬が夢芽のほうを見ると、夢芽は何かを思い出したように呟く。

 

「あー……、そういえばそんなこと言ってたね……。え、あれ、私を思いやった方便じゃなかったの!?」

「え、本当のこと言っただけなんだけど……」

「…………」

 

 夢芽は無言でアヤメの頬を引っ張る。

 

「いひゃい! ちょ、ほっへ、ひっひゃらないで!」

 

 その様子を、アハハ、と苦笑いで見ながら、蓬は尋ねる。

 

「えっと、じゃあ、ガメラが蘇生したってことですか?」

「うん。といっても、私も記憶があるわけじゃないけど。それに正確に言うと、蘇生じゃなくて生まれ変わりかな」

「生まれ変わり?」

「そう。記憶も肉体もほとんどそのままだけど、私の肉体を構成する物質は、この世界のものになった。だからまあ、この世界に木下アヤメとして生まれ直したって言ったほうがいいかな?」

「な、なるほど」

 

 理屈はよく分からなかったが、とりあえずアヤメは生き返ったってことでいいのだろう。

 と、そこで蓬はあることを思い出す。

 

「あ、だからガメラがアヤメさんの体持っていったのか」

 

 そう。彼女の死亡を確認した後、彼女の遺体をどうするかという話になったのだが、その時、アヤメの体をガメラが預かったのだ。元々彼が連れてきた存在だ。若干夢芽がぐずったが、無事ガメラに引き渡すことになったのだ。

 

「ああー。多分ね」

 

 それにしても、とアヤメは少し寂しそうに呟く。

 

「ガメラ、ガメラか。ねえ、蓬くんと夢芽はガメラのこと、覚えてる?」

 

 突然の質問に、蓬と夢芽は素直に答える。

 

「覚えてますけど……」

「というか、あそこまでのことあったら忘れないって」

 

 蓬と夢芽の答えに、アヤメは、やっぱりか、と呟く。

 

「やっぱりって、どういうことですか?」

「皆は覚えていられるんだねって話」

「え?」

「私ね、ガメラのこと、どんどん思い出せなくなってきてるの。今じゃ、名前とどんな存在だったかくらいしか、思い出せない。一緒に戦ってたはずなのに、戦いの内容も、ガメラと繋がってた感覚すら、ほとんど思い出せないの」

「それは……」

「多分、ガメラが意図的にやったことだと思う。ガメラはこの世界を離れる。それが、この世界に残る私の枷にならないように、そして一高校生として私がやり直せるように、ガメラとの記憶が消えるようにしてるんだと思う。

「そう、なんだ……。もしかして、私たちの学校に転校できたのも……」

 

 夢芽も、頬から指を離し、神妙な顔でアヤメに尋ねる。

 

「うん。それもガメラがやったことだよ。木下アヤメという人物は、この世界に元々いたことになってた。いずれは、私自身もガメラと関わった記憶を全て失って、初めからこの世界で生きていたみたいに、違和感を感じなくなると思う」

 

 それは、仕方のないことなのだろう、と夢芽は考えた。別の世界からやって来たといのは、それだけで何となくの疎外感に繋がる。自分たちも別の宇宙で過ごすことになったときは、何となく本来の居場所じゃない所で過ごしている感じが拭えなかった。怪獣のことだって、あんな日常からかけ離れた存在とは、関わりがないほうがいいのだろう。だから、ガメラのしたことは、きっと正しいのだろう。

 それでも、夢芽はなんだか悲しかった。もちろん、アヤメと再開できたのは嬉しかった。けど、それを救ったガメラの記憶が消えるのは、アヤメにもガメラにも辛いことなんじゃないかって。

 

 すると、アヤメは意を決したように口を開く。

 

「それでね、夢芽たちにも協力、というか一緒に来てほしいことがあるの。私が、ガメラと後腐れなく別れるために」

 

 それを聞いた蓬と夢芽は、お互いの顔を見合わせた後、笑って頷いた。

 

 

 

 

 

 

 その様子を遠くから双眼鏡で覗く影が二つ。

 

「彼女、どうします? 二代目」

 

 影の一方であるナイトは、隣にいるもう一方の影、二代目に尋ねる。

 

「そうですねぇ。まあ、見たところ特に変なところはありませんし、ガメラによって彼女はすでに「この世界」の人間になっています。このままで良いんじゃないでしょうか」

「分かりました」

 

 二代目は双眼鏡を仕舞い、ナイトもそれに続く。その中で、ナイトは二代目に質問をした。

 

「そういえば二代目。なぜ、ガメラはわざわざ木下アヤメを一度死なせたのでしょうか? これほどの芸当が出来るのなら、あの時に死なせないようにすることも出来たのでは?」

 

 それに対し、二代目は難しい顔で答える。

 

「う~ん……。あくまで私の予測ですけど、彼女をガメラという呪いから解放したかったのではないでしょうか」

「呪い?」

「ええ。蓬さんたちの話から、彼女の使うサブジェクションは反動が凄いと聞きました。恐らくそれは、常人では死んでしまうようなものだったのではないでしょうか。それをガメラの力が与えられることで、耐えてきたのでしょう。ナイトくんは覚えていますか、ガウマさんと初めて会ったときのこと」

「ええ」

「あのとき、ガウマさんは怪獣の力で蘇り、しかし怪獣と繋がらなかったために、体は再び死んでいきました。アヤメさんも、それと同じ状態だったのではないでしょうか。ガメラはこの世界を離れます。しかし、ガメラがいなければもはや生きられない体になってしまった彼女を、この世界で生きられるようにするには、一度死なせてから体を再構成する必要があったんだと思いますよ」

「なぜ、ガメラは彼女にそこまで?」

「それは、分かりません。でも、それこそガメラの意思だったんじゃないでしょうか。ナイトくんも分かっていると思いますが、私たちで救える人の数は限られています。どうしたって救えない命だってある。それはガメラだって理解していると思います」

 

 でも、とキャリーケースの中を片付ける彼女の目は、レンズが光って見えなかった。

 

「こういうのは理屈じゃありません。アヤメさんに出会ったのは、本当に偶然だったと思います。ただの、ガメラが取りこぼした命の、遺族の少女。それだけだったと思います。それでも、彼が手を差し伸べたのは、彼女が死のうとしているのを知ってしまったからだと思います。だからガメラは、彼女に巫の役割を与え、生きる目的を作り、自身の旅に連れていったんじゃないでしょうか。いつかどこかの宇宙で、彼女が本当の意味で明日を生きたいと思えるような、そんな人たちに出会えるまで」

 

 まあ、全部推測ですけどね、と二代目は笑う。

 

 それに対し、ナイトはいつもと変わらない顔で。

 

「だとしたら、相当不器用なヤツですね」

 

 と、言った。

 

「そうですか? 私は格好いいと思いますよ。それにガメラは、なんだか雰囲気が先代に似てる気がしました」

 

 うぇへへへ、と独特な笑い声を上げる二代目を見て、ナイトは、納得したように微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が落ち始めた夕暮れ。蓬と夢芽、そしてアヤメは山道を歩いていた。その後ろには、夢芽が連絡して集まった、ちせと暦、そしてガウマの三人が続く。

 

「懐かしいなぁ、この道も」

 

 ガウマは感慨深そうに呟く。

 そうしてたどり着いたのは、ガウマ隊の訓練場であった橋。滅多に人が来ない、ガウマ隊の秘密の場所。

 

 そして、蓬たちがガメラと初めて対面した場所だ。

 

「着いたよ」

 

 アヤメがそう言うと、奥のほうの木が揺れ、そこからガメラが顔を出す。

 

「あ、ガメラ!」

 

 ちせが興奮したように叫ぶ。

 

 アヤメが蓬たちにお願いしたこと。それは、ガメラとの別れに付き合ってほしい、というものだった。

 ガメラとずっと繋がっていた影響か、アヤメにはギリギリまだガメラの居場所が分かった。だから、ガメラの居場所が分からなくなる前に、別れの挨拶をしたいと言ったのだ。これまで一緒に戦ってきた皆と一緒に、と。

 もちろん蓬たちは快諾した。自分たちだってガメラには助けられっぱなしだった。そのお礼くらいはして、別れたい。

 

 そんなわけで、蓬たちはアヤメに連れられ、ガメラがいるというこの場所に来ていた。

 

「ガメラー! こっちこっち!」

 

 アヤメはガメラに手を振った後、こちらへ呼ぶように手招きをする。

 

 ガメラはそれを確認すると、ゆっくりと橋までやってくる。

 

「うお、近くで見るとやっぱデケーな」

 

 驚くガウマに、蓬は思わず笑ってしまう。ここで初めてガメラと会ったときの自分たちも、あんな反応をしていた気がする。

 

 ガメラが橋までやってくると、アヤメは口を開く。

 

「ガメラ。まずはお礼させて。私を助けてくれてありがとう。あなたのおかげで、私は元気で過ごせてるよ。こうやって夢芽たちにも再開できたしね」

 

 だから、とアヤメは笑う。

 

「ここまで連れてきてくれたことにも、ありがとうって言わせてもらうね。もう記憶もおぼろげだけど、あなたと旅した日々は、どこか充実していて楽しかった。そんな感覚はまだ残ってる」

 

 アヤメはその日々を慈しむように、首にかかっている、光を失った勾玉を撫でる。

 

「ありがとう、ガメラ。私が一人にならないよう、側にいてくれて。あなたの隣はとっても温かかったよ」

 

 でも、もう大丈夫、とアヤメは胸を張る。

 

「私にはもうこんなに友達が出来たから。だから……」

 

 そこでアヤメの言葉が途切れる。我慢出来なくなった嗚咽が喉から溢れてくる。それでもアヤメは、多少強引に目元を拭って言葉を紡ぐ。

 

「ガメラも、安心してね!」

 

 その言葉に、ガメラは静かに頷くだけだった。小さなリアクションだったが、彼らにはそれで十分なのだろう。アヤメも嬉しそうに笑った。

 

 

 

 さて、自分たちもお礼を、と蓬が口を開こうとしたとき、横から聞こえてきた大声にそれは遮られる。

 

「うおおーーー!! すっげーーーー!! 本物だ! ホントに本物のガメラだ!!」

 

 その声に全員がギョッとして、声のしたほうを見てみれば、そこにはものすごい勢いで走ってくる内海の姿がいた。

 

「えっ? 内海さん?」

 

 ちせが困惑したように声を上げる。だが、内海には聞こえていないのか、橋までやってくると、下に落ちるんじゃないか、というほど欄干から身を乗り出す。

 

「ヤベー! ホントにガメラがいる……! スゲー……! 夢じゃないよな!?」

 

 一人でずっと叫んでいる内海に蓬たちが完全に置いていかれていると、横からさらに声がかかる。

 

「おーい、蓬ー!」

「ん? あ、裕太!」

 

 名前を呼ばれた蓬が振り向けば、特徴的な赤髪が目に留まる。

 手を振るのは、別宇宙の友達、響裕太だった。

 

「夢芽ちゃーん、来たよー!」

「え、六花さん!?」

 

 その隣を歩きながら夢芽に声をかけたのは、宝田六花。今回の戦いでも助けてくれた三人が、ここに集まっていた。

 

「久しぶり、裕太。でも、なんでここに?」

 

 その蓬の疑問に答えたのは、裕太たちのさらに後ろからひょっこり姿を現した、二代目とナイトだった。

 

「それは私たちが連れてきたからですよ!」

「二代目がガメラに別れを言うなら、自分たちも行きたいと言ったからな」

「二代目さんに、ナイトさん!」

 

 蓬は驚く。なんだかんだで、今回の戦いで協力した全員がこの場に集っていた。

 

 正直もっと話していたかったが、今回の目的はそこではない。欄干から内海を引き剥がそうとする裕太に苦笑いしながら、蓬はガメラを見る。

 

「ガメラ! 俺からもお礼を言わせて。ガメラのおかげで助かったよ、俺も夢芽も、そして皆も。だから、ありがとう!」

「私も、ありがとう。正直、アヤメの体調のこと聞いた時は、アヤメのこと何も考えてないんじゃないかって、私考えてた。でも、ガメラもガメラで、アヤメのこと考えてくれてたんだよね。それも含めて、ありがとうって言わせて」

 

 蓬に続く形で夢芽も口を開く。

 それに、ちせと暦も続く。

 

「ガメラー! あの時守ってくれて、ありがとー! すっごいカッコよかったぞー!」

「俺も、ありがとう。色々と、助かったよ」

 

 二代目とナイトもガメラを見上げる。

 

「私たち、グリッドナイト同盟からもお礼を言わせてください。今回の件は、本当に助かりました!」

「ああ。助かった。感謝する」

 

 ガウマもそれに続き、大きな声で感謝を述べる。

 

「俺たち、新世紀中学生からも礼を言わせてくれ! ありがとな! それと、俺個人からも。蓬たちのこと、ありがとな!」

 

 グリッドマン同盟の三人も各々言葉をかける。

 

「俺とグリッドマンからも。この前の戦いは色々助かったよ。ありがとう!」

「まあ、夢芽ちゃんたち助けられたらしいし。ありがとう」

「裕太たち助けてくれてありがとう!! スゲーカッコよかった! 生で見られるなんて夢にも思わなかったし、やっぱり写真を十……、いや五枚でいいから撮らせてくれ!」

「内海君……」

「アハハハハ……」

 

 内海のオタク全開の言動に、六花は呆れたように首を振り、裕太も困惑気味に笑う。

 

 そんな興奮して写真を撮る内海を、ナイトが締め上げたことで全員が笑う、和やかな空気になったところで、ガメラは橋からゆっくりと離れる。

 

「あっ、ガメラ……。……もう、行くんだね」

 

 アヤメの言葉にガメラが頷いたことで、全員が静かになる。

 

 すると、ガメラは思い出したように、橋からアヤメに手を伸ばす。何かを渡すよう要求するジェスチャーをするガメラ。

 その動きで、アヤメはガメラが渡してほしいものは分かった。勾玉だ。

 アヤメの持ち物の中で、ガメラとの繋がりを証明する唯一のアイテムだ。

 アヤメは一つ深呼吸をしたあと、声を上げる。

 

「あのさ! ガメラ。最後に一つ、お願い聞いてもらってもいいかな?」

 

 アヤメはそう言って、自身の首に掛かっている勾玉を握りしめる。

 

「この勾玉、私にくれないかな? あなたが私の記憶を消そうとしているのは分かってる。それが私を思っての行動だってことも。でもさ、あなたの絆が消えるのは、やっぱり嫌。これさえあれば、例え私の記憶からガメラが消えても、これがあなたとの絆を証明してくれるから」

 

 この勾玉を渡せば、アヤメとガメラを繋ぐものは全て無くなる。だからこそ、ガメラはアヤメから勾玉を返してもらおうとしたのだ。

 

 でも、アヤメはそれが嫌だった。色々と失って、色々と得た旅だったけど、この繋がりだけは、どうしても失いたくなかった。

 

「だから……」

 

 そうして言葉を紡ごうとするアヤメを、ガメラは手で優しく制す。

 

 相変わらずガメラの表情は変わらず、何を考えているかは分からなかった。けれど、どこか嬉しそうだったのは、間違いじゃないだろうと、皆が思った。

 

「ガメラ……! ありがとう、大事にするね!」

 

 

「ゴアアアアアア!」

 

 

 アヤメへの言葉への返事か、それとも別れの挨拶か。ガメラは咆哮を上げると、腕を伸ばして、甲羅の隙間からプラズマジェットを吹かす。

 

 辺りを煙が包み、そこから飛行形態となったガメラが飛び出す。

 

 プラズマジェットの青が尾を引き、ガメラの姿が小さくなっていく。

 

 その姿を見て、アヤメは叫んだ。

 

「ガメラー! ありがとー! 元気でねーーー!」

 

 それにつられ、他の面子も各々の言葉を叫んだ。

 

「じゃあなー!」

「また会いましょー!」

「さようならー!」

 

 

 その言葉を背に、ガメラは高度を上げていく。

 

 そのまま大気圏を抜け、宇宙に飛び出し、地球が全部視界に収まるほど離れてから、ガメラは一度だけ地球を振り返る。

 その姿を見て、ガメラは満足したように、飛ぶ速度を上げて、宇宙の彼方へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「行っちゃったね」

「うん」

 

 蓬の小さな呟きに、夢は頷く。

 ガメラがいなくなった分、なんだかここも寂しくなった気がした。

 

 すると、ちせが勢いよく手を挙げる。

「はいはい! 皆さん揃っていることですし、これからアヤメさんとの再開パーティーやりませんか!?」

 

 その言葉に一番速く反応したのはガウマだ。

 

「お、いいなそれ! やろうぜ!」

「私も賛成」

 

 それに続いて夢芽も賛成する。

 

「俺もいいよ」

「じゃあ俺も」

 

 蓬と暦も頷く。

 

「蓬。俺たちも参加していいの?」

「もちろん。せっかく裕太たちもきたんだからさ、一緒に参加しょうよ」

「じゃあお言葉に甘えて」

 

 裕太たちも参加することなり、ちせは最後にアヤメに尋ねる。

 

「というわけなんで、いいすか? アヤメさん」

「こういうのって、普通私に聞くのが先じゃない?」

 

 うっ、と言葉を詰まらせるちせに、アヤメは笑って答える。

 

「もちろん、いいよ! 美味しいお店紹介してね?」

「やったー! 任せてください! お金も心配しないでください! ちゃーんと払いますから。先輩が」

「ちせ!?」

 

 ギョッとする暦を置いて、ちせはしゅっぱーつ、と言って走りだした。

 

 それに皆も続く。アヤメは夢芽に手を引かれ、皆を追いかける。

 

 夕焼けは、もうすぐ終わりそうだった。

 

 

 

 

「そういえばさ。ちせってなんであんなにガメラ気に入ってたの?」

「え? そんなの簡単すっよ。強くてカッコよくて、私たちの味方だったじゃないっすか」

「え、それだけ?」

「こういうのは意外と単純なんすよ、先輩」

 

 

 

 

 

 

 こうして、俺たちの夏休みは終わった。

 

 怪獣という、俺たちが思ってたのとは違う非日常に囲まれた日々だったけど、この日々は充実していて、とても意味ある日々だったと思う。

 

 全てを乗り越えて、新しく出来た友達は、俺たちの日常にゆっくり馴染んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「終わったね」

 

 ジャンクの画面が消えて、アカネは隣に置いていたボランティア用のゴミ袋を持ち上げる。

 

「さっすが、ガメラ。私のヒーローなだけある」

 

 そう言って、アカネは家に帰るためジャンクに背を向ける。

 

(帰ったら、平成三部作でも見ようかな)

 

 そんなことを考えていると、アカネのスマホが通知を知らせるために振動する。

 画面を見てみれば、SNSの通知だった。

 書かれていた文字は、『ガメラ、新作決定!!』の一文。

 

「マジ!? ウソでしょ!? 映画? テレビ? 実写? アニメ? ああ、とにかく帰って確認だー!」

 

 

 

 アカネは走って帰路についた。その足取りはいつもより軽かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・燼滅大火焔『レックスプラズマフィンガー』
 ガメラが右腕に、ダイナミックキャノンのダイナミックファイヤーと全プラズマエネルギーを集めて纏い、敵を殴り飛ばす技。その一撃は相手のシールドも中和し、拳から相手に直接エネルギーを注ぎ込む。そのため、これを食らった相手は、外からも内からも破壊される。

・ガメラ
 ザノンを追って蓬たちの宇宙にやって来た怪獣。体高60メートルでありながら、俊敏性とパワーもあり、口からは火球、『火焔弾』を放つ。手足からプラズマジェットを噴射することでマッハ3以上で飛ぶこともできる。そのため、陸海空、はては宇宙空間でも活動可能なオールラウンダー。
 アヤメと出会う前、もっと言えばザノンが遭遇する前から数多の宇宙を旅していたようだが、その詳細は不明。いつどこで生まれ、何の目的でいつから多次元宇宙を旅しているのか、誰も知らない。二代目は、「宇宙のバランスを取るための、数多の宇宙を超えて存在するアンチボディ的な存在では?」と仮説を立てたが、その答えはガメラのみぞ知る。
 ただ一つ分かっていることは、人間に友好的で、人間を守るために怪獣と戦うことである。



 以上をもって、DYNA&GAMERA -Rebirth- 完結です。
 自己満足で書き始めた小説を、こんなに多くの人に読んでいただけるとは思っていませんでした。ここまで読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。
 ちなみに最終回のサブタイトルにある、夏暁というワードは、ガメラリバースのOPから取らせていただきました。アヤメのキャラ、ひいてはこのお話を作る上で参考にした神曲なので、興味がある人はぜひ聞いてください。

 改めまして、本当にここまでありがとうございました。またどこかで、何かの作品を書いているかもしれないので、もし見かけたら読んでいただけると幸いです。




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