DYNA&GAMERA -Rebirth-   作:くろしゅー

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第二話です。
今回は二つに分けずに投稿してみましたが、長かったですかね?
読みづらいようなら、また分けて投稿したいと思います。



第2話 護るべき世界って、なに?

 

 

 

 

 ギャオス襲来から一週間。フジヨキ台のとあるファミレスに、蓬、夢芽、暦、ちせの四人が集まっていた。この四人、通称ガウマ隊全員で集まるのも思えば久しぶりな気がする。しかし、ある程度会話はあるものの、その場の空気は、ただ再開を喜ぶようなものではなかった。

 すると、ちせが目的の人物を見つけたらしく、席から立ち上がって手を振る。

 

「あ、おーい! こっちこっち、こっちですよー!」

 

 すると、呼ばれた少女も気づき、軽く手を振って、蓬たちの席に来る。

 

「お待たせしてしまってすみません。まだ、この街に慣れてなくて……」

「いーえ、気にしてませんから大丈夫ですよ。来てくれただけで私たちはありがたいですから。ね、ヨモさん」

「うん。今日は来てくれてありがとう。早速だけど話を……」

「あ。ちょっと待って、蓬」

「え?」

「あの、何か頼みます? あ、会計は私たちが持つんで、気にしなくていいです」

「ええ~?」

 

 わざとか天然か、そういった夢芽の少しずれた気遣いから、ガウマ隊久しぶりの会議は幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 その少女と再会したのは、偶然だった。

 怪獣ギャオス襲来の翌日。蓬たちは連絡を取り合って、とりあえず全員無事だったことに安堵した。

 

 そんな中、ちせが言ったのだ。

 

「昨日、すごい人に会っちゃったんすよ!!」

 

 そうして聞いたちせと暦の話に反応したのは、意外にも夢芽だった。

 

「ねえ、その人って黒髪だった?」

「あー、確か黒髪だった気が……」

「勾玉のネックレスかけてた?」

「え、なんで夢芽さん知ってんすか? あの場にいなかったすよね?」

「私も会ってるの、その人に。四日前に」

 

 四日前。そういえば、と昨日の夢芽の話を思い出す。

 

「え、もしかして昨日の話の?」

「そうそう。蓬には話したんだけどね……」

 

 夢芽は昨日蓬にした話を、ちせたちにもする。

 

 

 

 そうして情報を共有した四人が思ったこと。それは

 

「今回の怪獣騒ぎ、絶対その人が何か知ってるよね」

 

 夢芽の言葉に全員が頷く。超人的な動きだけでも怪しいのに、以前対峙した怪獣優性思想と同じ術を使えるのなら、確かめなければならない。彼女が敵なのかどうかを。

 

「あ、でも、ちょっと言い方が違ったっすよ。隊長やヨモさんがやるときって、『インスタンス・ドミネーション!』ってやるでしょ。でもあの人、ちょっと台詞がちがったような……。先輩、覚えてます?」

「いや」

 

 芝居がかったドミネーションを言いながら、ちせは暦に尋ねる。暦の方も同じような意見だった。

 

「でも、どうやって探そう? 時間はあるけど……」

 

 蓬の疑問は当然だ。名前すら知らない少女一人を探すなど、四人ではとても無理だ。

 

「もう一度怪獣が出るのを待つ、とか……?」

 

 暦の言葉に全員が沈黙する。沈黙を最初に破ったのはちせだ。

 

「先輩……。もう少しデリカシーってもんがあんじゃないっすか……?」

「え、いや、今のはあくまで最終手段で、他に別の……」

 

 全員からの視線。

 

「……はい、ごめんなさい」

「よろしい」

 

 ちせの言葉で空気が戻る。しょげた暦を尻目に三人は話し合った。

 結局、地道に聞き込みをするしかない、と結論になったのだが。

 

 

 しかし、結果として暦の案が選ばれることになる。

 

 その話し合いの五日後、再び怪獣が出現したのだ。

 エリマキトカゲをデカくしたような怪獣が街を壊し始めて少し経った時、ギャオスの時と同じく、亀型怪獣、ガメラがやって来たのだ。

 戦い自体はほぼ一方的だった。俊敏性で翻弄しようとしたエリマキトカゲ、もとい『ジーダス』だったが、ガメラの予見能力の方が高く、格闘戦でボコられた挙句、火焔弾の一発で木っ端微塵にされた。

 

 その時、蓬たちは水門の前にいた。戦いの様子が見渡せる場所は近くにそこしかなかったからだ。そこで件の少女を見つけたのだった。

 そうして、黙っておく代わりに何が起きているのか教えてほしいと頼んだのだ。脅しのようになって心苦しかったが、少女は快く了承してくれた。その日は、翌日に指定のファミレスに集まることを約束して解散だった。その時はもう夜遅かったための約束だったが、少女が約束通り来てくれるかは賭けだった。ただ、その心配は無用だったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 というような事情で、ファミレスに集まったガウマ隊と少女。

 それぞれの物を注文し終えたところで、蓬は改めて、目の前の少女に質問をする。

「それじゃ、改めて。君のことについて聞かせてくれる? 君が知っていることとかも全て。もちろん、言いたくないこがあったら言わなくてもいいんだけど。出来る限りは、教えてほしい」

 

 蓬のその言葉に、少女は頷く。

 

「分かりました。……えっと、どうしようかな、まずは自己紹介からかな」

 

 少女はそう呟くと、一つ咳払いをして話しだす。

 

「私の名前は木下アヤメ。歳は22、だったかな?」

「え、年上!? 同い年くらいかと……」

 

 驚く蓬。他のメンバーも、声こそ出していないが、皆驚いている。見た目からてっきり蓬たちと同年代と思っていたのだが、違ったようだ。

 皆が驚いていると、アヤメは手を振ってその言葉を修正する。

 

「あ、肉体年齢は17で止まってるから、そう見えてもしょうがないですよ。全然気にしないでください。紛らわしくてすみません」

 

 アヤメは申し訳なさそうに笑うと、自己紹介を続ける。

 

「えーとそれで、趣味はピアノで、好きな食べ物はスイカ、得意な教科は……、って、こういう話が聞きたいわけじゃないですよね……」

 

 ガウマ隊の、違う、そうじゃない、と言いたげな視線を見て、アヤメは発言を止める。

 説明して伝わるかな、と零しながら、アヤメは問いかけるように言う。

 

「私、実は別の宇宙から来たんです。って言って分かります?」

「ああー…、まあ、そういう人たちに会ってるんで……」

「会ってるんですか!?」

「はい…」

 

 蓬の答えに、今度はアヤメが驚く。さすがに、裕太やグリッドマンとの戦いについて話すと長くなるので、簡単に答える。

 

「な、なるほど。それなら話は早いですね。ちなみに、怪獣については……」

「あ、知ってます。というか、戦ってました」

「戦ってた!?」

 

 アヤメのツッコミのようなレスポンスが店に響く。アヤメは、慌てて声のボリュームを落としながら、蓬に尋ねる。

 

「戦ってたんですか? 怪獣と? 皆さんが?」

「あ、はい。ダイナゼノンってのに乗って、ですけど」

「見ます? 写真ですけど」

 

 夢芽はそう言いながら、スマホの画面をアヤメに見せる。

 そこに写っているのは、赤いロボット。蓬たちが怪獣と戦うために繰った存在であり、蓬たちを繋げた、大切な絆の証だ。

 

「今、ダイナゼノンはどこに?」

「以前の怪獣との戦いが終わった後、ナイトさんが……。あ、ナイトさんって言うのは、俺らの協力者? みたいな人なんですけど。その人がこの世界にはもう必要ないって持ってっちゃって。今はガウマさんっていう俺たちの仲間の人が持ってます。なので、この世界にはもう……」

「そうでしたか。……なるほど、だからギャオスがあの強さに」

 

 少しの間、ブツブツと呟いていたアヤメだったが、何かに納得したのか話を再開した。

 

「それで、私たちがこの世界に来た目的なんですけど、『ザノン』を追ってきたからなんです」

「ザノン?」

「正体不明の存在です。分かっていることは、海賊のように様々な宇宙で侵略行為を行っていること。そして、その侵略に怪獣を用いることです。この世界に現れた二体の怪獣もザノンの刺客です」

 

 そして、とアヤメはネックレスの勾玉を持ち上げる。

 

「それを止めるために戦っているのが、私とガメラなんです」

「ガメラって、あの亀みたいな怪獣のことですか?」

 

 夢芽の言葉にアヤメは頷く。

 

「ええ。ガメラはずっとザノンを追っているんです。私と出会う前から。それを助けたくて、私も一緒に戦っています」

 

 その言葉にちせが質問する。

 

「あ、じゃあ、それがアレなんですか? インスタンス・ドミネーションみたいなやつ」

「『インスタンス・サブジェクション』のことですか? そうですね。あれでガメラと一緒に戦ってます」

「ドミネーションとは違うんですか?」

 

 蓬の質問に、アヤメは勾玉を触りながら答える。

 

「ドミネーションの方は、人が怪獣を支配して操ります。でも、サブジェクションの方は、怪獣の方に主導権があるんです。私の役目は、あくまでガメラの力の増幅とダメージの軽減。戦い自体は、私よりガメラの方が上手いですから」

 

 アヤメは届いた飲み物を飲み、一息つくと話を続ける。

 

「まあサブジェクションの仕組みはどうでもよくて。皆さんに聞きたいのは、以前この世界に現れた怪獣についてです。その時は何体くらい出現しました? 発生原因って分かります?」

 その問いにちせが答える。

「えっとー、確か怪獣の種が人の情動を吸収すると発生するって言ってた気がするっす。数は、えー……、10体くらい?」

「11体じゃなかった?」

 

 ちせの言葉に暦が訂正を入れる。

 

「……あの、それが関係してるんですか?」

 

 蓬の質問をアヤメは肯定する。

 

「はい。ザノンの使う怪獣の強さは、世界の怪獣への規格によって決まります」

「規格?」

「世界が怪獣をどれだけ受け入れているか、と言い換えても良いかもしれません。怪獣は世界の法則から外れた歪んだ存在。宇宙というのは、自身に歪みが発生すると、歪んだ状態を正すために、歪みを排除するか、もしくは受け入れようとします。そして、歪みを受け入れることは、世界が怪獣を受け入れることと同義です。それにより、怪獣はその世界でより自由を手にします。だから基本、怪獣は出現すればするほど強くなっていくんです」

 

「もちろん、限界点というのはどの世界にも存在します。そこに達すると、それ以上強い怪獣は現れません。なので、そこまでの怪獣を倒しきれば、ザノンは諦めて別の宇宙へ移動します。こうして、私たちはヤツの侵略を防いできたんですが……」

 

「この世界はすでに11体の怪獣が出現しています。それでもザノンが標的にしたとうことは、限界点はまだ先だということ。元から、怪獣を受け入れやすい世界なんでしょう。最初に戦ったギャオスだって、今まで戦ってきた中でもトップ3に入るくらいの強さでした。昨日のジーダスなんかは、前の世界で戦った最後の怪獣でしたし……」

 

 つまりですね、とアヤメは続ける。

 

「この世界は、今まで以上にヤバい怪獣が誕生する可能性が高い、ということです」

 

 アヤメが話した内容について、蓬たちの感想は、分かるような分からないような、だった。

 アヤメもそれを察したのだろう。

 

「つまり今の話をまとめますと、ザノンという侵略者がこの世界にやって来て怪獣を投下しだしたので、私たちがそれの怪獣退治にやって来た、というわけです」

 と話をまとめた。

 

 

 

 

 その後も会議は続き、2時間ほどで解散となった。

 アヤメと連絡先をそれぞれが交換し、最後に暦が交換したところで、アヤメは口を開いた。

 

「皆さん、今日はありがとうございました」

 

 アヤメはそう言って、頭を下げる。

 

「え? いやいや、俺たち何にもしてないですよ? むしろ色々質問して迷惑だったんじゃ……」

 

 蓬の言葉にアヤメは首を振る。

 

「いえ、私の話を真剣に聞いてくれて、私たちのやってることを理解してくれただけでも十分です。怪獣がいない世界だと、やっぱり理解してもらうのは難しいので。理解してくれる人がいてくれるだけで、すごい力になります。だから、感謝させてください」

 

 そう言って、アヤメはもう一度頭を下げた。

 

「それでは。もし何かあったら、特に怪獣かもしれないことは連絡をください」

 

 そう言うと、アヤメはファミレスを後にする。そうして、少し歩いた後、思い出したように振り返り、四人に手を振る。

 

「皆さん安心してください! この世界も、絶対守り切りますからー!」

 

 そう言って笑うと、彼女は今度こそ去っていった。

 

 

 

 

 

「あの人、どう思った?」

「うーん……」

 

 ファミレスからの帰り道、蓬は夢芽に問いかける。とりあえず、ガウマ隊としての結論は敵意も危険性もない、という結論になった。だが、夢芽個人にも聞いてみたくなったのだ。蓬自身、自分の考えを整理したいと思っていた。

 

「逆に聞くけど、蓬は?」

 

 だが、夢芽もそうすぐに意見が纏まらないようで、逆に聞き返される。

 

「俺は……」

 

 夢芽に聞いておいてなんだが、蓬自身何と答えていいか、ハッキリ分かっていない。彼女が信頼出来ないわけではない。むしろ、初対面に限れば、ガウマよりよっぽどマトモだ。しかし、それだけでは、何かモヤモヤする気がした。

 

「俺は……、何だろう。このままで良いのかなって。全部アヤメさん任せでいいのかな、って思った。もちろん、今の俺たちが出来ることは少ないけど。それでもさ、何か出来ないかなって」

 

 蓬は、今は無いダイナソルジャーの感触を思い出すように手を握る。

 

「俺は皆がいたから戦えた。夢芽がいたから、最後まで戦い抜けた。一人だったら、戦おうとも思わなかったかも。それくらい、一人で戦うのは辛いだろうし、苦しいと思う」

 

 蓬の話を黙って聞いていた夢芽は呟くように言う。

 

「蓬らしいね」

「そうかな」

「うん。そんな風にほっとけないとことか。自分の出来ること探そうとするお人好しなところとか」

 

 でも、と夢芽は蓬の顔を見る。

 

「そういう蓬、私は好きだよ」

「~~っ! ちゃ、茶化さないの! 今、真面目に話してるんだよ!?」

「茶化してませーん。真剣に言ってます~」

「そ、れは、嬉しいけど、いまはそういう話じゃないでしょ!」

「はいはい、分かってるって」

 

 はあ、と蓬は息をついた後、夢芽に再度問いかける。

 

「そう言う夢芽さんは? どうなの?」

 

 夢芽は、う~ん、と唸った後、ゆっくりと口を開く。

 

「私は、そうだな……。……不安だった?」

「不安?」

「うん。信用できないってことじゃなくてね。なんて言うのかな……。なんか、危なっかしいっていうか。心の奥がザワつくっていうか……」

 

 夢芽の言葉は、どこか要領を得ない感じだ。本人もどう言っていいのか分からないのかもしれない。蓬は久しぶりに夢芽の考えが読めなかった。

 

「うん、よく分からない!」

「結局、そこに落ち着くのね……」

 

夢芽は諦めたと宣言するように、元気よく言う。

 

「あ、でも、あの人の力になりたいってのは、蓬と一緒だよ。だから……」

 

 そう言って、夢芽はスマホを取り出す。

 

「スマホ?」

「私たちで何とか出来る範囲は限られてるよ。こういうとき、頼りになる人がいるじゃん」

「……あ、そっか、ガウマさん! そうだ、この前連絡先交換したから連絡取れるんだった!」

「そうそう。ガウマさん来てくれれば、ダイナゼノンに乗れるし、私たちも戦えるでしょ」

 

 そう言いながら、夢芽はガウマに電話をかける。

 

 1コール、2コール、3コール……。

 

「……あれ、でない」

 

 最終的に「おかけになった電話番号は現在電波の届かないところにいるか……」という定型文が流れ出してしまう。

 

「あれ? 番号間違えてないよね?」

「俺からかけよっか?」

「うん、お願い」

 

 そうして蓬が電話するも、結果は同じ。

 

「ガウマさん、今忙しいのかな」

「明日かけ直す?」

「そうだね」

 

 そこで、蓬と夢芽は明日も集まることを決め(親には勉強会と説明することにした)、解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 再び集まってガウマへと電話をかけた蓬と夢芽。しかし、結果は昨日と変わらない。

 

「ねえ、何かおかしくない?」

 

 夢芽のその言葉に蓬も頷く。

 

「こんなに繋がらないのはさすがにおかしい。ガウマさんたちに何かあったのか、それとも……」

 

 そこまで言って、蓬はもう一つの可能性を考える。それを調べるため、蓬はある人物に電話をかけた。

 その人物とは、響裕太。しばらく前に起きた、宇宙が繋がった事件のときに知り合った、別の宇宙の友達だ。彼らとはなぜか、別れた後も電話が繋がったので、ちょくちょくやり取りはしていた。

 そして何より、裕太はグリッドマンという巨人に変身することができる。友達をあまり危険な目に巻き込みたくないが、彼らなら怪獣にも対抗出来る。それに、裕太ならグリッドマンを通じてガウマたちへも連絡を取れるかもしれない。そんな期待も込めて、電波を発信した。

 

 

 

 しかし、結果はガウマと同じだった。

 

「やっぱりだ……。繋がらない」

「裕太さんにかけたの?」

 

 夢芽の問いに蓬は頷く。

 

「裕太ならグリッドマン通じて、ガウマさんたちにもって思ったんだけど……。これ、問題はガウマさんの方じゃなくて多分、俺たちの方だ。夢芽、試しに六花さんに電話してもらっていい?」

「いいけど……」

 

 宝田六花。こちらも裕太同様、別の宇宙の友達で裕太の彼女。知り合った時から夢芽とは仲が良く、時々やり取りしているようだった。

 夢芽がスマホから耳を離して首を横に振る。どうやら、蓬の予想通りだったようだ。

 

「ねえ、これどういうこと?」

 

 夢芽の問いに、蓬は自分が考えている推測を話す。

 

「あくまで推測でしかないけど、多分別の宇宙への連絡が絶たれてるんだと思う。俺たちの間で連絡が出来るってことは、別宇宙への連絡だけ。アヤメさんの話を信じるなら、ザノンはここを侵略するため、増援なんか呼ばれたくないはず。ダイナゼノンが戦ってたことを向こうが知ってるなら、呼ばれないようにしてもおかしくないと思う」

「これって伝えた方がいいよね」

「うん、するべきだと思う」

 

 

 

 

 その日の午後。蓬と夢芽は、二人がいつも通学で使っている水門の前でアヤメを待っていた。気づいたことを伝えるため電話したら、ここで待っていてほしいと言われた。なので水門に行ってみると、なぜかちせと暦も水門の前にいた。

 

「あれ? ちせちゃんに暦さん。なんでここに?」

「いやあ、ちょっとアヤメさんに話したいこと、っていうか見せてほしいものがあって、ここで集合にしたんすよ。ヨモさんたちは?」

「俺たちも話したいことがあったんだ。そしたら、ここを指定されて」

「ああー、じゃあまとめて話そうってことになったんじゃないすか」

「なるほど」

 

そんな会話をしていると集合時間が迫ってくる。時間的にそろそろ来るはずだと思って待っていると、時間通りにアヤメがやって来る。

 

先にいいっすよ~、とちせが言うので、蓬と夢芽は先ほどのことと自分たちの推測をアヤメに話す。すると、アヤメは納得したように頷く。

 

「なるほど、確かにあり得る話です。ザノンもここを選んだ以上、ダイナゼノンの存在には気づいているはずです。……先手を打たれましたね。相手もこの世界の希少性に気づいているんでしょう」

 

 アヤメは苦い顔をしながら言う。どうやら、状況はあまり良くないらしい。だが、アヤメはすぐに切り替えて、笑顔で蓬たちに言う。

 

「情報提供ありがとうございます。こうやって頼ってもらえると嬉しいので、些細なことでも気にせず連絡くださいね」

 

 そうして、今度はちせの方を向く。

 

「それで、ちせさんの用というのは?」

 

 すると、ちせは歯切れわるそうに言う。

 

「えっと……、今の流れで頼むことじゃないかもですけど、その、ガメラに会わせてほしいなって……。ダメっすかね?」

 

 その言葉に、アヤメは何度か目を瞬かせると、笑って承諾する。

 

「いいですよ。そんなこと言ってくれる子は初めてだから、ちょっと驚いちゃって」

 

 でも、とアヤメは付け加える。

 

「できれば、人目につかないとこがいいですけど……」

「それなら、任せてください! いーとこ知ってますから」

 

 そうちせは自信満々に言った。

 

 

 

 

 

 そうして、蓬たちはとある山の中に来ていた。

 ここは、以前ダイナゼノンで戦っていたときの秘密の訓練場だった場所だ。

 皆で良く集まった橋の上に立ち、アヤメは勾玉を空に掲げる。

 

「ガメラ」

 

 アヤメが優しく呼びかけるようにその名を呼ぶと、勾玉から一筋の光が伸び、それがガメラを形作っていく。そして、あの夜見たときと同じ姿の怪獣が蓬たちの前に現れた。

 

「おおーー! スッゲーー!」

 

 興奮しながら叫ぶちせ。蓬たち三人もその姿に圧倒される。こうして間近で見ると、甲羅のせいもあるだろうが、実際より大きく見える。この怪獣も今までの怪獣と違うように感じる。といっても、ギャオスに感じたような威圧とは違うものだ。

 

(なんて言うんだろうな。荘厳?)

 

 蓬の知っている存在だと、共に戦ったナイトが一番近い感じだが、それよりも纏う雰囲気は神々しい感じがした。

 

「ガメラ、呼び出してごめんね。皆がガメラに会いたいって言っててね。すごいんだよ。ここにいる人たち、皆怪獣と戦ったことがあるんだって。私たちのことも理解してくれてるの。だから、ガメラも仲良くしてくれると嬉しいな」

 

 そう語りかけるアヤメ。その言葉を聞いて、ガメラは蓬たちに顔を近づける。ちせ以外は、その顔の威圧感に少し後ずさる。翡翠色の目に蓬たちの姿が映る。ただ、その目はとても優しく、敵意は感じられなかった。そのため、蓬は少し前に戻る。

 

「うわー、近っ! これって触っても大丈夫っすか?」

「うん。全然大丈夫」

「よ、よーし」

 

 ガメラを一番近くで見ていたちせがアヤメに尋ねると、アヤメは快諾する。

 ちせは恐る恐る手を伸ばしてガメラの顔に触れる。

 

「お、おお…! 岩みたいっすね……。でも、なんかあったかい。 ……スゲー」

 

 そんなことを言いながら、ちせは徐々に大きくガメラを撫でる。

 

「俺も触っていい?」

「もちろんです!」

 

 アヤメの了承を得て、蓬もそっとガメラに触れる。その肌は岩のように硬かったが、不思議と安心するような温かさがあった。怪獣に触れているというのに、蓬の心はすごくリラックスしていた。

 

(もしかしたら、人を落ち着かせる波動が出てる、とか?)

 

 そんなことを考えていると、蓬の隣に夢芽が立ち、蓬と同じように触れる。夢芽は撫でながらガメラの瞳をじっと見つめている。その顔は初めて会った時のようで、何を考えているのか蓬には分からなかった。

 

四人がガメラに一通り触ると、ちせがアヤメに言う。

 

「あ、あれも見せてくださいよ! さぶじぇくしょん?ってやつ!」

「あれ? そんな面白いものではないけど……、いい?」

 

 そう言いながら、アヤメは左手を構える。その姿は確かにドミネーションのポーズそっくりだ。

 

「インスタンス・サブジェクション」

 

 その言葉とともに、アヤメの瞳がガメラと同じ翡翠に光る。

 

「まあ、こんな感じだけど……」

「おおー! かっけぇっす!」

「そ、そう?」

 

 照れ隠しのように笑うアヤメ。でも、どこか嬉しそうなのは見間違いじゃないだろう。

 

「ん? どうしたの、ガメラ」

 

 すると、アヤメがガメラの方を見る。そうして少し見つめ合った後、彼女は嬉しそうに笑う。

 

「ホント? それならお願いしてもいいかな?」

 

 その言葉を聞き、ガメラは蓬たちに手の平を差し出す。

 

「えっと……?」

 

 その行動に蓬が困惑していると、アヤメが蓬たちの手を引く。

 

「ガメラが手のひらに乗せてくれるそうです。だから、どうぞ」

「え?」

 

 蓬としては、さすがに怪獣の手のひらの上に乗るのは抵抗があったのだが、ちせは一番に「乗ります!」と返事をし、まさかの夢芽もそれに続く。

 

「ええ!? ちょっと夢芽さん? 乗るの?」

「うん。だって、怪獣に乗せてもらうなんてそうそう出来る経験じゃないでしょ。だったら、経験しとかないと損かなって」

「損!? う~~ん、そう、かも? いや、そうなのか?」

「ほ~ら、ヨモさん、早くしてください。時間がもったいないっすよ~」

「ちせちゃんもう乗ってるし……。てか、ちゃっかり暦さんまで……」

「蓬」

「分かったよ……」

 

 そう言って、夢芽に手を引かれ、橋からガメラの手に飛び移る。

 全員が乗ったことを確認したガメラは、しゃがんだ状態から立ち上がる。そうして見えた景色はいつもより高く、それでいて懐かしい景色だった。

 

「うおーー! 高ぇーー!」

 

 はしゃぐちせに「落ちるぞ」となだめる暦。

 

「ね? 乗ってよかったでしょ?」

 

 イタズラが成功したような笑みを浮かべて夢芽は言う。

 

「……うん。そうかも」

 

 蓬も夢芽につられて笑う。久しぶりのこの景色を、蓬と夢芽は手を繋ぎながら眺めた。

 そんな四人の様子を、ガメラはただ静かに見守っていた。

 

「あ、良ければ飛ぶことも出来るけど……」

「それはさすがに勘弁してください!」

 

 アヤメの提案を全力で断る蓬。いくらなんでも、さすがにそれは怖い。夢芽は笑っていたが、断ったことに後悔はない蓬だった。

 

 

 

 

 

「いやー、スッゲー楽しかったっす。ありがとうございました!」

 

 ちせのお礼にアヤメは笑って答える。

 

「ううん。私も楽しかったです。こんな風に話せるのは、皆さんが初めてですから」

 

 アヤメがそう言うと、ちせは何かを制止するように手を前に出す。

 

「あの、会ったときから思ってたんすけど、アヤメさん、態度が固いっすよ。さっきみたいな感じに、もっとフレンドリーでいいっすよ。私たち、アヤメさんより年下ですし。それに、その喋り方だとなんか壁があるみたいで」

「え、でも……」

 

 アヤメは何か言いたそうにするが、それよりもちせが先に喋り出す。

 

「ここまできたら、アヤメさんももうガウマ隊の一員っすよ。それでいいっすよね、ヨモさん?」

「え? ここで俺に振る?」

 

 突然話を振られ、困惑する。

 

「うーん、まあ俺はいいけど。夢芽は?」

 

 簡単にいいよ、とも言えず、夢芽に判断を投げる。

 

「いいんじゃない? 私ももっと話したいし」

 

 あっさりオーケーした夢芽に驚いていると、ちせが我が意を得たり、といった顔でアヤメに話しかける。

 

「ってわけですから、アヤメさんはもう私たちの仲間っすよ。なんで、もう全然タメ口で話してください」

「え、俺の意見は」

「先輩は聞かなくてもどうせオーケーでしょ」

「まあ、そうだけど」

 

 そんなちせと暦のやり取りを見ながら、アヤメは口を開く。

 

「そうです……、いやいや、それなら、私へも敬語はいらないから、気軽に話しかけてね」

「じゃあ、そうする。よろしくね、アヤメ」

「え、順応早っ」

「うん、よろしくね、夢芽」

 

 夢芽の切り替えの速さに驚く蓬。でも、そう話しかけられたアヤメは嬉しそうだった。どうやら、こういうノリも嫌ではないらしい。それなら、俺もフランクに行こう。

 

「じゅあ、これからよろしくね、アヤメさん」

「よろしく、蓬くん」

「よろしくっす、アヤメさん。あ、私、この話し方がデフォなんで、そこは気にしなくていいっすよ」

 

 そう言って笑うちせ。

 

「ええ~? 何それ。私には敬語やめろっていった癖に~」

 

 そう言うと、ちせの頭を雑に撫でるアヤメ。笑い合う二人につられて、蓬と夢芽も笑う。暦も少しだけ口角が上がっていた。

 ガウマ隊秘密の訓練場に、久しぶりに笑い声が戻った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある街の路地裏に、ソレはいた。この前のガメラとジーダスの戦闘で住民が避難したため、周りには誰もいない。

 強いて似ているものを挙げるならトカゲのシルエットをした異形は、ジーダスの肉を貪っていた。死ぬとすぐに腐敗し、跡形もなく消えてしまう怪獣の死体。それを少しでも食べるため、ソレは必死だった。

 そもそも、ソレの宿主であったジーダスがガメラに勝てるなど、ソレはこれっぽっちも考えていなかった。ジーダスの役割は卵の宿主として自分たちに栄養を与えること。そして、派手に散って、自分たちを街に飛散させることでしかない。火焔弾の爆発で半分くらいは死んでしまったが、ジーダスの死体で十分エネルギーは蓄えられている。あとはひたすら食べて力を蓄えるだけだ。

 ふと、一匹の異形が良さげな通路を発見する。異形が知る由もないが、それは下水道と呼ばれるもので、異形が姿を隠し、移動するには絶好の場所だった。

 ジーダスの肉を食い切った異形は下水道に入り込む。それに周りの異形たちも続く。

 

 新たな怪獣の芽は着実に、蕾をつけていた。

 

 





夢芽さんのキャラが難しすぎる……。正解が分からない……。

ジーダスくんは話のテンポを考え、ナレ死です。まあ、トトと互角の時点でね……。リバースにも出てなかったので、カメオ出演程度で……。
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