DYNA&GAMERA -Rebirth-   作:くろしゅー

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 お待たせしました。ぼちぼち再開したいと思います。
 今回も長くなってしまったので二つに分けます。


第5話 切り裂いて ①

 

 

 

 

 

 

 夜の帳が下りた住宅街。その路地裏で、アヤメは荒い息を繰り返していた。

 

「たはは……、もう私も限界かな……」

 

 注射器をゴミ箱へと投げ捨てながら、そう呟く。薬は打ったが、あまり効かなくなっている。それは、そろそろ巫としての限界が来ているという事実を、如実に表していた。

 

「さっきのヤツ、強かったなぁ……」

 

 思い出すのは先ほどの戦い。ジグラとの戦いに辛うじて勝つことが出来たが、それは同時にあれより強い怪獣が出てくることを、暗に示していた。

 

(今までの経験的に、生まれる怪獣はあと2、3体。次はいよいよヤバいかもね……)

 

 アヤメは空を見上げる。先ほどガメラの背に乗って見た星空よりも暗闇が多かった。住宅街の明かりがある状態では、星空なんてこんなものだろう。

 

「あと少し。持ってよ、私の体」

 

 アヤメの声は、空に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 千葉県。東条海岸。

 ガメラとの戦いに敗れたジグラの遺骸が、そこに鎮座していた。周りを黄色い規制テープで囲われ、自衛隊の厳重な警備の元、調査が行われていた。

 調査はすでに数日に及んでおり、だが何も分かっていなかった。分かったことといえば、最近現れた怪獣の死体はどれも腐食が速く、二週間ほどで消滅してしまうのだ。そのため、研究者たちは昼夜を問わず怪獣の死体を調査しているのだが、人類の科学を大きく逸脱したそれに、全く太刀打ち出来ていないのが現状だった。

 今夜も懸命の調査が続けられているが、どうせ何も分からないだろう。それが、警備を担当する隊員の心の内だった。

 そうして夜が更けてしばらく経ったころだった。足下が揺れ始める。最初は地震だろうと、物が倒れること以外の心配をしていなかった隊員たちだったが、徐々に揺れは大きくなり、その振動が真下から来ていることに気づいた。

 何かがおかしい。警備を担当していた現場責任者の隊員が、上へ報告をしようとした、その時だった。

 

 

 

 ドォン!!!

 

 

 

 凄まじい衝撃音が海岸に響く。テントで休んでいた隊員たちが外に出てみれば、そこには巨大な刃物があった。

 何かいる。そう隊員たちが認識したころには、その隊員たちは真っ二つに切断されていた。

 人の何十倍もの大きさがあるその刃は、近くにあるテントや人を次々と切り裂いていく。その様子はまさに、修羅の人斬りだった。

 ようやく応戦を始めた隊員たちだったが、歩兵が持つアサルトライフルなど通用するわけもなく、護衛部隊は最初の爆発のような奇襲も併せて、ものの数分で壊滅した。

 その刃物、いや怪獣は他のテントも押しつぶして、最後に、ジグラの死体までたどり着くと、近くにいた研究者を手早く皆殺しにし、口の中に放り込む。

 そして、ついにはジグラの死体も食べ始め、十五分ほどでその肉を全て食べきったのだった。

 ジグラを完食したことを確認すると、怪獣は不気味な笑い声のような鳴き声を上げ、海へと姿を消した。

 その迅速かつ徹底的なやり方によって、ジグラ解析班は生存者を一人も残すことなく全滅。襲撃者の存在も、物音で起きてきた近くの住民が撮影した、海に潜る寸前を捉えた映像のみでの確認となった。

 

 

 

 

 

 

「そういえば、アヤメってどこで生活してんの?」

 

 夢芽がその問いを投げかけたのは、たまたまだった。ジグラとの戦いから三日後、偶然街でアヤメと出会った夢芽は、遊びながら色々と話をしていて、この質問に至る。前から疑問ではあったのだが、他に聞きたいこと、話したいことがたくさんあったせいで、聞きそびれいた事柄だった。アヤメは夢芽の問いに何でもない風に答える。

 

「え? カプセルホテルだけど……」

「カプセルホテル!?」

 

 色んな意味で驚いた夢芽は声を上げる。

 まあ、前例のガウマに比べれば、マシな生活かも知れないが……。

 

「いや、それでもカプセルホテル毎日は……」

「お金はそこそこあるから大丈夫だよ。それに場所も一定期間で変えてるし」

「いや、そういう問題じゃないくて……」

 

 何がマズいのか、よく分かってないという顔をされる。確かに、ホテルで毎日を過ごす人だってきっといるだろう。それでも、夢芽にとってアヤメをいつまでもホテル暮らしでいさせたくはないと思った。理由は自分でも分からなかった。

 

「よし、決めた。アヤメ、今晩ウチに来なよ。しばらく泊めてあげる」

「……え? ええ!? い、いやいやいや、急すぎない!? それに、さすがにそこまでしてもらうのは悪いよ。そんな急だと夢芽のご両親だって……」

「大丈夫! ウチの両親、意外と甘いところあるから。新しくできた友達だって言えば、きっと何とかなるって」

「ええ……?」

「それにね、私この前誕生日だったの」

「え、そうだったの? おめでとう。ごめんね、何もできなくて」

「ありがとう。それにアヤメは謝んなくていいよ。私も言ってなかったし」

 

 それで、と夢芽は続ける。

 

「ここ最近の怪獣騒ぎでやろうと思ってた誕生日パーティー、できてないんだよね。だからさ、アヤメも加えてやりたいんだよね」

 

 いいかな、と上目遣いを使う夢芽。その顔に、アヤメはそれに頷くしかなかった。

 

「ず、ずるい……」

「え~? なにが?」

 

 夢芽は上機嫌な声でとぼける。

 

 さて、アヤメも乗り気になったことだし、こうなったら善は急げだ。さっそく、両親にアヤメを泊めたいことを電話する。

 

「……うん。ありがとう。じゃあね。……オッケーだって! じゃあ、荷物まとめよう。ウチ紹介するから!」

「ええ~……」

 

 かくして、アヤメの南家お泊まりは特急列車もビックリの勢いで決まったのだった。

 

 

 

 

 

 

「怪獣、怪獣、また怪獣っすか~? もうメッチャ出てくるじゃないっすか。これあれっすか。怪獣のバーゲンセールってやつっすか」

 

 ニュースを見ながらちせが言う。ふざけた物言いだが、暦も全く同意見だった。ジグラを倒して三日で新たな怪獣が目撃された。

 

「しかも、今度は前の怪獣の死体を喰ってるからな。次どこに現れるかも分かんないし、どうなるんだろうな」

 

 暦はそう言いながら、スマホを開いて、怪獣に関する情報を集める。ネットの情報もバカにはできない。むしろ、怪獣という超常現象が相手なら、政府の発表する情報よりも多くの情報が手に入る。

 とはいえ、今回はあまり情報が出ていない。怪獣に関しての投稿はどれも嘘くさいものばかりだった。

 これまでの怪獣が出現前にも、いくつか兆候のようなものがネットに上げられていたことを考えると異例だった。ましてや一度姿を現しているのに、である。

 

(もしかして、怪獣もバレないように動いているのか?)

 

 暦は今までの怪獣の出現地点を地図に示す。どれもフジヨキ台、またはその周辺の市に現れている。例外はジグラだが、そのジグラとの戦いの後にアヤメが言っていたことを思い出す。

 

(確か、怪獣使いの才能持った人が狙われるんだったよな。それで実際、蓬くんが狙われた。この出現位置も偶然じゃない。きっと、蓬くんの気配で探ってたんだ)

 

 もちろん、暦は蓬を責める気はないが、怪獣が蓬を狙ってくるのは確定でいいだろう。あとは仕掛けてくるタイミングさえ分かれば、手の打ちようはあるはずだ。

 暦は立ち上がって最低限の身支度を済ませる。

 

「ん? 先輩、どっか行くんすか?」

「ああ、ちょっとな」

「……私も行っていいすか?」

「え? ちせも?」

「そうっす。先輩一人じゃ心配なんで」

「信用ないなぁ」

 

 ぼやきながらもちせに許可を出し、二人で河川敷を歩く。

 そういえば、ちせと一緒に外に出るのは久しぶりな気がする。

 

「で、先輩。何するんすか?」

「怪獣の情報収集」

「……まあ、だとは思ってましたけど。就活はどうするんすか」

「そんな場合じゃないだろ。怪獣がいるんだ。事情知ってる俺らで出来るだけ何とかしたほうがいいだろ」

「……そっすか」

 

 二人の間に流れる沈黙。その沈黙に耐えられなくなって、暦は口を開く。

 

「……なあ、ちせ。俺、ちせに何かしたか?」

「ふぇ? いきなり何すか?」

「いや、俺の勘違いならいいんだけど…。最近なんか、ちせが素っ気ないっていうか。いつもはウザいくらい絡んでくるときもあるのに、ここんとこ、会話がすぐ途切れたり俺を見る目がいつもと違う気がして……。だから、何か怒らせるようなことしたんだったら、謝る」

 

 それを聞いたちせは、暦から視線を外し、川のほうを見る。

 

「……別に、怒ってたわけじゃないんすけどね。どっちかといったら、心配の感情のほうが近いっすかね」

 

 ちせは歩くのを止めて、河川敷に腰を下ろす。

 

「自分でもよく説明できないんすけど……。先輩、怪獣がまた現れるようになってから、怪獣のことばっかじゃないっすか。もちろんこの世界じゃ、怪獣について私たちが一番関わってるから、何とかしようと思うのは分かるんすよ。でも、先輩はそれだけじゃないっていうか。なんか、上手く表現出来ないっすけど、怪獣の情報集めてる先輩、怖かったすよ」

「怖い?」

「ええ。なんか、周りが見えてないっていうか。今までのこと全部放っぽりだしちゃった感じで。そのうち、自分の命も捨てちゃうんじゃないかって感じもしましたよ」

 

 ちせの言葉に、暦は言葉が詰まる。ちせに言われたことに心当たりがあったからだ。さすがに命を投げだそうなどとは考えていなかったが、他のことより怪獣を優先していたとは、暦自身少し感じていた。その理由はこの世界を守りたいという理由だけじゃない。他のことをやっているより、怪獣の情報収集をしているのが楽しかったからだ。手応えもなく、やりたくもない面接を受けるより、よっぽど人生が充実している気がした。就活はダメかもしれないが、そんな自分でも世界を守ることに貢献している。そんな肩書きが欲しかったのかもしれない。

 一度自覚すると、そうとしか思えなかった。世界を守る、と言いながら、自分は世界の危機を楽しんでいた気がする。

 そう思うと、自己嫌悪で押しつぶされそうになり、深いため息とともにしゃがみ込む。

 

「またデカいため息っすね。せっかく私が心配してるってのに、その返しはないんじゃないんすか?」

「……ああ、悪い」

 

 とはいえ、一度へこんだ気持ちはすぐに戻りそうもない。家から出てまだそれほど経っていないが、一旦家へ帰ろうかと考えたときだった。

 

「あれ? ちせちゃんに暦さん。こんなところで何してるんですか?」

 

 バイト帰りの蓬が声をかけてきた。

 

 

 

 

 

 暦とちせは、蓬とともに話をしながら住宅街を歩く。

 

「へえ~。じゃ、目前でガメラが食い止めてくれたってことっすか?」

「うん。もうジグラまであとちょっとだったから、あと数秒遅れてたら危なかったかも。ガメラとアヤメさんに感謝してもしきれないよ」

 

 ちせは蓬からジグラとガメラの戦いについて聞いていた。理由は分からないが、ガメラはちせのお気に入りだ。きっと、その活躍を聞きたいのだろう。

 そんな話をしていると、前から歩いてくる人影が二つ。

 

「あれ、蓬じゃん」

「暦さんとちせちゃんも。奇遇だね」

 

 噂をすればなんとやら。人影は、話題に上がっていた夢芽とアヤメだった。

 

「皆、どうしたの?」

 

 アヤメの質問に、ちせが答える。

 

「あー、なんか先輩が怪獣の情報集めるって出掛けたんで、それについてきたんす。ヨモさんはその途中で」

「ちょ、ちせ」

 

 暦は咄嗟に止めようとするが、その前に全部言ってしまった。

 

「え? 暦さん、まだ怪獣を……」

「あ、いや、危ないことはしてないよ。ただ、怪獣が出現しているのは間違いないし、それについてなにか分かればって……」

 

 蓬の視線が痛くなった暦は、顔を明後日のほうへと逸らす。

 

「そうだったんですか。ありがとうございます。この前も、暦さんの情報で間に合いましたから」

 

 一方のアヤメはお礼を言い、それにちせが待ったをかける。

 

「いやいや、アヤメさん。先輩をあんまおだてないでください。この人、すぐ調子乗っちゃいますから」

 

 ちせの言葉に苦笑いしながら、アヤメは暦に言う。

 

「アハハ……。でも、ちせちゃんの言うとおりです。あまり危ない真似はしないでくださいね。それで暦さんが危ない目にあったら、ちせちゃんも悲しみますよ」

「う、うん。善処します……」

 

 蓬くんと同じこと言われたな、と、暦はバツが悪そうに頭を掻く。

 

 そんなアヤメの様子を、夢芽が何か言いたげな顔で見つめていることに、アヤメは気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな会話をしていると、横を小学生の集団が通り過ぎる。日が落ち始めており、小学生はもう下校時間なのだろう。

 

「あれ、噂どおりだったな」

「ね。ホントに笑い声聞こえるなんて」

「やっぱ幽霊なのかな」

「怪獣じゃね?」

「やめてよー。もうあそこ通るの怖くなっちゃうじゃん」

 

 その会話を聞いたアヤメは何か感じ取ったのか、蓬たちのところから小学生たちのところに向かう。

 

「ねえ、噂ってなに?」

「え? お姉さん誰?」

「あ、あー、私は新聞記者かな。ここで記事の取材してるんだ。それで噂って?」

「えっとね、今日の朝、クラスの子が向こうにある廃ビルから笑い声が聞こえるって言っててね。僕たちもさっき行ってきたんだけど、ホントに笑い声が聞こえたんだ」

「嘘じゃねーよ」

「ホント、ホント!」

 

 その言葉を聞いたアヤメはすぐさま真剣になった。

 すぐに廃ビルの位置を子供たちに確認する。ありがとう、と子供たちにお礼を言って、アヤメは蓬たちのところへ戻ってくる。

 

「どうしたんすか? まさか、怪獣関係とか……」

「そのまさか。多分、もうこの街にいる。今からちょっと行ってくるから、皆はここにいて」

「ちょ、ちょっと待って。これから?」

 

 夢芽の問いかけにアヤメは頷く。

 

「うん。どんな被害が出るか分かんないし、急がないと」

 

 そう言って、アヤメはビルのほうへと駆け出す。

 

「危ないと思ったら、すぐに逃げてねー!」

 

 そのセリフを残して、アヤメはビルの影に消えてしまった。

 

「行っちゃった……」

 

 蓬がそう呟いていると、隣にいた夢芽の髪が揺れる。

 それはほんの一瞬だった。

 

 

 

 

 

 夢芽がアヤメが走っていったほうへ走り出したのだ。

 

「え? え、ちょっ、夢芽!」

 

 突然のことに驚きながら、蓬は焦って夢芽を追いかける。

 

「ちょっと、どこ行くの!」

「アヤメのとこ!」

 

 振り返る時間も惜しいという感じで、夢芽は振り返らずに答える。

 

「待っててって言われたじゃん!」

「じゃあ放っとけって言うの! 蓬だって見たでしょ、アヤメの戦い方!」

「それは……!」

 

 その言葉で、蓬は夢芽の焦っている理由が分かった。

 ジグラとの戦闘のときに何があったか説明したとき、夢芽は明らかに動揺していた。原因は間違いなくアヤメの出血だろう。蓬だってあそこで見たときは、衝撃で声が出なかった。アヤメと仲良くしている夢芽ならそのショックは尚更だろう。

 前から夢芽は、なにかとアヤメを気にしていた。そんな状況でこの前の戦闘だ。間違いなく、夢芽はアヤメを止めに行くつもりだ。

 そして、それが悪いことなのか迷っている自分もいる。現状、この世界で怪獣と戦えるのはガメラとアヤメしかいない。だが、夢芽がやろうとしていることは、ただ友達にこれ以上傷ついてほしくない、という気持ちから来るものだ。それを否定する材料は、蓬の心には浮かばなかった。

 

「……ああもう! 俺も一緒に行くから。危なくなったら、すぐ逃げるよ!」

「っ!? ……うん!」

 

 蓬の言葉に驚いたのだろう。一瞬振り返った夢芽だが、次の瞬間には力強く頷き、二人でアヤメの後を追った。

 

 

 

 

 

 その様子を見ていた暦も走り出す。

 

「ぅえ!? 先輩!?」

「俺も行ってくる! ちせはそこで」

「待ってるわけないでしょ!」

 

 暦のセリフを遮って、ちせも走り出す。帰そうと思った暦だが、ちせの目を見てやめた。こうなったら、なんだかんだ言ってついてくるだろう。それなら、話している時間がもったいない。

 そうしてガウマ隊は全員、ビルのほうへと走り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 子供たちが言っていた廃ビル。その中をアヤメは慎重に進んでいた。

 今のところ、笑い声は聞こえない。怪獣の反応も小さなものだが、油断は禁物だ。いつどこから現れるか分からない。

 

(弱いから反応しない、とかならいいんだけど)

 

 アヤメはそう思いながら、もっと上を探そうとしたときだった。

 

「アヤメ!」

 

 夢芽の声に、アヤメは足を止める。振り返れば、ビルの入り口に夢芽が息を上げながら立っていた。

 

「え、夢芽? ちょっ、なんで来てるの!? あそこで待っててって……」

「待ってられるわけないじゃん! そうやって一人で走ってって、傷ついて戻ってくるのを、毎回見なきゃいけないこっちの身にもなってよ!」

 

 その言葉に申し訳なくなったのと、早く夢芽を遠ざけたい気持ちで、アヤメは夢芽に謝る。

 

「それは、ごめんだけど……」

「違う! そんな、その場しのぎの謝罪が聞きたくて、ここまで来たんじゃない! ……ねえ、戦うの止めよう? 確かに怪獣は危険かもしれないけど、別にアヤメ一人が頑張んなくちゃいけないわけじゃ……」

 

 どうやら、話を早く切り上げたいのはバレているようだ。そう思ったアヤメは、努めて冷静に対応する。

 

「一人じゃないよ。私にはガメラがいる」

「そのガメラも心配なの! 毎回、攻撃食らって血を流して、見ててすごい痛そうなんだよ! 今までは勝ててきてるけど、あれじゃいつか死んじゃうかもしれない」

「そうならないために、私がいるの。何があっても、ガメラが生き残ってくれさえすれば、きっと何とかなるから」

「そういう話をしてるんじゃないの! そうやって自分を犠牲にするような戦い方を止めてって言ってるの! わかんないの!? アヤメにはたくさん……」

 

 その言葉の先が予想できた瞬間、アヤメは声を張り上げていた。

 

「聞きたくない!!」

 

 今までよりも一際大きい声に、夢芽と追いついてきた蓬は固まる。

 

「……夢芽もひどいこと言うんだね。戦わなくていいなんて。それは、私にとって死ぬよりも辛いことだよ」

 

 アヤメは、夕方となってオレンジに染まった太陽を見つめる。

 

「ガメラに救われたときから、私にはそれしか価値が残されてないの。怪獣使いなんて才能がありながら、私は家族も友達も、誰も救えなかった」

 

 入り口で立ち尽くしていると、夢芽の後ろに暦とちせも追いついてくる。西日に照らされるアヤメの表情は依然見えない。

 

「それなら、もう私に出来ることなんて、命を削って戦うしかないんだよ」

「そんなこと……」

「あるよ。だから、私に構わないで。私から価値を奪わないで。私が戦わないであなたたちを死なせたら、私はもう何のために戦っていたのかも分からなくなる。だから……!」

 

 アヤメの目から、雫が一粒零れる。

 

 

 

 

 その瞬間だった。

 

 

 

 凄まじい衝撃が下から突き上げてくる。

 

 次の瞬間には、床が砕け散り、その中から大きな口がアヤメたちを包むように出現したのだった。

 

 

 

 

 

 





 そろそろ後書きで書くことが無くなってきた……。

 相変わらずの低クオリティですがご容赦ください。
 
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