転生したらニチアサのようなホビーバトルの世界でした 作:犬猫鼠
地面からせりあがってきたリングにスカートの中身が見えないようにして乗り込む。
いつもなら気にしないが今日は女もののパンツをはいて……カンガエナイコトニシヨウ。
「へっ、今日こそお前に勝ってやるぜ! なんたって新しい装備に更新したからな! こい! シリウス・スーパースター・ダイナミック丸!」
そんな呼びかけに答えて現れたドールは騎士鎧なのに刀というちょっとちぐはぐな俺の身長の半分ぐらいのドールだ。よく見ればいつもと違い鎧に幾すじかのカラーリングが施されている。うーん? あれって上級ランクの既製品じゃねーか! 周囲にビームシールドみたいなのを展開してくるくる回転するやつだ!
「おやっさん、あれレギュレーション違反じゃね?」
と、俺は審判ドールのおやっさん、正式名称は英数字の羅列なので覚えていない、に異議を申し立てる。
このレギュレーションというのはドールや武器などに使われている魔精鋼のランクだ。ドールバトルのランクが高いほど高性能な魔精鋼が解禁される。子供のバトルレベルでは扱えるのはせいぜい魔精粘土だ。でもこれはこれで利点もあって魔力を込めるだけで自在に形を変えたり能力を付加できるのでまさに発想力が最大限生かされる素材なんだよな。
おっさんは、シリウス・なんたら丸のほうを向いて目を見開くと何やら機械音をたて始める。……スキャン中かな?
……じゃぁ、高ランクの魔精鋼の何がいいかというと、……これ、使用時に込める魔力に応じて使用回数とか耐久値があるんですよねぇ……高ランクのやつはそのあたりが抜群に高いんだよなぁ。その分お値段もするんだが。
で、その回数や耐久値にかかわってくるのが適正ランクってやつだ。こっちのランクが高いほど武器は壊れないし防御も厚い。つまり適正ランクが低い俺の武器はすぐ壊れるし装甲も紙だということだ。幸いなのは一度は必ず設定どおりに機能が発動するってところかな。発動もせず壊れてたんじゃ俺は昨日優勝できてない。
現に昨日決勝戦で使った参式斬艦刀は一部崩壊し変形機構も壊れている。修理して使うか作り直すかしないといけない。
「うーむ、解析の結果ですが含有量は規定ぎりぎりですな。おそらくオーダーメイドでしょう」
おっさんの答えにちょっとびっくり。オーダーメイドとか。あいついつの間にそんな伝手を見つけたんだよ。おやっさんはオーダーメイドとか言ってるけどいわゆる魔改造だろうなぁ。性能もそれなりにあると思ったほうがいい。
はぁ、せっかく楽しめそうなのに今回のバトルのきっかけがきっかけのせいでいまいち乗り切れない……
まぁ、しゃーない。俺のドールを呼びますか!
「こいっ! ドロシー!」
呼びかけに応じて収納空間からカツンカツンと足音を立てて女性型ドールが現れる。大きさは向こうのシリウス・……シリウスでいいか、の半分くらいだ。
「およびですか? マスター」
「バトルだ。今日の相手は手ごわそうだぞ」
「了解です。戦闘準備に移行します」
一見会話が成立しているように見えるが、これは俺が何を呼び掛けてもこう応答するように設定してあるだけだ。
この声を出すっていう機能だけでこのドロシーのレギュレーションはぎりぎりという我ながらロマンに全振りの機体なんだよなぁ。
はぁ、早く意思を宿したパートナードールと一緒にバトルしたいぜ。
「それでは両者準備はよろしいようですね。それでは! ドールファイトーー」
お互いに礼をして俺たちは同時に叫ぶ。
「「レディー、ゴー!」」
「ふん! 今回は秘密兵器があるからな! いつものようにはいかないぜ! 行け! シリウス・スーパースター・ダイナミック丸! 近づいて流星切りだ!」
いつも初手一撃でやられているのにどうやら、今回は防御に自信がある様子。はてさて、どうしようか? って言っても俺の戦闘スタイルは適正ランクが低いがゆえに変わらないんだけどね。
さて、今日は何を持ってきてたかなーとドールのウエポン項目を素早くチェックする……ああ、これにしよう。
「ドロシー、ランチャーレールガン準備」
「了解、ランチャーレールガン、セット完了」
……これは紙装甲の俺がなぜ勝ち続けられるかというのにもつながるのだが……
「10連射のレールガンだ。装甲に自信があるようだが果たして耐えきれるかな?」
「ざけんなー! 今日こそおまえを倒す! シリウス・スーパースター・ダイナミック丸! ローリングシールド展開!」
そう叫ぶとシリウスの週に光るシールドが展開された。それはドールの動きを阻害しない距離で追従し、なるほど使い勝手はよさそうに見える。しかもおそらくレギュレーションぎりぎりまで高ランクの魔精鋼を使っているそれは耐久値も高いのだろう。まぁそれでも……当たらなければどうということはないというやつだ。それに加えて……
「ランチャーレールガン、全弾発射!」
「ランチャーレールガン、連続で発射します」
ドロシーの構えたそれなりに大きい箱からプラズマとともに光の奔流がほとばしる。はぁ、こいつもやっぱり一回限りの使い捨てかぁ……
1発,2発,3発,4発……
「うわわっ! こらー卑怯だぞー! って嘘だろシールドに亀裂が! シリウス・スーパースター・ダイナミック丸! 躱せ―!!!」
ふう、十分通じるようだ。でも避けることができるほどまだダメージは与えられていないみたいだ。ならばドロシーの能力値を魔力で底上げして……とほほ、これは今日は一日授業をさぼってメンテコースかなー
5発,6発,7発,8発……
「うわー! 俺の強化したシリウス・スーパースター・ダイナミック丸がー!!!」
7発目が命中した地点でそんな声が上がり、8発目を打ったところでブザーが鳴ってドロシーが撃つのをやめた。ドールの強制停止コマンドが発行されたようだ。
「それまで! 勝者、笹河原善牙&ドロシー!」
それと同時に観戦していた大鳥居達から歓声が響く。
やはり大火力。大火力はすべてを解決する。なんてね。
まぁ……この世界は魔力で劣化する魔精鋼でできているドールが主軸の世界だからねぇ……某お兄様ではないが火力一辺倒にできる魔力保有量Sランクは評価されない項目なんですよ。俺もできればファンタジー世界で魔法無双がしたかったなぁ。
次回は未定でございます