「人生の初期において最大の危険は、リスクを犯さないことである。」
1813,05,05 セーレン・キルケゴール
彼女は地に足をつけた状態で呆然としていた。
なぜなら彼女は先程まで自分の中で一番の実験をしていたのだから。
ことの発端は少し前だ。
彼女は
10月29日生まれ、今年で28歳になる日本生まれ日本育ちの可憐な女性なのだ。
容姿はそこら辺の一般人寄りかは綺麗であるが、性格に難点があった。
それは重度の博愛主義であり快楽主義だということ。
人間を愛しすぎるが故にあり得ない行動を取ることなどざらにある。そして快楽主義故、自分が面白いと思ったことはどんなに狂気であろうとどんなに人間に嫌われようと己の欲のためにしてしまう。
それのせいで社会に馴染めないなんてこともあったし、ハブかれることもあった。しかし彼女はそれすらも人間の醜さ、といって喜ぶのだ。行っておくがドMなわけではない。ただ人間に対する愛情が人より強すぎるのだ。
人間を愛しているが他人のために動くわけでない、自分主義でもありながら博愛であり、己の欲を満たすためなら手段も何もかも選ばない…そんな彼女は人間社会に馴染めず家にこもる生活をしていた。
ニートなわけではない、俗に言うリモートワークで働いていた。
そんな彼女は己の欲のために死んでしまった。
リモートでなんとかなるとはいってもなんとかならないことがある。
そのために彼女は久しぶりに外に出たのだ。
明るい日差しに人混み、疲れながらもなんとか用事は済ませた。
しかし、帰りにある出来事が起こった。
予想外の通り魔。
普通なら声を上げて逃げる状況。それなのに彼女はその場に立ち止まった。
怖かったわけじゃない、ただ彼女はある望みを叶えるチャンスだと思ってしまった。
彼女はあることを常日頃考えていた。
それは一度死の淵に立つということ。天国と地獄というものがあるだろう?彼女はそれが本当にあるのかが知りたかったんだ。そして今刺されればもしかしたら天国か地獄のどちらかにいけるのではないか…もしくはどちらもないのかもしれない。仮死状態になるには今の状況を活用するしかない、そんな恐ろしい考えを今実行することにしたのだ。
生きるか死ぬかの博打。だがそれすらも彼女の娯楽にしかならない。
こぼれ出る笑みを隠しながら通り魔にさされることを臨んでいた。
わざと目の前で転び、自分以外に目を向けさせなかった。そんなことしたら自分の大好きな人が死に、自分の望みは叶えられなくなってしまう…そんな悪夢のような状態にはさせるわけに行かなかった。
案の定通り魔はこっちを向いてくれた。
ああ…私はやっとこのときがきたんだ…そう思っていると腹部に痛みが走った。
そして冒頭に戻る。
そう、彼女は自分がいるのが天国でも地獄でもない見知らぬ土地にいることに絶望しているのだ。
天国でも地獄でもなく、それを証明できたわけでもなく病院でもなく…そんなあり得ないことがおきるなんてことに絶望した。自分の望みは転生することではなかったのだから。
こんなの絶望以外の感情がわく訳がない。
しかし戻る方法すらもわからない、しょうがないから歩いてみることにした。