透き通る青春の片隅に。   作:ぱぶしぃ

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別世界線の記憶

 

 

 

――――――夕日の日差しが照らす教室。

 

 

 

 

「先生は、別の世界線ってあると思う?」

 

 

 

その予想の斜め上の発言に、先生の思考は止まる。

 

別の、世界線...?

そのような事を考えたことも無かった。

別の世界線が無いとは確証出来ないが、そのようなものを証明するものも無い。

つまり可能性はあるかもしれないが、それを観測したことが無い為、結論を出すことが出来ないのだ。

よって先生から出た答え。それは...

 

「...分からない。」

「まあ、そうだよね〜」

 

それが先生としての精一杯の答えであり、限界だった。

その言葉にホシノは軽く笑うと、真剣な眼差しで先生を見て、こう言った。

 

「私の頭の中に、存在する訳が無い記憶があるんだよ。まあ、断片的な記憶だけどね。」

 

存在する訳が無い...記憶?

先生はホシノの言葉を頭の中で整理し始める。

別の世界線、存在しない記憶という事は予想するに、ホシノは別の世界線の記憶を断片的ではあるが、朧気に覚えている...という事だろうか?

 

だが、そんな事が本当に有り得るのだろうか?

別世界線の記憶を覚えているという事は、至極当然の事ではあるが過去に事例が無い、極めて非現実的な物である。

...だが、このホシノの真剣な眼差しと重苦しい雰囲気から到底嘘のようには思えなかった。

 

いやだが――――

 

「――"このキヴォトスでは無い別のキヴォトス"での、先生と私の記憶が。」

 

...先生と、ホシノの記憶?

先生はその言葉を聞いて、初対面である筈のホシノが顔を合わせた瞬間"先生"と口にしていた事を思い出した。あの時の恐れているような、怯えているような表情、一体別の世界線にて先生とホシノの間に何があったのだろうか。

表情から見るに、良い話とは思えないが今後の為、ホシノの事情を把握する為に聞いておく必要があるだろう。

 

「...詳しく聞いても?」

「...っ」

 

その言葉に少し怯えるような顔をするホシノ。

 

きっと先生なら答えてしまえば、ホシノを慰めてくれるだろう、一緒にこの重みを背負ってくれるだろう。

 

だが、別の世界線の事を安易に話してしまって良いのだろうか?

ホシノの中にその葛藤が蠢く。

 

「...私も詳しいわけじゃないけど、タイムパラドックスって知ってるかな、先生。」

 

 

タイムパラドックス

 

 

本来時間は、過去から現代、現代から未来へという"一方通行"である。

 

だが、未来に起こる事を過去のものに伝えると矛盾が起こってしまう。この矛盾により所謂過去改変が起こってしまう、これをタイムパラドックスという。

 

この現象は本来タイムトラベルの危険性として伝えられてきたが、別世界線の記憶でもホシノが知っている未来に起こる悲劇を先生に話すことで、もしかしたら同じような矛盾が生まれるかもしれない。

 

あくまで可能性ではあるが、ホシノはそれを危惧していた。

 

「...まあ、少しぐらいなら。」

「なら私が話すと生まれる危険性も、分かると思う。」

 

先生へ何とも言えない微妙な顔を浮かべながらそう答えるホシノ。

 

もし危険性がないのなら、全てを吐き出したい。

ホシノにはこの記憶は重すぎる、だから少しでも先生に助けてもらいたい。

この記憶のせいで、鮮明で悲惨な悪夢を見る日が多かった。誰でもいいから助けてほしい、そう願う毎日だった。

 

そしてそんな日々に現れた先生、やっとこの悪夢から解放されるかもしれない。

そう思った矢先、タイムパラドックスの危険性をホシノは気付いてしまう。

 

だからこそ、決して目の前にいる大人に助けを求めてはいけない。

 

皆に、いや世界が私のせいで壊れてしまうのは、もっと嫌だ。

 

その酷く遣り切れない気持ちが、ホシノの顔を顰めさせる。

 

「...そうだね。」

 

先生は諦めたように顔を歪めた。

先生もホシノと同じように危険性を感じていたのだ。

過去改変というのは予測できないものであり、場合によっては誰かの存在その物が消えてしまう事も理論上ではあるが、考えられてしまう。

もちろん出来ることなら、目の前の生徒が背負ってるものを少しでもいいから、私が一緒に背負いたかった。

あんな苦しそうな顔を見てしまうと尚更思ってしまう。

 

 

だが、世界はそれを背負うことを許さない。

 

 

先生は怒りを覚える。

その矛先は、世界の理と自分自身。

理不尽で非情で残酷な世界の理、そして手を伸ばせば届く距離にいる生徒を支えることが出来ない自分への無力さ。

先生は無意識に歯を食いしばった。

 

「...私なら大丈夫だよ、先生。」

 

前を見ると、儚げに歪んだ表情のホシノが、少し涙ぐんだ目でこちらを見つめていた。

 

「きっと、ただの悪い夢だよ。...少なくともそう思えば気も楽だしね。」

「――だから、そんな悲しい顔しないでよ。先生。」

 

力の無い、軽い笑みを浮かべながらそう静かに言うホシノ。

 

 

 

 

――――いや、例え記憶を一緒に背負えなくとも、大人としてやるべき事は1つだ。

 

「...ホシノ。」

 

先生は椅子から静かに立ち上がり、ホシノの近くに歩いていく。

 

「感情は偽らなくてもいいんだよ。」

 

その意外な言葉に、ホシノは目を丸くする。

 

...きっと、ホシノの背負っているものは、私は支えることが出来ない。

「悲しい時は泣いたらいい。苦しかったら弱音を吐いてもいい。」

 

でも、背負っているものを軽くすることは出来る。

「偽りで助けられるもは、確かにある。...でもね。」

 

先生が大人として、彼女に出来る精一杯の言葉。

「嘘を付き続けるのは、とても酷な事。」

 

 

「だから、せめて私の前では...本当の君を見せてくれていいんだよ。」

 

 

彼女が壊れないよう、先生が感情の捌け口になればいい。

 

目から溢れ出る涙。

瞬間、感情を抑えていた蓋が抉じ開けられたような感覚。

気が付くとホシノは、先生の胸に顔を埋め、強く抱きしめていた。

そして先生はそれに応えるようにホシノを優しく抱き返す。

 

「ああああ...ああああああああっ!!!」

 

抑えるものが無くなった感情は、濁流のようにホシノの体を駆け巡る。

その感情が自然と先生を抱きしめる力を強める。

だが、先生は表情を変えずに、ホシノを優しく抱きしめ続けた。

 

 

「そう、それでいい。気が済むまで私はずっとここにいるよ。」

 

 

偽りの表情から奥底に隠していた年相応の表情に変わるのを見て、先生は安心する。

例え直接的な支えにはならなくとも、間接的に彼女の心を守ることが出来る。

...それが彼女に出来る、先生の最大限だった。

 

 

 

 

「大丈夫、私はホシノの味方だから。」

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

――――――アビドス住宅街、45ブロック地区。

 

あれから数日が経ち、ここにセリカが住んでいると委員会の皆から聞いた先生は、方向音痴に迷わされながらもセリカを探していた。

一応簡易的な地図を委員会から借りたはいいものの、結局辿り着くのに3時間も掛かってしまった。

おのれ方向音痴め...。

 

自分に情けなさを抱きながら先生は45ブロック地区をひたすらに練り歩く。

目的地はない。ただただ巡回するのみ。

理由は簡単で、ここからセリカの家を見つけるのは先生ではほぼ不可能に近いと感じ、もう吹っ切れて自分の運に頼ることにしたのだ。

 

「うっ...せ、先生。」

「おはよう、セリカ」

 

...まさか本当に会えるとは思わなかったが。

 

「な、何が「おはよう」よ!馴れ馴れしくしないでくれる!?」

 

眉を顰め、先生を睨むセリカ。

だが何処か気まずそうな雰囲気が感じられる。

昨日の事があっては仕方がない事だろう。

 

「私、まだ先生の事認めてないからっ!!」

「まったく、朝っぱらからのんびりうろついちゃって、いいご身分だこと!」

 

突き放すように強い言葉を先生にぶつけるセリカ。

だが根が優しいのか、何処か申し訳なさそうに目を先生から逸らす。

 

「セリカはこれから学校なの?」

 

セリカの言葉に全く動じない先生は、先程と変わらない調子でセリカに質問を投げる。

きっと本心からの言葉ではない。彼女の様子から、そう先生は読み取れたからだ。

先生の態度により、セリカの顔に焦りが見え始める。

 

「私が何をしようと先生には関係ないでしょ!?」

「そ、それに朝っぱらからこんな所をうろちょろしてたら、ダメな大人の見本みたいに見られるわよ!」

 

ごもっともである。

 

大人であれば今は仕事の時間帯、そんな時間に一人呑気に外を歩いている。

例え理由はあるとしても、周りから見ればいい印象は少なくとも受けないだろう。

 

先生はセリカの痛い所を突く言葉に、苦笑いを浮かべた。

 

「じゃあね先生!私忙しいから。」

「学校に行くのなら、一緒に行かない?」

 

まだ諦めないのか、と言わんばかりの表情をするセリカ。

あれだけ突き放すような言葉を聞いて、まだこの大人は私に構おうというのだろうか。

もしかして()()()()趣味の大人なのかもしれない、世の中は広いもので色んな趣味がある。だからそういった趣味も珍しくもないだろう。

 

...つまり先生は変態という事?

 

 

――いや、これは考えない事にしよう。

 

セリカは大きくため息を付き、先生を睨む。

 

「あのね、なんで私があんたと学校へ行かないといけない訳?」

「それに今日は自由登校日だから、学校に行かなくていいのよ。」

「じゃあどこに」

「教えるわけないでしょ。」

 

先生の言葉に食い気味で答えるセリカ。

ポケットから取り出した端末を見て時間を確かめる。もうこんなところで駄弁っている時間は無いのだ。

 

「じゃあね先生!」

 

セリカは先生が追い付けないよう、全速力で目的の場所へ向かう。

先生はもちろん追いかけようとしたが、あまりの速さに直ぐにセリカの姿は見えなくなってしまった。

 

「...行ってしまった。」

 

『セリカさんは現在東に500m先。かなり速いスピードで何処かへ向かっているみたいです!』

 

手に持っていたタブレットから聞こえてくるアロナの声。

きっとこうなると予測していた先生は、アロナに、セリカが逃げてしまった場合、追跡をしてくれるよう頼んでいたのだ。

しかし、今の一瞬で500mも進んだのか...流石はキヴォトスの生徒だな。

 

「ありがとうアロナ。...因みに目的地の予想地点は?」

『もちろん!このスーパーアロナちゃんの演算能力にかかれば朝飯前ですよ、先生!...目的地は、この方向ですとおそらく...紫関ラーメンと思います。』

 

誇らしげに自分を”スーパーアロナちゃん”と呼びながら、タブレットの画面に現在地から紫関ラーメンまでの経路を表示する。

確かに処理能力はスーパーアロナというべきだろう。...まあ自ら名乗るのはどうかとは思うが。

 

「紫関ラーメン...ね。」

 

小さくため息を付きながら、先生は経路を見て考え始める。

この時間帯、そしてやけに時間を気にしていたセリカの様子から予想できるに...

 

「...バイトだろうな。」

 

予想ではあるが学校の借金問題、それを解決するためにバイトをしている...と考えられる。

 

...偉いなぁ。

 

先生はセリカの行動に感心しながら、あることを閃く。

セリカに迷惑をかけずに、それもあわせホシノと仲直りさせる方法。

 

そして先生は、迷わずある所へ電話を掛けた。

 

 

 

 

 

 

「もしもし、突然だけど...ラーメン食べに行かない?(セリカに会いに行こう)

 

 

 

 

 




という事で後書きです。

最近は別小説書いてましたが戻ってきました。
いやぁ、だれかを泣き叫ばせるのって楽しいね!!
うん!!(狂気)

そういえばカヨコのドレス実装されるらしいですね。
もうビジュ好み過ぎてやばいです
性能は見た感じ、人権では無さそうですけど...かわいいならokです!!評価ランクSSSSSSです!!()
メモロビももう、やばいんすよねこれだからブルーアーカイブは最高なんだよなぁ。



...っていうか、あとがきってこんなのでいいんだっけ?(今更)
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