人を〇すと処刑されるデスゲームから、謎の超生物を暗殺する学園コメディに転生した件   作:暦月

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なので姉の黒幕落ちは回避します

 

 

「ほらっ、覚えてる空? あの時救ってくれた方と今日偶然に再会したの」

「………あ。」

 

 

 その人物はいたって平凡な容姿をしていた。街中で見かけても、ただすれ違うだけで記憶にも残らないようなそんな印象を受ける人でした。

 失礼ですが容姿端麗な姉の隣にいたら、間違いなく存在を認識されなくなるほどのありふれた風貌をしているのが空ろという人間です。

 

 でもその目は――。私を見つめる彼の眼だけは唯一違っていて、闇を何重にも重ねて溶かしたような重苦しい視線を向けられた瞬間、私の中のナニカが弾けた。

 

 

空ろ様。この子は妹の空と言って、私の大切な……空?」

 

「あああああ…!」

 

 

 

 

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!

 

 

 

 

 それはまるで獣のような泣き叫ぶ声。

 まるでこの世のものとは思えない悲鳴に自分でも驚き、しかし何時までも驚いてる余裕などなく痛む頭を自らで押さえた。

 

 

 そして突如脳内に溢れる、存在しない記憶(・・・・・・・)

 

 

 

「オマエらにはこれからコロシアイをしてもらいます!」

 

 白と黒で半々に色分けされたクマのようなロボットに、殺人を強要される場面。当たり前ですが私にこんな経験をした記憶はない。

 

 

 

「う、そ。あれ、私……!」

 

 誰かと揉み合いになって、知らずにその子を刺してしまった感触が残る手。これも私は知らない。

 

 

 

「やだっ、行かないでっ!! 待って、待ってってば! 私を置いていかないでえぇっ!!」

 

 自分を庇い、代わりに処刑される親友に追い縋るが、その手が彼女を掴むことはなかった。私は知らない。

 

 

 

「■■■■! しっかりしなさいって言ったでしょ! しっかり私の目を見て! 君は何も悪いことはしなかった、そうだよね!」

 

 親友の死を乗り越えた先で、今度は私を励ましてくれた男の子が疑われているのが我慢できなくなり、叱咤激励する姿。当然知らない。

 

 

 

「あはっ、記憶にも問題はないようですし、大成功みたいですね。あの方(・・・)を思い出せないまま生きるなんて地獄によく耐えれましたね。……本当に偉いですよ【平良茜】」

 

 けど覚えてる。その何もかもが、記憶を捨てて被害者ぶっているだけの……自作自演に過ぎなかったことも。

 

 

 

「……行って、■ちゃん」

 

「…■■ちゃんの……声が…聞こえるの……」

「お前は……こんな事をする…人間じゃ……ないんだって」

 

 そのくせ非情になり切れなくて、最後には殺すはずだったクラスメイトを庇って死ぬほどの致命傷を受けたのだ。

 

 知らない、だけどちゃんと覚えてる。

 

 

 

「……私は…いつまでも………何があっても…………貴方と……永遠に、一緒に……」

 

 それが目の前の少年――空ろに仕えていた【平良茜】としての最後の記憶だった。

 

 

 しかし記憶には続きがある。実は彼女は生きていて、植物状態のまま次なる(・・・)黒幕(・・)の計画に利用されているのを、その後【平良茜】の情報を基に造られた【空】の記憶から知った。

 

 

「【空】それ以外の事は何も…覚えていません」

「誰がコロシアイなどするというんですか」

 

「大丈夫です空ろ様。この平良茜は、いつまでも、何があろうとも空ろ様の味方ですから」

 

 

 十余年しか経っていない私の人生に二人分(・・・)の記憶が次から次へと流し込まれる。

 量も膨大だが、それ以上に押し付けられる情報の殆どが私の人格を破壊しかねないほど危険なのが問題だった。

 

 

 

「まだ過去の自分を否定するつもりか!? 泣こうが喚こうがお前の手が永遠に汚ねえままなのは変わんねえんだよ。なぁ、平良茜さんよぉ!?」

 

 

 

 違う、違う……! 私じゃない! こんな記憶は私のじゃないし、増してや姉さんのものでもない! 全部他人の空似なんだ!

 そう跳ねっ返したところで幾つもの記憶が次から次へと強引に割り込み、せっかく重ねた理想武装すら粉々に打ち砕いて現実逃避を許さない。私が追い詰めた犯人達も皆こんな気持ちだったのかと、そう後悔するほど酷い自己嫌悪に涙が出てきた。

 

 

「はぁ…、はあっ……!」

「空、大丈夫!? どこか具合でも悪いの!?」

「あ……」

 

 

 それでも必死に耐え凌ぎ、漸く記憶の上書き(・・・)が終わった。息も絶え絶えになりながら顔を上げた先で、急いで駆け寄る姉さんを拒絶したのはこれが初めてだった。

 

 

「……いえ、何でもありません。少し眩暈がしただけです」

「眩暈って、今のは絶対にそんなのじゃ」

「何でも、ありません!」

 

 

 少し強引過ぎたかと『警戒』する。……警戒? 私が、誰に。まさか、姉さんを危険と認識してるとでもいうのか。

 いやそんな筈ない。絶対に違う。しかし、そう言い切れない強烈な違和感に後ろ髪を引かれているのが分かる。

 必死に取り繕っても拭えない嫌悪感が尾を引き、気付けば自分で準備した祝いの席も体調不良を理由に途中で断った。

 

 それからの私は、あれほど慕っていた姉から逃げるように家を空ける事が多くなっていきました。

 

 

「ねえ空。最近一緒に居られなかったし、今日のご飯は私が――」

 

「ごめんなさい依頼が入ったので」

 

「あっ……そうだよね」

 

 

 時間が過ぎれば気持ちに整理がつくかもと淡い期待を抱く事もあったが、むしろ姉さんの入学が近づくにつれてシナリオを意識せざるを得なくなり、段々と余裕を無くしていきました。

 

 そして困ったことに、私との関係が上手く行かなくなると、それと反比例するかのように空ろ()と会う時間が増えていったのです。

 

 最初は週に一回だったのが3日に一度となり、やがて入学前になるとほぼ毎日一緒にいるようになります。

 そして空ろ様の姿を見るたびに最悪の未来がどうしても頭を過り、姉さんに忠告して会うのを控えるように言うと始めは姉さんも聞き流していたのがやがて口論にまで発展するようになっていきました。

 

 そんな生活が2ヶ月ほど続いたある日、遂に恐れていた事態が姉の口から告げられる。

 

 

「は…? 今なんて」

「だから、私はこれから空ろ様に一生お仕えすることにしたの。だから空にも祝ってほしいなって」

 

「仕えるって、仕事の話をしてるんですよね?」

「……ううん違うよ。勿論お仕事は続けるけど、今までみたいな契約上の関係じゃなくて本当のご主人様にこの身を捧げるの」

 

 

 その瞬間、足元が崩れたような錯覚を受けたのは覚えている。

 きっと心のどこかで油断してたんだ。原作とは違って()が存在してるから、空ろ様より私を優先してくれる筈だって。

 

 でもそれは間違いだった。結局姉さんは十数年一緒にいた妹より、一度会っただけの恩人を選んだ。

 その事実は『私』を大いに動揺させ、自分でも予想外の方向に思考が持っていかれる。

 

 

分かってるの? その人に付いていったら死んじゃうんですよ。

ううん、死ぬよりもっと酷い。下手したら後から現れる黒幕に身体を乗っ取られるか、そうでなくても一生を目覚めないまま棒に振る可能性の方が高い。

どっちにしろ、ロクな結末は辿らないでしょう。

 

 死ぬ。姉さんが死ぬ。

 

 刹那。今まで目を背けてきた不都合な未来が現実味を帯びてきたことで、これまで無意識に堰き止めていたタカが一気に外れたのを朧気ながらに感じ取った。

 

 

「……メ」

「え?」

「絶対ダメです。そんなの私は認めない」

「そ、空…?」

 

 

 今を生きる『(平良空)』の覚悟が、未来を生きた【()】の恐怖を上回った。今の立場に甘んじて手を拱いていたら、きっと結末は何も変わらない。

 

 私が………私が何とかしないと駄目だ。

 

 

「姉さん」

「どうしたの空、何だか怖いよ…?」

 

 

きっと姉さんには嫌われるだろう。でも死ぬよりはマシな筈だ。

だからここで打ち明ける。

あの日、孤児院を出たときに告げられなかった私の本音を。

 

 

「あの方とは金輪際関わらないでください」

 

「……へ?」

 

「連絡を取ることも、勿論直接会うことも今後は控えるように。本当の主従契約を結ぶなど以ての外です。あの男は姉さんの才能を悪しきことに利用するでしょう」

 

「待って、待ってよ空! それ本気で言ってるの!?」

 

 

 本気か、ですって…? 勿論本気です。嘗てないほど大マジで話してます。

 

 

「私がこういう冗談を嫌うのは知っているでしょう。私は姉さんの為を思って言ってるんです」

「分からないよ! 空がどうして空ろ様を嫌うのか、ちゃんと説明して!」

 

 

 説明できるなら私だってしたいですよ。でもこれから姉さんがコロシアイを演出した末に死んで、その身体を利用されるなんて言っても信じないでしょう。

 

 況してやこの世界には私もいる。

 

【平良茜】の情報を基に【空】が作られたのに、平良空(わたし)が居たらそれをする必要が無くなってしまうではないか。

 そうなれば世界にどんな修正力が働くか私にも分からない。最悪世界が姉さんを見捨てて私を代役に立てることだって有り得るし、その時には暗い海の底に沈んで死体すら残らないかもしれない。

 

 そんな不確定で有り得ない情報の数々をお出しされて、姉さんは納得出来るんですか。無理ですよね。

 

 今だって混乱するばかりで此方の要求を呑もうとはしませんし。やはり運命(原作)の拘束力は強いという事でしょうか。

 

 

「あんな男の傍にいたら不幸になるって言ってるんです。良いから黙って従ってください」

 

「なんて事を言うの! 流石の私でも空ろ様のことを悪く言うなら怒るよ!?」

 

「空ろ様空ろ様って、それしか言えないんですか!」

 

 

 徐々にヒートアップしていく二人を止める者は誰もいない。居たとしてもこの二人の言い合いに割り込める者など極少数だろう。

 そしてこんな状況だからこそ、今まで何とか保っていた絆に決定的な亀裂が生じることになる。

 

 

「私前々から忠告してましたよね、才能(・・)()縛られる(・・・・)()って。今の姉さんは正しくソレです。使命に駆られてこの先自分を殺すことになるとあれ程…!」

 

「そんなの勝手な妄想でしょ! メイドの事なら未熟な空より私の方が分かって――ハッ!」

 

「っ……!」

 

 

 思わず出てしまった、感情に任せての失言。これがこの二人以外から発せられたなら、言われた方も多少傷つく程度で大した問題にはならなかっただろう。

 

 しかし姉に憧れてメイドになった空に、他でもない茜がこれを言ったとなると話は変わる。

 何故なら妹の励みになると思いかけてきた言葉の数々が、行動の原動力であり心の支えでもあった姉の応援が…彼女自身によって否定されるからだ。

 

 だからこそ圧倒的に、そして決定的にこの場で放つべき言葉ではなかったと平良茜は悟る。

 

 

「……」

 

「ち、違うの! 私そんなつもりで言ったんじゃ…!」

 

 

 分かっている、今のが本心でないことくらい。だって私の成長を一番喜んでくれたのが姉さんだったから。

 

 同じ超高校級の才能でも、その性能に大きな差があるのは事実。だから才能の質でも経験でも劣っている妹に繰り返しとやかく言われたら、心の何処かでそんな風に思っても仕方がないでしょう。

 彼女にとっての私はあくまで庇護対象だ。

 自分の方が優秀だから守ってあげないといけない。きちんと育ちきるまでは自分が面倒を見ないと。

 

 そんな相手に心配され、忠告されたところで心に響かないのも当然ではないか。

 今の私は言うならまだ親鳥に餌を口に運んでもらう雛に過ぎない。それが事実かどうかは置いといて、姉さんの中ではその様になっている。だから姉さんを止める言葉に彼女自身が魅力を感じてない。

 

 巣で待つだけの雛に「理由はないけどお母さんが危険だから行っちゃ駄目」と言われたところで本当に止まる親鳥はいないだろう。自分が餌を集めなければ餓死する子供の言う事など、親からしたら冗談以上の何物でもないからだ。

 

 メイドとしての成長を喜んでくれてたのも、それが対等な相手ではなく愛すべき妹だからというだけ。最初(ハナ)から並び立てると思っていないだけの――傲慢

 

 

(……そうか。それなら姉さんを超えればいいんだ)

 

 

 故に私は閃いた。

 

 私が未熟だから。姉さんに(・・・・)才能で(・・・)及ばない(・・・・)から(・・)相手(・・)()して(・・)もらえない(・・・・・)のなら、超えてしまえばいい。

 そうして初めて私の言葉に重みが生まれる。仮に言葉で説得できなくても、才能で上回れば物理的に抑え込むことだって出来る。

 

 勿論それが簡単でないことは分かっている。ゲームでの【空】は所詮【平良茜(オリジナル)】から生まれた舞台装置(アルゴリズム)に過ぎず、そもそも才能を使用した描写すら少ない。

 

 でもここはゲームの世界ではなく現実だ。

 私こと平良空がいて、姉に黒幕となる平良茜がいる。なら挑戦するしか私達二人が幸せになる道はなく、それを止める権利は誰にもありはしない。

 

 その為には先ず、姉が作り上げたこの巣……もとい鳥籠から抜け出さなくては。

 

 

 

「希望ヶ峰学園の本学科には確か寮がありましたよね」

 

「え…うん。パンフレットにはそう書いてあったけど」

 

「ならこの家は今すぐ引き払いましょう。私は自分で学校近くの部屋を借りますから」

 

「え……待ってよ空。私そこに移るなんて一言も」

 

 

 戸惑う姉を無視し、私は自分の部屋から必要最低限のものだけをキャリーバックに詰めて身支度を始めます。性根ミニマリストで助かりました。仕事道具以外は特にこだわりもないため、捨てても問題ないものばかりだった。

 

 

「ごめんなさい空! お姉ちゃんが悪かった、謝るから! だからお願い戻ってきて!」

 

 

 血を分けた実の姉を……今となっては前世まで共にした半身の引き留める声を強固な意志で振り切り、こうして私は今世での独り立ちを果たします。

 全ては姉のため、そして自分の為。

 大事に傷付けないようにと育てられた雛鳥は、無償の愛を注いでくれた家族を今度は自分が護るため優しい檻を抜け出し、善意も悪意も満ちる外界へと飛び立ったのでした。

 

 

 

 

 

 それから数か月後――私はクラスメイトと学校の教室で、ライフル銃を手にとある人物の暗殺を行っていました。

 

……いや何故?

 

 

「ホームルームを始めます。日直の人は号令を」

 

「…き、起立! 気をつけ!」

 

 

 現在の私の肩書きは、メイド兼殺し屋。そして標的(ターゲット)は先生。

 

 

「礼!!」

 

 

ドパパパパパ!

 

 

 号令と共に鳴り響く銃撃音。学び舎たる校舎どころか日本にいたら先ず聞かないであろうこの異様な光景も、気付けば日常になっていました。

 発砲音が其処らかしこで反響していますが、その中に実弾は含まれていない。そんな事をすれば私達の命も危なくなるし、当然と言えば当然ですけど。

 

 

「おはようございます。そのまま続けて結構ですので出欠を取ります。磯貝君」

 

「……はい!」

 

 

 硝煙の薫りを伴わない銃なんかで人は殺せない。でもその暗殺対象は、政府が開発したこの特殊な弾でしか破壊できないのです。

 

 

「遅刻無し…と。素晴らしい! 先生とても嬉しいです」

「いや速すぎるって!」

「クラス全員の一斉射撃で駄目なのかよ」

 

 

 椚ヶ丘(くぬぎがおか)中学校3-Eは暗殺教室。

 

 始業のベルが今日も鳴る。

 

 

「さあ、銃と弾を片付けましょう。授業を始めます!」

 

 

 

 






 【(そら)

 原作二次創作(SDRA2)の主人公。『超高校級の???』
“空”という単語を除き、自分の名前や才能、果ては過去さえも忘れてしまった少女。
 いつも無表情だが、感情はしっかり備えており時折それが表出する場面も。かなりの毒舌家で、基本的には敬語で話すも敵や道理の通らない相手に対しては面と向かって邪魔呼ばわりしたり、煽って情報を引き出すなど作中でも屈指の強かさを見せる。

 その正体は黒幕が平良茜の肉体と記憶を基に作り上げた人工知能AIアルターエゴ。空ろ復活の為、コロシアイを円滑に進行する役割(アルゴリズム)を持たされた生徒役のNPCだった。
 最後には黒幕を倒し、復活した空ろと崩れ行く電脳世界に消えていった。


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