人を〇すと処刑されるデスゲームから、謎の超生物を暗殺する学園コメディに転生した件   作:暦月

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新任の時間

 

 

 5/1。暗殺対象が椚ヶ丘(くぬぎがおか)中学校3年E組の担任となり一か月、地球を爆破するといった3月まで残り11ヶ月となった。

 ターゲットは依然として教鞭を振るっており、現在のところ職務を放棄する様子は見られない。しかし何時目標が契約を違えるか予測不明なため、今後も継続して監視を続けていく。

 暗殺訓練の方はナイフや狙撃を中心に、基礎を固める授業を展開中。暗殺に対する意識や基礎的な動きの定着化は見られるも、実践的運用に至るにはまだ……

 

 

「烏間先生、お茶が入りました」

 

「…! そうか。頂こう」

 

 

 訂正。一人、既に水準を満たした生徒がいる。

 

 

(声を掛けられるまで接近に気付かなかった。仮にも生徒達の現場監督を任された俺が)

 

 

 職員室で暗殺の進捗具合を報告していた烏間惟臣は打ち込んでいたパソコンを閉じた。そして今淹れてくれたばかりのお茶で喉を潤しながら、報告にも挙げた少女を横目で追う。

 

 

(平良空。家族は希望ヶ峰学園に在籍している『超高校級のメイド』平良茜一人で、自身も学校生活を送る傍らメイド業務で生計を立てている。成績は座学・実技共に極めて優秀)

 

 

 彼は防衛省から3年E組を立派な暗殺者に育て上げる直々の命令を受けていて、学校にかけ合い体育の授業で生徒達に暗殺技術のノウハウを教えている。

 

 そんな彼が一目置いている人物こそ、先の暗殺をサポートしていた平良空である。

 

 

(あの音の出ない歩法も「メイドの嗜み」というやつか。全く、どうしてこれほどの生徒が落ちこぼれ扱いを受けているのか理解出来んな)

 

 

 彼が空を目に掛けているのは、(ひとえ)に彼女のポテンシャルが飛び抜けているからだ。他には無いメイドとしての技能と立ち回りで生徒たちの暗殺の質を底上げしているのにも一役買っている。

 

 例えば以前。毒殺を計画していた奥田愛美は彼女に協力を依頼し、見事ターゲットに毒を盛ることに成功した。

 野球を暗殺に取り入れた杉野友人は空に練習相手を務めてもらってからというもの、徐々にボールにキレが増し、奴に教わった鋭く曲がる変化球を習得するに至った。

 

 残念ながらそれで暗殺が成功していないのは現状が物語っているが、とにかく彼女がいるだけで暗殺の成功率が格段に上がるのは間違いない。

 メイド元来としての性質がターゲットの近くにいても違和感を持たれづらいのと、そこに空本人の能力が合わさって時に烏間の想像を超える事もあるぐらいだ。

 

 

 

「そうだ平良さん。君に伝えていなかった話がある。もう察していると思うが、彼女(・・)についてだ」

 

「彼女…というと今朝赴任してきた英語教師の事ですよね。今の今まで話が聞こえなかったという事はサポートは断られたんですか」

 

「そうだ。俺からも勧めたんだが一蹴されてしまった。どうか気を悪くしないでくれ」

 

「まあ彼方からしたらそうなりますよね。この間まで暗殺に触れてこなかった素人が何の役に立つって話ですし」

 

 

 

 先日、本部長からプロの暗殺者一人を投入することが通達された。何でも国からの要請みたいで、世界各国で11件の暗殺を成功させてきた手練が加わるのだという。

 

 

 空もその人物とはHRで既に顔合わせを済ませているが、パッと見た感じの第一印象は綺麗だなというぐらい。流石に殺せんせーがデレたのには笑ってしまったけど。

 

 

「見るからに色仕掛けで落とすタイプですし、別にいらないかな」

 

「何か言ったか?」

 

「いえ何も。……と、そんな話をしてたら来たみたいですよ」

 

 

 木造の床をヒールで叩く音が聞こえてくる。そのまま無遠慮に扉が開け放たれると、抜群の美貌とプロポーションを兼ね備えた女性がズカズカと部屋に入り込んできた。

 

 

「ちょっと、何でガキがこんな所いるのよ。邪魔だからどっか下げてくんないかしら」

 

 

 女性には見覚えがある。というか今話に上げていた暗殺者だ。しかし殺せんせーにすり寄っていた今朝とは雰囲気が異なる。

 聞いてるだけで恥ずかしかった媚びは鳴りを潜め、男を悩殺する上目遣いはキリリと吊り上がり鋭い眼光を向けられる。分かっていたけどやっぱり猫かぶりでしたか。

 

 

「彼女がここに居るのは俺が雇ったからだ。ターゲットの暗殺含め、校舎の仕掛けや身の回りの整理まで一心に引き受けてくれている」

 

「空です。以後お見知りおきを」

 

「あぁ、そいつが話にあったメイドね。ったく、プロの現場にカタギなんか入れるんじゃないわよ」

 

 

 その先生、名前は確か……イリーナ・イェラビッチ。長いのでイリーナ先生で良いでしょう。ビッチ先生も浮かびましたが流石にそれは可哀想なので止めておきます。

 

 

「彼女は既に立派な暗殺者だ。下に見てると痛い目に遭うぞ」

 

「何よ。あんたこの子がお気に入りなわけ?」

 

 

 そのイリーナ先生ですが一瞥もくれることなく私の横を通り過ぎ、烏間先生と並んで外で暗殺サッカーをしている殺せんせーを見て呆れた声を上げます。

 

 

「それにしても、色々と接近の手段は用意してたけど……まさか色仕掛けが通じるとは思わなかったわ」

 

「…あぁ、それは俺も予想外だった」

 

 

 やっぱり殺せんせーの反応ってチョロい扱いでしたか。まあ誰でも分かるようなハニートラップに引っ掛かってる時点で…ねぇ。

 

 

「だがそれならお前の本領だろう。ガードの固い暗殺対象(ターゲット)だろうが周囲ごと魅了して殺してきたと聞く」

 

「まあね……あら? 煙草が無いわね。それにライターも」

 

 

 成程。それだけの実績があるなら確かに殺せんせーを惚れさせるのは簡単だったでしょうね。でもそれが暗殺の結果に繋がるかどうかは別問題。それと学校での…況してや未成年がいる場での喫煙はご遠慮ください。

 

 

「当校舎、並びに周囲の山は禁煙となっております。また火を使った暗殺も事前に話を通してからお願いします」

 

「なっ!? あんた何時の間に」

 

 

 隙だらけでしたよ? 碌に警戒も無く近付いてきたので要らないモノは没収しておきました。

 そう言ったら顔を真っ赤にして凄んできましたが、普通に考えて返す訳ないのでのらりくらりと躱しながら先生の手を逃れます。

 

 

 

「ゼェー、ゼェー……ちょっと何よコイツ、本当に数日前まで一般人だったわけ!?」

 

「だから言っただろう、下に見るなと。元々の才能だけで其処らのプロを軽く凌ぐぞ」

 

「この程度でしたら子供と戯れるのと然程変わらないかと」

 

「ほら、こう言われてるぞ」

 

「キイィィーー!! 腹立つわねえ!?」

 

 

 

 へえ、良いリアクションしますね。この先生案外面白いかも。

 と、そんな事を思っていたら取り返すのを諦めたのかすぐに出ていこうとします。流石はプロ。どうやら引き際も早いみたいです。

 

 

「あぁもうやってられるか! そんな安物くれてやるわよ!」

 

「おい、最後に一つだけ言っておく。殺し屋を学校で雇うことは出来ないから表向きは教師の仕事もしっかりやってもらうぞ」

 

「…ふんっ別にいいわよ」

 

 

 扉に手をかけ、烏間先生の忠告に自信をのぞかせた。

 

 

「私はプロよ。授業なんてやる間も無く仕事は終わるわ」

「凄い。私に弄ばれたばかりなのに妙に様になってます」

「そこっ! 五月蠅いわよ!?」

 

 

 最後にそう捨て台詞を残し、職員室を去っていきました。次の行き先は恐らく皆さんのいる校庭でしょう。カルマさん辺りに弄られないと良いですけど。

 

 

「意外だな。君は冗談とか言うタイプじゃないと思ってたんだが」

 

「よく言われます。感情が昂ると素で煽ったりもしますが、この身体に生まれたからには仕方ないと思うようになりました」

 

「……本当に意外だ」

 

 

 そんなに驚くほどでしょうか。確かにゲームでの【空】も基本は無表情ですが、意外と毒舌だったりツッコミが辛辣だったり感情豊かなんですよね。

 それに彼女と違って記憶を無くしていませんし、家族構成やそもそも育ってきた環境が異なるので元の性格と違うのはご愛嬌と思っていただけると。

 

 あ、でも元の身体は姉さん――平良茜の情報を基に作られたので、あの人の性格が反映されてても不思議じゃないかも。メイドなのにやたら煽るのが上手いですし。

 

 

「あの~すみません烏間先生。こっちに空居ますか?」

「む、歌舞谷さんか。ああいるぞ」

「どうしました。何かありましたか?」

 

 

 イリーナ先生を見送ってから少しして歌舞谷さんが職員室に顔を出します。

 私を呼んだみたいですが、何もないにしては表情が強張るというか困っているように見えます。一体どうしたのでしょうか。

 

 

「えっとね。実は空に電話が来てて、そのぉ……相手が」

 

「は……?」

 

 

 この時点で嫌な予感を感じ取った私ですが、残念な事に時間は待ってくれません。歌舞谷さんも続きを話して良いか迷っていたけども、意を決して電話の相手を告げます。

 

 

「茜さんが代わってくれって。今通話中なの」

 

 

 






 平良(たいら)(そら)

 本作の主人公。椚ヶ丘中学校3-E 出席番号15

 元はA組に在籍していた優等生。生徒会長の浅野学秀を補佐していたが、親友の歌舞谷夜子がE組に落とされたのをきっかけに自身もE組へと転入した。
 孤児院を抜け出して姉の平良茜と暮らしていたところ、空ろと再会。その際に前世の記憶である【天啓】を授かってからは二人と距離を置いており、メイドで生計を立てながら現在は殺し屋と学生も兼業して技術を磨いている。




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