人を〇すと処刑されるデスゲームから、謎の超生物を暗殺する学園コメディに転生した件   作:暦月

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プロの時間

 

 

 椚ヶ丘中学校3年E組。5時限目は英語の時間だ。

 先月までは体育を除いて全科目を殺せんせーが担当していたが、ALTを招いた以上は建前に過ぎなかろうと授業を執り行う権利が生まれる。

 

 そして現在。暗殺に失敗したイリーナはと言うと、

 

 

「…! ……ッ!!」

 

 

 傍目から分かるほどに荒れていた。

 

 授業そっちのけでタブレットを操作し、画面を強く叩きながら時々思い出したかのように小さい罵声が漏れる。

 その整った顔は屈辱と怒りで満ち満ちており、次のプランで必ず殺すという執念がこれでもかと込められていた。

 当然そんな状態でまともな授業が行われる筈も無く、最早自習という形すら取らないで無意味に時間が浪費される状態が続く。

 

 

(許せないッ…あんな無様な失敗初めてだわ。必ず殺してやるあのタコ!)

 

 

 心中穏やかでないとはこういう事か。教室中から向けられる視線にも気付かず一心不乱に機会を操作し、最早報酬100億円にも目をくれずただ殺せんせーを殺すためだけに思考のリソースを割いていた。

 

 

(プランを変更する以上あの3人じゃ役不足。私の人脈から最適の手先を選び直し、必ずこの屈辱返してやるわ!)

 

 

 もう一度機材の調達からやり直し、場所も整えなくては。最初からプランを変更する以上準備も山積みだが、幸い空がWi-Fi環境を整えてくれたお陰でスムーズに作業は進んでいる。

 だが通信環境よりもっと重要な部分が疎かになっている事を、本人は知る由も無いだろう。

 

 

 

「あはぁ、必死だねビッチねえさん。まあ“あんな”事されちゃプライドもズタズタだろうしね~~」

 

「カルマ、あんたわざと煽ってるでしょ」

 

「そんなの当然じゃん」

 

「……」

 

 

 クラス中がそれを不満げに静観する中、最後列にいるカルマと歌舞谷、少し離れて渚だけが比較的落ち着きを持って教壇を眺めていた。

 空に至っては堂々と内職を決め込んでおり、完全に外の情報をシャットアウトしている。

 

 

「先生」

「…何よ」

「授業をしてくれないなら殺せんせーと交代してくれませんか? 一応、俺ら今年受験生なんで」

 

 

 そんな中、クラス委員の磯貝が皆の気持ちを代弁して交代を進言した。彼の言い分は尤もであり、暗殺者の選別をするぐらいなら教員室でも出来る。まあ、その場合はターゲットと鉢合わせるのだが。

 

 

「はん! 地球の危機と受験を比べられるなんてガキは平和でいいわね~。あんな凶悪生物に教わりたいって正気かしら」

 

 

 しかし焦りと強がりからか、更に火に油を注ぐような物言いで生徒たちの反感を買い始めるイリーナ。これには案外気の強い歌舞谷も反応し、途端に目が据わり始めた。

 

 

 

「それに聞けばあんた達E組ってこの学校の落ちこぼれだそうじゃない。勉強なんて今更しても意味ないでしょ」

 

『…!』

 

「そうだ! 私が暗殺に成功したらひとり五百万分けてあげる! 無駄な勉強するよりずっと有益でしょ。だから黙って私に従い――」

 

 

 

 言葉の先は続かなかった。イリーナはこの暗殺教室を成立させるうえで最も重要な生徒たちの信頼を余りに疎かにし過ぎた。

 

「出てけよ…」

 

 顔の横を消しゴムが通過し、無音の教室に落ちて転がる音と、誰かの呟いた声が嫌に響く。

 何が起きたか呆然と視線を辿った先で、自分を“敵”と見做した30近い顔を見た瞬間、イリーナは失言を悟った。

 

 今まで舞台装置ほどにしか考えていなかった生徒達と、そこで初めて目が合う。

 彼ら彼女らにも意思があると気付いた時には既に遅く、存在を軽視したツケがクラス中の怒りとなって物が飛び交い、ブーイングの嵐に晒されるハメになった。

 

 

「出てけクソビッチ!!」

「殺せんせーと代わってよ!」

 

「なっ、なによその態度っ殺すわよ!?」

 

「上等だ殺ってみろコラァ!!」

「そーだそーだ! 巨乳なんていらないのよ!」

 

(そこ!?)

 

 

 約一名私情が混じっているがそれは置いといて、生徒たちの集中砲火を受ける身からしたら堪ったものじゃないだろう。

 得意の脅迫もただの虚仮威(こけおど)しにしかなっていない現状、フィジカルで圧倒出来るモノがないイリーナではクラスの反乱を鎮めるに至らなかった。

 

 

 

 

「何なのよあのガキ共! こんないい女と同じ空間にいて有難いと思わないわけ!?」

 

「有り難くないから軽く学級崩壊してるんだろうが」

 

 

 その後、半ば教室を追い出される形で逃げ帰り、早々に愚痴が止まらなくなる暗殺者の姿があった。綺麗に整えられた髪は乱れ、這う這うの体で職員室に帰還したのが窺える。

 

 

「いいから彼等にちゃんと謝って来い。このまま此処で暗殺を続けたいのならな」

 

「なんで!? 私は先生なんて経験ないのよっ、暗殺だけに集中させてよ!」

 

 

 彼女の言い分は尤もだが、それではこの教室でやっていけないだろう。

 

その事を教えようとすると、扉が開いて空が入って来た。

手にはお馴染みのティーセットが提げられ、迷いのない足取りで職員室へと足を踏み入れてくる。

 

「あんたっ、よくもまあ私の前に顔を見せられたわね!」

 

 最早見慣れた光景に誰しもが口を挟まないと思っていたが、先の暴動と倉庫での暗殺を邪魔された怒りからかイリーナが突っ掛かった。殺気を向けられたことも忘れ、5つも年下の少女相手に八つ当たりをかます。

 

 

(おおよ)そ何を言いたいかは分かりますが、そんな(・・・)()を掘り返すぐらいなら授業の方法でも考えてはどうですか」

 

「そんな事、ですって…!? あんたねえッ、大人を舐めるのも大概に――」

 

「では聞きますがイリーナ先生。仮に私が手を下さなかったとして殺せんせーを暗殺できたと、本気でお思いなのですか」

 

「――ッ、それは…!」

 

 

 手早く作業を済ませ、自分の分も淹れた後にそう投げ掛けた。その際彼女にしては珍しくカップから音が鳴ったが、それだけでイリーナの気勢を削ぐには十分だった。

 

 

「烏間先生はどう思いますか」

 

「…無理だろうな。空さんが用意した消臭剤を使わなかった場合、事前に知らされてなくても奴の鼻なら違和感を嗅ぎ取っただろう」

 

「渚さんから聞き出した話の中にもあった筈です。それを軽視したのは他ならぬ貴女だ」

 

 

 要は暗殺に挑む以前の問題です。これがプロの同業者なら聞く耳も持ったでしょうが、たかだか学生と侮り情報の重要性を見抜けなかったのは失態以外の何物でもないと、続けてイリーナを責めた。

 

 

「それ以上にどうしようもないのは銃の選択ですけどね。あれだけ念押ししたのに聞く耳すら持たないのですから。せめて倉庫が傷付かないようにと殺せんせーに頼む(バラす)決断をした一番の要因がコレです」

 

 

 でも私が口添えしたお陰で殺せんせーに全弾命中できたんですから、むしろサポートしたと言えなくはないのか。

 

 そう。今回の暗殺を結果だけ観た場合、空の助力(アシスト)で臭いを完璧に消したばかりか、言葉一つでターゲットに自ら引き金を引かせ自殺に追い込んだと言っても過言ではない。

 それでも対象が死んでないのはイリーナが獲物の選択を誤ったからで、他ならぬ彼女自身の油断が招いたものだ。

 

 

 

「要するにお前はプロとしての暗殺の常識に捕われ過ぎたんだ。その点で言えば生徒達の方がよほど柔軟で手強い暗殺をする。空さんみたくな」

 

「ッ…、」

 

「確かにメイドにとっては戦闘も暗殺もサブ(ついで)であることは否定しません。知識で及ばないのも重々承知しています。ですが依頼された以上は誇りを持って仕事に臨み、メイドという生き方に信念を持って生きてるんですよ。私も、姉さんも……」

 

 

 

“姉さん”の部分で表情を一瞬曇らせるが、すぐにまた平時へと戻った。

手元のカップに視線を落とし、火傷しない温度まで下がったところで優雅に口に含み紅茶の味と香りを愉しんだ。

 

 人前で空が自分の淹れたお茶を呑むのは初めて見るが、それが彼女の心情に関係あるんだとしたらどういう心理状態にあるのだろう。

 少なくとも先日の様子を見る限りは平穏温厚とは行かないだろう。

 

 

 

「それと、先程からプロを殊更に主張してますが…」

 

「はッ――!? (速い! 一瞬で回り込まれた!)」

 

「タネが割れた暗殺者なら、素人(メイド)の私でもどうにかなります。今この教室で足を引っ張っているのが誰か、それすら分からないならせめて来年の3月まで大人しくしてくれませんか」

 

 

 

 首に当てられた指が離れてからも暫くは動けなかった。

 今の一瞬だけで接近技術やスピード、膂力や気配の操り方などあらゆる面で自分より上なのが分かった。

 

 これが平良空。超高校級の才能を持ち、各界から注目を集めるメイド姉妹の片割れか。

 正直プロの暗殺者でも空以上に“可能性”がありそうな実力者はそう居ないのではないかと、そう思わせる程に彼女の暗殺技術は卓越していた。

 

 

「烏間先生、前に言っていた鉛のナイフです。これを対先生用を加工していただくことは可能ですか」

 

「君が溶けた銃弾を回収した時はもしやと思ったが、まさか本当に作ってしまうとは…。くれぐれも取り扱いには気を付けるように。君の腕を見込んで許可するのだからな」

 

「重々承知しています」

 

 

 細部にまでこだわった見事な出来だ。それも複数。

 大きさからして直接切るよりも投げて使うことを想定しているだろうが、一つ一つ模様や装飾が違うところに技術の高さが窺える。

 

 イリーナもこのナイフの凄さに驚愕し、自分との差をまざまざと見せつけられて遂に意気消沈とした。

 

 

「防衛省にかけ合ってみよう。それと…工作も良いが授業は真面目に受けるように。こいつのは例外として奴の授業は君でも身になることが多いだろう。認めるのは癪だが教師としての仕事ぶりは完璧に近い」

 

「はい。勿論です」

 

 

 飲み終わった食器類を片付け、最後に一例だけし部屋を出ていく。後にはナイフの束を抱えた烏間と、悔しそうに項垂れるイリーナだけが残された。

 

 

「これで分かっただろう。今の状態で暗殺を続けても意味はない。それを肝に銘じておけ」

 

「……だから何よ。あいつの顔色を伺いながら暗殺しろって言いたいわけ? でも、そんなの私のプライドが許さないのよッ…!」

 

 

 お前の実力では無理だ。言外にそう言われた気がして、下火状態だったプロとしての矜持が再燃する。

 確かにどちらが優秀かと聞かれたら結果は明らかだろう。

 それでも今まで必死に技術を磨き、経験を積み上げてきたのだ。なのにたった数日暗殺を齧っただけの少女に負けるなど、喩え事実だとしても認められる訳がない。

 

 無け無しのプライドをかき集めてターゲットを殺るのは自分だと詰め寄り、その為には教師の仕事なんてしていられないと職務を拒否したところで、烏間が大きな大きなため息を吐いた。

 

「仕方無い。付いてこい」

 

 そこからは原作の流れと概ね一緒だった。

 

 マッハ20のスピードと高度な知能を活かして生徒一人ひとりに個別のテスト問題を作る超生物と、暗殺とバドミントンを合体させた遊びで着実にナイフ技術を身に付けるE組の様子を見せられ、彼等が舞台装置でない事を改めて強調した。

 

 暗殺対象(ターゲット)と教師。暗殺者(アサシン)と生徒。

 

 殺せんせーの提案から始まったこの歪で奇妙な教室では、誰もが2つの立場を両立しているのだと。

 

 

 

「空さんの言う通りだ。お前はプロである事を強調するが、もし暗殺と教師を両立できないなら此処ではプロとして最も劣る」

 

“今この教室で足を引っ張ているのが誰か、それすら分からないようならせめて来年の3月まで大人しくしてくれませんか”

 

「ッ――、」

 

 

 空の言ったことがフラッシュバックし、それがどうしようもなく胸に突き刺さった。

 

 学業と暗殺、更にはメイドという3足のわらじを履きながらの生活はしかし彼女の才能をより洗練させ、高次に押し上げている。

 生徒の中で誰よりも多くの業務を抱えながらその仕事ぶりに全く衰えが無いのを感じ取っていたイリーナは、焦りと不安から自分はプロだと言い聞かせて意固地になっていたことに気付いた。

 

 

「ここに留まって奴を狙うつもりなら見下した目で生徒を見るな。生徒達が居なければこの暗殺教室自体が成立しない。だからこそ生徒として、暗殺者として対等に接しろ」

 

 

 凝り固まった思考は視野を狭窄させ、選択肢をより狭める弊害にしかならない。

 そう教えられた筈なのに、いざ状況に陥ると自尊心を守ることに必死で暗殺以外の事が何も見えていなかった。これでは上手くいくわけ無いし、呆れられて当然だ。

 

 

殺せるだけ(・・・・・)の殺し屋など幾らでもいる。もしそれが出来ないなら順番待ちの一番後ろに並び直してもらうぞ」

「……」

 

 

 どれだけ俯いてただろうか。見るからに肩を落として無言で立ち尽くす様は絵になるが、その姿からは悲壮感を感じさせる。

 かと思えば徐に顔を上げ、まるで何かを決意したように表情を引き締めると、それまでの落ち込んだ様子から一変し確かな足取りで校舎の中へと入って行った。

 

「やれやれ。手間が掛かる」

 

 何故俺がこんな事を…と思わなくないが、これも地球を救うためだ。無理矢理でも自分を納得させ、事の顛末を見届けるべく後を追った。

 

 

 

 

 

 

「ふうぅ~~」

 

 緊張する。今ではもう慣れたけど、初めて暗殺任務を請け負った時も確かこれぐらい緊張してたっけ。

 

 この扉の先にいるのはマッハ20で動き回るターゲットでも、況してや私を殺しに来た同業(暗殺)者でもない。

 にも関わらず足が竦むのは、嫌われている自覚があるからだ。

 ここに来てからの数々の言動を客観的に振り返ると好意的に取られる要素が何一つなく、逆によくあの程度の反抗で済んだなと胸を撫で下ろしもした。

 

 大丈夫。その事実さえあれば勇気は湧く。

 本来辞任に追い込まれても仕方無いことをしたのに、まだここに居られるのはあの子らの温情によるものが大きい。

 

 期待を寄せられてる…なんてこれっぽっちも思わないけど、何がなんでも辞めさせるべきとならない程度には見られてると思って良いだろう。それなら私も頑張れる。

 

 

ガララッ

 

 

 意を決して扉を開けた瞬間、騒がしかった教室が水を打ったように静まり返った。カツカツとヒールが床を鳴らす乾いた音だけが響き、友好的でない視線をクラス中から向けられようと、努めて冷静に振る舞う。

 

 

(やっぱりね、予想通りだわ。メイドガールは…)

 

 

 その敵意を甘んじて受け入れつつ、それはそれとして空の姿を横目で探すと……いた。窓際2列目。その最後尾。

 シルクにも似た特徴的な長髪を携える女子生徒が、顔も上げずに数丁分の銃の手入れに勤しんでいた。

 

 

(私なんて眼中にも無いってわけ? それなら無理にでも興味を引かせてあげるわよ)

 

 

 魅了してからの暗殺(ハニートラップ)を生業とする身からしたら、相手にされない以上に屈辱的な事はない。

 空を含め生徒達に認めてもらいたい気持ちに火が付き、教壇に立つ頃には幾分か元の調子を取り戻していた。

 

 

You're incredible in bed. 言って(リピート)、ホラ!」

 

「ユ、ユーアーインクレディブルインベッド…?」

 

 

 何をしに来たかと思えばチョークを取って黒板に英文を書き込み、更には突然復唱してみろと言われ先程とは逆に、今度はE組の気勢が削がれた。

 拙いヒアリングで音の種類を割り出し、これまた拙い発音で何とか英文に訳すとイリーナが満足そうに頷いた。

 

 

 

「アメリカでとあるVIPを暗殺した時、先ずそいつのボディーガードに色仕掛けで接近したのだけど、その時彼に向けて言った言葉よ。意味は“ベッドでの君は凄いよ…♡”」

 

 中学生になんて文章読ませてんだ!? 再び生徒達の心の声が再び一つになった。

 

「外国語を短い時間で習得するには、その国の恋人を作るのが手っ取り早いと言われてるわ。相手の気持ちをよく知りたいから必死で言葉を理解しようとするのね」

 

 

 

 それ以外でも最近は声優の演技を聞くため日本語を勉強する外国人が増えていたり、アニメや漫画以外でも漢字そのものに興味を持ったりなどして習得する人も居るが、総じてそういう人達ほど上達が早い。

 

 日本人の英語教育が育たないのは、日常的に英会話が必要な場面が無く、テストの点数のみを重視する傾向にあるからだ。

 必要に迫られてというよりは義務感で取り組む者が殆どで、将来海外に行く予定のある人以外は無用の長物になると皆思っているからだろう。

 

 

 

「だから私の授業(・・)では外国人の口説き方を教えてあげる。プロの暗殺者直伝の仲良くなる会話のコツや話し方など、身に付ければ実際に外人と会った時に必ず役に立つわ」

 

『外人と…』

 

「…!」

 

 

 メイドとして相手の信頼を得る時や、外国人から依頼を受けた際にこのスキルは是が非でも欲しい筈だ。

 その思惑通り、教室に入ってから初めてメイドガールが私の言葉に反応を示した。手を止めて上げた視線と交錯した時、確かに彼女の目は私という存在を認識し捉えていた。

 

 

 

「受験に必要な勉強なんてあのタコに教わりなさい。私が教えられるのはあくまで実践的な会話術だけよ」

 

だけどその状態をいつまでも続けられるかと言ったら別の話。気付けば視線を下げ、無言の追及から逃れていた。

生憎と素でポーカーフェイスを習得している実力者と緊張を維持できるぐらいの度胸は持ち合わせていない。

 

「もし…それでもあんた達が私を先生と思えなかったらその時は暗殺を諦めて出ていくわ。そ…それなら文句無いでしょ? あと悪かったわよ色々

 

「…!」

 

 

 

 勿論語りかけるべきはあの子だけじゃない。傷付けた度合いで言えばその他の子達の方が大きいぐらいだ。

だから自分なりの誠心誠意を尽くして謝罪した。……声はだいぶ小っちゃくなっちゃったけど。

 

(ど、どうかしら…)

 

 気になって顔を上げれば驚いたような表情から互いの反応を確認し合い、かと思えば大きな笑い声が飛んできた。何事!?

 

 

「何ビクビクしてんだよ。さっきまで殺すとか言ってたくせに」

「なんか普通の先生になっちゃったな」

「そうそう。もうビッチ姉さんなんて呼べないね」

 

「あんた達…! 分かってくれたのね」

 

 

 この際だから不名誉なあだ名(ビッチねえさん)は置いとくとして、それ以外は良好な反応を得られたことに我ながら感動してしまった。ヤバっ、ちょっと泣けてきたかもッ…。

 

 

「考えてみりゃ先生に向かって失礼な呼び方だったよね」

「だな。呼び方変えないと」

「じゃ、ビッチ先生で」

 

 

 いやそっちかい!? 普通はねえさんの方じゃなくてビッチを変えるでしょ! 思わず涙が引っ込んじゃったわよ!

 

 

「えっ…と。ねぇキミ達、折角だからビッチから離れてみない? ほら、今だったら気安くファーストネームで呼んでくれても構わないのよ」

 

「でもなぁ。もうすっかりビッチで固定されちゃったし」

「そんなわけでよろしくビッチ先生!

「授業始めようぜビッチ先生!!

 

 

 ビキリッ

 

 

「キィ――ッ!! やっぱりキライよあんた達!」

 

 

 

 

 

 スキル『庇護欲』を獲得しました。

 

 

「……やっぱり大人からでもスキルは貰えるんですね」

「なにか言った空?」

「何でもありません。少し騒がしいなと思っただけです」

 

 (かぶり)を振って単なる愚痴だと告げる。

 

「ふふ、そうかもね。でも空気が悪くなるよりは多少うるさい位が私は好きかも」

「……そうですね」

 

 教壇で分かりやすく荒れる新たな教師を一瞥した後、再び手元に視線を落とし銃を磨いていった。

 

 

 

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