人を〇すと処刑されるデスゲームから、謎の超生物を暗殺する学園コメディに転生した件   作:暦月

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集会の時間

 

 

 5月〇日。鬱蒼と草木が生い茂る山の中を、まだ高校生にも満たない子供たちが列をなして歩いていた。

 

 

「急げ。遅れたらまた、どんな嫌がらせされるか分からないぞ」

「前は本校舎の花壇掃除だったっけ。アレはきつかったなあ」

 

 

 まだ初夏も迎えてないとはいえ、急な山道を行き来すれば汗も噴き出してくる。

 高い樹木が陽光を遮る代わりに最低限の手入れしかされてない獣道が若者の体力を奪い、進む足を鈍くさせる。

 

 先頭で皆を先導する3人も軽口を叩く余裕こそあるものの、疲れが顔から滲む様子が決して楽な道のりでない事を物語っている。

 

 

「あぁもうッ! どうして私達だけ、こんな思いしなきゃいけないの~!?」

 

 

 歩いても歩いても辿り着かないストレスに、岡野の悲鳴が山中に響き渡った。

 

 

 

 全校集会。それは全国津々浦々どこの学校でも行われていると言っても過言じゃないくらい当たり前にある学校行事の一つだ。

この椚ヶ丘中学校も月に一回、何組の誰々が賞を貰ったとか、どこの部活動が結果を残した等の表彰が為される。

 

 けどうちの学校の集会にはもう一つ意味があって、それが成績不振のE組を公衆の面前で差別することにある。

 

 E組はこの学校の最底辺だ。普段は本校舎の生徒に悪影響を与えるからと山の上の特別校舎に隔離し接触を絶っているが、集会の時間だけは昼休みを返上させて本校舎のどのクラスよりも早く体育館で整列しなければならない。

 それが出来なければ今度は更に重い罰を課されるため、皆必死になって山下りをしているのだ。

 

 

「うわあ~! 橋が崩れてるー!?」

「おいっ、岡島が流されたぞ!」

 

 しかも道中にはトラップかよと言いたくなるほどの難関が待ち受けている。

 

「キャアー! 蛇ィー!?」

「ああっ! また岡島君がっ!」

 

 時には崩落した橋に足を滑らせ。またある時には蛇の大群に道を塞がれたり、そこを越えたと思ったら何故か落石に巻き込まれたりなど。

 

「今度は落石だァ!!」

「お、岡島っーー!?」

 

「誰だよ蜂の巣突いたのっ!」

「岡島ァァーー!!」

 

 その尽くで被害に遭っている男子一名を皆で引き摺りながら、何とか時間通りに本校舎を目指す。

 

 

「アイツ、一人だけ凄い事になってるけど大丈夫、だよな…?」

「う、うん。……多分」

 

 

 まるで襲い掛かる不幸を肩代わりしてくれるかのような岡島君に密かに感謝と……あとは彼の無事を祈りながら、漸くトラブルが落ち着いてきたところで休憩を挟んだ。

 

 

「全員大丈夫か」

「烏間先生…」

「焦らなくていい。このペースなら十分に間に合う」

 

 

 その後息も絶え絶えに追い付いてきたビッチ先生とも合流し、そこで何時もの顔ぶれから二人いなくなっている事にようやく気付くとその所在を烏間先生に伺った。

 

 

「烏間先生。殺せんせーと空さんは?」

「奴なら一般の生徒達の前に顔を晒す訳には行かないのでな、旧校舎で待機させている」

 

 空さんの方は日課の昼掃除があるとかで後から来るそうだ。

 

「ターゲットに任せてもいいのだが、何でもターゲットに仕掛け(ギミック)を見られる訳には行かないからと君らのお弁当を作った後そのまま掃除に取り掛かってたぞ」

「うっひょお! そいつはありがてぇ!」

 

 

 いや今ギミックって言った? 確かにここ最近は空さんから立ち入り禁止の教室を言い渡されたり天井から槍(対先生用)が降ってきたりしたけど、まさかもう校舎全部とも改造してるんじゃ…。

 そんな考えが頭を過るも僕らに害は無いだろうし、彼女の頼もしさを知っているため深く考えるのを止めた。

 

 ちなみに歌舞谷さんに渡していたバスケットの中身はおにぎりとサンドイッチだった。

 

「うまっ、美味!」

「よーし皆、あと少しだから頑張ろう!」

 

 

 美味しい食事で皆の活力が戻る。磯貝君の鼓舞にも力が漲り、勢いそのまま一気に本校舎への下山を果たした。

 

 

「とうちゃ~く!」

「き、キツかった…!」

「お疲れさまでした皆さん。思っていたよりもお早い到着でしたね」

 

 

 そんなかなりのハイペースで山を下りた筈なのに、本校舎の敷地内に足を踏み入れたと同じタイミングで空さんと合流した。正直滅茶苦茶ビックリした。

 彼女のことだから時間に遅れたりはしないだろうと確信してたけど、それでもスタート時にこれだけの差があって追い付かれるとは全く思わなかった。

 まるで図ったようなタイミングに、汚れ一つない制服。普通なら待ち伏せを疑うけど、彼女なら出来るだろうというある種の信頼がこれ以上疲れさせる要因を適当に排除した。

 

 

「空! 校舎の掃除も終わったの?」

「ええ。歌舞谷さんも有難うございます。重いものを持ってもらって」

 

 そんな助かったのはこっちだし…と皆が共感する中、ふいにビッチ先生を見て動きが止まり、眉間に皺が寄った。

 

「イリーナ先生」

「なによぉ、疲れてるんだから後にしt」

「学年集会だというのに何ですかその恰好は舐めてるんですか。どこの学校に谷間を見せつける副担任がいるんですか」

 

 

 息継ぎもそこそこに捲し立て、極寒の視線がビッチ先生に向けられる。……何も関係ない僕らの背筋までゾクッと巻き添えを食う羽目になったのは訴えても良いだろうか。

 

 

 

「暗殺が絡む状況なら何も言いませんが、それ以外の時間は自重してくださいと前に言いましたよね」

 

「えっいや。ちょっ、待って…!」

 

「烏間先生、式には遅れますがイリーナ先生(ポンコツ)の衣装直しをする許可を頂けないでしょうか」

 

「今ポンコツって、ポンコツって言ったわねアンタぁ!」

 

「良いぞ許可する」

 

「烏間アァァー!!」

 

 

 子供みたいに駄々を捏ねながら引き摺られていくビッチ先生を見てると、何だか凄く居た堪れない気持ちになる。十中八九ビッチ先生が悪いんだけど。

 これから空さんに首輪を付けられて怒られる姿が容易に想像でき、その都度同じ光景を見るんだろうな~とクラス全員が確信した。

 

 

 

………

……

 

 

 

 そんなこんなで僕らE組にとっては気の重くなる……月に一度の全校集会が開かれた。

 

 

「いたいた渚く~ん」

「お疲れ~。わざわざ山の上から来るの大変だったでしょ~」

 

 

 かつてのクラスメイトの哄笑が嫌に耳に残る。

 

 彼ら本校舎の人間からすると僕らE組は落ちこぼれの劣等生であり、自分達は学校に選ばれた優等生だと思っている。実際その通りな訳だし、そう思わされるように学校のシステムも出来ている。

 普段は面と向かって嘲笑する機会も無いが、この際だし負け犬の面でも拝んで帰るかという魂胆が透けて見える。他の皆も同じようで、僕らはそれに長々と耐えなければいけない。

 

 

『え~。要するに君達は全国から選りすぐられたエリートです。この校長が保証します』

 

 

 E組は本校舎からエグい差別を受けている。それは生徒は勿論教師も例外ではない。

 

 

『ですが慢心は大敵です。油断してると…どうしようもない誰かさん達みたいになっちゃいますよ』

 

 あははははは! ははははは!

 

『こら君たち嗤い過ぎです。校長先生も言い過ぎました』

 

 

 元々入学する際にこういう制度があるのは説明を受けていた。それを理解した上でこの学校に在籍したのだから、言い返す謂われも非難される覚えも無いというのが学校側の主張だ。

 契約書にもそう記載されているため、当然親や保護者に泣きつくことも出来ない。謂わば地域公認の差別がこの学校の実態だ。本当にエグいしよく出来ている。

 

 早く終わらないかと嘲笑に耐え凌ぎながら願う中、生徒会の発表に移るタイミングで体育館の扉が開き、そこから烏間先生、ビッチ先生、そして空さんが合流した。

 ちなみにビッチ先生の服装が高級ブランドのスーツから何処にでもいるOL風のリクルートスーツに変えられていた。案の定不満が顔に出てるけど、後ろを歩く空さんに睨まれて背を直立に伸ばした。

 

 

「…誰だあの先生」

「シュッとしててカッコいい~」

「ちょっ! なんだあの物凄い体の外人は!?」

「すっげ~美人。あいつもE組の先生なの?」

「いいなぁー。うちのクラス先生も男子もブサメンしかいないのに」

 

 

 それを機にあちこちから羨望の声が漏れる。今まさに差別していたことも忘れ、本校舎の中からE組を羨む者がちらほら出始めた。

そんなE組への関心を高まったことで、後ろに控える空にも注目が集まるのはある意味必然だった。

 

 

「見ろよ、平良空だ」

「E組に落とされたって話本当だったんだ。なんか幻滅したなぁ」

「よく堂々としてられるわね。お姉さんの顔に泥を塗って恥ずかしくないのかしら」

 

 

 元々本校舎にいる頃から有名だった彼女だ。周囲の喧騒や値踏みする眼にも慣れたもので、普段と変わらず堂々とした佇まいを保ちながら列に加わる。

 

 僕や他の皆と違い一度も視線を下げず、まるで臆した様子のないその態度に本校舎の間でも困惑と落胆で反応が二分した。もっと慌てる姿でも想像してたのかな?

 今まで関心が高かった分、それまでの印象が反転し大仰に嘲笑う人もいれば、中にはE組だからと評価を一緒くたにしたり、それとは別にあまりに此方を顧みないので本当はE組になんて落とされていないのでは? と前提から疑う人も中にはいた。

 

 結局、僕ら含めて彼女を測れるほどの人がこの場にいないため、全体の総意が生まれず空さんを卑下する声も徐々に下火になっていった。

 

 

「クソっ、何なんだよあいつら」

「エンドのE組の分際で良い思いしやがって」

 

 

 そして彼女の立ち位置が分からないから一度渡った関心が再び僕らに戻される。何やかんや皆空さんにお世話されるのが羨ましいのと、烏間先生やビッチ先生が担任で気に食わないという理由から結局は目の敵にされるのだ。

 

 今だってほら、早速全員に配られる筈のプリントが来ず晒し上げにされるし。

 

 

「…すいません。E組の分まだなんですが」

 

「え? ない? おっかしーな。ごめんなさーい、3—Eの分忘れてたみたい。すいませんけど全部記憶して帰ってくださーい」

 

 ドッ!

 

「ほら、E組の人は記憶力も鍛えた方が良いと思うし!」

 

 

 あはははははははは!

 

 

 これじゃあまるで見世物だ。いや……まるでも何も学校が僕らを見世物に仕立て上げてるのか。こうやって選民思想を植え付けて僕らみたいにならないようにと思わせることが学校側の――ひいては理事長の狙いなんだ。

 

 

「…何よコレ。陰湿ねぇ」

「……」

 

ブワッ

 

「うわっ、なに…?」

「これは…」

 

 

 屈辱に耐えるしかなかった僕らの横を、一陣の風が通り過ぎる。かと思えば全員分のプリントが手元に収まっていて、それを為した存在はいつの間にか教師陣に混ざっていた。

 

 

「問題無いようですねぇ。手書き(・・・)のコピーが全員分あるようですし」

 

「…はい!」

 

(殺せんせー!)

 

 

やっぱりうちの担任は一味違う。マッハ20の速度をもってすればこの程度の障害なんて置き去りに出来てしまんだから。

……烏間先生からしたら大変だけど、今回に関しては正直ありがたいから何も言えない。ごめんなさい烏間先生。

 

 

「私の、仕事なのに…」

「空、ステイステイ!」

 

 

空さん(こっち)空さん(こっち)で殺せんせーに対抗心燃やしてた!

そうだよね君はそうなるよね!?

 

 

「すみませーん、プリントあるんで続けて下さーい」

 

「ハァ!? 嘘なんでっ、誰だよ笑いどころ潰した奴……あ!」

 

 

 やめて空さんを見ないで! 分かるよこんな事出来そうなの彼女くらいだし。でも違うから!

 ほら横取りされた功績だから本当は否定したいけど、状況的に頷くしか無くて渋々黙ってる彼女に思い当たる節を見出さないで! 凄い恨めしい視線を後ろから感じるから!

 

 

「あはは! 早く始めてくれよ荒木~!」

 

 

 その後は空さんに気を遣ってなのか、はたまたE組弄りが不発に終わったからか定かでないが、恙無く式は進行していき集会を終えた。

 帰り際に先程の元クラスメイトに絡まれるハプニングは合ったけど、本当の殺意を少し見せたら退いてくれた。後は杉野と茅野と合流すれば、取り敢えず“僕の”全校集会はこれで終わり。

 

 何やら空さんと歌舞谷さんの方はもう一悶着あったみたいだけど、それを僕らが目撃することは無かった。

 

 

 

 

 

 

「「「「「 さて始めましょうか 」」」」」

 

 

 そして後日。中間テストを控えた僕らの目の前に、分身した殺せんせーが立ちはだかった。いやなんで…?

 

 

 






 各キャラから見た人物像①

烏間→空……優秀。個人的に契約を結ぶほど空の仕事ぶりを買っており、彼女が居るお陰で原作ほど頭を悩ませられていない。姉の確執とクラスメイトとの壁が懸念点か。

ビッチ先生→空……怖い。頭が上がらない。何か言い返すと倍になって帰ってくるため下手なことを言えない。お願いだから代わりを持って来るならもっと高級なやつにして。 駄目? ……はい。

空→殺せんせー……商売敵。そのスピードは反則だから。仕事のクオリティでは負けてない筈。いつか捉えて見せる。

殺せんせー→空……ヌルフフフ。


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