人を〇すと処刑されるデスゲームから、謎の超生物を暗殺する学園コメディに転生した件   作:暦月

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犬猿の時間(挿絵あり)

 

 

 今、僕らの前には何体にも分身した殺せんせーがいる。

 分身と言っても要は超高速で動いて残像を置いてるだけなんだけど、微妙に鉢巻きの種類を変えたりして違いを出している。だからどうしたと言えばそれまでなんだけど。

 

 

「学校の中間テストが迫って来ました」

「そうそう」

「そんなわけでこの時間は」

「高速強化テスト勉強を行います」

 

 

 試験のために分身を出すなんてうちの担任ぐらいだろう。そもそも分身を出せるのが殺せんせー以外いないんだけど。

 

 

「先生の分身が一人ずつマンツーマンで」

「それぞれの苦手科目を徹底して復習します」

 

「何で俺だけNARUTOの鉢巻きなんだよ!」

「寺坂君は特別コースです。苦手科目が複数ありますからねぇ」

 

 

 そんな殺せんせーだけど、以前にも増して速くなってる…と思う。

 

国語7人、数学8人、社会3人、理科5人、英語4人、……NARUTO1人。

 

 クラス全員分の分身なんて。ちょっと前まで3人ぐらいが限界だったのにっ…て、うわぁっ!!

 

 

「急に暗殺しないで下さいカルマ君! それ避けると残像が全部乱れるんです!」

「意外と繊細なんだこの分身…」

 

 

 びっくりしたぁ…。いきなり殺せんせーの顔がぐにょんと歪んだから何事なのかと思ったよ。あと殺せんせー、外で一人休ませてるってそれむしろ疲れない?

 

 

 

「真面目にやりなさいよねカルマ。あんた頭良いんだし普通に勉強したらこの学年でもトップ目指せるでしょ」

 

「そっちこそテスト30番以内常連じゃん。そんなに張り切らなくても本校舎の復帰なんて簡単じゃないの? ね~元A組のお二人さん」

 

「喧嘩売ってんの」

 

「まさか。冗談だよ冗談。浅野君だろうが噛み付く女傑相手に俺なんかが敵う訳ないじゃん」

 

「やっぱり喧嘩売ってるでしょあんた!」

 

「落ち着いてください歌舞谷さん」

 

 

 

 あはは、後ろが騒がしいや。でもそっか。あの3人は元々の成績が良いから元のクラスに戻ることも容易なんだ。

 

 E組を差別するこのシステムの上手い所は、一応の救済措置が用意されている点だ。

 定期テストで学年188人中50位以内に入り、尚且つ元担任がクラス復帰を許可すれば差別されたこのE組から抜け出せることが出来る。

 

 でも元々が成績下位の上、劣悪な環境では――校舎の敷地内は空さんが手入れしてくれたが、ここに来るまでの道中で未だ慣れない――その条件を満たすのは厳しすぎる。

 

 殆どのE組生徒が救済措置すら掴めない負い目からエグい差別を受け入れてしまう中、彼ら彼女らに臆する様子が無いのはいつでも戻れるっていう自信と自負があっての事なんだろうなぁ。

 正直羨ましいとかよりも彼等がどんな印象をE組に抱いてるのかといったことの方が知りたいと思った。

 

 

「で、実際どうだったの? あの浅野君に啖呵切ったってのはホントなんでしょ」

 

「どうもこうもないわよ。決めるのは空だから、私がとやかくいう事は無いってハッキリ突き付けてやっただけだし」

 

「……私は、」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 全校集会の後、私は一人の男子生徒に呼び止められた。

 

 

「待ちたまえ空。久しぶりじゃないか、一緒に話をしよう」

 

「浅野さん…? えぇお久しぶりです」

 

 

 その相手というのがこの学園の生徒会長にして、理事長の息子でもある浅野学秀だった。A組にいた頃はよく依頼を受けて彼の業務を補佐していたけど、私が特別校舎に移ってからは親交が途絶えていた。

 完璧主義を貫く彼の事だからてっきりE組に落ちた私など眼中にも無いと思ってたのに、まさか向こうから話しかけてくるとは。

 

 

「何か御用でしょうか。この後に花壇の手入れと新しく入った茶葉の選定があるので早めに終えていただけると有難いのですが」

 

「…君は変わらないな。“郷に入っては郷に傅け。依頼を受けた以上は靴が磨り減るまで働き続けろ”が君ら姉妹の流儀だったね。全くそのプロ根性には恐れ入るよ」

 

「……恐縮です」

 

「だからこそ惜しい。E組なんかに居たのでは君の存在価値が損なわれる。空、君の真価を引き出せるのは僕だけだ。再びA組に戻って僕の下で働かないか」

 

 

 

 どうやら私が思っている以上に私の腕を買ってくれてたみたいです。

 彼とはこの学校に入学してからの付き合いですが、クラスが一緒というのもそうですし積極的に私を雇ったりして歌舞谷さんの次ぐらいに時間を共有したのが彼でした。

 

 私としても浅野さんの帝王学には沢山の事を学ばせてもらい、すぐ横でサポート出来たのはメイド技術を発展させる上で大変良い経験になりました。

 姉さんはどうか分かりませんが、私がこの仕事に望むのって実はそういう持ちつ持たれつつの関係なんですよね。だから雇用主(マスター)を選ぶ時もそれが出来るかどうかで決めてる場合が多いです。

 

 とは言え困りましたね。今の私は烏間先生に雇われている身。メイドとして似つかわしくない仕事選びをしている私でも流石に二重雇用は採用していません。

 目の前の業務に集中できない者が背伸びをしたって仕事のクオリティを落とすだけでしょう。そんな事になれば今まで築き上げていた信頼と実績が瞬く間に崩れ去ってしまいます。

 

 一応、暗殺に関係すること――例えばこの前のように殺し屋がサポートして私を雇う時に烏間先生から権利を一時引き継ぐといった事は契約に盛り込まれていますが、今回の場合は適用外。ここは素直に断るのが正解でしょう。

 

 

 

「せっかくの申し出ですがお断りします。今の私には既に使えるべき主がいますので」

「なっ…! 浅野君の依頼を断るっていうのかい!? 正気か平良さん!」

「待て、止すんだ荒木」

 

 

 私が拒否すると横から話を聞いてた荒木さんが割って入ります。いえ…彼だけではありませんね。気付いたら体育館中の視線が私達に向けられていました。

 

 

「彼よりE組の落ちこぼれを選ぶって!? 冗談にしてももう少しマシな――」

「そこまでです。私の前でマスターを貶すなら元クラスメイトと言えど黙ってる訳には行きません。場合によっては報復も検討しますがどうしましょうか」

 

 

 それと貴方に関しては先程のプリントの件、私許してませんからね。恥をかかせてくれた礼と合わせて後でケーキと紅茶を奢って貰いましょうか。

 

 そんな事を思いながら腕の拘束を解くと、青い顔をして距離を取られました。

 

 

「何やってるのよ全く。この子が仕事に誇りを持ってるのは知ってるでしょ」

「か、歌舞谷…」

 

 

 そこにジュースを買いに行っていた歌舞谷さんも加わります。手には二人分の飲み物が握られており、一つは私の分だと分かります。後で立て替えなければ。

 

 

 

「ちッ、面倒なのが来たな。君はお呼びではない。下がっていたまえ」

 

「お呼びでないのはそっちでしょ。私の方が空との約束を先に入れてたんだから邪魔しないでよ」

 

「E組の癖に僕に口答えするのか。どうやらたった一か月程度の矯正(・・)では堪えなかったみたいだね」

 

「お生憎さま。私が差別されたぐらいで泣きつく女に見える?」

 

「君のせいで空まで巻き添えを食ったというのに随分面の皮が厚い事だ」

 

「あら、今日はやけに突っ掛かるのね。空が自分じゃなく私に付いて来たのがそんなに悔しかったんだ」

 

「ハッ、何処が」

 

「何よ」

 

 

 

 売り言葉に買い言葉。互いに激しく相手を責め立て、言葉だけで戦意を喪失させんとする応酬が始まった。

 

 

「嗚呼、やっぱりこうなりますよね」

 

 

歌舞谷さんは私と同じくダンガンロンパに出てきた主要キャラの内の一人だ。

才能は【超高校級のホステス】で、見た目や才能こそ派手だが感覚感性は割と庶民的な常識人である。

 

 そして浅野さんと相性が良くないのはA組にいる者であれば誰もが知るところ。

 

 椚ヶ丘中学校には特進クラスがあり、試験結果や部活の功績などから()りすぐった成績優秀者を同じクラスに在籍させている。それがA組なのです。

 この特進制度は学年が上がるごとに更新されるが、今年私と歌舞谷さんの入れ替わりで入って来た二人以外にAクラスから落ちた生徒は一人もいない。

 

 つまりは去年までの二年間、一度も頂点の座を明け渡すことなく成績を保ってきたのが現3—Aなのである。

 

 その頂点に居座る原動力となるのが自分達はエリートの中のエリートだと疑わない圧倒的までの自負。

 

A~Dの4クラス制から落ちこぼれのE組が追加されるのは3年次のみの制度だが、彼らA組だけは入学当初からクラス序列というのを意識させられてきた。

 

 そんなプライドの高いA組の猛者たちを纏め上げてきたのが浅野学秀だ。

 

 人望も厚く、親譲りの指導力まで備えている。確かな実力とカリスマ性を持つ彼に付いていけばこの先安泰だと考える者が大半を占める中で、歌舞谷さんだけが浅野の“支配”を拒んできた過去がある。

 

 

(歌舞谷さんは椚ヶ丘(この学校)の生徒にしては珍しく実直な性格をしてますしね。元より他者を見下すきらいのAクラスとはそりが合わなかったのでしょう)

 

 

 前世の記憶を取り戻す前――。まだ【天啓】を授かっていなかった私は何の因果かそんな彼女の事が気になり友達となった。

 記憶を取り戻してからも増々歌舞谷さんとの距離を縮め、彼女がホステスの仕事を見つかってE組に転入する処分を受けてからも変わらず親友であり続けるために私もA組を捨ててE組に転がり込んだのだ。

 

 

(でも歌舞谷さんと同い年は今でも衝撃ですね。原作では架空世界を一度脱出した時にとっくに成人を過ぎていたと判明しましたが、(アルターエゴ)が現実に存在してる事といいパラレルワールドの影響をモロに受けている気がしなくもないような…)

 

 

と、そんな感じで物思いにふけていたら殊の外時間が経っていたようだ。

気付けば話題は私の進学先の事になっていました。

 

………いや、え。なんで?

 

 

「もうっ、何度も言わせないでよ。空は『超高校級のメイド』として希望ヶ峰学園に通うんだからね!」

 

「くどいのはそっちだ。空の主足り得るは彼女の才能を正しく扱えるか、それに匹敵する優秀な能力を持つ者だけ。その点僕に付いて来ればその両方を満たせる」

 

 

 いや、あの…。本人そっちのけでそんな大事な話進めないでくれませんか。

 

 

「何よ、二年も一緒にいて空の関心を引けなかったくせに偉そうなんだから」

「君が邪魔しなければそうなっていたさ。そのままE組に骨を埋めてると善い」

 

 

………さて、早く戻って届いた新茶を確認しないと。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「どうもこうもないわよ。決めるのは空だから、私がとやかくいう事は無いってハッキリ突き付けてやっただけだし」

「ふ~ん。と言ってるけど本人はどう思ってる感じ?」

「……私は、」

 

 まず姉の暴走を止めて、黒幕の計画を阻止してからでないと。世界の安寧を保たない事には鬼も笑うでしょうし。

 

「私の進路ですからゆっくり考えたいと思います」

「だってさ」

「空…! そうよね、私もつい性急になり過ぎてたけど本来はもっと慎重に考えないと」

「ほらそこ! 授業中は私語厳禁ですよ!」

 

 そうだ。先日の集会で気を回してくれた浅野さんへのお礼も考えなくては。

 この学校で2番目に長い付き合いですし、何よりあそこまで私の腕を見込んでくれる方に何も用意がないのはメイドの名折れですから。

 

 

 

 

 

「良かったのかい浅野君。元クラスメイトとは言え、衆目の集まる場でE組なんかと口論したら君のイメージにも響くんじゃ」

 

「問題ないさ。この程度の諍いで求心力が落ちるような柔な支配は敷いてない。それよりも空に付けられた落ちこぼれのレッテルを剥がすほうが僕にとっては大事だ。彼女はいずれ僕の右腕となるのだからね」

 

 

 それに…あれだけ事を大きくすれば必ず理事長も動くだろう。徹底主義を掲げるあの人の事だ、授業に手がつかなくなるまでE組を追い込んでもおかしくはない。

 そうなれば腕を磨くのに熱心な空は早々にE組に見切りをつけ、僕の下に戻って来るはずだ。

 

 ついでに余計なのが付いてくるかもだけど、だとしても寛容の心で受け入れてあげようじゃないか。支配者たる者、懐は広く見せないとね。

 

 







 E—7 歌舞谷夜子

〇誕生日……12月10日
〇身長………160㎝
〇体重………50㎏
〇得意科目…国語
〇苦手科目…理科
〇趣味特技…歌を歌うこと、服のコーディネート
〇好きな物…派手な物、チゲ類全般
〇嫌いな物…偏見と固定概念、脂っこい食べ物
〇将来の夢…皆に私を知ってもらうこと

〇イメージカラー………ホットピンク
〇百億円獲得出来たら…派手に使って普通の生活に戻る。


 原作(※コピペ引用)
 日本の有名バーでエースとして君臨していた【超高校級のホステス】
本来高校生だが年齢を偽って働いており、皮肉にもバーに希望ヶ峰学園からの通知書が届いたことによって高校生であることがばれてしまった。法律違反で少年院に入るか希望ヶ峰学園入学かの選択に迫られた中で後者を選んだ異例中の異例。危機を好機に変えようと改心して新学期を迎える。
 自分の職業が風俗営業だと思われることをとても嫌がり、仕事に対して誇りを持っている。また、いろいろな人と会話できるだけの知識も豊富で誰と話しても会話が弾む有能な一面を持つ。
 一方で空と同様にコロシアイを仕組んだ黒幕や協力者には嫌悪感を隠さず、◯害を仄めかす脅しすら「黙れゴミクズ野郎」の一言で一蹴するなど豪胆な性格も併せ持つ。

【挿絵表示】

空に対して気にかけることが多く、頬を赤らめることも。
だが、「勘違いしないで」と、ツンデレのテンプレのような言葉で否定する。
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