星間企業の成り上がり   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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水耕栽培ビル

 超電磁砲を作る傍ら、水耕栽培の施設の建築は着々と進み、正方形の巨大なビルが建てられた

 

 ビル内部には自動化された栽培施設が広がっており、生育状況に合わせて機械が自動で収穫も種や苗の植え付けもしてくれる

 

 管理者は水の栄養状況や水量、肥料量の調整、光源の調整、機械のメンテナンスを行う

 

 普通農場は主に水耕栽培と相性が悪い根野菜や芋類の栽培に使われているが、それらの作物も空中栽培や土の代わりに培養液で満たした箱の中で栽培する培養栽培に切り替え、順次自動化させる予定だ

 

 そんな室内栽培ビルで一番力を入れられたのが中麦の栽培である

 

 コロニーの主食であり、ケッセルが改良を繰り返し、味と収穫量に拘った一品である

 

 ただ倒れやすいのが欠点であるがそこは空調が管理された室内であるため関係は無い

 

 1つの畑からの収穫量としては1.2倍程度であるが、ビルなので上の階に同じ施設を建てることができる

 

 基本室内栽培施設は12階建て(高さ約50m)で、2フロアは倉庫だったり機械のメンテナンスルーム、職員の事務仕事や管理コンピュータが置かれているため実質10フロアが栽培スペースである

 

 外で育てるのだと同じ面積で1に対してこちらは10フロア分なので収穫量も約10倍となる

 

 まぁその分だけエネルギーや肥料、水等のコストがかかるが

 

 そのコストを差し引いても利益が出る

 

 ニューアースから他の星への輸出品の約4割は食料である

 

 他の惑星では穀物の生育に適していない土地だったり、食料が不足している星もある

 

 小規模なコロニーから資源、食料を買い取り、それをヤマオカが他の星に運搬する···これだけでも大きな利益がヤマオカに入るし、そのお零れをもって小規模なコロニーは成り立っている

 

 最も、AJ社コロニーでは人口爆発に伴う食糧不足が懸念されている為、たとえコストが上がろうとも生産効率を優先させる必要があるのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

「スロー、良く来たな」

 

 ケッセルは指揮官の1人であり、怠け者のスローを呼び出した

 

「うへぇ、指揮官、私は悪いことしていないよ〜」

 

「いや、別にサボっていたりしていることを問いただしたい訳では無い」

 

 そしてスローの次にチハナ・コウライが部屋に入ってくる

 

「邪魔するぜーケッセル指揮官」

 

「ん? チハナも指揮官に呼ばれたの?」

 

「スローもか? わからねーな繋がりが」

 

「2人を呼んだのは、人口が拡大したら後々コロニーを増やしたいと思って、その指揮官候補として呼んだんだ」

 

「コロニーを増やす? 拡張じゃなくて〜?」

 

「あぁ、新しいコロニーを作り、地下に高速鉄道とエネルギーを送る配線を最初から通していくことで後々の人口増加やAJ社内部で資源を完結させたい」

 

「うへぇ、大変なのはやだよー」

 

「指揮官、何年後の話だ?」

 

「まぁ最短でも5年後から建設を始めたいと思っている」

 

「5年かぁ···でも人口が増加しても室内栽培ビルが多く建築されれば問題無いんじゃないの〜?」

 

 スローの疑問は最もで、チハナもウンウンと頷いている

 

「確かに今のコロニーはまだスカスカであり、拡張の余地があるけど2つの理由から順次コロニーの数を増やしていきたいと思っているんだ」

 

「2つの理由?」

 

 ケッセルが言う理由とは、まずヤマオカに依存する経済状況の解決であり、他所と貿易できるのであるならコロニーを拡張していくのが正しいが、貿易ができないのならば拡張、産業の集中よりも個々の連携による分散型産業構造にしたいとケッセルは思っていた

 

 ヤマオカから万が一貿易の禁止をされた場合、他の取引しているコロニーも貿易禁止処置をされるかもしれない

 

 第二のワルキューレとなれれば良いが、住む人の生活水準を下げたくない

 

 なのでバックアップの意味合いや採れない資源を賄う為に新たなコロニーが必要だとケッセルは判断した

 

 そこで統治者として能力があり、かつ忠誠心があり、防衛と内政ができる人物を絞り込んで適任者がスローとチハナだった

 

 チハナは珍しく培養された自身の子供を可愛がって育てており、新コロニーの建築となれば離れ離れとなってしまうため、7歳のミズナという子が9歳になってから計画を進行させるつもりだ

 

「で、2人には再教育と統治者としての心構えみたいなのを勉強してもらいます! 補佐はスローがクズハ、チハナはミカに教えてもらって欲しい。2人は俺の補佐をしてくれているからコロニー運営についても詳しいからね」

 

「クズハです! よろしく」

 

「ミカです! ガンガン教えますよ!」

 

「お手柔らかに〜」

 

「よろしくお願いします!」

 

「抜けた職場の穴はこちらで埋めるから安心して勉強に励んで欲しい」

 

 こうして第二コロニー建築計画がじんわりと進み始めるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 〜ヤマオカ、ヤマオカ宇宙貿易会社執務室〜

 

「ワルキューレを切り捨てる時期を見誤ってしまったなぁ」

 

 ミソン·ヤマオカはタブレット型端末を操作しながら部下にそう話す

 

「シオンの奴と共謀しての計画やったが、予想よりもワルキューレを甘く見ていたってことやな」

 

 ヤマオカ副社長であるシオン·ヤマオカとはヤマオカの後継者の座を争うライバルであるが、ヤマオカも外部からは盤石と思われていたが、困った事態が発生していた

 

 宇宙海賊問題である

 

 宇宙連邦政府が瓦解してから宇宙全体で治安が崩壊し、旧宇宙コロニーを基地とした宇宙海賊が商船を襲い続けていた

 

 その宇宙海賊への対応として軍事費がかさみ、ヤマオカ社の経営状況を圧迫していた

 

 他にも各社が発行するお金の信用が担保されずに貴金属や物納での取引がされているため、レートが安定せずに、時に大損を出すことも多々あった

 

 ヤマオカに魅力的な商品があればよかったのだが、ヤマオカよりも力を持った会社などごまんと存在する

 

 ヤマオカはニューアースでは最大の会社でも宇宙全体では1惑星の完全支配もできていない三流企業でしか無い

 

 現在の社長であるヤマオカ三世は守りを得意とするが、会社を拡張するのは不得意であり、その情勢が15年も続いた為に成長が停滞し、成長しない企業などインフレ率的にじわじわの衰退を意味する

 

 そこでワルキューレを煽り、ニューアース内での勢力を広げるために火種を着火させて、各有力コロニーを借金で枷をハメて、資金繰りを悪化させ、債務超過させ事業再建という理由でヤマオカに吸収するシナリオを立てていたのだが、ワルキューレ社が各コロニーの攻撃だけに飽き足らず、反対派の粛清を開始したことにより、両名はワルキューレを潰す時期を見誤ったと感じた

 

 コロニーの人材が減れば減るほど立て直しにヤマオカから人材を吸い取られる

 

 ヤマオカも人口が多いとは言え、男不足かつ、学校を卒業した人材の多くを宇宙海賊対策や外敵対策で軍事に割り振られているため、一向に産業構造が変化しない

 

 人口爆発とエネルギー革命を起こし、人材の効率化を成功させたAJ社とは対照的である

 

「ワルキューレは潰さなアカン。ヤマオカの地上軍を投入をするか」

 

 ヤマオカは自ら煽ったワルキューレを本格的に潰すための軍を派遣することが決定された

 

 

 

 

 

 

 ワルキューレとヤマオカ地上軍との戦いは質量共に圧倒するヤマオカの勝利···といきたかったが、ワルキューレは徹底的な遅滞戦術と学徒動員による戦力のかさ増し、それにヤマオカは支援をしていたのに裏切ったと判断したために報復として自爆攻撃が横行

 

 ヤマオカ地上軍は想定の数倍の出血が発生し、ワルキューレは8つあった拠点コロニーをヤマオカに制圧する直前にヤマオカとの交渉材料に取っておいた戦略核爆弾を起動し、コロニーの非戦闘員もろともヤマオカ地上軍の主力を文字通り蒸発させた

 

 ワルキューレは焦土作戦を行いながらヤマオカの攻勢を頓挫させ、コロニー3つと各コロニーから連れ去った人員により総人口は2000名となっていた

 

 ヤマオカはニューアースにおける絶対的な軍事的優位をワルキューレにより喪失し、地上軍再建のために会社が傾く程の出費を強いられる

 

 それだけでなくヤマオカはエリートと呼べる熟練兵を失い、新兵ばかりとなってしまい、軍事力は大きく低下するのだった

 

 最もワルキューレはワルキューレ隊長のシニー·カタストロによる独裁が始まり、ボロボロとなった産業基盤と農地の修繕に力を入れつつ、真のニューアースの制圧に動き出すこととなる

 

 勿論核の使用というタブーを犯したことで各勢力は貿易を完全停止、ワルキューレの亡命希望者も射殺するという徹底ぶりで経済的に締め上げたのだった

 

 




次の大量投稿は月曜日を予定

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