財団調査隊   作:茶漬四郎

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隔離されたミレニアム
隙間録


 突然の連絡で最初は戸惑ったが、丁寧な受け答えについ心を許してしまい、主婦は約束の時間に玄関を開けた。敷地の外、親子開きの門扉の前に金髪の女性が1人で制服を着こなして立っている。

彼女は電話の相手が出てきたのを確認すると小さくお辞儀をした。その姿は動く西洋人形のようである。

長く相手を目にとらえないその動作に思わず惹きつけられる。

金髪の女性は挨拶を軽く済ませ、改めて軽く自己紹介をすると自身の身分証を表示した。

調査局の背後にはさらにいい巨大な組織があることが読み取れる。

その後、今回の本題に入り出すのだが、その内容は主婦の出身地に関することがメインだった。本人に直接聞き出さなくとも組織なら他にも調べる術があったはずである。その点に関して何か引っ掛かったが、特に深入りした個人情報ではなかったので快く回答した。

 

 話が親族との関係性の話題になる。

「連絡は取り合ってますか?」という彼女の問いに主婦は顔を曇らせた。

生まれ育った集落にはあまりいい思い出がない。忘れたい過去なのだ。

その説明を「空気」と表現する。

「具体的に何かっていうわけじゃないんですが、ただ外と空気が違っていたんです。」

「外というのは?」

「麓です。」

「何かいざこざが?」

主婦は左手をほおに当てて考え込む。

「明治維新か…その前か…」

郷土史にも載っておらず、口伝いもされていなようだった。

話を聞いた調査員は顔を俯き考え込むように鼻から息を吐いた。

彼女は「過去」が嫌いだった。記録を消してしまえば、全てがなかった事にされてしまうからだ。今を生きる我々に「忘却」はあってはならないのだと、思っている。

彼女は表情を変えずに話題を変えた。

「ご実家の方に連絡はされていますか?」

「いいえ。」

「よろしけば、その理由をお聞きしても?」

主婦は重い口をゆっくりと開いた。

「麓の人間と隔たりを感じていたんです。それが嫌で実家を出たんです。」

過去を切り離すということは過去を忘れるのと同じ意味である。自分の頭の中で何度も結論を考え直した。

「環境変えて、心機一転できてよかったですね。」

個人の意思を否定できなかった。2人の間に和やかな風が流れる。

主婦が「アリスさん」と初めて目の前の女性の名前を呼んだ。

「気になっていたんですが、カバンから見えているそのぬいぐるみは何です?狐と狸ですか?」

たぬきとは何のことだろうか。ああ、35Pのことか。

「これうちのマスコットキャラなんです。すこん部と35P。キツネとネコのぬいぐるみで、私が編んだんですよ。」

人形のような整った顔立ちがほぐれ、少女のような笑顔になる。

それを見た主婦は何かを思い出したように、自分が離れた山中の村についての噂を彼女にこぼした。

 




4月5日から本編です。

みこちゆっくり体調治してね。
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