財団調査隊   作:茶漬四郎

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「鬼」来客

 その日、「マンダリン」へと足を運んだのは鬼瓦という男だ。現在、東工地所の役員を務めているという。日焼けした顔面には年相応の濃い皺があり、表情を変える度にクッキリと現れる。肌とは正反対に真っ白な白髪は綺麗に整えられており、自己管理がしっかりとしている印象が受け取れた。

そこそこ上質なスーツもさることながら、襟元にキラリと光る社章が眩しく、それが戦い抜けてきた企業戦士であることを物語っている。

対面して話を聞いている日原は、鬼瓦の発言から東工地所が地方に多少の権力を有する企業であると判断する。彼は自身の無知を恥じるような言動で幾度となく質問を繰り返したが、その都度、鬼瓦の態度が謙虚なものになっていた。

それから彼は、財閥のひ孫会社にあたる東工地所は今の地位を得るために紆余曲折したかこがあったことを思い出話のように語る。そんな中で一件気になる案件があったことを話し出した。

「私達は昭和の年号から今でいう地方創生に力を入れてきたのですが、私が担当したクライアントのその後が気になるのです。」

「と、言いますと地方復興ですか。」

「地方分散、といった方が正しいかもしれませんね。人を地方へと流れるように地元の魅力を作り出す流れを考えていました。」

「ところが」と鬼瓦が一度区切る。

「契約成立間近で競合他社に負けてしまいましてね。名前も知らないような工務店に村は全てを託したんです。」

親会社で育ち、その経験を生かそうとしていた彼のことを考えると、苦渋を舐めるような出来事だったのかもしれない。

時代はバブルが弾け、日本経済が保守的な水平成長に乗り出した時期であった。その事と、顧客の心情を汲み取れなかったことが敗因だった、と彼は予想している。

「まだまだ青かったんでしょうな。」と自傷気味に笑う。

「今になってふとそのことが気になりましてね。過去の資料を引っ張り出してみたんですが、肝心なデータがないんです。」

「紛失されたということですか。」

「ペーパーワークでしたからね。データ移行のとき若手が誤って処分してしまったのかもしれません。ただおかしなことにインターネットで検索しても該当の村が見当たらないのです。」

日原はチラリと横を見るといつの間にかホイップクリームを口につけた35Pが座っており目があった。

地図アプリで早速確認すると確かに建物一つない。

記憶違いでは、という言葉を喉の奥にしまい込んだ。自身のモットーを思い出す。

ひとまず人を出してみて何かあれば儲け物、何もなければ新人教育の一環で一役買える。

日原は瞬時にそう考え、わかりました、と返答した。

「ご期待に応えられるかわかりませんが、調査させていただきます。」

 

 その頃、さくらみこはイチゴを失ったショートケーキを持って上司が話をしている応接室の前で聞き耳を立てていた。

「あのやろーみこのいちごだけ食いやがって。ステラステラ歌ってただけじゃねえかよ。」とさっきまで自分の式神に立腹していた。

しかし変態だと思っていた上司の意外と仕事のできる一面を見て、その怒りも鳴りを顰めた。

「ただの変態じゃなかったんだ。」

日原に対する好感度が少し上がった。

 

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