財団調査隊   作:茶漬四郎

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21世紀の残りモノ

 小林という青年は隠しきれない承認欲求を服装で表現している学生で、いうならば目立ちたがりな印象を受けた。しかしその純粋なまっすぐな瞳には、人間の真価は他者に評価されてこそという価値観があるように思える。

フブキとみこの2人は彼と話していると自分たちとの共通点がある一方ですでに自分たちが無くしたものがあるように感じた。

「自分今年入学したばっかで1番下っ端なんですよ。だから色々と雑用が多くて。」

ハハハ、と力無く笑いながら彼はいう。

「新人は大変ですよね。」とフブキは自分と重ね合わせて答えた。

「え、お姉さんたちも新人なんですか。」

「そうですよ。白上たちも配属されたばっかりで新人みたいなものです。覚えることが多くて毎日大変なんですよ。」

でも続けることが大事。続けたら結果がついてきてくるから、とフブキはニカッと笑って付け加えた。それを見たみこはここぞとばかりにおっとりとした声で入ってくる。

「学生さんにはね。自分よりすごいなって思える人にマウントを取れるようになって欲しいわけ。みこちゃんみたいな人に間違ってもマウント取っちゃダメだからね。」

「…何かあったんすか。」

「みこさん今算数のドリルやってるんですよ。近所の小学生に九九で負けたんです。」

味方だと思っていたフブキから突如恥ずかしい事実を暴露されみこは声を上げて叫んだ。

「フブさんだって2桁の掛け算ギリギリだったでしょ⁉︎」

「九九にないものは義務教育じゃないんです。」

小林にはみこが言い負かされたようにしか見えなかった。

彼はみこの名前を聞いていなかったので躊躇しながらみこさん、と名指しする。

「四則混合できます?」

「だからとんなよマウントを。」

内心小林は2人を羨ましく思った。見てくれている人がいるということがどんなに人を輝かさせてくれることか、そして対して自分はどうだろうか。

チラリと少し離れたところでスマホで通話をしている伊東を見る。何やら話をしているらしくその姿が「働いている大人」を具現化しているようで頼もしく見えた。

 

伊東は志村に現状を手短に報告すると、彼からの返答を待った。

「きな臭くなってきたな。」志村の冷静な声がマイク越しに届いた。

東工地所という企業の情報が少なすぎるというのだ。大企業のひ孫会社であっても、今の世の中少なすぎるということは考えられない。どうも彼の直感が赤信号を告げているらしい。

また、アリスの調査によれば、この地域を出たものは皆、身内に関心がないように感じられたというのだ。

「2、3人にしか話が聞けていないがな。」

「すごいじゃないですか。さすがアリス先輩。やっぱり村はあったんですね。」

向こうはスピーカーにしているらしく、彼女の下から上がるような声質が通話の主導権を握った。唐突な彼女の出現に伊東は驚いたがそれを悟られないようにする。

「どーも、アリス先輩です。出て行った人たちね、平成11年以降、連絡をとっていないんだって。」

「平成11年?20年以上前じゃないか。」

その間誰も不思議に思わなかったのか、と伊東は質問をぶつける。正直、彼は返答を期待していなかった。「知らないわよ。」の一言で一蹴されるものだと思っていたが、アリスの次の言葉に思わず固唾を飲んだ。

「被差別部落よ。そこ。住所は麓に、でも住居地は山の中に隔離されていたの。話をしてくれた人たちはあまり話したがらなかったわ。年号が変わってようやく新しい人生を歩むことができたみたい。」

 




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