財団調査隊   作:茶漬四郎

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スクリーン越しの会話

 事態が大きく動いたのは地域一帯がオブジェクト収容対象としての疑惑が浮上した時である。その功績は意外にもみこによるものだった。

きっかけは記念写真である。

「フブさん、その団子とツーショット撮ってあげるよ。」

「え、なんで。」

起動したスマホのカメラに映るフブキは昼間の撮影であったにも関わらず、背景は夜中だった。

不審に思った一同はカメラを周囲に回すとスクリーンには立派な村の外観が現れた。肉眼で見た時は未整備の土地であったはずである。

スマホに自撮り棒を装着し、リュックから半ん身を出す35Pに撮影係を担当してもらい、みこの視線に合わせて詳細を映し出す。

そこには建物や道、そして季節違いの残雪が確認された。

まるで昭和村を探検している気分である。

フブキは「VRゲームをしているよう。」と感想を口にした。そして風景を物珍しげに見つつ伊東とフブキは分担して読み取れる範囲で番地や表札をメモに書き出した。

雪は目に映るが一寸も寒くないことに伊東は不気味さを感じていたが、他の2人は思わないらしい。彼女たちの方が見たものをそのまま受け入れているようだ。

時折人が目の前を通り過ぎると心臓が止まりそうになる。

彼らは厚手のスウェットやコートを身にまとい、視線をまっすぐに歩いたり、他の人間と談笑したりと日常生活を送っていた。残念ながら会話の内容は聞き取れない。

「話しかけてみる?」というフブキの提案に伊東は否定的だった。

これがもし本部の動く事案であれば、いや、確実に動く対象なのだが、そうなれば不用意な接触は避けるべきであった。

見て受け取る感情は違えど、3人と1匹に共通する認識は、この村は年末の年越しを連想される場面であるということだった。

玄関に飾られた門松や干支が描かれたポスターが目立つ。日本酒の樽や行き来する人々の手にはアルコールの缶が握られている。伊東は彼らの持つビール缶のデザインに注目した。

現行のよりもシャープさのない、心なしか色合いの薄いデザインは懐かしさを感じた。

彼らの動きが目立ったのか、「もし」と1人の老婆が話しかけてきた。

接触はできる限り避けるべきだったが向こうから来たのであれば仕方がない。全てはハワワと慌てているみこに委ねられた。彼女は反抗するように「んー。」と子犬のような鳴き声を鼻から出す。

恨めしそうな上目遣いを伊東に送り腹を括った。

「こんばんは、おばあちゃん。」と頭ひとつ視線を下げる。

老婆は腰をくの字に曲げ、寒さから身を守るようにスカーフとニット帽をかぶっている。

彼女は「こんばんは」と優しく返してくれた。

「ご旅行ですか。」

「ええ、まあ、はい…。」

みこがそう答えると老婆は嬉しそうに微笑んだ。

「村の外から来てくれるなんて、嬉しいわあ。初めてのことだもの。やっぱりあの事業者さんたちは特別だったのねえ。」

「特別?」

「さあさあ、あと10分で年明けですよ。公民館でみんな集まっています。甘酒もありますから是非いらしてください。」

この時、みこのエリートセンサーがピンと立つ。

「旧暦のお祝いですか。」

ポン、と35Pが肩を叩く。それに合わせるように伊東が耳打ちをした。

「旧正月は2月だぞ。みこち。アホ毛交換しようか?」

「伊東、お前までみこにマウント取るつもりか。」

 

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