財団調査隊   作:茶漬四郎

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下にみこちがいるのみ

 調査局の3人は休憩を兼ねて乗ってきた車の中へと戻るとラップトップを立ち上げた。「マンデリン」にいる志村、アリスと上長の日原に報告するためオンライン会議用のアプリを立ち上げる。小さな四角の画面に3人の顔が映し出され、アリス以外の2人は背景をぼかさずにこちらからの報告を待っている。

映り方が分からないのか、日原は頭半分画面から見切れており、顔がズームになっている。反対に伊東達のいる車内はうまい具合に3人と2匹のマスコットが収まっていた。

こうして距離があるとはいえ、班の全員が顔を合わせると安心感があった。

 

一通りの情報を報告し終えると、日原は「一杯食わされたかもしれんなあ。」とポツリと呟いた。そして即座に話題を切り替えて心のモヤを飛ばし、次の指示を出した。

「本部へ連絡を取る。エージェントを送るから待機していてくれ。」

伊東の予想通り、やはり本部が動く事案なのだ。

共有で開かれたキャット欄にはみこの撮影した写真や動画がアップロードされている。

各々が好きなタイミングでデータを観察していると、志村が口を開いた。

彼の指摘したポイントは、画面に映る建物の外観だった。

昭和期から平成にかけての色褪せたようなものが目立つ。スリムでもスマートでもないずんぐりとした印象を受ける、という意味だった。彼が言い終えるとアリスが待ってましたと言わんばかりに声を吐き出し、顔をぐっとパソコンのカメラに近づける。

彼女の白い肌が、ぼかした背景に同化しかけた。

「写っている時計の時刻はみんな同じね。12時10分前かしら。」

みこが食い気味に返答する。

「でした!全然動いてなかったよ。」

唾を飛ばすな。

勢いよく口から飛び出した飛沫がパソコンの画面にスラック弾のように散布する。35Pはさりげなくそれを拭いた。

パソコンカメラにもついており、35Pの動きは画面越しの3人にもその意味が伝わった。

 

 会議休憩のためにフブキとみこの2人は車外へ出ると小林青年が歩み寄ってきた。その表情は少し晴れているように見える。彼はこれから帰宅するのだという。

「サークルたった今辞めました。」

意外な話にみこは「あで。」と首を傾げる。

「なんで。」

小林は少し考え思い口を開いた。

「みこさん、フブキさん。チームって何なんですかね。素人よがりで温度差もあって、人間関係もドロドロしてて、みんな気づかないふりするんです。活動って何ですかね。」

みこのアホ毛が風に靡く。

「それが社会ってもんだよ。やりたいことは個人でもできるし、無理して付き合うことないってわけ。」

「そうそう」とフブキも否定はしない。

「1人で立ち上がっていけば案外うまくいくもんだよ。そのうち人がついてくるもん。」

小林は意を決したように顔を上げた。

「僕も…僕もいつかお二人のように前向きに活動したいです。そしていつか、自分の納得するものを世に出します。あのお兄さんみたいにどっしり構えられる人になりたいです。」

あのお兄さんとは誰か、みこは車内から出てきた伊東に目をやる。

「あいつのことはやめときな。35Pの中でもヒエラルキー下だから。」

「でも35Pの中には上下はなく、下にみこさんがいるのみなんですよね。」

「何で知ってんだよ!」みこはガサガサになる程大声で叫んだ。

「35Pか?フブさんか?それ言ったの。」

まだ実家で飼っているわんちゃんより下なのはバレていないようだ。

小林はニッコリと笑った。

「あのお兄さんです。」

視線を伊東へやると彼はまっすぐみこを見据え、親指を立てた。ワナワナと小さき殺意が湧き起こり、かろうじて出た言葉が「あんま舐めてっと星街呼ぶぞ。」だった。

 

 そして小林は去り際、伊東達に残ったメンバーが撮影を始めることを伝えた。この情報に一同顔色を変えるのだった。

 

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