財団調査隊   作:茶漬四郎

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カメラを止めろ!

 小林から撮影が始まると聞かされた一同は全力で駆け出し、阻止するためにサークルの元へと駆け寄った。フブキとみこの2人は伊東について行ったという方が正しく、ぐんぐん距離を離されていく状況に体幹の根本的な作りの違いを思い知らされた。

 

 部長が伊東に気づき興奮した様子で、サークルの輪へと彼らを招いた。

「試しに撮ってみたらすごいんですよ!ホラ!村がある!」

この時伊東は機転を効かせなかったことを後悔する。何とか理由を作り、スムーズに学生達を危険から遠ざける行動ができなかった。

後に彼はこの判断で苦しむことになる。

息を切らしたフブキが伊東に耳打ちする。

「日原さんからの指示でエージェントが来るまで彼らに撮らせておけって。で、その様子を撮影しろって。」

吐く息が耳に当たる。

彼女のこの発言は彼らを実験台にするという意味に受けとれた。人命がかかってくるかもしれない状況に、伊東は確実な根拠を求めた。

フブキの手を掴みその手に握られたスマホを確認する。すると共有のチャット欄で確かに日原がそのようなコメントを残しているのが確認できた。

本部に1番近い上長らしい意見である。

学生らはすでにカメラを回している。出発した列車はもう止まらないのだ。

財団は残酷だが、冷酷ではない。この言葉を若き幹部候補生は飲み込むしかなかった。

 

 学生達は各々スマホを手に奥へ奥へと歩みを進める。彼らのリアクションは先ほどの自分たちより大きい。みこに自撮り棒を持たせ、セットしたスマホのスクリーンを覗くと、平成の寂れた村を歩く令和の学生が映った。

その様子をみこは「タイムスリップしたみたい。」と言った。

「白上、嫌な予感がします。」

フブキの自然と出た言葉に2人も同意する。

勘の鋭い女子大生が、村にあるすべての時計が止まっていることに気づいてしまった。この事に好奇心を持った彼らは行き交う人々と言葉を交わらせ、言われるがままに公民館の方へと進んで行った。

まだ伊東達はその建物へと行っていない。

得体の知れない緊張感が彼らの歩みを止めようとする。

 

 公民館には村長らしき人物と、立て看板があり、そこには「ようこそ、2000年」と書かれていた。

部長が村長に声をかける。

「こんにちは。」

「あ、ああこんばんは。失礼!スピーチの原稿を読んでいて気づきませんでした…。皆さんは麓からここに?」

「まあ、プチ旅行みたいなもんです。」

そう答えると村長の表情が明るくなる。

「そうですか!めでたいなあ。あと10分で新しい時代です!嬉しいなあ。やっぱり頼んでよかった!行政とも話をしてくれたなんて!」

「そのことなんすけど…」と口を開く部長を伊東は今にも止めようとした。しかし35Pに阻止される。

「今2024年っすよ。21世紀っす。時計もずっと止まってるし、これ何のイベントっすか?」

途端に村長の口角がゆっくり下り、視線も空中の埃が落ちるのを見るように下を向く。

そしてボソボソとなにかを呟き始めた。

唯一聞き取れたのは、「あと10分…」「こなかった。ずっと待っていたのに」と断片的なセリフである。

ゾロゾロと彼らの周りに人が集まり始めた。村長の視線はゆっくりと部長の持つカメラへと向けられる。

「なあアンタ、私たちが見えているんだろ!出してくれ!俺たちをここから出してくれ!」

悲鳴が響き渡る。

伊東は「撤収」と叫ぶと、全員敷地外へに向けて走り出した。

火事場の馬鹿力か、みことフブキは伊東よりも前を風のように走る。

リュックから落ちそうになるに虹縄先輩を掴み、彼も負けじと走り続けた。

 

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