支部を揺るがせたこの騒動は、調査局がオブジェクトの収容を完了させる少し前からことは始まっていた。ポケーとホゲータのように口を開けるみこは流石に遊びに行く余裕がないらしい。
「あの時、何か一言声をかけられたらなんか変わったのかな。」と覇気のない彼女の呟きに35P達はこぞって首を振った。
彼らの伝えたいことが少し長かったため、2匹が一枚づつプラカードを饅頭のような手に持った。
「結末は予想できなかったが、納得はできる。」そこにはそう書かれており、残りの式神達は親愛なる主人を慰めるのだった。
志村と伊東の2人は休む間も無く財団と共に森本遥香についての調査を行なっている頃、事務所にいるフブキとみこの2人は暗い表情で碁を囲っていた。2人の入局が決まった年度末、彼女達は急遽支部へと赴き面談を行うことになっていた。
しばらく調査局にいたので、久方ぶりに職場へと顔を出すのは気が進まない。職場の舐めるような目線が想像でき、気持ちが悪い。
「人気者じゃん。2人とも。」とアリスが茶化す。
「辞める手続き踏んでるのに最後の最後の話し合いたいって、引き留められるんじゃない?」
イタズラな表情を浮かべるアリスに対してフブキはチベット狐のように目を細める。
「そんなモテ方望んじゃ居ないっすよ。」
「嫌だよ〜みこ。かわいい女の子とイチャイチャしたいよ〜。」
みこの嘆きにアリスが満面の笑みで答える。
「アタシがいるじゃない。」
「硬いのは勘弁。」
「は?」
みこは殺気を感じて目線を逸らした。
刺さりそうな空気を破ったのは上長の日原だった。彼はクルクルと車のキーを手で遊ばせながら面談に行く2人を迎えにきたのだ。
彼はガハハハと笑い、一同に対して口を開く。
「辞めるって決めているのに話し合いを設けるなんて、別れた後にあってくれって言ってるようなものだからな。」
そして真顔になった。
「本当に誰も来なかったぜ。」
「それ本当に付き合ってたんですか?」
「みこち、助け舟を沈めないの。」
今回支部から調査局へ移るフブキとみこは移籍という形で自身達の支部でのキャリアを断つことになる。いわゆる転職と同じなのだ。
籍を抜くため、退職という形を取り、再就職する形式で調査局へと入局するのだ。なので本来は有休消化等精算されない事柄に関してしっかり考えた方がいいのだ。この点、絵描きの海賊は何か的確なアドバイスをしてくれるのではないか。
2人は改めて今の状況を見直す。
異動では無く、移籍であること、縁を切るにあたって引き留められるかもしれないということ。
アリスから彼女達にアドバイスが送られる。
「何を言われても意思を変えないこと。辞めるならそのことをしっかり伝えるの。」
その言葉に小さい首をうなづかせる。
勇気の出たフブキはいつもの調子を取り戻し、らしくも無く悪口を言ってやろうとイキ込んだ。
「こんなタイミングで面談なんて、だからあいつら心が童貞なんですよ。」
みこはそんなことを言うフブキに内心驚きつつも冷静を装った。
「フブさんでてるよ。黒いとこ。」