財団調査隊   作:茶漬四郎

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前途多難な昇格試験

 時は少し前まで遡り、みことフブキの昇格試験まで戻る。この試験は新人最後の晴れ舞台であり、多くの人員がこれを機にこの職場を去っていくという。この時2人は久しぶりに顔を合わせたのだが、お互い疲労のせいで正気の無い顔をしており内心驚いた。そしてこれから先、数ヶ月に及ぶ試験の準備があることを予期し、更なる重圧を科せられる未来に静かに絶望するのであった。

支部としてはみこよりもフブキに期待をしているようであり、説明会で会った人事部たちの鬱陶しい熱い視線が脱毛症を加速させようとする。試験は1次と2次で行われ、最初に筆記と小論文の試験があり、合格後に面接を行うという。合否が分かるまで8ヶ月、うち6ヶ月を準備期間とするというのだ。

「その間の業務量は調整するように伝達するからね。」というありがたくも無い気遣いをもらい、説明会は終わった。

帰り道、2人は不安をかき消すようにストロング缶を開けた。

「コレさー。レッドブルじゃ無いからさー。もうめっちゃキマるってわけ。」

みこの発言にふにゃふにゃと酔っ払ったフブキは訳もわからず爆笑する。

「ふぶさんテンション高いにぇ。」

「よっぱっぱですからね!」

その声は空高く響き、彼女の無邪気さが戻ったような気がした。

 

 次の日から森本という指導役の女性が2人についた。彼女がまた癖のある人物で芝居掛かった意地の悪さが目につく。役職が一つ2人よりも上なので順当に行けば自分たちの未来の姿なのだと思うと、みこの頭痛が悪化した。彼女のように自信満々なキャリアウーマンと顔を合わせるのはみこだけではなく、フブキにとってもストレスらしい。波長が合わないし、なにより自分たちのペースが大きく掻き乱されるからだ。

十円ハゲができるのでは無いかと本気で心配しだした。

筆記対策は各自、先輩たちから過去問をもらうとして、難しい小論文から対策を練ることにする。

内容は1200字程度、過去実績と今後のヴィジョンについてだ。

「小論文って書いて終わりじゃないの?」とみこがフブキに声をかける。

「そうですよねえ。この文字数大変ですけど再提出くらってもいいようにいくつかネタを用意しましょうか。」

それから一時間ほどして彼女たちは森本に急かされるように手書きの用紙を手渡した。

森本は用紙に書いた文章を目で追い、首を傾げながら時折小馬鹿にしたように口角をあげて笑みを作る。そして赤ペンで大袈裟すぎるほど音を立てて何やら書き込むと2人に戻した。

第一声は「コレでいいと思ってる?」だった。

フブキは意味が理解できなかった。

それを見て満足そうに目を光らせた。

「そうね。自己主張が足りないかな。自分がやってきたことをもっと考えて深掘りするの。この内容じゃ弱いわね。もっと野望を出しなさい。」

「つまりどういうことでしょうか。」

「自分で考えなさい。いい?ここに書くことはね。一言一句丸暗記するの。題材は年毎に変わるけど大体同じ。だから何がなんでも全部覚えるの。」

そしてチラリと視線をみこへ移す。

「さくらさんは論外。」

バッサリだった。

「1200字って言ったらピッタリなの。8割埋めているようじゃダメ。読んでもらう人に失礼だと思わない?」

そう言い終えると吐き捨てるように次の言葉を言い放った。

「私の時給も考えて。お金が発生してるの。」

その発言にムッと来たフブキは声を抑えて噛みついた。

「しかし白上もみこさんもここに書いたこと以外やってきていません。」

「なら作りなさい。」

「へ?」

「いい?どんな嘘でもどんな理想でも、言ったもん勝ち。だって確かめようが無いんだもの。言い続ければそれが事実になるわ。」

森本はまるでこれが真に正しい考えだと疑っていないようだ。

組織の不正はこうして作られる。

やりたくねえ、なりたくねえ。管理職なんてもってのほかだ。

みこは声に出せない思いを胸の奥にしまった。

するとお腹がなった。

 

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