財団調査隊   作:茶漬四郎

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事務員はなんでも知っている

 支部に早く着いた3人は古株の事務員、岩崎に案内されて待合室へと通された。彼女はフブキとみこを入所当初から知っており、親のような立場で面倒を見てきた。間近で苦楽を見てきた彼女は暖かい笑顔を向けて再会を喜ぶと、「調子はどう?」と尋ねる。

彼女のような人材なら、今の2人がどういう状況なのか既に耳に入っているだろうに。

「移籍が決まりました。」とみこが答えると、岩崎は丸い目を輝かせた。

「あら!おめでとう!」

「そんでもってこれから面談ですよ。何話すかわかんないけど。」

フブキは不機嫌だ。彼女は足音がするたびにキョロキョロと辺りを見渡し、顔を合わせたく無い人が通らないか注視している。

そんな心境を察した岩崎が落ち着かせようと3人に飲み物を差し出した。使い捨てのプラスチックコップの中には乳白色の液体が七部目まで注がれており波打っていた。

カルピスのような見た目に、ジャスミンのような香りがする。

「コレなんですか?」

「なんだろうね?ウォーターサーバーから出てくるの。みんな飲んだら頭が冴えるんだって。」

いつもだったらお茶かコーヒーが出てくるのに随分ハイカラなんだなとみこは思った。

「モッチー知ってるでしょ?」

「あの禿げててみんなのサンドバックになっていた。」

「そうそう。あの人が罰ゲームで飲んだの。そしたら英語がスラスラ分かるようになったんだって。説明書きが何もなくてみんな飲まなかったのに、それからガブガブ飲み出しちゃって。」

そのモッチーという人物は調子に乗ってTOEICを受けたらしい。結果は500点と単語は完璧だったが、リアリングには対応していないらしい。

話を聞いていた日原は受け取った容器を見つめ、香りを嗅いでみた。確かに様々なアイディアが頭に浮かんだが、彼はどれも興味を示さなかった。

平凡だ。

ウォーターサーバーへ目をやると、上部に設置されたタンクには、まだは乳白色の液体が残っている。不思議なことに中央部分から時折波が広がっているのが見てとれた。

何か沈んでいるのだろうか。

すると日原のケータイが鳴った。

彼が通話のために場所を変えようとすると同時に、みこは面談室へと呼ばれその場を去った。去り際、上長と部下になるであろうピンクのエリート巫女は、ピッと指2本を立ててお互いの健闘を祈った。

 

 電話の相手は志村からだった。

「今、森本遥香のアパートにいます。」

「ああ、例の。どうだった。」

「伊東の情報網はすごいですよ。確かに支部に在籍している職員でした。本人はしばらく不在のようです。」

「狐っ子とポン助の指導役か。」

「ポン助?みこちのことですか。そのようです。詳しいことは分かりませんが、休暇中らしいですよ。財団の人間がすごい勢いで捜査網を広げています。分家とはいえ、身内にも容赦ないですね。」

日原は少し考える。

「考えたくはないが、その森本が我々に恨みを持っていてオブジェクトを購入したという可能性はある。」

電話越しで志村は驚いたようだ。

「何か心当たりでも?」

彼は冷静に聞いてきた。

「ウォーターサーバーがあるんだよ。支部に。商品リストにもあっただろ。」

「本当ですか。」

「昨日の今日だろ。だから胸騒ぎがするんだ。もしそうなら、すでに何人かに影響があるかもしれん。」

しばし志村は沈黙する。

それから「助けになるかは分かりませんが。」と向こうのほうから沈黙を破った。

「森本の日記を見つけました。なかなかのものです。スキャンしたやつをメールで送るので一読お願いします。」

 

 

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