財団調査隊   作:茶漬四郎

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友達の友達は他人

地元の大学に通う円香と言う女学生は民俗サークルに所属している二年次だ。

彼女が「マンダリン」へやってきたのには理由がある。同じサークルに所属している親友の年ノ瀬直美を探してほしいというのだ。

フブキは対面したとき、彼女の目がイキイキとしていたことに違和感を覚えた。

調査局へ依頼を持ってくる人間のほとんどは、公的な組織から相手にされなかった場合が多く、理解されにくい個々の事情を抱えている。しかし円香はまるで宝探しをしている少女のように輝いていた。

対してみこは、相変わらず目のハイライトが消えている。いつもの燦々としているエメラルド色の瞳が毬藻のように黒い。木の葉の里のヤマトのように、表情のないまま口をただ動かしているだけだ。

フブキは円香の話に耳を傾ける。

一緒に「異世界エレベーター」の都市伝説の調査をしていた直美は二日前から連絡が取れなくなったという。どうやらサークルの出し物である月刊誌の記事に、結構攻め込んだ内容を載せようと考えていたそうだ。うまくいけばコミケで展示する魂胆だった。

フブキからしたらこうも早く自分の資料が役に立つとは思っていなかったので、内心ふつふつと充実感がわいてきた。隣にいるみこにスッと自作の資料を読ませる。

コレコレ、と指さす姿が可愛くもうっとおしい。

「それと関係があるとかはわかりませんが。」と円香は話の続きを始める。

「最近変な人につきまとわれていまして。」

「にぇ」風向きが変わったのか、みこは仕事モードに戻る。

「同じ大学の大宮菊次郎と言う学生なんですが…。直美の後をよくついてきて構内でもよく会いますし、SNSでも同じグループに入ってきたり、コメント残してて。」

「さすがにそれだけでつけられているとは…。」フブキも困惑している。

若さゆえ、自分が物語の主人公にでもなったと思っている年ごろなのかもしれない。このタイプは周りの環境に変化を求める事が多く、つい自己中心的になってしまう。何もないところで何かある、と感じてしまうのだ。

 一方話を終えたフブキは違う視点を持っており、都市伝説の関わる点で物事を見ている。

F.O.A.Fの流れで、アノマリーに関する事柄が都市伝説と言う形で広まってしまったら、という仮説を確かめられるかもしれないのだ。

友達の友達から広まった話は、既に地域の学校まで広まっている。そしてある学童からは、話を広めた友達が行方不明になったという証言を得た。ただしこれが本当かどうかは確かめようがない。友達の友達も、その友達の友達から聞いたからだ。

ただ一件、フブキが目にしたものがある。それは配信者のライブ配信だ。

投稿者はライブ配信にて実際にエレベーターに乗り、異世界へ行けるか実証したのである。だが肝心なところで通信状況が悪化し、生放送は終わってしまった。今残っているのは有志が録画したものをアップロードしたものである。

調査を引き受けた彼女たちに、円香は一つ、要望を出した。

「記事にしたいので、ついて行っていいですか?」

フブキとみこの二人は思わず顔を見合わせた。

 午後になり、日も一番高くなったころ、志村は大宮について調べていた。

上京したばかりのこの青年は、年ノ瀬とは対照的にすぐ見つかった。今時珍しいウェーブのかかった茶髪に、中性的な印象を受ける。

どうやら宗教勧誘に遭っているようで、適当に相槌を打っては早く立ち去りたい様子だった。

話かける前に情報屋から共有された話を整理する。

「年ノ瀬さん見つからなかったでな。」

アパートの管理人や大学のゼミ仲間から話を聞いたが、所在は確認できなかった。特に今日はゼミの発表会があり、無断で欠席するのはおかしいのだという。

「二年次だろう?もうゼミやってるのか。」

「知らんがな。」と一言。

「そこは大学によるんじゃない。」

その他にバイト先やよく顔を出す場所にまで足を運んだ。

「お泊りしているのかもしれんしな。でも今探せる範囲は全部だめよ。さすがに実家に帰っていたらすぐには連絡つかんかもなあ。」

前日には友人と遅くまで食事をしていたらしくそのまま帰路についたと思われる。つまり行方がわからなくなったのは今朝からだということだ。

 志村が友人を見つけた演技をして大宮から勧誘者を離す。この手の勧誘は悩んでいる人物を見分けるのが上手い。懐に入り込み、やわらかい口調で救いの手を差し伸べるのである。

もっとも今の青年は、志村が見ても負のオーラが漂っているように見えた。

志村の制服を見て安心した様子の大宮は、勧誘から解放されたことに礼を言った。

「悩んでいたようだね。俺でもわかったよ。」と志村が言うと彼は恥ずかしそうに頭をかいた。

「実は君を探していてね。」

「俺をですか?」

「忘却クラブっていうのも知りたいんだ。」

「え?」大宮はキョトンとした。

彼から話が聞けそうだった時、背後から聞き覚えのある高い声が聞こえた。その濁点をつけたような声の主は今朝から顔を見せていない、さくらみこのものだとすぐに分かった。

「ストーカーだ!見つけたぞ!」

 




あくたん…マジかよ…
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