財団調査隊   作:茶漬四郎

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落とし物

 V市に住宅を構えてる社長一家は、事務所兼住居を一体化させることで理想的なワークライフバランスを目指していた。

華々しい人生の通過点をアリスは冷めたような目で見ている。金もあり、地位もある。あとは家族を作り上げていくだけだった一家に何が起こったのか。

 伊東と共に屋内へ入ると、電気はつけられず、カーテンの隙間から差し込む光だけが唯一の光源だった。懐中電灯をつけお化け屋敷の探索のように歩みを進める。

 A子の部屋には傷ひとつないランドセルと使われていない勉強道具がまるでゲームのオブジェクトのように埃を被って置かれていた。

母親が使っていたであろう家計簿には、子供の今後が記されている。

「やはりスマホの金額が気になるなあ。新機種はいつも高いや。」伊東はぼやいた。

社長の仕事部屋には、ホワイトカラーらしさがあり、物をあまり置かないシンプルな印象を受けた。しかし現場職と接するためか紙媒体も置かれており、室内の一角に小山を作っている。伊東はその中から作業員の一覧と下請けのリストを写真に撮り、少し考え込んだ。

 

新築の広い住居なのかそれとも流行りなのか、ここにはストレージルームが存在する。引き戸を引いてみたが立て付けが悪いせいで開かなかったため調査を後回しにしようとした。2人がその場を離れようとした時、中からコトンと何かが落ちる音がした。

アリスは目配せをして伊東が引き戸を蹴り付けた。2回蹴ったところでスライド扉がガタンと外れ、2人は室内へ侵入する。45オートを構え、左右の角に沿って歩みクリアリングを行った。

お互いがクリアを確認すると、注意深く室内を見渡す。

音の正体を発見したのは伊東だった。桜のステッカーが貼ってある自撮り棒が奥の方に落ちていた。

一方のアリスは床に毛玉が落ちていることを発見する。

それは尻尾だった。意を決して下段の棚に態勢を床に近づけてみてみると、尻尾の持ち主と目があってしまった。

それは白上フブキだった。

彼女が固まってアリスを凝視している。

フブキは腰の抜けたようにワタワタと急いで這い出てきてアリスに抱きついた。

「汗くさかったらごめんねー」と小動物のように泣きついている。そんな友人をアリスはクシャクシャとペットのように撫でていた。

その場面の傍、伊東は天井を見上げる。真っ黒なその先には強い光を照らしても、一切闇が晴れる様子はない。

深淵を見上げている自分はまるで深淵から見下ろされているような、不気味さがあった。

 

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