財団調査隊   作:茶漬四郎

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SCP-480JP 未だ保護できず

 後日行われた財団主体のH公園実地調査ではオレンジ色の制服を着た職員を中心に実行され、それと並行して三咲の保護も行われた。

伊東が作成した歩行ルートとみこの証言も活用され、一団は容易に彼女を見つける事ができた。機械的な言動が目立ったが、友好的な態度であると連絡を受ける。

しかし保護対象が公園から一歩外に出た瞬間に全ての参加人員に異常性が発生した。行方不明者も含めた人的損失は17名に上り、姿が確認されたものはすぐさまその場で終了する処理が行われた。その他、空中ドローンの消失、落下が確認され、敷地外にいた人員及び装備には被害が皆無であった。

直後に終了された勇気のある職員の手によって三咲が園内に戻ると、異常性が無くなったことから、少女は公園の中心であり、新たなる収容プロトコルの作成を急がなければならなかった。

 

 事務所の屋外で煙草を片手に事の流れを伊東に伝えた志村はシュパッと火をつけた。伊東もつられて一本吹かす。

「珍しいっすね。こんなに早く情報が流れて来るなんて。」

フーと志村は重い煙を吐き出す。

「みんな二人に感謝していたよ。」ルート作成の事と、みこと35Pの体を張った調査のお礼である。

「律儀ですね。」と伊東。

志村は首を左右に倒してストレッチすると三咲についての話を始めた。

「やっぱり生きてる限り人は成長するってことだな。」

「なんです急に。」

伊東の吐いた煙が甘く周囲に漂う。

「三咲ちゃんはきっとつけ込まれたのさ。子供のまま過ごしていたいって心に。みこちゃんフブちゃんと周囲の大人たちがいたのにさ。プレッシャーでいっぱいだったんだろうな。」

「永遠に子供のままで遊び続けるっていう夢は最悪の形で叶えられましたけどね。」

「結構ブラックだなお前。」

室内からみこの雪崩のようなうめき声が聞こえてくる。「何してんだ?」と志村。

「報告書の作成です。フブキもみこも元いた職場にいたくなくて理由をつけてここに来ているんです。アリスが指導していますよ。スパルタのネ。」

その光景が容易に眼に浮かんだのだろう、志村は小さく笑った。声の高いおじさんのような悲鳴はフブキだろう。

彼女は公園の階段から落下してストレージルームにいたらしい。

「次元までグチャグチャとはね…。驚いたよ。」

そこから約一日その場に引きこもっていたのだ。付近を急ぐ足音が聞こえていたらしく、孤立無援だった彼女は応援要請を含めた、音を立てての行動がとれなかったのだ。

「あの二人…」と志村は神妙な顔をして煙草を口にくわえた。

「うちに引っ張って来れないかな。」

「え」と伊東は夢でも見ているかのように思わず声を出す。

「人を引き寄せるし、案外面倒見いいじゃないか。あそこにいるのはもったいないよ。」

ニヤリと伊東ははにかんだ。少年の様な瞳が眼鏡越しに映る。

「推薦書、誰が書くんです?」

「俺が書くさ。アリスに手回ししてもらってな。」

「署名活動なら任せて下さい。集めて見せます。」

「頼もしいね。」

そういうと志村は燃えた煙草の灰を地面に押し付けて、室内へと戻っていった。

 

 気が付くと窓の外は真っ暗だった。定時を5時間も過ぎてもなお、みことフブキは本来の職場でデスクに向かって調査報告書と事後報告書の作成をしていた。内容のほとんどは訂正が加えられてあとは細かな部分の修正があるのみだった。アリスに見てもらった部分と、加山係長に見てもらったものとではその出来に天と地ほどの差があるのはみこでもわかった。大きな組織に属している人間の報告書はどこかフラットな印象を受け、特にその文量に固執している傾向があった。カタカタとパソコンを打ち、エクセルにて文字数と行間、そして文字のサイズを微調整する。

この作業には残業代が付かない。

一足早く作業を終わらせたフブキはプラプラと足と尻尾を揺らせて余裕そうにみこを見ている。その姿にみこから小言が幾つか発せられたが彼女は「だって白上労災おりるんだもーん。報告書の量だってみこさんほどじゃないですから。」と反論する。

「あと、明日から傷病休暇なんで。」

「みこだって転んでケガしたのに…」

多少の治療費と絆創膏が支給された。

「白上たち置いて行ったじゃないですか。」

じっと瞳の瞳孔からみこをとらえ、思わず気まずくなる。そんな同僚の反応を見たフブキはクスっと笑みを見せる。

「探しに来てくれたのでチャラにします。」

ニヒヒと笑い、デスクの中から桜のデザインの自撮り棒を取り出して、みこに見せた。

「あ!みこの自撮り棒じゃん!よくみこのだって覚えてたね」

「忘れませんよ。」と白狐。

この棒が落ちてきたおかげでフブキはアリス達に保護されたのだ。フブキはストレージルームにこもってからと言うものの、家の中では歩き回る足音が頻繁に聞こえたという。トントン、という軽いステップとシーハーシーハーと言う息遣いが平衡感覚を狂わすほどの恐怖を植え付かせた。

「シーハーシーハーって…センシティブだな」

「何でです?」

キョトンとした表情が一転、ジトッと鋭くなる。

「さては白上の事エロ狐だと思ってますね?」

「え」

「え?」

「え?」

ジッと見つめ合う二人は自撮り棒の受け渡しをした後、無言の仲直りをした。みこは手元に移った自撮り棒を見て何かが落ちたような寂しさを感じつつ、机にしまうか迷う。

「結局渡せませんでしたね。」とフブキ。

「んん?」

「写真ですよ。三咲ちゃんにスマホもらったら送るって言ってたじゃないですか。」

「ン」

「みこさんはあきらめちゃうんですか?」

「ンン」

「それしか言えんのかい。」

「フハハッ!ごめんごめん‼みこ今脳死してた」

二人しかいない事務所に和やかな笑い声が響く。彼女たちの周辺以外に照明は無く、孤立しているようだ。

「白上はまだあきらめていませんからね!全部。まずは一つずつ乗り越えてきます!」

そういった彼女の眼は涙でぬれていた。曰く笑い泣きのせいだと言うが、みこはあえて深く是言及しなかった。

「みこさんはどうなんです?」

「みこ?」

まだ考えがまとまっていない彼女の代わりに、フブキは話し続ける。

「白上、アリス達が来てくれた時本当にうれしかったんです。ずっと一人で出るに出られなかったので、知らない人がウロウロしてて、そしたら急に駆け出したんです。怖かったんですよ。その後で二人がやって来たんです。」

「お疲れだったにぇ」

「ハイ!だから今度は白上が皆を助ける側に回りたいんです!三咲ちゃんの事だってあきらめていませんよ。」決心するようにそう言うとフブキは改めて「みこさん。」と彼女の名を呼んだ。

「みこさんはどう思っていますか。鈍くさいのは知ってます。」

「あれれ、フブさん急に殴ってくるやん」

「鈍みこさん。」

「ドン・小西みたいに言うな。一応21世紀生まれなんだぞ。」

目線だけを手元の自撮り棒に落とす。しばらくすると何かが切れたようにみこは「フッ」と笑って椅子にもたれかかる。

ギギギ、と音を立てて椅子が軋んだ。

「推薦書、書いてくれる人探さなきゃなあ」

その言葉にフブキの表情が晴れた天気の様にパァと明るくなる。

「じゃ!白上は終わったのでお先に帰ります!お疲れ様でしたー!」

「待ってフブさん!みこまだ残ってんでぇ」

「明日から傷病休暇で3日間いません!」

ガチリ、とみこはフブキの腰を掴んで抱き着いた。

「フブさぁん!みこ達今までツートップでやって来たじゃない!フブみこの絆を見せてやろうよ!」

「知らんわい!」

拒絶されたみこはグリグリとフブキの尻尾辺りをモフモフ、フカフカと頭を押し付ける。

「クンクンクンクン」

「やーめーろ。わかりましたから離れて下さい!もう11時になりますよ!」

感動のあまりみこは泣き出した。隣に人がいるだけで不思議と勇気がわいてくる。書面上では深夜前に報告書を書き終えたみこは誤字脱字が無いかを確認し、形だけ丁寧に加山係長のデスクへと置いた。

バチンッと離婚届を用意した嫁の様に勢いよく音を立てるが、後に位置を修正する。

「みこも明日休もうっと」

「有給取れるわけないでしょ。」

「だから仮病だよ。フブさん」

フブキは思わず噴き出した。悪くなったね、と小さい声でつぶやく。

帰り際、みこは自撮り棒を忘れずにリュックの中へしまった。惰眠を貪っていた35Pが目を擦りながら、その行動を不思議そうに見つめる。

「ここにしまっちゃうと忘れちゃうからさ」

みこは自身の式神のレーズンのような目を見つめる。

「だからみこちゃんリュックにしまうの。これからも世界を見せてやるぜ!」

パチリ、と事務所の電気が消えて真っ暗になる。フブキの仕業だ。

「フブさーん!」

「早くしろ。白上はお腹が空いてるんだ。白獅子のラーメン食べに行きましょう。」

 




船長ライブお疲れ様!
…違う違う違う
シオンたん誕生日おめでとう!!
……違う違う違う違う違う
 


 ………グラコロ♫グラコロ♫
美味しかった
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