時折聞こえる少女の声を耳奥にしまいながら、みこと志村の2人は式神35Pの後ろを歩いていた。どこからかプラカードを取り出すこの猫に似た存在はそこに記された文字で意思疎通を図る。
連れてこられた先はいくつもある公園の入り口だった。入ってきたところとは違うが、同じ工事用のフェンスが設けられている。違う点は、フェンスとフェンスの間に何匹もの35Pが挟まっていたことである。
あるものは無表情に、あるものは虚無を見つめ、そしてあるものは泡を吹きながらぷらぷらと揺れていた。鉄の棒がプニプニの体に食い込む様子は式神でなければ苦痛で耐えきれなかったであろうと予想できる。
一方その他のものたちは地面にあぐらをかき、輪になって談笑していた。アイツはアイツと言わんばかりである。
「何をしているのだこいつらは」という志村の心情をよそに、みこは彼らに抱きついた。式神たちはパタパタを手を動かし嬉しそうである。
一番体を張っていた35Pたちはそれをみて何を思ったのか。黒い瞳からは想像できない。不憫に思った志村はプラプラと揺れるその体を1匹づつ救出し出した。
彼ら曰く、半狂乱になったみこを助け出すために動いたという。脱出できたのは火事場の馬鹿力ではなかったのだ。
「あーあ」「やっぱりね」と文句を言われるみこの姿は申し訳なさと嬉しさが現れていた。これが彼らの日常なのだ、と志村はしみじみ思った。
携帯が鳴り、和やかな再会に水を差すように志村が割って入った。
「みこ、一旦引くぞ」彼は短く言った。
電話口で伊東からフブキが保護されたことを伝える。相棒の無事が確認されていっそう表情を明るくさせた彼女だったが煮え切らない様子だ。
「A子ちゃんは、、、?」
失った3つのうち2つが戻ってきた。
今、風が吹いていると思ったのだろう。あと一押しで最後の一つを取り戻せると彼女は心のどこかで思っていた。短い間だったが、彼女なりに論理的に思考を巡らせ、全てを元通りにする術を考えていたのだ。
しかし、そんな考えも虚しく志村は「今は無理だ。」と答えた。
その回答はみこにはとても冷たく感じられた。
後日、志村調査書をもとに本部より人員が派遣され、A子救出作戦が始動した。彼女とのコンタクトはスムーズに行われ、保護も上手いこといったが、公園を出たところで重大なインシデントが発生する。
この事態により、対象の収集は永久的に禁じられた。
また、別件として社長宅にて発見された焼酎の調査が並行して行われている。