財団調査隊   作:茶漬四郎

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そのガレージは誰が建てたのか

 貴道氏の後を追う途中でみこは二階へと続く階段を見上げていた。赤ちゃんのように興味対象が次々を変化したわけではなく、空気が吸い上げられていくような感覚に引き寄せられたのだ。

突然フワッと手が動き、何かに掴まれたような気がした。その不気味さに我に帰った彼女は辺りを見渡し足元に35Pがいるのを目にとらえる。

こいつの仕業か。

みこはしゃがみ込み視線を式神へと合わせ、ジト目で迫る。

そしてパン生地をこねるように顔をくしゃくしゃにした後ほっぺたを左右に引っ張った。

「みこを怖がられようなんて100年早いぞ!でゃ!」

ドスの聞かせた声だが、圧がなかった。

 

 不思議なことにガレージは屋外の住居とは少し離れた場所に建てられていた。ガレージ前のシャッターではなく勝手口にいる貴道氏は、はたから見ても分かるくらいにイライラとしている。

「こんにちは」とみこが近づき声をかける。肩には35Pが腫れた頬を置いてみこと同じ視線の先を見ている。

あいさつに反応すると貴道氏は真っ赤になった顔をあげ、少し戸惑っているようだった。

「さっきの話聞きにきました。」

「ストーカーの件?私からは言えることは何もないよ。」やはり彼の回答は淡白であった。

みこがボランティアを辞めた訳を聞くと、小馬鹿にしたように嘲笑った。

「だってあれただ働きでしょ?社会の歯車になるのはごめんですよ。そんなことするためにこっちにきた訳じゃないし。」

どことなく違和感を感じてみこは首を傾げた。それから貴道氏は視線をガレージに移し、何も聞かれていないのに話し始めた。

「無線センサーを設置したんですよ。車に乗って少し動かしたらシャッターが自動で上がるような仕組みにね。でも設定がおかしくって。癪なんです。」

「自分で設定したんですよね?」

「まさか。バカな業者ですよ。」

夫人から聞いた話と違う。しかし今はそのことについて質問をする場面ではない。機嫌を損ねられたら35Pがいようとも恐縮し、彼女自身がちいかわのようになってしまいそうだからである。

 

 ウィーンとモーターの始動音がしだす。シャッターがひとりでに上がったのだ。

恐る恐るみこが中をのぞく。暗い室内には壁につけられたセンサーが点滅している。これが何かに反応したのだろう。

その他には自動車が一台止まっているだけだ。

状況を理解しようとすると今度はシャッターが降り始めた。思わず背後を振り返る。

「こ、これが誤作動ですか。」

みこは静かに貴道氏に尋ねた。

本人も静かにうなづき、「あ、ああそうだ。な?バカな業者だろう?」

屋外のセンサーはちょうどみこの真後ろにあり、車一台が完全にガレージから出庫できるスペースを確保していた。

 

 貴道氏の勤務態度について。

残念ながら、良い話はなく、相当な気分屋であったことが証言により分かった。気性が荒いため人望もなく、出世も望めないとのことだ。それは家庭内でも同様らしく、夫婦関係は常に悪かったという。

しかしそんな彼も亡くなる数日前には気味の悪いほど笑みがこぼれていたという証言があった。

周囲は株で儲けたのではないかと噂をしており、その様子から、とても自ら命を断つようには思えないと話す同僚が多数いることがわかっている。

 

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