異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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14.ペルージャの街

「あー、少しいいだろうか先生殿……」

 

 回復魔法の書の検証が終わったあたりで、ロイさんの方から声をかけられる。

 

「なんでしょうか?」

 

「いや、貴殿らの様子からして魔法の書の存在自体初めてなような気がしたのでな。魔法の書の存在を知らないというのも私としては気になる点なのだが、そこは敢えて聞かないことにする。

だが、どうも魔法の書について無知であるとお見受けする。ゆえに、報酬替わりと言っては何だが少し魔法の書について教示したいのだがいいだろうか?」

 

「それは願ってもない話です。報酬の一部として受け取りましょう」

 

 やはり情報は力であるから、情報が報酬と言っても俺は気兼ねなく受け取るだろう。この世界に関しては俺たちは知らないことが多すぎる。

情報の内容いかんによっては、護衛報酬の全てで受けてもいいぐらいだ。でも、一応一部という形で予防線を張るのは忘れない。

 

 ロイさんが語る所によると、魔法の書というのは俺が実際にやったように読むと魔法が覚えられる書ということで間違いないようだ。

基本的に読むと魔法が使えるようになるが、どっちかというと魔法を覚えるためのスイッチが入るというのが正しいらしい。

基本の魔法はすぐ使えるようになるが、発展させた魔法となるとそこからは術者の才能と努力次第ということのようだ。

魔法自体は努力で発現させることも出来るらしく、魔法の書はその道筋をショートカットするためのアイテムなのだとか。

その利便性からして結構なレアアイテムらしく、俺がさっと取り出したのに割と仰天したらしい。

更に言うなら、同じ内容の魔法の書であっても読み解く者との相性というのが存在し、読めるものと読めないものが存在するという情報を聞いたとたんにアリスの表情が輝いた。

あと、一度魔法を覚えるのに使った魔法の書は白紙の本になり、魔法を覚えれるようにはならないという。

うーん、アルが覚えれるようなら覚えさせようと思ったんだけど、それは無理みたいだな。まぁ、アルは回復魔法にさほど興味はないようだが。

キヴォトス人ってひたすらに頑丈だからなー。回復の必要性ってあんまり感じないのだろう。

 

「なるほど、貴重な情報でした。ありがとうございます。アリス、魔法の書が手に入ったら優先的にキミにあげるから。何か魔法を覚えられるといいね」

 

「はい! ありがとうございます先生! これでアリスにも希望が見えてきました!」

 

 ぶっちゃけ生物ではないアリスに魔法が覚えられるとは思えないのだが、そこは指摘してあげないのが優しさというものだろう。

その結果、全ての魔法の書の適性がなく、後でアリスが落ち込むことになったとしてもだ。

 

 その後、俺たちは何事もなく森を抜け、平野へと出た。平野に出てすぐの場所――とは言っても、距離自体はかなりある――に人の街があるのが見える。

 

「あそこが、ペルージャの街で、我々の目的地だ。あと少しなので頑張ってもらいたい」

 

「ようやく街につけるのね! こんなだだっ広い平原だと護衛も楽だし、あとは消化試合ね!」

 

「アル。思っててもそういうことは口にしないように。ちゃんと緊張感もって」

 

「わ、分かったわよ。確かにちょっと緊張感のない発言だったわ」

 

 姫殿下の護衛たちはいまだに護衛の緊張でピリピリしているのに、そこにアルの空気の読まない発言。

流石にこれに関しては先生である俺が注意すべき事項である。幸いアルも悪いとは思っていたのか素直に受け入れ謝罪する。

 

「とりあえず先触れを出すので、貴殿らは引き続き警戒をお願いする」

 

 ロイさんはそういうと一人の兵士が馬に乗って、一団から離れ街まで駆け出す。そうか、貴人というか王族が街を訪ねるわけだから先触れというのは必要なんだな。

リアル先触れを初めて見ちゃったよ。

 

 その後はとくに襲撃があるわけでもなく、何の障害もなく街の門にまでたどり着く俺たち。

アリスもアルももう戦闘がないと判断したのか、戦闘態勢を解除し馬車に続いて門の中に入る。

門には門番がいたが、よくある入場者の検査などをしている様子はなく、本当にただの門番と言った感じで立っているだけだった。

 

「おおおおお! まさしくゲームで見たようなファンタジーな街です! アリスは今! 猛烈に感動しています!!」

 

「ふーん、確かにまさしく中世ファンタジーって感じの街よね。ま、モンスターが出てきてた時点で今更だけど、本当にここ異世界なのね」

 

 それぞれ、街についた感想を述べる生徒たち。ついでに色々写真でも撮っておこう、ユウカへの報告に使える材料を増やしておかないと。

しかし、門に入るのにレールガンやスナイパーライフルの所持については特に咎められなかったな。

アリスのレールガンはともかく、アルのスナイパーライフルは火縄銃的な物がある世界観なら咎められそうなものだが、完全スルーということは銃そのものがない世界観の可能性がある。

もしくは逆に普及しまくってて今更銃ごときでガタガタ言うような世界ではないという可能性か。

 

「ここまで護衛ごくろうだった先生殿。正直、全て遠くから片付けて護衛というには拍子抜けだったが、貴殿らの実力は確かなようだ。残りの報酬について話し合いたいので、このまま同行してくれるだろうか」

 

「分かりました、お供します」

 

 どこかに駆け出そうとしていたアリスを捕まえて、ロイさんの後に続いて歩き出す。気持ちは分かるがまずはこっちの用事を済ませようねー。

ロイさんに付いて行ってたどりついたのは監獄、なんて展開はなく普通に豪華そうな邸宅だった。

王族――そういえばいまだに名前知らない――の滞在する場所だからやはりそれ相応に豪華なのは納得だが。

邸宅の門をくぐると、邸宅の入り口までにズラっと使用人らしき人たちが左右に並んでるのが目に入る。

その前に、馬車を横付けすると馬車の中から姫殿下がゆったりと降りてくる。

 

「ようこそいらっしゃいました! フェリシア殿下!」

 

 一糸乱れぬとはこのことか、一斉に姫殿下の名前を唱和する使用人たち。

ここに至って初めて姫殿下の名前を知ったがまぁ今後使うことのない知識だろう、軽く流すとする。

 

「ふおおおお! 本物のお姫様ですよ、先生! プリンセスです! 囚われの姫を助け出すことこそ勇者の本懐――」

 

「うん、アリスちょっと黙ろうか」

 

 これ以上喋らすと何言い出すか分からんので即急にアリスの口をふさぐことにする。

アルでさえ空気読んで黙ってるのだから、アリスも少しは空気を読んでほしいものである。

 

 とりあえず儀式じみた姫殿下の邸宅来訪イベントが終わったあたりで、俺たちは邸宅の中の別室に通される。

そこにはもう姫殿下はおらず、ロイさんと俺たちだけで相対していた。

 

「とりあえず、我々を救ってくれたことと、道中の護衛をしてくれたことを感謝する。これが残りと護衛の報酬になる、確認をお願いする。ちなみに先刻の魔導書に関する知識の教授分は引いてあるからそのつもりで」

 

 そういって、最初の時に渡されたのより大きめの袋をドサっと渡される。

というか、感謝するとか口で言ってるが、態度が全然感謝してる態度じゃない件。お姫様が傍にいないと態度があからさますぎるなこの人。

そして、肝心の報酬だが渡された時の重量から察するに、最初の時より多いなこれ。どれくらい入ってるんだろう。

 

「先生、私が数えます……。金貨90枚入ってますね」

 

 アリスは金貨一枚を取り出して持った後、袋自体を持っただけで中をほとんど見ずに枚数を断言した。

重量だけで判断したのか、そんな芸当が出来たのかとちょっと感心。

キリが微妙に悪いのは授業料の分が引かれてるということか。

 

「さて、では貴殿らと我らの関係はここまでだ。これ以上何か関係をもとうなどと考えてくれるなよ?」

 

 報酬を渡し終えたらこの関係は清算ということだろうか。まぁ、そっちの方がむしろこっちにとってはありがたい。

王族との関係などこちらとしても保持したくはない。断ることのできない強制的な”お願い”を聞かされることになるのはほぼ確定だからだ。

 

「いえいえ、むしろそちらの方がありがたいと申しますか、お金で関係を清算出来るなら私としても願ったりかなったりです」

 

 俺としては正直な思いを吐露しただけなのだが、それが気に障ったのかロイさんが片眉を跳ね上げる。

 

「ふん、ディーマンの主人だからもっと卑しい奴なのだと思ったがな。まぁ、金は払った。これ以上我らに付きまとうなどと思うなよ、迷惑だ」

 

「えぇ、こちらとしても同じ思いです」

 

 ロイ――もう敬称いらんだろう――の物言いにアルがカチンと来たのが雰囲気で分かったので、俺からもお返しをする。

しっかし、ディーマンとやらの嫌われっぷりは半端ないな。アルはキヴォトスに返してあげた方がアルの精神衛生上よかったりするのだろうか。

 ともかく、護衛イベントはここで終了。こっからはフリークエストの開始だ。

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