本文に実際と矛盾する表現がありますが
実際問題としてこの先生はドレスアコ実装前に飛ばされたので
矛盾はありません。
「なによあの男。お姫様がいなくなったらあの態度! しかもよりにもよって先生のことバカにして!! ああいうクライアントは今までもいなかったわけじゃないけどさ! それでも不快なもんは不快よ!」
邸宅を辞して俺たちの声が聞こえなくなるぐらいまで離れたらアルが憤慨しだす。
「ありがとうアル。私の為に怒ってくれて。でも、ひょっとしたら今後もこういうことは多いかもしれない。私がバカにされるだけなら構わない。でもアルがダメって言うならキヴォトスに一旦帰還してもいいんだよ?
幸い報酬は一杯もらったから、代わりの子を引くぐらいの余裕はあるよ」
「いえ、それはやめておくわ。そもそも現在1チーム作れるほどの人材もいないわけだし。ユウカが来ても3人よ? せめて部活の最低人員である4人を越えるまでは一緒にいるわ」
「部活か……」
アルの部活(?)は言うまでもなく、便利屋68。アリスはゲーム開発部でどっちも最低人員の4人の部活である。
ただ、俺としては部活よりもうちょっと人数の多い、前衛4人、後衛2人で構成されるチームを組みたいところである。
「じゃあ、一刻も早くチームが作れるぐらいの人数は確保しておこうかな。レッツガチャタイム」
「ちょっと、先生、後先考えずにお金使っていいの!? 私だからこそ言うんだけど、お金は大事なのよ!」
「大丈夫大丈夫。一番効率悪い時でも金貨1枚で40回引けるから。今は金貨119枚もあるし。ていうか、私だからこそってそれ大きな声でいうことじゃないからね、アル」
「で、でも。流石に商品の相場とかは調べた方がいいんじゃないかしら……? 金貨1枚がガチャでの価値が高くても、この異世界では低いかもしれないじゃない」
「そんなことはないと思うけど……。まぁ、アルがそういうならちょっと調べてからにしようか」
そういって俺たちは適当な露店に顔を出すのだが……。
「まずは両替商にいかないとダメみたいですね」
「うん、まさか金貨支払いを断られるとは思わなかったわ……」
そうなのである。そこらの露店で買い食いでもしようと思ったらどこもかしこも、「金貨はやめてくれ」と断ってきて買い物が一切出来なかったのだ。
「まぁ、お札があるわけじゃなくて、ジャラジャラと硬貨で売買をするわけだから、お釣りが大量に消える金貨は嫌なんだろうね。幸い両替商の場所は教えてもらったからまずはそこで両替しようか」
そういわけで、両替商で金貨を2枚ばかり両替することとなった。手数料として銀貨2枚分取られたが、買い物が一切できない今の状況を鑑みれば必要な出費だろう。
「両替して手元に残ったのは、金貨117枚と、大銀貨18枚、銀貨16枚、大銅貨18枚、銅貨20枚か。金貨1枚で1万ゴルドっていう評価が正しければ、銅貨が1ゴルドでそこから10進数で硬貨の価値が上がっていくと考えればわかりやすいか」
ゴルド換算すれば持ち金実に1,189,800ゴルドである。ここからガチャで1万溶かしたとしても誤差だよ誤差。
とはいえ無計画なガチャはこれからのリアル生活に支障をきたすので、アルの言う通り節制は大事だが。
「となると、露店の串焼きが大銅貨5枚とかだったから、金貨ってすごく高いわね……」
「まぁ、こういう中世は食料品が現代より安かったりするから一概には言えないけどね。でも、金貨が高いというのは間違いなさそう。というわけで、ガチャの時間だ!!」
月に3回だけ買える、マンスリーの青輝石を1セット購入。これで青輝石6600個。前回の余った800と合わせると7400個。10連ガチャを6回行って200余る計算だ。
「よっしゃいくどー!」
一気に60連! 回すぞ!!
そして、60連回した結果は――、
魔法の書:
支援魔法の書
光魔法の書
クレジット:
118,000クレジット
生徒:
アコ
シロコ
以上となった。魔法の書が2冊に、生徒が2人。上々の当たりと言えるだろう。しかし――、
「シロコはともかくアコかぁ……」
アコが問題生徒というわけではない。ゲーム中では人権レベルの会心バッファーなので、当たれば小躍りするぐらいの当たり生徒である。
だが、アコというのは先生への好意は確かにあるっぽいのだが、それと同時にゲヘナ風紀委員長であるヒナへの変態的執着の方が目立ってるいわゆる変態淑女的なキャラなのだ。
そもそもとしてヒナの傍を離れるのを嫌がる可能性がある。
そういう意味でも扱いにくいがもっと別な理由として、アコはいわゆる後衛に属するキャラで、正面からドンパチやるキャラではないというのもある。
そもそもブルアカにおける後衛の役割というのが、主に指令室などの安全圏から通信で命令を飛ばしたりスキル使ったりとかそういう役回りであるため、通信機器がスマホのモモトークに限定される現在ではその能力を十分に発揮できないという点もある。
特にアコはストーリー上でも指令室のような場所から命令を飛ばしている描写が多いので、この異世界で活躍させるのは厳しいと言わざるを得ない。
だったら、ユウカと交代してキヴォトスとの連絡係やってもらえばいいんじゃね? と諸兄は思うかもしれない。
だが想像してみてほしい、少しばかり好意をもった異性にガチャで自分を当ててもらい、一緒に冒険が出来るとワクワクしながら召喚されるのを待っていたかと思ったら「ゴメン、他の子と交代して連絡係になって」とか言われる状況を。
俺だったらキレ散らかす自信があるね。アコなら思いつく限りの皮肉と罵倒を浴びせてくることは想像に難くないだろう。
例えばこれがヒマリだったら説得はもっと容易だっただろう。なにせ、ヒマリは車椅子キャラだ。こんな不整地だらけの異世界で車椅子は生活するだけでも難儀だ。
なので、それを理由に連絡役を任せることが出来たというのに。
「アコ召喚したくねぇなぁ……。ていうか、一応はユウカを通じてキヴォトスに居る生徒に召喚に応じるか否かを聞けるんだから、聞いてみればいいか」
「先生ってなんかたまに口調おかしくなるわよね、異世界にきたストレスなのかしら……?」
おっと、アルから言われてようやく口調が崩れてるのに気付いたわ。気をつけねば。なにはともあれユウカに連絡を取ろう。
先生『ユウカ、今大丈夫?』
ユウカ『はい大丈夫です。何か進展でもありました?』
先生『ちょっと大きめのお金が入ったんで、生徒募集を行ったんだよね。で、そこでシロコとアコが当たったんだ』
ユウカ『シロコさんとアコさんですか。ふむ、実際に召喚する前に私に報告するということは何かしら問題があるということでよろしいでしょうか?』
先生『鋭いね、さすがユウカだ。いや、アコはちょっと前線での切ったはったがあまり得意じゃないからさ、異世界に召喚していいものかちょっと迷ってさ』
先生『出来うることなら、本人に召喚していいか確認を取ってほしいんだ』
ユウカ『まぁ、アコさんとは箱舟事件の時に知己を得ていますから連絡を取ることは可能ですが……。念のため聞いておきますがシロコさんの方は問題ないということでよろしいでしょうか?』
先生『うん、シロコはわざわざ確認取らなくても協力してくれるだろうから』
ユウカ『分かりました、アコさんと連絡を取ってみますね』
そういってしばらく連絡が途絶える。しばらくして再びトークが開始されるが、それはユウカからのものではなかった。
アコ『事情はお聞きしました先生。その上で言わせてもらいます。馬鹿ですかあなたは』
アコからのいきなりの罵倒トークである。
先生『あれ? アコ? まだ召喚してないのにトークできるんだ』
アコ『あの妖怪女……もといユウカさんの推察はすでにキヴォトス全土で共有されておりますので。先生の元に届いていないだけで、何度も先生にトークを送ることを試みてる生徒はいくらでもいるのですよ』
先生『そ、そんなことになってたとは……。それはそれとして馬鹿ってなにさ』
アコ『人材が致命的に足りないにもかかわらず、変に私に気を使って召喚しないという選択肢を取ろうとした先生が馬鹿でなくてなんですか』
アコ『さらに言わせてもらいますが、同時期にガチャで当たったシロコさんには気を遣わない癖に私に対してのみ気を遣うという、そのみょうちきりんな気の遣い方もムカつきます』
アコ『なんですか、私はそんなに頼りなく見えるんですか? そんなに先生に信頼されてないんですか? いくら私でも傷つく心というのはあるのですよ?』
先生『ごめん。気を遣ったつもりだけど、逆にアコを傷つけてたみたいだ。私が悪かったよ』
アコ『分かればいいのです。さしあたって召喚に関してですが私にも準備があるので、1時間後ぐらい後に召喚をお願いします』
先生『分かった、一時間後だね。シロコも同時に召喚するからその旨お願い』
アコ『では、一旦失礼します』
うーん、アコからの好感度が思ったより高い感じだから、アコを結果として傷つけることになってしまったな。
基本的に、生徒たちは全員先生LOVE勢だと思って接した方がまだマシかもしれん。