「Hey! Me と一緒に異世界 Adventure しないかい!?」
なんて言われて断る生徒は基本いねぇのである。(特別な事情がある場合除く)
主人公君にはその認識が足りてねぇのである。
そして、アコとのトークからきっかり一時間後、俺は大人のカードを取り出し二人を召喚する。
「来い! シロコ! アコ!」
流石に街中で召喚すると何もないところから人が現れることになるので、一旦街の外に出ての召喚である。
で、召喚したはいいが、二人とも結構な荷物を背負って現れた。
「よく来てくれたね、シロコ、アコ」
「ん……。先生の頼みならどこにでも駆けつける。取りあえず思いつく限りの補給物資を持ってきた」
「こちらは単体だけで機能する無線機など、キヴォトスのインフラに依存しないオペレート道具を持ってきました。ミレニアムのエンジニア部に無理を言って1時間以内で準備してもらいました」
「ミレニアムに? 別にゲヘナと不仲ってわけじゃないけど、よく他校の生徒の言うこと聞いてくれたね」
俺がそう感想を述べると、アコは思いっきり馬鹿にしたように半眼になる。
「先生には危機感というものが足りてませんね。今は先生が異世界に転移するという非常事態中なのですよ。箱舟事件の時のようにキヴォトス全土での協力体制が敷かれているのです」
「ひ、非常事態中か……。それはともかく無線機とかは助かるよ。流石に私が前衛で戦うわけにはいかないからね」
各人の分の無線機を取り付ける。よし、これでシッテムの箱と合わせて安全圏から指揮ができるな。
まぁ、ただの一社会人である俺に先生のような華麗な指揮が出来るかは疑問なのだが。
「非常事態ついでに、便利屋の社長さん? あなた方とは一時休戦ということで話がついておりますので。とはいえ、この世界でも何かやらかしでもしたらその限りではありませんが」
「ずいぶん失礼な物言いね。今まで先生を護衛してきた私の実績を知らないのかしら? 今後も先生の護衛はわ・た・しが引き受けるから。遠くから命令するだけしか出来ない行政官殿には出来ない役割ですわ」
「おやおや、さっそくイエローカードを配られたいのでしょうか? あまり調子に乗って後で後悔しないといいですね」
無線機渡すときは友好的っぽかったのに、それを終えたら喧嘩しだすアコとアル。
「二人ともそこまで。仲悪いのは知ってるけど、ここは私の顔をたてて、ね」
「先生に感謝することですね、アルさん?」
「そっちこそ、先生の優しさにむせび泣くといいわ」
喧嘩するなと言ったはしから、火花を散らす二人。ヒナが居てくれたら二人のブレーキになってくれそうなのになぁ。
ヒナ自身は便利屋に対しては捕縛対象以上の感情は持ってなさそうだし、アルはヒナに対してはビビリ散らかしてるし、アコはヒナの言うことなら聞くだろうしといいことづくめだ。
ただまぁ、ヒナを連れるとなるとまず引かなければならないというのもあるが、面子がゲヘナに偏りすぎるのが問題だ。
いや、誰を引くかは運次第だからそのことで俺を責められても困るのだが、トリニティ辺りから抗議が来そうだ。
「ま、それはともかく。はい、こちらはエンジニア部からアリスさんに。光の剣の増槽らしいです。補給が滞った場合に使えばいいとのことです」
「パンパカパーン! アリスは追加パーツを手に入れました!!」
アコが無線機だけとは思えない荷物を背負ってたと思ったら、光の剣の追加パーツ持ってきてたのか。ていうか、キヴォトス人でも持つのが困難な光の剣の増槽とかよくアコは持てたな。
まぁ、持てただけで運べるまではいかないのかもしれないが。
「おっと、これも忘れてました。パンパカパーン! シロコとアコがパーティーに加わりました!!」
アリスが嬉しそうに言葉を追加するが、アリスそれ好きだね。毎回やるつもりか?
「それで先生。私たちは何をすればいいの?」
「こういう場合は大目標、中目標、小目標。をそれぞれ決めて小目標から実行していくって形でタスクを処理していくのがいいんだよ」
シロコの問いに大人っぽくそう答える。大人っぽいよな? 大人っぽいって言ってくれ。
「となると大目標は先生のキヴォトスへの帰還ということになりますか。それ以下はどうします?」
「中目標はこの世界で立場を得ることだ。ただ、立場を得ると言っても何かの紐付きじゃ意味がない。自立した一つの勢力を築くのが目標かな」
王族とのコネを作れたかも知れないのに、それを金で清算したのはこの為だ。王族とのコネは果てしなくデカいが、行動も相応に制限される。
俺一人ならそれでもまだよかったが、生徒たちがそれに縛られるのはよくない。というか、下手に縛ったら暴走しそうな奴ばっかりだしな。
「なるほど……。とすると小目標はお金稼ぎと言ったところでしょうか? 今も資金は充分あるかもしれませんが、募集ガチャもする以上資金はいくらあっても足りないということはないですからね」
「うん、流石はアコだね。打てば響くとはまさにこのことだ。とりあえずこんな方針で行こうと思ってるけど何か質問や意見はあるかな?」
「ん……質問。大目標と小目標は理解できたけど、中目標の世界で立場を作るというのはどういう理由なの?」
口癖で誰かすぐに分かるが、シロコから質問が飛ぶ。ちなみにアリスは話に興味がないし、アルは理解してるふりをしているだけなので、ここで建設的に質問できるのはシロコだけである。
「それは大目標の実現のためだよ。現代と違って知識や技術を求める場合、お金だったり地位だったりそういうのがないと」
「異世界を渡航する術など、存在するとしても高名な魔法使いや王家などが独占している可能性もあります。それらに対抗しその術を得るためにはこちらにも暴力以外の力が必要です」
「そうでない場合、誰かに異世界の渡航魔法を研究させたり、世界を探してそれを見つけるわけだけど、それだってお金や地位がある方が極めてスムーズだ」
「ゆえに、先生が掲げた中目標は大目標に直接的に繋がってる目標なのですよ」
俺とアコとで代わる代わる中目標の理由を述べる。ていうか、俺が言い出した目標なのに、即座にそれの本質を理解して俺と一緒に解説しだすとかアコまじパねぇ。
「ん……よく分かった。じゃあ、続けて質問なんだけど、立場を得るにはどうしたらいいと思う? 流石に余所者の私たちが異世界で地位を得るのは色々難しいと思うけど」
「んー。よくある方法としては戦争で手柄をたてるとかかな。ただ、これはどっかの紐付きになる可能性が高いから出来れば取りたくない手段だけど」
「はい! はい! アリス知ってます! Sランク冒険者になれば貴族にも成ることができます! 貴族ENDです!」
ENDしちゃだめだろ。そもそも冒険者のシステムがあるかもまだわからんし。ていうか、アリス話聞いてないかと思ったらちゃんと話聞いてたのね。先生は感動したよ。
「いや、ENDしたらダメですから。そもそも、その冒険者、ですか? そういうシステムがあるかもまだ分からないのですから」
うわ、アコと俺の反応一緒だったわ。なんかシンパシー。
「まぁ、冒険者のシステムがある世界なら、私たちに取っては有利よね。見た感じこの世界、銃とかまだ発明されてないっぽいし」
あ、アルもちゃんと話理解してた。ごめんよダメな子扱いして。
「アル、過信は禁物だよ。アルたちの強さは信頼してるけど、物理的に頑丈だったり魔法的に頑丈だったりで銃が豆鉄砲ぐらいの威力しか発揮しないような不思議生物だっているかもだし」
「大丈夫です先生! 例えドラゴンが出ようと、このアリスの光の剣で一撃です! 大船に乗ったつもりでお任せください!!」
うん、そういえば超大火力を誇る光の剣があったの忘れてたわ。これ使えばマジでドラゴンでも一撃になりそうで怖い。
「まぁ、立場を得る方法は街で情報収集しながら考えようか。冒険者ルート、商人ルート、兵士ルート。どれが一番私たちに向いてるかは情報収集しながら考えるってことで」
そういって5人連れ立って街の中に戻る俺たち。前衛3人に後衛1人、マスコットが1人と少ないながらもバランスの取れた編成だな。自分で言っててちょっと悲しくなってきたな……。