異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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18.冒険者登録

 取りあえず、5人連れ立ってペルージャの街の中に戻ったはいいが、何をすればいいのか。

アリスが「ギルド! 冒険者ギルドを探しましょう!」と強硬に主張する上、ぶちゃっけ今の段階だと他にできそうなことがないので冒険者ギルドを探すことにした俺たち。

で、周囲に聞き込みをした結果冒険者ギルドはなかったが、代わりに冒険者協会というのがあるらしいということを知った。

教えてくれた人に銀貨を数枚握らせてついでに場所を聞き出すと、その場所へと向かう。

 

「ここが冒険者協会か……」

 

 盾に交差した剣をエンブレムに使っている比較的大きな建物の前でそう一人ごちる。

 

「冒険者! 冒険者ですよ先生! 目指せSランクですよ!」

 

「冒険者……。小説とかゲームとかでよくある奴だね。大丈夫先生、私たちに任せて」

 

「私的には冒険者よりも傭兵とかの方がしっくり来るんだけどねー。まぁ、中世ファンタジーで傭兵ってなると戦争に駆り出されそうだし、一長一短かしら」

 

「冒険者……。他にやることもないしお金も稼げるからいいのですけど、なんかしっくりきませんね」

 

 と四者四様な反応である。

 

「ま、ここから先は出たとこ勝負だよ。継続的にお金を稼ぐために何か手に職は身に着けておかないと。異邦人である我々が出来るような仕事ってのは少ないしね」

 

「まぁ、確かに外国人がすぐつけるような仕事って3Kな職場ぐらいしかありませんしね。でも、肉体労働は勘弁ですよ? これでも私たちはか弱い女の子なんですから」

 

 ツッコまない! ツッコまないぞ! キヴォトス人がか弱いとか言い出したら俺はどうなるんだ? 虚弱か? 虚弱体質なのか?

 

「冒険者って肉体労働そのものだと思うけどね。いや、言わんとすることは分かるけどね」

 

 別方面のツッコミがアルから入ったところで、冒険者協会の中に入る俺たち。

中はカウンターがあって待合の為の椅子やテーブルがあってと、銀行の待合とカフェが合体したような内装をしていた。

その中でも目を引くのがカウンターの脇にある、巨大な掲示板である。なるほど、あれに依頼が貼られてそれを冒険者が受けるってシステムか。よくある奴だな。

 とりあえず、冒険者登録の受け付けはどこだろうか? まぁ、適当にカウンターに顔を出せばいいか。幸い今は行列なども出来ておらず、どのカウンターも空いてる状態だ。

ここは美人のお姉さんの受付に! と行きたいところだが、それやったら生徒たちに軽蔑されそうなので、ガタイのいいおっちゃんのカウンターに顔を出すことにする。

 

「すみません、冒険者登録をお願いしたいのですが」

 

「おっと、ずいぶん綺麗所をそろえてる兄ちゃんだな。兄ちゃんのこれか?」

 

 そういって小指を立てるいかついおっちゃん。その表現日本だけかと思ってたが、異世界にもあるんだ……。

その表現が伝わったのか、顔を赤くするアルとシロコ。

 

「せ、先生とは別にそんなんじゃ……」

 

「ん……。健全な生徒と先生の関係」

 

 そこで、素直に感情を表現しちゃうのはよくないぞー。相手に弱みを握られちゃうぞ。しかし、アコとアリスは予想通り無反応である。

まぁ、アコはともかくアリスは小指を立てる表現が何か分からないだけだと思うが。実際、疑問符浮かべてるし。

 

「おっと、教師と生徒って関係だったか。こりゃ失礼。で、登録するのはここにいる5人全員でいいのかい?」

 

「はい、5人お願いします」

 

「じゃ、この紙に必要事項を記入してくれ。代読代筆は銀貨1枚だ。ちなみに、登録料で一人に付き銀貨一枚もらうことになってるが、金はあるか?」

 

「はい、大丈夫です。代読代筆も不要です」

 

 そう言って記入用紙を受け取るが、そこは何故か項目名が日本語で書かれていた。なんで? と思うけど、便利なんだから追及はやめておこう。

 

「え? 先生これ読めるの?」

 

「先生って実はマルチリンガル……?」

 

 あれ? みんな読めないの? なんで? 普通に日本語じゃん。いや、待てもしかしたら。

 

「私にはこれは日本語に見えるんだけど、みんなには別の文字に見えてたり……」

 

「読めないですね」「読めません!」「読めない」「読めないわね」

 

「マジかー……」

 

 ひょっとしたらと思ったので、自分の記入用紙だけ試しに日本語で書いてみる。そして、それをいかついおっちゃんに提出してみる。

 

「すいません、書けましたがこれ読めますか?」

 

「お? もう書けたのか? ていうか、綺麗な字してんな。流石は先生と言ったとことろだ」

 

 どうやら俺の書いた字は向こうも読めるらしい。日本語で書いたにも関わらず、だ。

ちなみに、記入項目は名前、年齢、出身、クラス、得意なこと、など実にシンプルだった。

俺は、名前は田中角栄、年齢23、出身はキヴォトス、クラスはコマンダー、得意なことは回復魔法と支援魔法としておいた。

自分の名前が思いっきり偽名だが、別に偽名を書きたくて書いたわけではない。俺の名前が消えている以上、偽名を書くしかないのだ。

その偽名に関しても、ブルアカユーザーならやはりこの偽名だろうと思って田中角栄と書いた。

年齢、出身、得意なことはそのまま。クラスはよくわからなかったのでコマンダー(指揮官)としておいた。

実際、表立って戦うわけじゃなく生徒たちを指揮して戦うわけだから、コマンダーが一番俺にふさわしいクラスだろう。

 

「コマンダーとは珍しいクラスだな。察するに、あんたの生徒らはその卵ってところか?」

 

 割と適当に書いたのだが、実在するクラス名だったようだ。なら、やはり俺のクラスはコマンダー以外ありえないだろう。

 

「いや、私が彼女らを指揮して戦うんだよ。私に出来るのは彼女たちの力を引き出してあげることだけだから」

 

「お、おう。そうなのか。じゃ、取りあえず彼女たちの記入用紙も書いてくれよな」

 

 とりあえず、4人分の記入用紙を持って、ちょっと離れたテーブルまで皆を誘導する。この後ちょっと秘密の相談をする必要があるからだ。

 

「じゃ、取りあえず用紙に必要事項を記入するわけだけど、まず言っておくね。私は田中角栄って偽名で登録してるからそのつもりでお願い」

 

「? なんで偽名なの? 先生の名前って■■■■でしょ? 偽名にする意味って?」

 

「当然の疑問だね、アル。ここってファンタジーな世界じゃない? 真の名前を知られたら呪いとかかけることが出来そうじゃない? だから、それの対策として偽名で登録したんだ」

 

「なるほど、先生にしては慧眼ですね。でしたら、私たちも偽名で登録した方がいいのでしょうか?」

 

「アコ、一言多いよ。でも、みんなには本名での登録でお願いしたいんだ。あ、本名と言っても名前だけでね。苗字は書かない方向で」

 

「一応聞くけど、それはなぜ?」

 

「一つは、互いの呼び名だよ。みんなは私のこと名前使わずに”先生”って呼ぶからどんな偽名を使おうが、呼び慣れた”先生”呼びが出来るじゃない? でも、逆はどう?

みんながお互いを呼ぶときに、偽名がとっさに出てくる自信ある? 私は正直それに関しては自信がない」

 

「それは……確かにその通りですね。私としてもとっさの時に偽名で呼べるか自信はないです」

 

「でも、さっき言ったように呪いの対策として真名は秘匿する必要がある、その折衷案として名前だけの登録、なんだよ。みんなも自分の苗字に関しては誰に聞かれても秘匿するように」

 

「ん……なるほどよくわかった。じゃ、私から書くね。先生代筆お願い。先生が書いた内容だったら何故か相手も読めるみたいだし」

 

「オッケー。名前、シロコ、年齢16、出身キヴォトス、クラスは……アーチャーでいいかな。得意なことは戦闘全般」

 

「アーチャーって……。ガンナーとかの方がよくない?」

 

「でも、この世界見た感じ銃とかなさそうじゃない? だったら、まだアーチャーって言った方が誤魔化せると思う」

 

「まぁ、それは確かに……」

 

「じゃ、納得したところで他の用紙も記入していこうか」

 

 それで、他の生徒たちも書いたのだが、内容は

アル クラス:アーチャー。アコ クラス:アーチャー。 アリス クラス:勇者、

となった。

 アコはコマンダーでいいんじゃないの? と思ったのだが本人の希望によりアーチャーとなった。っていうかアーチャーばっかだなクラス。

アリスに関しては強硬に勇者を主張したので、俺が折れた形だ。まぁ、自己申告なんでどうにでもなるだろう。

案の定アリスの記入用紙を見たいかついおっちゃんが渋い顔をしていたが、一応通ったあたり、この辺は基本自己申告かつ自己責任なのだろう。

 

「オッケー。全員分書いたみたいだな。それじゃ全員このシートに血を一滴垂らしてくれ」

 

 これはよくある冒険者の登録方法だったので、特に抵抗もなくスムーズに行えた。

いや、ごめん嘘。針を渡されたんだが、ほらみんなキヴォトス人で頑丈じゃん? 中々、指に傷をつけることが出来ずに苦労した。

その様子におっちゃんも目を丸くしてたが、ツッコミは来なかった。見ないふりしてくれたのかな?

しかし、アリスも血が出たことに俺は驚きだよ。本当にアンドロイドなのか?

 

「よし、これがお前たちの冒険者カードだ。無くすと再発行に金貨1枚取られるから絶対無くすんじゃねーぞ」

 

 そういって、木の板を各人に渡される。これで晴れて冒険者ってわけだ。

 

 しかし、アルの登録は極めてスムーズに終わったな。もっと、ディーマン差別だのどうのとか騒ぎがあるのかと思ったが拍子抜けするほど何もなかった。

まぁ、ここで「ここではディーマンを差別しないのですか?」なんて聞いてしまって藪蛇になってもいけないので、改めて聞くことはしないが。

おそらくだが、実力社会である冒険者界隈では出自や種族などどうでもいいのだろう。それを類推できただけでもよしとしておくか。




アリスって血でるのか?
とは思うのですが、ここでは血が出ることにしてます。
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