異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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19.絡まれる先生

「じゃ、これで全員Fランク冒険者からスタートってわけだ。冒険者に関する説明は必要か?」

 

「お願いします」

 

 必要か、なんて問うけど必要じゃない奴なんていないだろ。これをカットするような奴は絶対冒険者として大成しないぞ。

 

 そして、いかついおっちゃんから語られる冒険者に関する説明だが、まずランクがFからA、Sが存在していて、冒険者として依頼をこなしたりモンスターを討伐することで上がっていくらしい。

Sランクというのが存在はしているが、実際は名誉職みたいなもので、Aランクが死亡して特進することでSランクになることがほとんどらしい。

生きてSランクに到達したものはほぼいないとのことで、それを聞いたアリスが意気消沈していた。

依頼に関してはカウンター脇の掲示板に貼られているのをカウンターに提出し受注する形だ。依頼にもランクがあり自分の一つ上のランクまで受けることが出来る。

俺たちならFとEのランクの依頼を受けることが出来ると言った感じだ。

 

 そのほか、依頼失敗の際の違約金など、色々細々な説明をしてくれたが、重要な点と言えば「冒険者は原則自己責任」という点だろう。

身の丈に合わない依頼を受けて死んでも自己責任。冒険者同士の喧嘩も諍いも自己責任、である。

まぁ、あまりに行き過ぎた諍いになる時は協会が仲裁に入ることがあるらしいが、基本的に冒険者同士の喧嘩には協会は関知しないのだとか。

他にも、「一般人に迷惑をかけない」とかいう、当たり前だろそれ、って言いたくなるようなのもあったが、その「当たり前」すら守れない冒険者も多いのだとか。

基本的に、低ランクの冒険者はゴロツキ一歩手前と考えた方がよさそうではある。

 

「こんなところかね。ところでお前らはその面子でパーティーを組むつもりか? 組むならついでにここでパーティー登録もしておけ。

ぶっちゃけ、依頼受注や報酬受け取りの際に利用するぐらいだが、した方が何かと都合がいいからな」

 

「あ、じゃあお願いします。パーティー名は……。異世界捜査部シャーレ、通称シャーレでお願いします」

 

「あいよ。その通りに登録しておくぜ」

 

「なるほど! 先生はこの世界でシャーレの名前を広めるつもりなのね! 私は賛成だわ!」

 

「なんてひねりのない……。もう少し考えてから発言してくださいませんか?」

 

 乗り気なアルと苦言を呈するアコ。アコが俺に塩対応なのはいつものことだが、もうっちょっと俺に優しく対応してくれてもいいんじゃよ?

 

「じゃ、今からお前らはFランク冒険者パーティ「シャーレ」として活動することになる。お前らのこれからの前途と奮起を期待する!」

 

 いかついおっさんが最後になんか将軍みたいな言い方で発破をかけ、これで今度こそ俺たちの冒険者登録は終わった。

 

「じゃ、まずは掲示板で依頼を確認しようか」

 

 そう言って、掲示板を確認しようとする俺たちの前にガラの悪そうな二人組の男が立ちはだかる。

 

「へっへっへ、お嬢ちゃんたち。俺たちが冒険者のイロハについて教えてやろうかぁ?」

 

「そうそう、そんな情けなさそうな男なんて捨ててさぁ、俺たちと(パン)うぎゃぁ!!」

 

 いきなり発砲音がして男の左手が撃たれたかと思って後ろを見ると、シロコが銃を構えているのが目に入った。

 

「先生を侮辱するのは許さない。これ以上痛い目を見たくなければおとなしく下がること」

 

 あのシロコさん。少々喧嘩っぱやすぎではないでしょうか? アルもアルで「こ、これが真のアウトロー。私も見習わないと」とか変な方向に戦慄しちゃてるし。

 

「シロコ。ちょっと手が出るの早すぎじゃないかな? ひょっとしたら親切で教えてくれてるのかも知れないし」

 

「そんなことはない、そいつらからは下心しか感じない。私にはわかる。それに私がやらなくてもアコがやってた」

 

「え?」

 

 アコが? んな馬鹿な、と思ってアコを見ると、アコはすでに腰の後ろのホルスターに手を掛けてて臨戦態勢に入っていた。

俺がそちらに視線をやると、慌てたようにホルスターから手を離し、こほんと一つ咳ばらいをする。

 

「さ、こんな有象無象は放っておいて、掲示板を見ましょう先生。さっさと依頼をこなしますよ」

 

 そういって何事もなかったかのように掲示板に向かうアコ。でも、ここはちょっとフォローしておいた方がいいよな。

 

「すいませんね、うちの生徒が失礼をしたようで。これで勘弁してもらえませんかね。『ヒーリング』」

 

 そういって覚えたばかりの回復魔法で男を癒す。流石に傷が塞がるほど強力な魔法ではないので、血が止まる程度だが。

 

「な、何をされたか全く分からなかった。お前たちは一体……」

 

「ただの、先生と生徒たちですよ。私の回復魔法ではこれが限界なので、これで治癒院にでも行ってください」

 

 治癒院とかがそもそもあるのか、あったとしても治癒院の治療の相場は知らなかったりだが、治療費として金貨1枚でも渡しておけば十分だろう。

 

「先生渡しすぎ、そんな奴らにそこまでしなくていいよ」

 

「まぁ、私は直接何かされたわけじゃないし。それに生徒のやったことに責任をとるのが先生の役割だからね」

 

「まぁ、先生がいいならそれでいいけど……」

 

「そんなことより先生! 依頼を受けましょう! アリスの輝かしい勇者ロードはこれから始まるのです!!」

 

「分かったわかったから」

 

 アリスの催促を受け、俺たちも掲示板の前に来る。が、そこで致命的な問題が発生していた。

 

「どうしましょう先生。やはり字が読めません」

 

「私には日本語にしか見えないんだけどねぇ……」

 

 そう、登録用紙の記入の時と同じ問題。字が読めない問題が発生していたのだ。

 

「お姉さん方字が読めないのかい? なら、依頼書1枚に付き銀貨1枚で代読を引き受けてるよ」

 

 アコが字が読めないといったのを耳ざとく聞きつけたのか、掲示板の前でずっと座っていた少年がそう声を掛けてくる。

なるほど、ずっと掲示板前で待機しているということは、字が読めない冒険者用に代読をすることを商売にしているのだろう。

 

「いや、私が読めるから要らないよ。ご親切にどうも」

 

「けっ、そうかよ」

 

 俺が読めると言ったら急に態度変わったなこの子。まぁ、商売のタネを潰されたんだから、それぐらいの罵倒は出てしかるべきか。

 

「さて、どんな依頼があるのかな……」

 

 ざっと、掲示板の依頼書を眺めてると、上はドラゴン退治から、下は下水道掃除など多種多様だ。

まぁ、どちらの依頼もそれぞれ違う理由でやる人間がいなくて、塩漬けになってる任務なのだろう。

特にドラゴン退治などはその危険度に反して受注ランクがFreeつまり、誰でも受けれる状況になってる。

こんなん誰も受ける奴いないだろ。これを受けるルーキーは命が要らないとしか思えない。

逆に下水道掃除は、Fランク。いわゆる3Kの仕事に属するが、モンスターと戦うことがほぼなく安全にランクを上げれると考えればいい依頼だとは思うのだが残ったままだな。

まぁ、俺は下水掃除でも構わないのだが、生徒みんなが嫌がるだろうから受けはしないが。

 

「これと、これにするかな」

 

 そんな中で俺が取ったのは、Fランクの薬草採取とEランクのゴブリン退治である。まぁ、初心冒険者の定番依頼と言ったところだろう。

 

「先生、何の依頼を受けるの?」

 

「薬草採取とゴブリン退治だよ。アル一人でもサイクロプス倒せるレベルなんだからゴブリンなんて楽勝でしょ? すいませーん、これ受注お願いします」

 

 アルの質問に答えると、依頼書を持ってさっきのいかついおっさんの所で受注を済ませる。

 

「薬草採取にゴブリン退治だな。しかし、薬草採取はともかく武器を持ってないのにゴブリン退治とか大丈夫か? ちゃんとこのあと武器屋に行くんだぞ」

 

「あぁ、武器なら自前の物があるので大丈夫です。ご心配ありがとうございます」

 

 やはりというか、生徒たちの持ってる銃は武器と認識されていないようだ。アリスなんてこれ見よがしに超ごつい板状の何かを背負ってるのに武器とは思われていない。

まぁ鈍器と言われたら納得するレベルのゴツさではあるのだが……。

 

「それより、薬草に関してなのですが、どういった見た目なのかとかいう情報はありませんか? 流石に何も知らない状態で探すのは骨が折れるのですが」

 

 俺がそう質問すると、いかついおっさんはニヤリと笑みを浮かべるとカウンターの下から本を引っ張り出してきた。

 

「いい質問だ。毎回毎回いるんだよな。自分が採取する薬草が何か知らないまま冒険に出て、何も採取できずに帰ってくる奴が。その点お前さんは優秀だ。ちゃんとそこらへんを考えている」

 

 そんなん当たり前ではなかろうか。と思うが、その当たり前が出来ない奴が一杯いるということなのだろう。やっぱ、冒険者ってごろつき一歩手前だわ。

 

「ほら、これが採取する薬草のスケッチだ。あ、この本はやれないからこの場で覚えてくれ。ちなみに、採取する時は根元は残すようにしろ。根元が残っていればまた生えてくるからな」

 

「なるほどなるほど」

 

 そういいながら俺は手持ちのスマホでパシャパシャと写真を撮る。文明の利器万歳である。

 

「なんだその板切れは? なんかの魔道具か? 魔道具持ってるほど金持ってんのに冒険者なんてなるのか……っと、冒険者の過去を詮索するのはご法度だったな。忘れてくれ」

 

 まぁ、スマホもその存在を知らない人から見たら十分魔道具だろうな。高度に発達した科学は魔法とは見分けがつかない、的な。

 

「あと、ゴブリンがどのあたりに生息しているかも知りたいのですが」

 

「それに関しては依頼書を見てくれ、大まかな出現位置が書かれているはずだ。ここの2階に簡易的な地図が置いてあるから、依頼書の内容と合わせて自分でどの場所か確認するように。

そこらへんの見極めも冒険者に必要なスキルだ」

 

 なるほど、こいつは実践的だ。なんでもかんでも教えてくれるわけではなく、ある程度はこちらに頭を使わせて成長を促すという目的なのだろう。このおっさん、中々によい教育者であるようだ。

 

「分かりました。自分で探すとします。あと、依頼の期限などはありますか?」

 

「薬草採取やゴブリン退治は、いわゆる常設依頼って奴だ。期限は基本的にないから、いつ受けてもいつ達成しても問題ないぜ。他に聞きたいことはねぇか?」

 

「いえ、ありません。色々とありがとうございました。じゃ、行こうみんな」

 

 俺は受付のおっさんに礼を言うとみんなを連れて2階の地図でゴブリンの出現場所を確認した後に冒険者協会を後にした。

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