「10時の方向に敵影アリ。アル、攻撃お願い。2時方向に敵影3。アリス手が空いてるね、お願い。12時方向に同じく敵影3。シロコお願い」
いきなりの戦闘指揮から始まったが、俺たちは現在ゴブリンの群れの真っただ中にいる。
なんでこうなったのかとか俺も言いたいぐらいなんだが、それもこれもアリスが無計画に突っ込んでいったのが悪い。
索敵? 何それおいしいの? レベルでずんずか森の中を突っ込んだせいで、ゴブリンの群れに囲まれる事態に。
そして、俺が戦闘指揮をして現在に至るわけだが、何故指揮ド素人の俺がここまで明確に指揮が出来てるのか、疑問に思うことだろう。
その秘密は俺がもつタブレット、シッテムの箱にある。これどうも、レーダーみたいに周囲の敵影が拾えるらしく、どこに誰がいるのかとか一目瞭然なのである。
多分索敵してるのはアロナなんだろうが、その便利さもあって俺みたいな指揮素人でもちゃんとした指揮ができるのだ。
「相変わらず指揮だけは優秀ですね、先生。しかし、私に攻撃を振らないのはどういう理由でしょうか? 私だって戦えますよ?」
「そりゃ、ピンチになったら容赦なくアコにも攻撃を振るけど、今はそこまでじゃないからね。私のサブの目と耳になってほしくてフリーにしてるんだよ」
「さっきから、私の見えないところで索敵しまくってて言うセリフですか。まぁ、実際今の状態で問題なく運用出来てる以上文句の言いようもないですが」
ブルアカの生徒連中は衣装替えとかで、ストライカーになったり、スペシャルになったりで、どんな生徒も前衛、後衛両方できるのだろうが、どうも俺のイメージ的にアコは後衛しか出来ないという思い込みがある。
持ってる武器もハンドガンだし、広域殲滅や威力と言った点で前衛に出すには少々心もとない。
まぁ、キヴォトス人はライフルを1マガジン撃ち尽くしてようやくケガする、と言ったレベルで頑丈なので、盾として使うのが一番いい運用なのだが、流石に生徒にそんなことしたくないし、そんなことする先生が尊敬などされるわけがない。
なので、アコには待機してもらうのが一番なのである。
「おっと、6時方向から団体さんのお出ましだ。みんな転身転身ー」
これ、背後からの奇襲もすぐに分かるって反則だよな。でも、これぐらいの転生チートは貰ってしかるべきである。
召喚出来てる生徒たちのほうがチートな気がするが。
そうこう思ってる間に、後方から迫っていたゴブリン軍団も容赦なく殲滅完了である。こちらの被害は0。余裕の勝利だ。
「オッケー。周囲に敵影無し。みんなお疲れ様」
「先生もお疲れ様。やっぱりゴブリン程度楽勝だったわね!」
「ん……。数が多いだけの烏合の衆には負けない」
「先生、もっと強いモンスターはいないのでしょうか? アリスはフラストレーションが溜まってしまいます」
「アリス、気持ちは分かるけど自重してね。そもそも、今回の戦闘もアリスがずんずか先行したせいで、大量に相手にする羽目になったんだから」
「それは反省していますが、こんなことでは勇者の道は遠いです」
と、ちっとも反省してなさそうな表情で答えるアリス。ちょっとお仕置きが必要か、これは?
「アリスちゃん。どんな勇者も最初は1レベルから強くなっていくでしょう? こういうことも勇者になるには大事な経験ですよ」
「アコ……。確かに言われてみればその通りです! 今のアリスは1レベル勇者。地道な積み重ねが大事な時期です!」
しかし、意外なところからの助け船。アコがこういうこというとは珍しいこともあるものだ。子供には優しい面もあるってことなのか?
「はいはい、それじゃ討伐の証取っていくよ。シロコとアコは周囲の警戒、他のみんなでゴブリンの右耳を取っていこう」
「うぇ、私が削ぐ係?」
「現実は世知辛いです。ゲームなら、何もしなくても討伐数は記録されるのに……」
「はいはい、自分が楽な方選ばれなかったからってすねない。私も一緒にやるから頑張ろう」
やっぱり、普段は指揮だけと楽してる関係上、こういうイヤな役回りは率先してやっていくのが上手く人間関係を築くコツだろうと俺は思う。
そして、しばらく3人でゴブリンの耳を削ぐ作業に没頭する。幸い、その間に襲撃などなく全部のゴブリンの耳を削ぎ終える。
ついでに、残りの死体にクレジット変換をかけてクレジットを稼ぐことも忘れない。まぁ、二束三文ではあったのだが、こういうのはチリが積もればって奴である。
「ずいぶんな数ですね。どれくらいありました?
「数えてないけど、多分50は越えてるんじゃないかな? まぁ、討伐数の限度とかなかったし、どれくらい多くてもいいでしょ」
アコからの質問にそう答える。しかし、討伐の証明とはいえ耳だけ集めるって猟奇的だな。
「じゃ次、みんなで薬草を探そう。みんなのモモトークに薬草のスケッチを送ったからそれを参考に薬草を集めよう」
「その前にここを離れません? ゴブリンの血の匂いで野生動物が襲ってこないとも限りませんし」
「あ、確かにその通りだね、移動しよう。アコ指摘してくれてありがとう」
アコの指摘はもっともだったので、取りあえず街の方向に向けてその場を離れる。
そして、安全圏まで脱したと判断したところで、交代で歩哨を立てて全員で薬草採取を開始する。
薬草自体はそこらへんに生えてるらしく、全員で協力した甲斐もあってか、すぐに規定量を集めることが出来た。
「よし、採取完了。何事もなく終わって一安心だね」
「うー、薬草採取ばっかりで指が荒れそう。先生、水魔法の書とかないの? 闇魔法以外要らないって言ったけどこういう時は水でさっぱり洗いたい……」
「一応ガチャで当たった水あるから使う? ハズレの中にも結構な確率で入ってて割と水は余裕あるんだよね」
「お願いするわ。ちょっと指が緑になってるし洗いたい」
「ん……。先生、私にもお願い」
「あ、私もお願いします」
「?」
アリス以外全員水を所望していたので、ガチャ画面から水だけを取り出す。500mペットボトルに入った水が3つ出てきたので、各人それで手を洗う。
「ガチャのハズレって本当にハズレばっかりなんだけど、たまにこういう便利なの出てくるから侮れないね」
「まぁ、こういう世界観ですと水も貴重でしょうし、これは当たりと言っていいかも知れませんね」
「じゃ、街に帰ろうか、初討伐記念に何か奢るよ」
「やった、先生のおごりよ! 何食べようかしら!」
「ん……。楽しみ」
「奢りもクソも、お金の管理してるの先生じゃないですか……」
アコそれは突っ込んじゃいけないよ。
とはいえ、生徒たちにもお金を分配するのは必要か。
お小遣いじゃないけど分断とかされたときにお金あるとないとでは大違いだ。
PTで依頼達成した時のお金は山分けするのがよさそうだ。