「先生、誰が当たったの? げ、ヒナ!? カヨコがいるのは私的にはアリなんだけど……」
アルが俺のスマホを覗きこみながらそういった後、アコの方をちらりと横目で見る。理由は知らんがアコとカヨコってなんか因縁ありそうだもんな、気持ちわかるぞアル。
「委員長が当たったのですか? なら、採用するにしても私と交代で、になりますね。流石に風紀委員会を委員長も私も不在で長時間空けるわけにはいきませんし」
「ところでトリニティの子が当たったんだけど、感想は?」
「なんで私に聞くのですか? 個人的な好悪はどうあれ、先生の元で共に戦うなら飲み込むぐらいの度量はありますよ」
「私は特に感想はないわね」
なんで私に聞くのか、とか聞くに決まってんだろ。
ゲヘナとトリニティの仲の悪さは有名だ。なので、アコとアルに聞いてみたが、これなら上手く回りそうか?
「うーん、しかしアズサを召喚するのはなー」
「先生。何か問題があるの?」
「いや、アズサって天使の翼が生えてるんだよね。悪魔の角が生えてるアルでも差別されちゃったわけだからさ、天使の羽なんてある種族がどう扱われるのか不透明なのが」
「あー、それはありそうね。カヨコもカヨコで尻尾生えてるし何言われるか分かったもんじゃないわね」
シロコの質問に俺が答えると、実際に差別を受けたアルがしみじみと呟く。
「まぁ、ここらへんは出たとこ勝負さ。じゃ、まずはヒナから行こうか」
先生『ヒナ。今大丈夫?』
ヒナ『先生!? 無事なのね、よかった……』
先生『いや、無事かって。ユウカから定期報告は受けてるよね?』
ヒナ『それでも、間接的に聞くのと実際に聞くのは違うわ。何はともあれ無事でよかった。アコは上手くやれているかしら?』
先生『うん、ちゃんと役に立ってくれているよ。それでヒナ。聞いているとは思うけど、ヒナとこうやってトークできるのはガチャで当たったからなんだよね』
ヒナ『うん、それは聞いてる。先生、すぐに私を召喚して。きっと先生の力になるから』
先生『待って待って、まだ早い。アコとも話したんだけど、二人が同時に風紀委員会を空けるのはまずいってことでさ。ヒナがこっちに来るとしてもアコと交代でってことにしたんだ』
ヒナ『それは……、確かにそのとおりね。先生が心配でちょっと先走っちゃったわ』
先生『だから、その辺りのタイミングはアコと相談して決めてほしいんだ。ガチャで当てたことで多分アコともモモトークが出来るようになってると思うから』
ヒナ『分かったわ先生。アコと相談してみる』
先生『うん。じゃあ、よろしく』
よし、交代要員確保っと。実際にいつ交代するかは二人に決めてもらおう。他力本願ともいう。
「じゃ、次はカヨコかな」
「あ、先生。カヨコなら私が話付けておいたから。私と交代して先生の護衛にあたるわ。まぁ、今のところ便利屋に依頼も入ってないし、交代するつもりはないけど」
「あ、そうなんだ。交渉ありがとう。じゃ次は、ホシノに――」
「ん……。ホシノ先輩とはすでに交渉済み。交代要員として確保済みだよ」
「し、仕事早いね二人とも。じゃあ、アズサとは私が交渉するね」
こっちが交渉する前に、すでに交渉を終えてた二人。頼もしくはあるが、その二人だって先生と会話したかったんじゃないの? とはちょっと思う。
うぬぼれとかではなく、実際に先生である俺と会話ぐらいはしたいという生徒は今も多いだろう。
まぁ、それはともかくアズサと交渉開始だ。
先生『アズサ。今大丈夫?』
アズサ『先生? そうか、私を当ててくれたんだね、先生』
先生『話が早くて助かるね。それでアズサの力が欲しいんだけど』
アズサ『分かった。すぐに準備するから待ってて。1時間もあれば準備も整う。1時間経ったら私を召喚して』
ユウカも1時間欲しいと言ったが、ユウカはともかくアズサの準備が1時間で整うものだろうか? アズサだとブービートラップやらそういうの色々用意しそうなものだが。
まぁ、アズサは普段からそういうの持ち歩いてるっぽいから常在戦場の心づもりですでに色々持ってるのかもしれないが。
「よし、アズサも確保っと。最初に言っておくけどトリニティの子だからってちゃんと仲良く、ね」
「いえ、ですから個人的な好悪に関してはこの際封印しますと言ってるじゃないですか。そんなに私が信用できませんか?」
「先生は心配性ねー。まぁ、条約関係でゴタゴタあったらしいから、心配する気持ちも分かるけど」
エデン条約に関してはアルは蚊帳の外だったからな。まぁ、便利屋の面々って学校に通ってないっぽいからエデン条約何それ美味しいの? 状態なのかもだが。
ともかく、その後いろいろ雑談しながら時間を潰し、時間になったので召喚を開始する。
ぶっちゃけ、この召喚も出来ればしたくないんだよなぁ。寿命削られるし、どうにかシッテムの箱のシステムで代用できんもんか。
「来い! ユウカ、アズサ!」
相変わらずエフェクトもなんもなく、その場にパッと現れるユウカとアズサ。
「お久しぶりですね、先生。ようやっと先生の力になれます」
「先生。こちらは準備万端。いつでも戦える」
「二人とも来てくれてありがとう。頼りにさせてもらうね」
「これで、6人。ようやく1チーム完成したわけですね。先生、まずは二人の冒険者登録からしませんか?」
「うん、それは大事だね。こういう時隣に協会があるの便利だよね」
「あぁ、そこらへんはよくある異世界ものの定番があるわけですか。私は異存はないですよ」
「ユウカ! 既に我々はゴブリン退治と薬草採取のミッションをこなしました! これがその時得た報酬です!」
さっきまで置物かっていうほど喋らなかったアリスが水を得た魚のように喋りだす。まぁ、ユウカとは仲いいし色々おしゃべりしたいのだろう。
「これは……銀かな? 察するに、金銀銅の各種硬貨が流通している世界とみたけど」
横からその硬貨を見て、アズサがぽつりと呟く。アズサはあんまりサブカルチャーに関して知識がなさそうだけど、そこらへんは流石にわかるか。
というか、アズサのサブカル知識はペロロ様関連に偏ってそうではある。アズサの場合出自が出自だしな……。
「ともかく、二人の登録と……、あとは二人の部屋の確保だね。五人部屋で取っちゃたから、二人の泊まる部屋がないんだよね」
「私は床で寝ても構わない。というか、この状況でパーティーを分断するのは各個撃破の危険がある。このままこの部屋で一緒に夜を明かすべき」
「ユウカ! 私と一緒に寝ましょう! そうすればベッドの数が足りない問題は解決です!」
「いや、流石に床で寝るのは私がやるよ。生徒をそんな目にあわせる訳にはいかないしね。寝袋もあるし大丈夫」
「問題ない。劣悪な環境で寝るのは慣れている。むしろ、それに慣れていない先生が無理に床で寝て翌日に疲労を残すことになったらそっちの方が困る。おとなしく私に床を譲るべき」
「い、いや私にだって大人のプライドというものが……」
アズサが強硬に床で寝ることを主張してくる。
本音を言えば俺だってベッドで寝たいが、それは先生らしくないし、そうでなくても自分より年下の少女たちを床で寝させて自分はベッドなどと、先生以前に男のプライドとして譲れないものがある。
「そんなプライドなど犬に食わせてください。業腹ですがアズサさんのいうことの方が正論です。先生は貧弱なんですから、ちゃんとベッドで寝てください」
言い合いをしている横からアコの容赦ない言葉が飛ぶ!ていうか、アコ、そこでわざわざ突っかからんでも……。個人的な好悪全く封印してない件。
「いやしかし……」
「先生の負けですよ。私たちとは違って先生は貧弱なんですから、ちゃんとベッドで寝るべきです。多数決でも取ってみましょうか? 結果は火を見るより明らかですが」
ユウカが「論破しました」的な不敵な表情でそう言ってくる。いや、確かに多数決取ったら絶対負けるけどさぁ! 俺のなけなしのプライドが……。