異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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28.風の刃

「そんじゃ、件のBランクパーティーと面通しといくかね」

 

 依頼が決まったことで少しホッとしてる感じを受けるおっちゃんだが、ちょっと気になったことがあったので。おっちゃんに尋ねる。

 

「ちなみに今更聞くのもアレですが、この会話、そのBランクパーティーに筒抜けとかそういうことないですよね?

ウチはいわゆるマジックキャスターがいないもので、その手の魔法がかけられてたら全く分からないのですが……」

 

「あぁ、それに関しては安心していい。この部屋は魔術的な防備は完璧だからな。協会内で安心して内緒話が出来る部屋だ」

 

「それを聞いて安心しました」

 

「そのBランクパーティだが「風の刃」ってパーティー名ですでに受付で待機中だ。面通しはすぐに出来るが会うかい?」

 

「会いましょう。みんな行こう」

 

 俺がそういうとシロコとヒナも立ち上がり、おっちゃんについて部屋を出る。

来たのと同じ道を戻り、協会の受付に出る。

するとそこに見るからに高級そうな鎧や武具に身を包んだ4人の集団が目に入る。

なるほど、これが例のBランクパーティー「風の刃」なのだなと一瞬で分かった。

 

「紹介するぞ、こっちがウチの最精鋭、Bランクパーティーの「風の刃」だ。こいつはリーダーのスミス。スミス、こっちが今回の調査に同行するDランクパーティーの「シャーレ」だ。こっちがリーダーの田中先生だ」

 

 そういって、おっちゃんが互いを紹介しあってくれる。ていうか、自分でつけた偽名ではあるのだが、田中先生なんて呼ばれると気が抜けてしまう。

なんというか向こうのキラッキラッした西洋ネームの中に日本ネームが混じると違和感がひどい。まぁ、自分でつけた名前なので受け入れるしかないが。

で、その紹介されたスミスさんだが。それはもう、ザ・スミスって感じの金髪碧眼の実直そうなイケメンである。爆発すればいいのに。

フルプレートの鎧を装備しているのでタンクもしくは前衛アタッカーと言ったとことだろうか。

 

「よろしく、田中先生。紹介に預かった「風の刃」のリーダー、スミスだ。ところで、先生というのは?」

 

「よろしくお願いします、スミスさん。私はこの生徒たちの先生なのですよ。なのでそちらもただ、「先生」とだけ呼んでいただければ」

 

 実際、ブルアカの先生って何をもって「先生」と呼ばれてるのか不明なんだよな……。部活の顧問とかをやる時もあるが何かを教えてる描写はないし。

ていうか、生徒たちはみんな戦術教育BDで学んでるらしくて、正しい意味での教師っていないらしいんだよな。

じゃあ、先生ってなんぞってなるとやっぱり謎なんだよなぁ。俺自身よくわかってないので、そこのところをツッコまれると困ったりしてしまう。

 

「じゃあ、先生って呼ばせてもらいますね。私は「風の刃」のエレインよ。パ―ティーではマジックキャスターを担当しているわ」

 

 ローブ姿の見た感じ紅一点のエルフの女性がそう自己紹介をする。マジックキャスターか。俺らみたいな魔法の書で即席で魔法を覚えたなんちゃってと違って、確かな知識と経験に裏付けされたマジモンのマジックキャスターなんだろうなぁ。

しかもエルフ! 異世界感満点だな!!

 

「シーフ兼レンジャーのフレディだ。斥候・鍵開け・罠解除をメインにしている。よろしく、先生」

 

 見た感じちっちゃい坊やって感じの年若そうな少年がその見た目とは裏腹に渋いボイスで自己紹介をする。これはあれか、小人族か何かでこの見た目でもすでに成人してるとかそういうのか。

しかし、小人族がシーフ役っていかにもだな。鎧も皮鎧で武装しシーフっぽさ満点。

 

「デニスです。僧籍に身を置かせてもらっている、しがないクレリックです。よろしくお願いします」

 

 そして最後、いかにも優しそうな顔と腹黒そうな雰囲気を合わせもったアンバランスな容姿をしてる、おそらくヒューマンの男性が最後に挨拶をする。

ハーフプレートの鎧を着こんでいるのでクレリックと言っても、僧侶というより神官戦士的な役割なのだろう。ヒーラー兼サブアタッカー兼サブタンクと言ったところか。

 

 こうしてみると、攻撃役、魔法役、シーフ役、回復役と非常にバランスのいいパーティーなのがよくわかる。

なるほど、このパーティーなら”うちの最精鋭”といかついおっちゃんが太鼓判を押すのも分かる。

 

「皆さん自己紹介ありがとうございます。ほら、みんなも。あ、私は先ほど紹介されたように田中です。クラスはコマンダーです」

 

「風紀委……じゃない、ヒナ。アーチャーです。よろしく」

 

「便利屋68の社長、アルよ。戦闘ではアーチャーを担当しているわ」

 

「ん……。シロコ。アーチャー」

 

「初めまして、ユウカと言います。クラスはアーチャーということになっています。よろしくお願いしますね」

 

「私はアズサ。一応アーチャーということになっている。よろしく」

 

「アリスです! 勇者です!! よろしくお願いします!」

 

 全員が自己紹介を終えるとしばらくの間、二つのパーティーの間で沈黙が降りる。その沈黙を破ったのはスミスさんだ。

 

「……えらくクラスが偏ってるね。そんな編成で大丈夫なの?」

 

「流石に、ほぼ全員がアーチャーというのは……」

 

「ていうか、アーチャーばっかはともかくとして、斥候役もいないのは大丈夫かと他人事ながら心配してしまうぞ」

 

「あの、ところで勇者というのは……。本物、ではないですよね?」

 

 次々とツッコミが入る我らがパーティー。うん、ツッコミ所満載だよね。でも、そこらへんはツッコんでくれるな。

生徒の中で近接なんて出来るのなんてゴリ……ミカぐらいしかいないし、ミカもミカでやっぱり本領はアーチャーだし。

 

「本物の勇者が何かは知りませんが、アリスは勇者ですよ。そうあろうとしています。なのでこれ以上は、ね?」

 

 一応アリスに関してはアリスを傷つけない範囲でフォローをいれておくとしよう。これなら双方ともに角が立たない言い訳になるだろう。

 

「あ、はい」

 

 僧侶のデニスさんはまだ納得してないような顔だが、これ以上ツッコんでも無駄と悟ったのかそれ以上は聞いてこなかった。

 

「じゃ、面通しも済んだところで、俺は去るぜ。後はお前たちで作戦立てるなりなんなりしてくれ」

 

 いかついおっちゃんはそれだけ言うと手をひらひらと振って受付の奥に引っ込んでいった。

 

「それじゃ、そこのテーブルで作戦会議と行こうか」

 

 そういって、スミスさんが仕切り、手近なテーブルを二つくっつけて全員で座る。流石に4人+7人もいると一つのテーブルじゃ足りんな。

 

「まずは確認なんだけど、最初にゴブリンの増殖を確認したのは君たちでいいんだよね?」

 

「はい。とは言っても不意の遭遇という感じではなく、こちらからゴブリンの集団に突っ込んだ結果大量のゴブリンを相手にする羽目になったというのが正しいですが」

 

「ほらな、索敵がちゃんと出来てないからそうなるんだ。今からでも遅くないから斥候役を探した方がいいぞ?」

 

 シーフのフレディさんからそういうツッコミが入るが、「いや、索敵自体はシッテムの箱で出来るんですよ。アリスがなんも考えずに進んだせいなんですよ」と言いたかったが言ってること自体は正論だし、ここで余計なこと言っても話がこじれるだけなので大人らしく波風立てないようにその言を受け入れる。

 

「ご忠告ありがとうございます。で、その時に50を超えるゴブリンに囲まれたんですよ。一応その場は何事もなく切り抜けましたが、その時はその数が異常であることに気づけず調査も何もせずに街に帰ったという次第で」

 

「その時ってあなたたちってFランクだったのよね? いえ、別に低ランクでも冒険者になる前に鍛えてたらFランクでも強くても不思議はないけれど……」

 

「まぁ、強さに関しては一家言ありますので。で、我々はその場所に案内すればいいという所でしょうか?」

 

「そうですね。その場所にゴブリンの集団が居たということなら、その近辺にゴブリンの巣穴がある可能性が高いです。まずはそこを目指しましょう」

 

 僧侶のデニスさんがそう締めくくったところで、作戦会議は終わった。

さて、あとは案内するだけだが、シッテムの箱で、というかアロナの力でマッピングは完了してるので同じ場所にいくのは造作もなかったりする。

アロナまじ最高。

 


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