異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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29.巣穴探し

「この辺りですね。この辺りでゴブリンの集団と出くわして戦闘、となりました」

 

「ふむ……」

 

 俺たちがゴブリンの集団と出くわした辺りまで何事もなく来ると、シーフのフレディさんが地面に屈み何かを観察しだす。

多分足跡とか見てるんだろうけど、そこらへんのノウハウは俺らにはないからなー。

マジでサーチ&デストロイしか出来ない集団でちょっと悲しい。

 

「かなりの数のゴブリンの足跡があるな。だが、かなり踏み荒らされててこれを追うのは難しそうだ」

 

「一応この周辺をマッピングした地図はありますので、それの埋まってない場所を中心に捜索していくのはどうでしょう?」

 

 そういいながら、俺はタブレットを風の刃に見せて提案をする。

 

「うわ、何この精巧な地図。先生、冒険者なんてしなくてもマッパーとして生計立てていけるわよ」

 

「というより、この板状の物はなんなんでしょう? 金属が使われてはいるようですが、材質が分かりません」

 

 まぁ、そりゃ機械によるマッピングですからな。正確さは人力とは比べ物にはならないだろう。僧侶のデニスさんはタブレットの材質の方を気にしているようだが。

 

「なるほど、こういうのがあるなら探索も楽できそうだな。ならば、先生は引き続きマッピングをお願いします。俺たちで徐々に範囲を広げていきますので」

 

「分かりました」

 

 実際はマッピングはアロナによってされているので、俺がすべきことはないがポーズは必要か。

自動で周囲をマッピングするアイテムなんてあったら、それこそ冒険者は死に物狂いで手に入れようとするだろうからな。

別に風の刃が信用できないとかそういうことじゃなくて、それぐらいの自衛はするべきだろう。なんせ、俺は大人で先生だからな。

 

 しかし、スミスさんが指揮執ってくれるのは楽でいいね。俺の指揮じゃないと生徒たちは不満だろうが、サラリーマン気質の俺としては他人に従ってる方が楽でいいわ。

まぁ、戦闘となったら流石に生徒たちの指揮は俺が執るけどね。彼らにウチの生徒たちの指揮は無理だろうし。

 

「それにしてもあなたたちってパーティーメンバーが多いのね。それぐらいになると分け前で揉めそうなのだけれど何かコツでもあるのかしら?」

 

 探索範囲を広げる間の雑談とでもいうのだろうか、エルフのエレインさんがそう話題を振ってくる。

 

「いえ、交代要員も居るので実際はもう少しパーティーメンバーは多いです。そろそろクランを作って運営しようかと考えていたぐらいなので」

 

「そ、そうなの。でも、それだけの数の差配をしてるのは流石ね。やはり先生という強力なリーダーがいるからこその結束なのかしら」

 

「ん……。私たちは先生を中心に結束している」

 

「まぁ、互いに仲の悪い者同士がいないわけじゃないけど、やはり先生がいるからみんな喧嘩せずにやれているところはあるわね」

 

 確かにヒナの言う通り、仲の悪い者同士でも問題なく組めるのは先生の存在あってこそだろう。

例えば、ゲヘナの集団にミカを放り込んでも問題なくチーム編成が出来るように。

ゲーム的な都合と言ってしまえばそれまでだが、実際先生が一言いえばミカも少なくともチームを組んでいる間は争うことはしないだろう。

 

「でも、女の子の集団に男一人って大変じゃない? 私の場合逆だけど、やっぱり色々大変に感じることはあるもの」

 

「いえいえ、みんないい子ですので。ちゃんと私のことも考えてくれてますよ」

 

 これは謙遜などではなく掛け値なくそう思う。

一見こちらの意思を無視してそうな事も、その実俺のことをちゃんと考えてくれての行動だったりするからだ。

ほんまブルアカの生徒はいい子揃いやでぇ……。

 

「ふーん。ずいぶんと信頼関係があるのね。これは上手くいくわけだわ」

 

「エレイン。雑談はそこまでにしてくれ。向こうの方に多数の生物の気配がする」

 

 シーフのフレディさんが真剣な顔でそういって俺たちの雑談を遮る。

 

「どれどれ。うん、確かに向こうの方に10体ぐらいの生物の反応がありますね」

 

 シーフのフレディさんの言葉を受けて、タブレットを確認すると確かに北東の方に10体ほどの生物の反応がある。

俺がタブレットを眺めながらそういうと、すごい勢いでフレディさんの首が振り向かれ、俺の方に向く。

 

「な、なんで数までわかるんだよ。ひょっとしてその板魔道具かなんかなのか!?」

 

 しまった。さっき言ったばかりなのに、つい癖でシッテムの箱の機能を使ってしまった。出来ればシッテムの箱の機能は秘匿しておきたいんだが。

 

「ま、まぁそのような物です。これがあるから斥候役は不要なようなものです」

 

 だが、バラしてしまった以上秘匿し続けるのは厳しいだろう。取りあえず、機能の一部だけを開示することにしよう。

まぁ、シッテムの箱自体は認証機能がついてるので俺以外には起動させることすらできないのだが。

 

「はぁー、世の中には便利なものがあるもんだな。あんたらに斥候役がいなくても周ってる理由がなんとなくわかるわ。あれ? それじゃ、それがあるのにゴブリンの集団に囲まれたのはなんでだ?」

 

「まぁ、それには色々事情がありまして。ところで、この集団に対してはどうします? 私も数と位置が分かるだけで、それがどんな生物かなのかまでは分からないのですが」

 

「奇襲しよう。その10体は特に戦闘中ということもないのだよな? なら、人数的に冒険者である可能性は低い。ゴブリンかどうかまでは分からないがモンスターであることは確かだろう。こちらだけが把握してる今なら奇襲のチャンスだ。先生もそれで構わないかい?」

 

 リーダーのスミスさんがそう言ってこちらに了解を求めてくるが、俺としても問題はない。ただ、奇襲か。ウチは手を出さない方がいいだろうな。

なんせこっちは全員銃装備だからな、戦闘音がうるさいのなんのって。つくづく隠密活動に向いてないパーティーである。

 

「異存はありません。戦闘に関してはそちらにお任せしてよろしいでしょうか? なにせ、うちのパーティーは戦闘するとなるとかなり音を立ててしまうので、隠密に不向きなのです」

 

「元より戦闘はこちらの役割だからな、問題ないぞ。じゃあ、シャーレの皆さんは出来るだけ音をたてないように我々に付いて来てください。」

 

 出来るだけ音をたてないようにとか難しいことをおっしゃる。ていうか、こういうスニーキングミッションが十全に敵うのって今のウチの面子じゃアズサぐらいなもんじゃね?

他はみんなサーチ&デストロイばっかりな面々だし……。

 

 とりあえず、足元で枯れ枝などを踏まないように注意しながら、風の刃の面々に付いていく。

しばらくして開けた場所に出ると、そこにはゴブリンが10体ほど居た、と思うが早いか、エレインさんが魔法の詠唱を開始し杖をゴブリン集団に向ける。

 

「嵐刃《トルネードカッター》!」

 

 ゴブリン軍団を中心に、多数の風の刃(だと思う。見えないので)を発生させ、ゴブリン軍団を切り裂く。

しばらくして風の刃が止んだ頃を見計らって、スミスさんとデニスさんが前に出て残存しているゴブリンを殲滅する。

奇襲を喰らったゴブリンはそのことごとくが悲鳴を上げる暇もなく倒れ伏す。

その間およそ1分。実に見事な早業である。

 

「これは、正直お見事としか言いようがないですね。流石はBランクパーティーの皆さんです」

 

「えぇ、これは確かに参考にはならないけど、凄いことだけは私にもわかるわ」

 

 俺とアルで感想を述べる。相手がゴブリンだとはいえ、静音状態を維持しながらこの早業でケリをつけるのは中々出来ることではない。

ウチは絶対音立っちゃうからなー。サーチ&デストロイなら得意なのに、ってこの下り何回目だ。

 

「なに、相手がゴブリンならこれぐらいは出来ないとね。で、フレディどうだ。何か分かりそうか?」

 

 そう自然体で答えるスミスさんは偉そばってるわけでもなく、本当に自然にこれぐらい出来て当然、と思っているのだ。

その自信の強さはあやかりたいものだ。

 で、スミスさんに呼ばれたフレディさんは地面をじっと見つめて足跡を確認しているようだ。

 

「うん、これはホブゴブリンの足跡だな。他より一回り大きい。しかも新しい。その割に今倒した中にいないってことはまだ近くにいるってことだ。先生さんよ、そっちの魔道具に反応あるかい?」

 

「あ、北の方角にかなりの数の生物反応アリだね。ちょっと数えるのが億劫なほどに……って、まって数が分かった。範囲内だけでも114体だ。」

 

 数えるのが億劫なほどに、と言いかけたところで即座に画面にカウント数が表示されるのはアロナがリアルタイムで聞いてるからであろう。

基本的に生徒や他の人との会話は邪魔しないアロナなので、こうやって自己主張をするわけだ。

しかし、アロナはどうやって生体反応を感知しているのだろうか。どうも数的に洞くつの中とかな気がするんだが、サーモだとしたら洞窟は貫通しないはずだが。

 

「114!? なんだその数は。しかも、その言い方からしてまだ居るってことだろ?」

 

「範囲内を出たり入ったりしてる個体もいるので、確かにまだいそうですね。どうします?」

 

「……とりあえず限界まで近づいて様子を見よう。それから考える」

 

 スミスさんがしばらく考えた後そう言うが、俺としてもそれに異存はない。

 

「分かりました。では、行先を示しますので先導お願いします」

 

 そうして、俺たちは100を越える生体反応の場所に向かって進軍を開始した。

 

 

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