俺が行き先を決め、風の刃が先導する形で生命反応の方へと歩を進める俺たち。
しばらくして、生命反応が目視できるところまで来ると、そこにあったのは洞窟ではなくどでかい集落だった。
ゴブリンだから洞穴に住んでる、という俺の先入観をぶち壊すようなゴブリンの集落がそこにはあった。
そこは、家があり道があり柵があり、住んでるのがゴブリンでなければ普通に村と言ってもいいような巨大な規模だった。
「こ、これは……」
その集落を見たスミスさんが言葉を失う。その反応は信じられないものを見たと言った感じの驚きに感じられた。
「ありえねーだろ……。ゴブリンの集落なんて見たことないぞ」
「やはりキングがいるのかしら……。でも、それにしたってこの規模は異常よ」
「よく見ると、鳴子などのトラップもあるようです。専門ではない私にも分かるぐらいですからトラップの質としては粗末なものなのでしょうが」
次々と目の前のゴブリン集落に関して感想を述べる風の刃の面々。
「やはり、この状況は異常なのですか?」
「あぁ、異常だ。ゴブリンはこういう生活が出来るほどの知能はない。キングがいる集団だとしても、その実態はただ群れているだけでこんな文化的な生活ができるゴブリンなんて聞いたこともない」
ふむ、この世界の常識を知らない俺たちからすればどこが異常というのは分かりにくいが、熟練の冒険者である風の刃が異常というなら異常なのだろう。
ぶっちゃけ、ゴブリンって作品によって知能が違うからなぁ。喋れたり、こういう集落を築くぐらいの知能がある作品も普通にあるし。
「では、どうします? 流石にこの集団に突っ込むのは愚策であると思うのですが」
「これが盗賊のアジトとかなら、夜襲が効果的なんだが……。ゴブリンは夜目が効く、夜襲はこっちが不利になるだけだ。しかし疑問に思うことがある」
「なんでしょうか?」
「これだけの大規模な集落があるのなら、それを発見した時点で調査依頼は完了だ。すぐさま帰還して協会に報告しているはずだ。それがなされていないということは……」
スミスさんがそこまで言ったところで、俺はハッとしてシッテムの箱に視線を落とす。
『先生、後ろから何か近づいてます!!』
「みんな! 後ろだ!!」
アロナの絶叫と共に、俺は大声を出し皆に注意喚起をする。すぐさま後ろに振り向き、迫ってきた脅威と対峙する。
風の刃はいきなりの俺の絶叫に対応できず、ゴブリン集落の方を向いたままだった。だが、今回はそれが功を奏した。
ダダダダダダ!
まず、最初にヒナがマシンガンを掃射し、後ろから近づいてきていたなにやら赤い布を巻きつけているゴブリン5体を瞬時に葬り去る。
後ろからの脅威はこれで対処した。続いて集落の方だが、俺の絶叫にプラスしてヒナのマシンガンの掃射音で気付かれ、こちらに大勢のゴブリンがやってくる。
だが、腐ってもBランク冒険者の風の刃だ。すぐさまそれに対応し、ゴブリンたちに相対する。
「火球《ファイヤーボール》!」
エレインさんが戸惑いながらも詠唱を完了し、ゴブリン集団に子供の頭ぐらいの大きさの火球をぶち込み、爆発させる。
ドガァン! と大きな音が鳴るがそもそも今の時点で隠密は失敗している。少々音が鳴ったところで関係ない。
スミスさんデニスさん、なんとシーフのフレディさんですら武器を取り出しゴブリンたちに肉薄する。
「みんな! 戦闘態勢! アルは物見やぐらのゴブリンアーチャーを中心に処理! ヒナは迫ってくるゴブリンの波に対処!
アリス! 重装備のゴブリンを中心に斉射! アズサ! 迫撃砲持ってきてたよね? セッティング開始! セット出来たら集落の中心に向けて発射!
シロコはセット中のアズサの護衛! ユウカは前に出て風の刃のカバーに!」
「「「「「「了解!」」」」」」
矢継ぎ早に指示をだし、全員が即座に行動を開始する。シッテムの箱を見れば、集落の奥の方から次々とゴブリンが殺到しているのが分かる。
その赤点はもはや数えるのも馬鹿らしいぐらいだ。
俺のこの指揮で正しいのか? その疑問が拭えないが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
ともかく、刻々と変化する状況に対応しなんとか生徒たちを指揮するしかない。
「私の狙撃の腕を舐めないことね。片手でも命中させられるんだから!」
いや、そこはちゃんと両手で保持して命中率を上げてほしいところなのだが、アルってゲームでも片手狙撃やらかすからなぁ。
まぁ、ちゃんと当たってるようなので文句のつけようはないが。
ダダダダダダ カチンカチン
「ヒナ一旦下がってリロード! ユウカ! 交代で前に! アズサ、準備できた!? よし、迫撃砲発射! 次弾装填! ユウカの空いた穴にはアリスが入って!」
こういうリロードの隙が一番危ない。故にそこに一番神経を使うのだ。特にヒナはマシンガンだし、ゴブリンの波を対処してもらっているので、弾が尽きるのも早い。
俺の言葉と共にアズサが迫撃砲を発射し集落の中心に直撃する。でかいクレーターが発生し、着弾地点を中心にゴブリンが消失する。
「先生! 遠距離攻撃の出来るゴブリンは全部仕留めたわ!」
指揮している中アルから朗報が飛ぶ。よし、遠距離ゴブリンを仕留めたなら風の刃の方もぐっと楽になるだろう。
「よし! アルは指揮をしているロードと思しきゴブリンを中心に狙撃! 司令塔が崩れればこいつらの統率も崩れる!」
「分かったわ! 偉そうな装飾してるやつを狙えばいいのね!」
やっぱ、こういう時狙撃できるスナイパーライフルって便利だわ。
「リロード完了。先生もう一度出るわ」
リロードの完了したヒナがもう一度ゴブリン軍団に対して斉射を開始する。次々と肉片になっていくゴブリンたち。
うーん、流石にヒナは殲滅力がえぐいな。めっちゃ頼りになるわ。
「す、すごい……」
戦闘中だが、風の刃のエレインさんがぽっつりと呟いたのが耳に入った。
まぁ、こっちは殲滅力に関してはこの世界で二の次に出る者はいないと自負しておりますし?
ていうか、さっきから生徒の活躍ばっかり描写してるように思うが、風の刃もちゃんと役に立ってるのだ。
特にエレインさんなんか高レベルのマジックキャスターらしく、殲滅力という点ではかなり高い。
スミスさんやデニスさん、フレディさんも目立つような活躍はないものの堅実にゴブリンを屠っている。
息もまだ上がってないし、全員かなりの戦闘巧者であることは見て取れる。
「よし、迫撃砲準備完了した!? 今度は集団の中心に向かって斉射! 発射したら、アズサもフロントに回って!
シロコ! ドローンで重装備のゴブリンから中心に排除! もう少しだよみんな、頑張って!」
二度目の迫撃砲でかなりの数のゴブリンを減らせたので、アズサとその護衛をしていたシロコも戦線に回す。
「よし、ユウカ、下がってリロード! アリス、今からエネルギーをチャージするよ! アズサとシロコは二人の代わりに前に!」
シッテムの箱で指揮しながら、スマホを即座に取り出しアリスに弾薬補給をする。くそっ、全部シッテムの箱で出来れば楽なのに。
「エネルギーチャージ完了! あと少しです!」
アリスのレールガンにエネルギーチャージしたところで、アリスがそういいながら前線へと戻る。
その言葉が契機になったか、ゴブリンの圧力は一気に下がり、散発的な襲撃をするだけになっていた。
最後にアルが何体目かのロードを狙撃した辺りで、ゴブリンの圧力は消え、完全に辺りに静寂が戻った。
「よし、周囲に敵影なし。みんなお疲れ様」
結果だけ見ればこちらは被害0の完勝だったが、正直俺は生きた心地がしなかった。
これだけの大規模戦闘の指揮など初めてだし、常に「これちゃんと上手く指揮出来てるよな?」という不安がぬぐえなかった。
まぁ、”先生”としての口調を忘れずに指揮できてたあたり、お前実は余裕あったろ? と言われそうではあるが。
「シャーレの皆さんすごいですね……。なるほど、これだけのことが出来るなら全員アーチャーでも戦えるわけですか……」
エレインさんが口をポカンと開けながら俺たちに対して感想を述べる。
「これでDランクってんだから信じられないよな。この依頼終わったらすぐにランク上げてもらうべきだぞ」
「それにしても横で聞いていただけですが、先生の指揮は流石ですね。
正直コマンダーなんて後方で偉そうにしてるだけのクラスという印象があったのですが、これだけの事をされては認めざるを得ません」
「そうよ! 先生はすごいんだから!」
僧侶のデニスさんにそう褒められると、何故かアルが得意げにする。まぁ、俺も指揮を褒められて悪い気はしないが。
「ともかく、これでゴブリンは全部でしょうか? あとは帰って報告ですか?」
「いえ、まだですね。先ほどの襲撃ではキングが見つかっていません。ゴブリンナイトやゴブリンスナイパーがいたことからして、それより上位のキングがいることは明白です。
ですが、今の襲撃の中にはいなかった」
俺が帰ろうと促すとスミスさんに否定される。なんだ、まだあるのか。そういえば、確かにキングっぽいゴブリンは見かけなかったが。
「では、この集落を探索するしかないということですか。分かりました、先導はお願いします。あ、みんな今のうちに弾薬補給しておくね」
スミスさんに指揮を再び委ねると、こっちはこっちで生徒たちの弾薬補給をする。流石にあれだけの戦闘だとみんな残弾が心もとないだろうからな。
迫撃砲持ちならヒビキだろ!! なんでアズサが
って思うかもですが、ゲリラ戦のエキスパートで籠城戦も得意ならアズサならキヴォトスから色々持ち込んでても不思議はないと思います。