「これは……遺跡ですかね?」
「でしょうね、こんなところにこんな立派な遺跡があったとは……」
ゴブリンの集落を探索していた俺たち。正直大量のゴブリンを殺戮したせいで血の匂いがシャレにならんかったが、
生徒たちはみんな平気な顔をしていたので、先生である俺が顔をしかめるわけにはいかない。
いやごめん嘘、思いっきり顔しかめてた。まぁ、それに関しては生徒たちも指摘しない優しさがあるようだが。
で、冒頭に戻るわけだが、集落の奥に遺跡と思しき立派な建物があったのだ。
岸壁の中をくりぬいて作られたとおぼしき、でかい遺跡がそこにはあった。
「おそらくこの中に残りのゴブリンや、キングがいると思われます。中ではゴブリンたちが準備万端で待ち構えているでしょう。皆さん準備はいいですか?」
スミスさんがそういって遺跡の扉に手を掛ける。
「問題ありません、シャーレは準備完了しています」
「よし、開けますよ」
外開きの遺跡の両扉を勢いよく開けると、中から数十本単位の矢が発射される。
が、それは全員予想していたことなので、矢は虚しく地面に突き刺さるのみだ。
矢が発射されきったところで、全員が一気に遺跡内に突入する。先陣を切ったのはユウカだ。
2丁のサブマシンガンで中にいたゴブリンアーチャーの集団を次々と倒していく。
「よし、ユウカに続いて行くよ。あ、アルは逃げようとするゴブリンがいたら優先して狙って。ヒナを中心に左右に陣を組んで殲滅態勢で。
事ここに至ったら綿密な作戦は不要だ。鏖殺するよ」
生徒たち6人の重火力の前にはゴブリンたちもなすすべもなく、せっかく準備万端で待ち構えていたであろうゴブリンたちは哀れ何もできずに倒れていくのだった。
「さっきも気になったけど、その武器は一体なんなんだ? 大きな音がしたと思ったら離れたところで敵に穴が開いてるし。何かを発射してるんじゃないかと睨んでるんだが」
入り口のゴブリンを殲滅した辺りでシーフのフレディさんからそんな疑問が飛ぶ。
うん、この世界に来て初めて銃の存在に疑問を呈した人が来たな。
あのロイもこっちに深入りしたくないのか、銃のことについては何も聞いてこなかったし、他に銃を見せた人たちもいなかったしな。
「銃という武器ですよ。火薬を使って弾を遠方に飛ばし、打撃を与える武器です」
「あ、それ聞いたことある。でも、あれ連射とか出来ないし弾薬がすごく高いから趣味人の貴族しか持ってないって聞いたけど」
俺が簡単な銃の説明をすると、エレインさんがこの世界の銃の存在について示唆した。
なるほどこの世界でも一応銃は存在してるんだな。とはいえ、言い方からしてせいぜいフリントロックの単発式の銃だろう。
ちなみに火縄銃はマッチロックと言ってフリントロックとはちょっと違うのだ。火縄銃は点火に火縄を使うが、フリントロックは火打石を使う。
日本では湿気のせいで火打石方式の銃は着火しずらいことから、火縄銃が発展したらしい。
閑話休題
「まぁ、ここらにあるのはその銃の発展形ですけどね。ま、これ以上は私たちの飯のタネでもあるので、ね」
「分かった分かった、これ以上は聞かないよ」
取りあえず、銃はうちの秘儀であることを言えば、冒険者仲間である風の刃の面々は詳細に聞いてこないだろうと思い、こういう言い方をした。
まぁ、実際銃がウチの生命線であることは嘘じゃないしな。
「おしゃべりはそこまでだ、次が来るぞ」
スミスさんがそう注意喚起をすると、前方から再びゴブリンの波が押し寄せる。
しかし、外であったような圧力はなく、ヒナのマシンガン掃射であっという間に第二波は壊滅した。
よく見るとゴブリンの上位種と思しき個体がチラホラと見受けられる。
だが、ヒナの無慈悲な掃射の前には無力だったらしい。
「ゴブリンジェネラルもこの扱いか……。銃ってのは恐ろしい武器だな」
今掃討した中にゴブリンジェネラルとか居たのか。
遺跡の中のゴブリンは外にいたのと違って装備をしているため、明らかに上位のゴブリンとはわかるのだが、それが何かまでは知識のない俺たちには判別がつかない。
その後も何回か散発的にゴブリンの襲撃にあいながら奥に進んでいくが、どいつもこいつも接敵する前に、ヒナに、シロコに、アズサに蹴散らされ風の刃の出番は一切なかった。
風の刃は「楽は出来てるんだが、なんかしっくりこない……」と言いたげな表情を浮かべているが、ことここに至ってこちらの戦力をひた隠しにする意味ももうないので、ここからは自重無しの全力でやらせてもらうことにする。
そして、何回かのゴブリンの波を退けたあたりで大きな石扉の前にたどりつく。
おそらく位置的にここがキングの居る最奥の部屋だろう。アロナもこの奥に生命反応があると言っている。そしてそれより後方にはなにも居ない。
間違いないだろう。
「おそらくここが遺跡の最奥と思われます。反応は12体。キングと上位個体が待ち構えてると思われます」
「よし、キミらの強さに色々びっくりするところはあったが、当初の予定通りキングは俺たちがやる。キミらは他の個体の掃討など援護を頼む」
「分かりました。私たちは援護に徹します」
スミスさんの作戦に否もなく賛成する。ぶっちゃけ、ここは相手に花を持たせるべきだ。彼らにもBランクパーティーとしての矜持がある。
ここで、Dランクパーティーに一番おいしいところを取られたら彼らのメンツは丸つぶれだ。
ゆえに風の刃が、無いとは思うがピンチになるまではこちらは風の刃の援護に徹する。
「よし、いくぞ!」
スミスさんを先頭に内開きの扉を開け放つと、そこは何か儀式場みたいなところであった。
中心に手術台のようなものがおかれ、その上には開頭されている男性の遺体が。思わず目をそむけたくなったが、ゴブリンが周囲にいる状態で目を背けるわけにはいかない。
気合を入れて目の前の観察をする。部屋内部にはゴブリンの上位種が10体前後、ゴブリンキングと思しき王冠を付けたゴブリンと、灰色の肌をしたエルフの男性が――、エルフ?
「ふむ、やはりというか、あの程度のゴブリン連中では足止めにすらならんか」
「ダークエルフ!?」
エレインさんは大きく声を上げる。ダークエルフってあれか。エルフの宿敵というか悪のエルフ的な。
「もう少し時間があればよかったのだが、潮時か……。口惜しいがここは放棄するしかあるまい。では、さらばだ冒険者たち」
「ま、待てっ……!」
スミスさんがそう声を上げ手を伸ばそうとするが、言葉を言い終わらないうちにダークエルフはふっとその場から掻き消える。
転移魔法でも使ったのか!? それとも透明化か?
『先生! 奴はまだそこに居ます。透明になっても私のセンサーは誤魔化せません!』
即座にアロナから飛ぶ怒声。
「アル、撃て!」
「分かったわ!」
極めてアバウトな命令だったのだが、その一言で通じたのかアルは先ほどダークエルフが居た場所を狙いたがわず撃った。
「ぐっ……、ば、馬鹿な。私の隠形が見破られた……だと!?」
アルに撃たれて集中が途切れたのか、姿を表すダークエルフ。
「透明化《インビジリティ》!? なんて高度な魔法を……」
ゲームとかだと透明化って中くらいの難度の魔法だと思うんだけど、この世界じゃ高度な魔法に分類されてるのか。
ってそんな感想を抱いてる場合じゃない。
「スミスさん、今です!」
「あ、あぁ。分かった!! デニス!」
「了解しました!」
スミスさんはデニスさんと協力し、二人がかりでダークエルフを押さえつける。
そして、その間に俺たちは何故かこちらに襲い来る様子のないゴブリンたちを掃討していた。
今までチャンスなんどもあっただろうに、何故かゴブリンたちは襲い掛かってくる様子がなかったのだ。
不審には思うが、それを考慮してこっちが死んでは意味がない。不審は不審のまま処理させてもらうことにする。
「稲妻《ライトニング》!」
なお、ゴブリンキングはエレインさんのライトニングをぶつけた後、マヒってるところをフレディさんが華麗に首を刎ねて処理していた。
フレディさんすげーな。正直鍵開け等専門の非戦闘員と思ってた。
あっけないが、それにて戦闘は終了。ダークエルフの方は、スミスさん達が猿轡もかまし、厳重に縛り上げていた。
さて、このダークエルフが何か知ってそうだが、この後はどうするべきか。