異世界捜査部シャーレ   作:幽塊和尚

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33.魔封じの腕輪

 風の刃の居るところに戻ると、風の刃は変わらずダークエルフとにらみ合いをしている状態だった。

 

「あぁ、帰って来たのか。フレディから聞いてるよ。未帰還だったCランクパーティーが見つかったんだってね」

 

「えぇ、依頼には含まれていない内容ではありましたが、やはり放っておくというのは目覚めが悪く……」

 

「悪いことじゃないと思うわ。冒険者は自己責任とは言っても、それが相手に親切をしない理由にはならないもの。ただ、あまり無償奉仕ばかりというのも考えものよ。そのあたりはシビアに考えないとね。

先生はお人よしそうだから、そのあたりは生徒のみんなで補ってあげないとね」

 

「ん……。大丈夫、そういう先生だから私たちは先生に付いて行ってる」

 

「『そういうのは大人である自分の役目だよ』だったかしら。とにかくそういう先生に救われて、そういう先生が好きだから私たちは先生についていってるのだもの」

 

「あらあら、ご馳走様。ふふっ、余計なおせっかいだったかしら」

 

 シロコとヒナがそう俺のことを評してくれる。それ自体はうれしいのだが、そういう所を演じてる部分がないとは言えないからな。ちょっと後ろめたくもある。

 

「と、ともかく。キングも退治し、調査に出ていた冒険者たちも救い出しました。後の問題は――、」

 

「このダークエルフ、だな」

 

 俺が話を戻すと、話題は最初に結実する。つまるところ、このダークエルフが黒幕っぽいが始末どうすんべという話だ。

 

「まぁ、最終的には連れ帰る他ないでしょうね。彼がこの事件の黒幕のようですから。ただ、問題はペルージャの街の協会に彼を監禁できるような施設がないということです」

 

「まぁ、協会の建物自体は事務所みたいなもんだから、牢屋なんてないのは当然っちゃ当然だが」

 

「となると、これの引き渡し先はペルージャの街自体の牢屋になるわけだが」

 

「それが何か問題でも?」

 

 風の刃の面々が問題点を次々口にするが、最終的には街の牢屋に入れるというので良いのではないだろうか、何か問題でもあるのだろうか?

 

「問題なのは、ペルージャの領主が面倒事を嫌ってこいつをすぐに釈放しかねないって点だ」

 

「何よそれは! 明らかに犯罪者でしょうに、面倒だから釈放って!!」

 

 ヒナがスミスさんの言に憤慨するが、スミスさんは気を悪くした風もなく続ける。

 

「問題なのは、今現在ゴブリンの被害が出てるのが冒険者だけしかいないって点だ。ペルージャの市民には被害が出ていない」

 

「それの何が……!」

 

「そうか、キミたちはまだ冒険者に成りたてってことか。覚えておくといい。冒険者は市民や領民に比べてその地位はずっと低い。俺たちBランクパーティーなら辛うじて重用されないこともないが

それ以下はギリギリ人間扱いされてるってレベルだ。市民や領民に比べたらその地位はずっと低い」

 

「なっ……」

 

 スミスさんのその言葉に絶句するヒナ。うーん、冒険者がゴロツキ未満だというのは身にしみてわかっていたつもりだが、やっぱり低ランクの冒険者に人権なんてないんだなぁー。

これは早く高ランクにならないとな。

 

「だから、冒険者のみの被害が出ている現状、ペルージャの領主や衛兵はまともに調査などしないだろう。領軍に預けたところですぐに釈放されるのがオチだ。

こいつが高位のマジックキャスターでさえ無ければな……。協会の側で尋問なりなんなり出来るのだが、協会で猿轡を外した時点で逃げられる。なので困ってるという訳だ」

 

 確かにそいつは困った事態だな。

こっち側がファンタジー的なチートをもって魔封じが出来るとかだったら良かったんだが、あいにくこちらは現代兵器チートな奴らばっかりである。

暴力に訴えることは得意だが、こういった搦め手は不得意――、

いやまて、確か……

 

「先生?」

 

 いきなりスマホを操作し始めた俺を不審に思ったのか、アズサが声を掛けてくるが今は無視だ。確かガチャのハズレアイテムに……

 

「あ、あった! 魔封じの腕輪!」

 

 ガチャは基本的にハズレアイテムばっかり当たるのだが、その中でもすげーハズレを引いたなと印象に残っていたのだ。

装備した相手にバフを与えるどころかデバフを与えるアイテム。そんな呪いのアイテムみたいな、何の役に立つんだこれ、ハズレここに極まれりだ、と思っていたのだが。

 

「敵に装着するなら、このデバフしか与えないハズレアイテムも役に立つってもんだ! 開封! 魔封じの腕輪!」

 

 スマホからアイテムを開封し腕輪を取り出す。

 

「よし、これをそいつに付けましょう。これを付ければ相手は魔法の発動が出来なくなります」

 

「……一体どこから取り出したのかとか聞いてみたいのだけど、その腕輪はひょっとしてアーティファクトかなにかかしら?

本能的に忌避したくなるような雰囲気をそれからひしひし感じるわ」

 

 エレインさんがそう評するが、どうやってそういうの感じてるのだろうかと気になる。魔法使いの本能とでも言うのだろうか。

 

「そうか? 俺には何も感じないが……?」

 

 逆にスミスさんは何も感じない模様。

 

「これはマジックキャスター特有の感覚だから、スミスには感じ取れないかもね。デニスは分かるわよね?」

 

「えぇ。なんといえばいいのか。臭いものを避けたくなるような心理といいますか。とにかくそれには触りたくないって感情がひしひしと湧きますね」

 

「じゃ、早速付けますねー」

 

 俺が魔封じの腕輪を近づけると、今までじっとして動かなかったダークエルフが激しく抵抗しだす。

だが、頑丈に縛られているので、その抵抗はほぼ無意味だ。俺は労せずダークエルフに魔封じの腕輪をつけることに成功する。

そして、おもむろに猿轡を外す。

 

「馬鹿め! 透明化《インビジリティ》!」

 

 ダークエルフは俺に侮蔑の視線を投げると即座に詠唱をし、魔法を発動させる。

が、魔法の力は全て腕輪に吸い取られ、魔法が発動することはなかった。

ていうか、俺も魔法使えるようになったからか、魔法力の流れとでもいうのだろうか、それが若干見えるのだ。

と言っても、その流れはかなり薄いので集中して見ないと気付かないレベルだが。

 

「な!? くっ、眠り《スリープ》!」

 

 再びダークエルフが魔法を詠唱するが魔法は発動しない。いい加減無駄と悟ればいいのに。

 

「これならどうですか? 協会の方で尋問できるのでは?」

 

「あ、あぁ。これなら大丈夫だろう。しかし、貴重なアーティファクトを使わせてしまって申し訳ない」

 

「いえ、ハズレアイテムを処分出来てこっちも助かってますので」

 

「アーティファクトをハズレ扱いって……」

 

 フレディさんがそんな感想を述べるが、だって実際にハズレアイテムなんだもんよ。使用者にバッステしか与えないアイテムなんて普通はハズレだよハズレ。

とりあえず、問題なく協会に帰還できそうとなったため、ダークエルフは先ほどと同じようにアリスが担いで帰ることになった。

すでに、同じ場面を見ているにも関わらず、風の刃はアリスを二度見していた。

 

「あ、アリスちゃん? 疲れたらスミスが代わってくれるから無理しなくていいのよ?」

 

「大丈夫です。アリスにお任せください!!」

 

 エレインさんが心配そうにアリスに声を掛けるが、今アリスが背負っているレールガンを実際に持ってみたらそんなセリフは絶対に出てこないだろう。

腕力も桁外れなキヴォトス人ですら持つのに苦労する重量だ。人間一人の重量などレールガンの重量からしたら誤差レベルでしかない。

 

 そして、ペルージャに帰還したのだが、街に入る前にも、アリスが抱えていたダークエルフのことでひと悶着ありそうだったのだが、そこは風の刃の信用の問題でなんとか切り抜けることが出来た。

Bランク冒険者いいなー。俺らも早くランクアップしたいものだ。

 

 

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